Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

白い満月?

昨日の夕方18:00頃、まだ青い東の空に白い月が昇っていました。え?白い満月?と思ったら満月の1日前でした。

月 (2018/4/29 18:14)
月 (2018/4/29 18:14)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 1/100s / Lightroom CC で画像処理

急がないとすぐ黄色くなってしまうと思って久々にスカイメモSで撮りましたが、既にちょっと黄色くなってますね。しかし楽ですね、スカイメモSは。軽くてすぐ組み立てられるし電源やコントローラの配線の手間もないですし。

「白い満月」は基本的には見えないはずです。満月は日没と同時に月の出なので昼の空には見えません。yes! プリキュア5 Go Go! 第30話でお月見の日にのぞみが授業中に窓から見上げた空に白い満月が浮かんでいるシーンがあるのですが、これはありえません。*1

とは言っても、日没時に正確に満月になっているとは限らないし、月食でない限り月と地球と太陽が正確に一直線上に並んでいるわけでもないので、日没直前に東の空低く月が出ていることはあります。

例えば5月29日の満月の日は月の出が18:24ですが日没は18:49で、日没時には約4度の高さまで月が昇っています。*2 ですが、白く見えるかというと… どうなんでしょうね?

昨日の日没は18:26で、上の写真は日没の12分前です。高度は約7度。これで白く見えるのなら、ぎりぎり「青い空に白い満月」が見えることもあるのでしょうか?

などと考えているうちに月が黄色く輝きだしてきました。

月 (2018/4/29 18:26)
月 (2018/4/29 18:26)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 1/125s / Lightroom CC で画像処理

木星、土星、火星 (2018/4/28)

前回初めて ADC (大気分散補正プリズム)を使ってみたのですが、あのあとふと思いつきました。望遠鏡の光学系で発生する色ズレを ADC で補正できるのでは? 大気色分散の向きと色ズレのベクトルを合成した方向に ADC の真上が来るように ADC を斜めにして補正すればいいのでは?と。

ということで、早速試してみました。まずは木星。昨夜の木星は深夜から大赤斑が地球の方を向くという絶好の条件でした。

木星 (2018/4/29 02:00)
木星 (2018/4/29 02:00)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

RGB Align はしていません。ADC の補正だけで例の色ズレが綺麗に消えて、なかなかの仕上がりになりました。大赤斑をこんなにくっきり赤く撮れたのは初めてです。

実は大赤斑が出る前からスタンバイしていたのですが、ふと思い立って木星の自転の様子がわかるように連続写真を撮ってみました。

ついでに動画も作ってみました。


木星の自転とイオとエウロパの公転 (2018/4/29 00:50-02:40)
木星の自転とイオとエウロパの公転 (2018/4/29 00:50-02:40)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理 x 12枚から動画を作成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理, TMPGEnc Video Mastering Works 5 で動画作成

木星の近くをイオとエウロパが回っているのも確認できます。上の方を左から右へ動いていくのがエウロパ、下の方を右から左へ動いていくのがイオです。エウロパ木星の手前を、イオは木星の向こう側を通っているところです。衛星は実際にはもっと暗いのですがわかりやすいように衛星の部分だけプラスの露出補正をかけてあります。

ところで、同じように撮って同じようにスタックしたはずなのですが、AutoStakkert!3 が出力したTIFFファイルのうち数枚について RegiStax 6 に読み込んだ時にやたらコントラスト強調されてハイライトが白飛びしてしまう現象が発生しました。

TIFF を見る限り全部ほぼ同じ明るさ・階調なのに何故でしょうか?とりあえず RegiStax 上でコントラストを50まで下げるとほぼ他のファイルと同じ仕上がりになったので、なんとか無事に連続写真にできたのですが…

さて、木星が西に傾いて望遠鏡もずいぶん無理な姿勢になってきたので、3:00前から土星と火星の撮影に移行しました。

土星 (2018/4/29 03:09)
土星 (2018/4/29 03:09)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/30s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

土星は ADC の補正が効いて前回よりもカッシーニの間隙がクッキリ見えています。さすがに全周クッキリというわけにはいきませんが 8cm の写りとしては上出来?

火星 (2018/4/29 03:17)
火星 (2018/4/29 03:17)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/125s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

火星は前より微妙な濃淡が出ていると思います。もっともこちらは RegiStax の wavelet 処理も変えました。レイヤー2, 3 を弱めに、レイヤー4, 5, 6 をオフにしてみたのですが、これで表面の階調が出やすくなりました。木星土星と同じではダメなんですね。

そんなわけで、ADC の間違った使い方かもしれませんが、こういう使い方もあるということで。

ADCを使って土星と火星 (2018/4/27)

昨夜は深夜から ADC の補正を有効にして木星を、その後2:00頃から土星と火星の撮影をしました。ADC のテストを兼ねているのでカラーカメラのみで撮影しています。

ADC (大気分散補正プリズム)ってなんだかめんどくさそうだしパスしようかなーと思っていたものの、さほど高価なものでもないし「後悔は買ってからすればよい」*1 と思って勢いで買ってしまったわけですが、結論から言うと、意外とテキトーに使ってもそれなりに効果が出るので買って損はない、と思います。

先に結果から。まずは土星

土星 (2018/4/28 03:14)
土星 (2018/4/28 03:14)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/30s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

カッシーニの間隙がやっと写りました!って、写ってますよね?画像処理のアーティファクトとかじゃないですよねこれ?

土星は2:00頃から撮っていたのですが、高度が低いうちはいまいちシャープさに欠けて、A輪とB輪の間の段差みたいなものは写るんですが「隙間」は写りませんでした。3:00過ぎて高度が上がってやっと写りました。

カッシーニの間隙は2xテレコン付きで接続したデジカメの拡大ライブビューで「電視」するとギリギリ視認できたことがあるのですが写真にはっきり写ったのは初めてです。木星表面の縞模様も見えていますが、これもデジカメのワンショットではほとんど写りませんでした。

次に火星です。まだまだ高度も低いし、距離も遠いのですが、どの程度写るものか試してみました。

火星 (2018/4/28 02:24)
火星 (2018/4/28 02:24)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/30s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

うーん、まだまだですね… プレビューでは像がむちゃむちゃ揺れて模様を見るどころではありませんでした。表面の濃淡はなんとなく見えていますがなんだかよくわかりませんね。もう少し高度が上がってから撮ったものもあるのですが、露出オーバーになってしまって火星の明るい部分が飽和してしまったのでボツに。

土星も火星も ADC で適当に補正を入れて、さらに Registax 6 の RGB Align で赤と青のチャンネルを少しずらしています。火星の方は像が小さい上揺らぎがひどくて ADC の調整ができそうになかったので、土星で調整した状態のままで撮りました。

ADC があるのに RGB Align を使っているのは、以前も触れたように原因はよくわからないのですが光学系に問題があって大気色分散がなくてもわずかに色ズレが発生しているからです。直焦点撮影だと1pxあるかないかのズレでほとんど問題にならないのですが、2倍以上に拡大すると目立ってきます。今回の撮影だと水平方向のズレになっていました。

RGB Align で色ズレが補正できるなら、ADC なしで RGB Align だけでも十分じゃないか?という疑問は当然あるのですが、そのあたりを木星で検証してみました。

まず ADC をゼロ補正の状態で撮ったものがこれです。

木星 (ADC補正なし) (2018/4/28 00:29)
木星 (ADC補正なし) (2018/4/28 00:29)

木星はほぼ南中していて、画像の垂直方向の色ズレが大気色分散、のはずです。それにしてはちょっとズレが大きいような… 光学系の色ズレの分も入っているのかも?

ADC の補正を入れるとこうなります。

木星 (ADC補正あり) (2018/4/28 00:38)
木星 (ADC補正あり) (2018/4/28 00:38)

垂直方向の色ズレが明らかに軽減しているのがわかります。

では、ADC 補正なしの画像を RGB Align で修正するとどうなるでしょう?

木星 (ADC補正なし + RGB Align) (2018/4/28 00:29)
木星 (ADC補正なし + RGB Align) (2018/4/28 00:29)

こうなりました。やや眠い感じがするのですが、ADC 補正ありの時とシーイングが違った可能性もあるので判断しかねます。

最後に ADC の補正ありで光学系の色ズレを RGB Align で修正したものがこれです。

木星 (ADC補正 + RGB Align) (2018/4/28 00:38)
木星 (ADC補正 + RGB Align) (2018/4/28 00:38)

やっぱりこちらの方がクッキリしてますね。最終的には色収差のない反射系の光学系で繰り返し撮影して検証したいところですが、暫定的には「ADC は意外と手軽に効果が得られるし、RGB Align 以上の効果はある」という結論です。

ADC はプリズムの向きを水平に保つ必要があるため、長時間の撮影や撮影対象の切り替えで望遠鏡の向きが変わると ADC を回転させなくてはならなくなり、カメラの向きの再調整が必要になったり、補正量の調整中に像の位置がズレてしまってそれを追いかけるのに苦労したり、*2 それなりに手間はかかりますが、使って損のないアイテムだと思います。

*1:参照: アイサツ・コトワザ・ヤクザスラング・感嘆詞・掛声 - ニンジャスレイヤー Wiki*

*2:ズレないように調整しろとマニュアルにはあるのですが、どうしてもズレてしまいます…

LRGBで木星とイオの影 (2018/4/27)

4月27日はGW前ということで朝方まで惑星撮影の練習をしていました。今日こそは大赤斑を、と思っていたのですが、帰宅が21:30頃になって残念ながら大赤斑は通りすぎた後。

でもイオの木星面通過があって、うまくいけばイオの影が見えるはず、ということで帰宅するなり望遠鏡をベランダに設置。パーツが増えてだんだん作業が複雑になっていって緊張しますが慣れるんでしょうか… 焦りながらも割と余裕で間に合って、COMSカメラのプレビュー映像でイオの影が確認できました。

今回のテーマは「ドタバタLRGB撮影」。よくあるフリップミラーの両側にカメラを取り付けて、PCにUSBを二本挿ししてL画像撮影とRGB画像撮影を切り替える、というのではなくて、Lを撮ったら急いでカメラを抜き差しして、USBも抜き差しして、キャプチャソフトの設定も素早く切り替えて、というのが「ドタバタLRGB撮影」です。

そんなわけで前回は使わなかったモノクロカメラの ASI290MM でまずL画像を撮影。続いて ASI290MC に差し替えてRGB画像を撮影。その間1分46秒。SharpCap の設定ですが、どうやらカメラごとに設定が保存されるらしく、最初にカラーカメラで露出やゲインを合わせていたので、再設定は不要でした。

そうやって撮った動画を AutoStakkert!3 でスタックして、RegiStax 6 で処理して、Photoshop でLRGB合成です。

Photoshop でのLRGB合成は、こちらの動画を参考にしました。

具体的にはこんな手順です。

  • どうにかしてL画像とRGB画像を位置合わせする。
  • RGB画像を開いて [イメージ - モード - Labカラー] で画像のカラーモードを Lab に変更。
  • L画像を開いて全選択してコピー。
  • RGB画像のチャンネルからLチャンネルのみを選択してL画像をペースト。
  • そのままだと暗くなるのでLチャンネルにレベル補正をかける(中央のスライダを調整)。

最初の位置合わせですが、今回は手動で回転・シフトして合わせました。上の動画では Photomerge を使用していますが、記事で補足されているように、回転が必要な位置合わせは回転ではなく変形で合わされてしまって像が歪んでしまってダメでした。

結果はこれです。

木星とイオの影 (2018/4/27 22:45)
木星とイオの影 (2018/4/27 22:45)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 L:1/125s x 2000コマをスタック処理, RGB:1/60s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Phothoshop CC, Lightroom Classic CC で画像処理

どうでしょう?結構イケてるような!?よく見るとLとRGBが少しズレてるんですけどぱっと見わかりませんね。ちなみに右上にうっすら見えている星はカリストです。

しかし8cm屈折ってここまで写るものなんですね… 今までどうせ縞模様は3本くらいしか見えないしと思って縞模様の名前を憶えてこなかったんですが、そろそろ憶えた方がいいかな…

合成前の画像はこれです。

木星とイオの影 (L画像) (2018/4/27 22:45)
L画像

木星とイオの影 (RGB画像、RGB Align 済) (2018/4/27 22:48)
RGB画像

RGBだけよりはLRGBの方が解像感が増していると思います。元々の外像度が低いので微妙ですけど。

このくらいの解像度だと合成すると目立ちませんが、元の画像を見るとドタバタしている間に木星の模様もイオの影も少し動いてしまっているのがわかります。WinJupos とかいうのとを使うと木星の自転を巻き戻して合成できるそうですが、今回は試していません。衛星の影の動きも巻き戻せるんですかね?

カメラの挿し替えでピントがズレたりしないかと思ったのですが、これはどうやら問題なさそうです。LとRGBで画像が回転してしまうのはあまりよくないですが「ドタバタ」だと角度を合わせる時間がないので… カメラに印でもつけておくのがいいかも。

木星はちょっと厳しい感じですが、火星の自転速度は木星の半分以下なので「ドタバタ」でもなんとかなるかな?もう少し試しながら考えてみます。

なお ADC はここではまだ補正量ゼロのまま使っています。大気色分散と光学系の色ズレは Registax 6 の RGB Align で補正しました。

この後はいよいよ ADC の補正を試してみて、土星と火星を撮りましたが、そのへんはまた後ほど。

月、木星 (2018/4/26)

一昨日注文した機材は μ-180C 以外は全部今朝届きました。

μ-180C は6月中に納品との連絡がありました。火星の最接近は7月末ですので、なんとか間に合う感じです。関東の梅雨明けは7月初旬ですから、多少早く届いたところでファーストライトはおあずけになる可能性が高く、出遅れたことについてはあきらめもつくかな、といったところ。

さて、今夜は曇りでしたがダメ元で20:00頃からベランダに機材を出して ASI290MC のファーストライトを試みました。

接眼部のパーツ構成は前回のエントリの後半の計画通り。ADC は今回触らないのですが、ピントが出るのか、拡大率はどうなるか等を検証するため補正量0にして入れてあります。

気になっていたIR/UVカットフィルターの取り付け位置ですが、ADCの対物側の先端にフィルターネジが切ってありました。カメラの31.7mmアダプターの先にもフィルターネジが切ってありましたが、カメラを交換することを考えてADC側に取り付けました。

ADCへのカメラの取り付けは、ADCの接眼側パーツを外せばTネジでも可能なのですが、カメラを回転できるように31.7mmスリーブを使うことにしました。

キャプチャソフトは今までどおり ShapCap ですが、念の為最新版の 3.1.5153.0 をインストールしておきました。PCからベランダのカメラまでは遠いのでサンワサプライのアクティブタイプのUSB3.0リピーターケーブル 500-USB046 を介して接続しました。

とりあえず薄雲越しの月を撮ってみたのですが、転送速度が16.3fpsとかで、さすがカラーカメラは重いなーとか思っていたのですが、ベイヤー配列のセンサーなので生データの転送量はモノクロと変わらないはずだしなんでだろう?と悩んでいたら SharpCap のタイトルバーに「ASI290MC (via USB2)」などと書いてあって、USB3.0で繋がってないことに気づきました。

マザーボード背面のUSB3.0対応の口に挿しているのになんで?と思ったのですが、とりあえず隣のUSB3.1対応の口に挿したら via USB3 になって、170fps くらい出るようになりました。が、その頃には月はすっかり雲に覆われてしまいました。

とりあえず via USB2 で撮ったコペルニクス周辺がこれです。

コペルニクス周辺 (2018/4/26 20:31)
コペルニクス周辺 (2018/4/26 20:31)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 500コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

バローレンズとカメラの間にADCを挟んだせいで拡大率が上がったのとカメラのセンサーの解像度が約1.3倍アップしたのとで今までより高解像度で撮れています。既に 8cm F6 屈折の限界は見た気でいたのですが、まだ先がありました。薄雲越しですがシーインが良くなかなか良く写ってくれたと思います。色は… 月面だとカラーでも代わり映えしないですね。

21:00を過ぎて、月は子午線を越えて雲も一向に晴れないのでターゲットを木星に変更して待機。まだ木星は低いのですが、月に向けたまま放置しておくと望遠鏡の東西の入れ替えが発生してケーブルが絡まったり引っ張られたりして大変なことになりそうだったので。

木星も雲で見えないなーと思っていたら厚い雲が切れて薄雲越しですが見えるようになりました。PCの画面に木星らしい色をした木星が写っています。雲に邪魔されながら7回撮影。最後に撮影したものが一番よく撮れていました。

木星 (2018/4/26 22:30)
木星 (2018/4/26 22:30)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/30s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

左右にうっすら見える小さな星は、左がガニメデ、右がイオです。

正直、え? 8cmでこんなに写るの?という仕上がりでびっくりしました… この時間、大赤斑がまだ正面に来ていないのが残念でしたが、細い縞模様がここまで写るとは思っていませんでした。

今回は AS!3 では 1.5x Drizzle で出力して、それを RegiStax 6 で wavelet 処理してみました。月面では僕の RegiStax より AS!2 の convolution 処理の方がずっと上手いので AS!2 の出力をそのまま仕上げていましたが、惑星は RegiStax を使った方がずっといいです。

ちなみに東西方向に少し色ズレが出ていますが、これは大気色分散ではなくて、色収差というか光学系の不具合で前からあるものです。レンズエレメントがズレてるとかですかね?

そんなわけでファーストライトはとりあえず成功です。あとは、ADCを使えるようになるのと、LRGB撮影と画像処理ですね。しかし木星の場合自転が早いのでカメラを差し替えての撮影は厳しいですかね… やはりフリップミラーに2台載せしないといけないかな?

μ-180C 注文しました

昨日 μ-180C *1 のことで悩んでいたばかりですが、昼に twitter を見ていたら天リフさんのこんなツイートが。

そう!そういうのが見たかった!という作例が!しかも等倍画像!

早速見てみました。うーん、すごい。モザイクなのでどこがセンサーの隅っこを使っているのかわかりませんが、隅々まで見てもコマ収差の影響とか見えませんね。1/1.2型と大きめのセンサーで四隅の像高は6.6mmですが、それでも実用上大丈夫ということになります。

というわけで、せっかくなのでスターベースさんのところで注文しました、ミューロン180Cを。在庫がなくて予約ですが、協栄でも在庫がなくて5月末入荷予定とのことだし、タカハシ直営店のスターベースなら入荷時期もそう変わらないかと思って。

注文後メールが届いて早速工場に発注した、納期確認中、とのこと。メーカー在庫もないってことですね。もっと早く決めればよかったですね。とは言いつつも上の記事が4月14日なのでそれより早くは決められなかったかな…

そのあとは勢いで必要そうなものをビシバシ発注。

商品名 価格(税込)
ZWO ASI 290MC 38,400円
ZWO ASI 290MM 51,300円
ZWO ADC 1.25"大気分散補正プリズム 16,500円
ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" 2,900円
BORG [7317] 31.7ミリアイピースホルダー 2,448円
BORG [7423] M42P0.75→M36.4/42P0.75AD 3,065円
ビクセン バランスウエイトWT 3.7kg 5,184円
USB3.0延長ケーブル 500-USB046 3,480円
USB3.0対応ケーブル KU30-20BK 1,180円

天文関係は協栄で、USBケーブル関係はサンワダイレクトで購入しました。500-USB046 は5mのアクティブリピーターケーブルです。ベランダから部屋にUSB3.0を引き込むのに使います。

そんなわけで期末賞与が吹っ飛んでいったわけですが、お金の心配はともかくとして、今のところ心配なのはCMOSカメラの接続方法。観測場所が集合住宅のベランダなので、あまり後ろに長く伸びるとカメラが窓にぶつかってしまいます。たぶん30cmくらいが限界なんじゃないかな…

とりあえず、

  • ビクセン フリップミラー(直視側の延長筒は外す)
  • BORG [7423] M42P0.75→M36.4/42P0.75AD
  • BORG [7317] 31.7ミリアイピースホルダー
  • 笠井 2.5倍ショートバロー
  • ZWO ADC 1.25"
  • ZWO ASI 290MM/MC

という接続にするつもりです。アイピースホルダーまわりはちょっとでも光路長を減らしたいという理由。フリップミラーにカメラ2つ付けるのは諦めています。フリップミラーの手前にバローレンズを置ければいいのですが、うまい方法が思いつかないし、笠井のバローレンズからカメラをそんなに離して大丈夫なのかというのもわからないので。あのバローってテレセントリック?じゃないですよね?

もうひとつ気がかりなのがIR/UVカットフィルターをどこに付けるか。バローレンズの前に付けたらいいかと思ったら、2.5倍ショートバローはフィルターネジないんですよね。ADC かカメラのアダプターの先端にネジが切ってあればいいんですが…

どちらもダメなら ZWO Tマウント-1.25インチフィルターアダプターというのを使えばセンサーの前にフィルターを付けられるようですが、これだとカラー/モノクロの各カメラに取り付けておく形になるからフィルター2ついりますね。

そんなわけで、鏡筒の納期がなるべく早くなることを期待しつつ、カメラ関係は色々試してみようと思います。

追記 2018/4/26: μ-180C の良像範囲についての情報

スターベース東京さんのブログに「【ミューロン180Cのイメージサークル】Φ8mmまでは十分実用可能?」という記事が公開されました。例の月面モザイクの元になった1枚の画像が掲載されています。

これを見ると直径10mm(像高5mm)の円外では像が甘くなっているのがわかります。しかし直径8mm(像高4mm)あたりまでは良像と言ってよい感じ。ZWO ASI290MC/MM は対角が 6.4mm ですから十分良像範囲に入ると考えてよさそうです。

*1:ミューロン180Cの公式な型番は M-180C とのことですが、この型番だと検索にほぼ公式サイトしかヒットしないので μ-180C の表記にします。

『月刊 天文ガイド』2017年2月号にμ180Cのレビュー記事

火星の大接近まであとわずかなのにまだ悩んでいるのですが、候補の一つミューロン180C (μ-180C)のレビュー記事が『月刊 天文ガイド』2017年2月号に載っているのを知って Kindle 版を購入してチェックしました。

天文ガイド2017年2月号

天文ガイド2017年2月号

西條善弘「TG Telescope Review タカハシ ミューロン180C」という記事です。鏡筒の作りや実写テスト、さらにはスポットダイアグラムや収差図など貴重なデータが載っています。

で、心配だったコマ収差ですが、余計心配になりました… 本文には、

さて,ドール・カーカム式という反射望遠鏡の光学系は「視界中心は球面収差も色収差もないので申し分なく,比較的大きなコマ収差と像面湾曲が良好な視界の広さを制限する」という性質のものである

と控えめな表現なのですが、純正フラットナーレデューサーの写真のキャプションでは、

0.8倍なのでレデューサーとしての効果は小さいが,ドール・カーカム式の猛烈なコマ収差が大幅に補正されて良像範囲はぐんと広がるのでフラットナーとしての効果は大きい.

と書いていて不安になります。「猛烈な」て…

そのココロはスポットダイアグラムを見るとはっきりします。中心では無収差と言ってよい結像なのに対し、像高13.5mm (APS-C サイズの四隅に相当)で高さ・幅共に約180μmまで広がるコマ収差が出ています。像高21.6mm (フルサイズの四隅に相当)では300μm近い広がりです。

とはいえ実写ではどうなんだろうと思ったら、なんと補正レンズなしの直焦点の作例がありません。DSO の作例は純正のμフラットナーレデューサーを使用したもののみ。あとは2倍バローレンズを使った木星の写真のみ。木星は季節外れのため高度17度での撮影で微妙な写りです。

なので素のμ-180Cがどのくらい「猛烈」なのかいまいち実感できず。まあ、F12でDSOは撮らないのですが、問題は月面撮影でどのくらい使えるかです。

非点収差図を見た感じではフォーサーズの四隅相当の像高10.8mmでも厳しそう。CMOSカメラだと ASI290MM/MC の四隅は像高3.23mm、ASI178MM/MC だと像高4.47mmで、このくらいだとあまり問題なさそうな気がするのですが…

そんなわけでもう少し悩みそうです。