Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

月面X (2017/3/5)

日曜日の夜に最近よく話題になる天文イベント「月面X」がありました。月面にアルファベットの X に見える模様が見えるというもの。月面の地形が絶妙な角度で太陽に照らされることで起こる現象です。

正直個人的にはあまり興味のないタイプの天文イベントなのですが、一般ウケはいいようでついつい撮ってしまいました。承認欲求…!当日は曇りでよくて薄雲越しに、悪くて厚い雲に覆われ何も見えない状況だったのですが、なんとか撮れました。

「月面X」未満の「〉」みたいな形になっている月面とセットでどうぞ。

「月面X」未満 (2017/3/5 18:09)
「月面X」 (2017/3/5 19:18)
「月面X」(2017/3/5 18:09, 19:18)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井BLANCA-80EDT (8cm F6), 2x TELECONVERTER C-20
ISO 200, 1/50s
Lightroom CC で画質調整, トリミング

わずか一時間余りでも意外と陰影に変化が出ているのがわかります。全景はこちら。

「月面X」未満 (2017/3/5 18:09)
「月面X」 (2017/3/5 19:18)

あまり興味がないと言いましたが、理由はそれほど X に見えないというのが一つ。正立像だと漢字の「火」みたいに見えることが多いです。

もう一つの理由は、特定の言語の文字に見えるという現象をイベント視するのはあまりに自文化中心主義的な観点じゃないかということ。人の顔に見えるとかならまだ普遍性があるかもしれませんが。

まあ、それを言い出すと星座とか全部西洋文化ですけど、神話みたいに直接文化の深いところとつながっているものなら、その文化ごと味わえばいいことなのですが、ただ文字に見えるだけとなると戸惑ってしまうのです…

「月面X」を見るたびに思い出すのは、福本伸行の麻雀漫画『天 天和通りの快男児』に登場した銀次という雀士のことです。彼はガン牌*1の達人で、牌の裏についたわずかな傷や汚れのパターンを文字に見立てることで牌を識別・記憶します。

しかし、普通のアルファベットに見えるような特徴的な傷や汚れがそうそうあるわけではないですし、そんな傷は他人にも気づかれて対策されてしまいます。そこで銀次は独学で世界各国の言語の文字を学び、見立てることが可能な文字の種類を膨大な数に増やしつつ普通の日本人が知らないような言語の文字に見立てることでこの問題を解決します。

銀次が望遠鏡で月面を見たら、きっと無数の「月面ナントカ」を見つけてしまうのではないか、などということを「月面X」を見るたびに思うのです。僕も文句言ってる暇があったら「月面大文字」とか「月面卍」とか「月面鳥居」とか見つけたらいいんでしょうか。

でもそれって面白いのかな?月面そのものに向き合ってないんじゃないかな?などと考えこんでしまいます。まあ、そんなのただの遊びなんだしどうでもいいじゃない!って言われればそれまでなんですが。

*1:牌の裏側についた(あるいは意図的につけた)傷や汚れから何の牌かを識別・記憶することで、山の牌や他人の手牌を読んでゲームを有利に進めるイカサマ。