Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

オートガイダー導入記 (5): ファーストライト

前回の続きです。

オートガイダーにファーストライトという言葉を使うものなのかどうかわかりませんが、とにかく最初のオートガイド撮影をするべく、まずはキャリブレーションです。PHD2 の画面には既に星が映っています。カメラ露出時間の設定は 0.2 秒で、肉眼では見えないような星が視野にいくつも入ってきています。

キャリブレーション赤道儀のモーターを動かした時にオートガイダーの映像上でどの方向にどれだけ星が動くかを測定する作業です。これによってガイド中に星がズレた時にモーターをどの方向にどれだけ回すかが決定できるようになります。

Shft + ガイド開始ボタンクリックでキャリブレーションを開始すると、画面の適当な星がガイド星に選ばれて画面下のステータスバーに West step がカウントアップしていくのですが、途中で止まってしまい「赤経(RA)キャリブレーション失敗: ガイド星が十分に動きません」というエラーが出てしまいます。

何度やっても同じです。ガイド星自体は動いていますし、スカイメモS の方は PHD2 の信号に反応しているらしく、キャリブレーション中はコントロールボタンのバックライトが小刻みに点滅しています。

解説サイトで、ノイズがガイド星に選ばれてしまうせいでガイド星が動かなくてエラーになることがあると読んだのを思い出して、手動でガイド星を選択したのですが、ダメ。手動で選んだのもノイズなのか?とダークライブラリ*1 を作成してやりなおしたけどやはりダメ。

よく考えたらキャリブレーション中にガイド星が少しは動いていたのだからノイズなわけがないのですが、この時は気が付きませんでした…

極軸が合ってないのが悪いのかと思って PHD2 のツールメニューからドリフトアライメントを選択したら「ドリフトアライメントを開始する前にキャリブレーションをして下さい。」のエラー。これも考えれば当たり前です。ドリフトアライメントでは実際に1軸ガイドを行うわけですから。

改めてマニュアルをよく読むと、キャリブレーションステップサイズというパラメータの設定が必要になる場合があるとのこと。これはキャリブレーションの1ステップでどれだけモーターを回すかを決めるパラメータでしょうか。これが小さすぎるとキャリブレーション中に星が十分動かなくてエラーになるようです。

キャリブレーションステップサイズを設定するには、まず怖くて触りづらい脳みそアイコンを押して設定画面を開きます。PHD2 の設定画面を出すボタンのアイコンは歯車ではなくてなぜか脳みそです。それもカラーの。

https://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170313/PHD2-brain-button.png

設定画面の [ガイド] タブを開いて、

https://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170313/PHD2-settings-guide.png

Calibration グループのキャリブレーションステップ入力欄横の [計算...] ボタンをクリックします。するとこんなダイアログが開きます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170313/PHD2-settings-guide-calc.png

ここでガイドスコープの焦点距離とオートガイダーのセンサーのピクセルサイズを入力すると(他の欄はデフォルト値のままだったと思う) 適切なキャリブレーションステップの値が計算されて [OK] ボタンを押すと先ほどの入力欄に入力されます。

QHYCCD miniGuideScope + QHY5L-II-M の場合は、ガイドスコープの焦点距離が 130mm, センサーのピクセルサイズは 3.75μm で、キャリブレーションステップサイズは 1700 と計算されました。

この値で設定画面も [OK] してキャリブレーションをやりなおすと、今度は West step が終わると East step に進むようになりました!が、その後 North step とか言い出してエラーに。スカイメモS は赤緯軸ガイドできないからそこはキャリブレーションしようがないのですが…

どうも初期設定で何か間違えたのか赤緯軸がないことが PHD2 に伝わってなかったようです。設定をどう直せばいいのかマニュアルを見てもなかなかわからなかったのですが、結局脳みそボタンの設定画面の [Algorithms] タブの赤緯グループの最初のドロップダウンメニューを [無し] に、赤緯(Dec)ガイドモードを [Off] に設定すればよいようです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170313/PHD2-settings-algorithms.png

これで無事キャリブレーションが完了してガイドが開始するようになりました。オートガイダー接続から 2 時間かかりましたが、ここから先は順調に進みました。ドリフトアライメントは 30 分くらいで完了。

テスト撮影は、とりあえずファインダーなしで導入しやすい天体ということで、西の空の高くにあったアルタイルをターゲットにしました。オートガイダーを電子ファインダーとして使うつもりでしたが、視野が狭すぎて使えないことがわかったので…

レデューサーありの 288mm (フルサイズ換算 576mm) と、なしの 480mm (フルサイズ換算 960mm) で 60 秒露出で撮影。288mm は 4 枚中 3 枚は星像がほぼ点像に、480mm はどれも赤経方向に少しブレていてなんとか使えそうなのが 5 枚中 2 枚という結果に。288mm の方は 120 秒露出も試してみましたが贅沢を言わなければ使えそう?という感じ。*2

PHD2 のガイドグラフを見ると RMS エラーが ±2 秒ぐらい、ピークは ±4 秒くらい。心配した赤緯方向のズレは極軸をきちんと合わせてあればこのくらいの露出時間ではほとんど問題にならないようです。

というわけで 288mm は使えそうという結論になったところで、せっかくだからと深夜に馬頭星雲を撮ってみることにしました。満月が出ていて条件はかなり悪いのですが 60 秒露出でチャレンジ。前回の倍の露出時間です。結果は…

馬頭星雲 (2016/10/16 02:37)
馬頭星雲 (2016/10/16 02:37)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 800, 60s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

前回よりはマシでポニーヘッドも見えてきましたが、まだまだ露出が足りませんね。月明かりで背景が明るいせいであまりきつい強調処理もかけられませんでした。この後朝方までかかって M42 や M1 も撮ったのですが寝不足のせいでミスを連発。新月が近付いた頃に再チャレンジすることを誓って撤収しました。(つづく)

続き:

*1:オートガイダーのセンサーのダークフレームを露出時間毎に記録したもの。これを作っておくと PHD2 がノイズキャンセルに使用する。

*2:どうもこの時はコンディションがあまり良くなかったようで、その後のテストでは 480mm でも使えそうな感触を得ています。参照: 「スカイメモSの追尾精度の限界は? - Deep Sky Memories」。