Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

オートガイダー導入記 (8): 低感度で撮った方がよい?

前回の続きです。

土曜(昨年11月5日)の撮影では、野外ということで長時間立つかしゃがむかの姿勢での作業が続いたので、翌々日の月曜になっても筋肉痛がとれなかったのですが、それであきらめるには月曜の夜の天気は良すぎました。結局我慢できずに再び機材を抱えて出撃。

ターゲットは前回撮りそこねたプレアデス星団(M45)と、かに星雲(M1)と、ふたご座の散開星団 M35。M35 は今回初めて撮りました。露出は 90 秒、光害カットフィルターは LPS-D1 QRO 使用。他にも撮りたかったのですが後述する理由でこれだけに。

まずプレアデス星団

M45 (2016/11/7 23:53)
M45 (2016/11/7 23:53)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 200, 90s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算597mm相当にトリミング

プレアデス星団は青い星雲がどこまで写るかが勝負どころですが、フィルターありの 90 秒だと露出はかなり不足気味でした。でも、メローペの周りの刷毛ではいたような星雲の形はわかります。

次はかに星雲

M1 (2016/11/8 00:29)
M1 (2016/11/8 00:29)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 200, 90s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

かに星雲の「かに」というのは星雲の中から八方に広がる赤いフィラメント状の構造をカニの足に見立てたものだそうですが、その肝心の赤いフィラメントはうっすらとしか写りませんでした。やはり露出不足気味。

最後に M35。

M35 (2016/11/8 01:12)
M35 (2016/11/8 01:12)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 7枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算597mm相当にトリミング

青い星が多い星団ですが、右下にある黄色い星が集まった小さな散開星団 NGC2158 との対比が面白いところです。星団はこのくらいの露出の方が星の色味も残っていいかな、と思いつつももう少し露出をかけて NGC2158 の微恒星をクッキリ出したい気も。

ところで M45 と M1 の写真、ISO 感度が 200 になっていますが、これは作業ミスのせいです。

前回フラットを撮れなかったのですが、iPad を忘れて撮れなかっただけでなく、ターゲットを変えた時にカメラを回転させたのにその前にフラットを撮るのを忘れていたというミスもやらかしています。*1

そこで今回は忘れないように最初にフラットを撮ったのですが、その時 ISO 感度を 200 に設定していて、それを ISO 1000 に戻し忘れていたのです。フラットを ISO 200 にしているのはフラットのノイズを減らしたいのが理由ですが、あまり意味はないのかも。

M35 の撮影中にそれに気付いてあわてて M1 と M35 は ISO 1000 で撮り直したのですが、M45 は時間がなくて撮り直せませんでした…

しかし、ISO 200 で撮ったものを DSS で処理して Lightroom で露光量をプラス補正すると、以前 ISO 1000 で撮ったものと比べても遜色がありません。M1 も M35 も同様。時間がなくて枚数を減らしたのとガイドエラーの違いもありそうなので断定はできませんが、M1 については ISO 1000 の方がフィラメントの細部が潰れているように見えました。

M1 (2016/11/8 01:28)
M1 (2016/11/8 01:28)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 7枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

そういえば低感度で長時間露出した方がよいかも、という話は以前 HIROPON さんが書いていました。

要は、デジカメで ISO 感度を上げるのはセンサーから出た信号を増幅してるだけで、元々の信号自体はセンサーに届いた光の強さが同じなら変わらない、つまり感度をいくら上げても写らないものは写らない、なので露出(EV値)が同じなら低感度で長時間露出した方がより暗い星まで写るはず、という話です。

では、低感度で同じ露出時間の場合は? 上の記事には書かれていませんが、理屈の上では画像処理でプラス補正しても高感度で撮るのと意味は同じ、画像処理アルゴリズムの違いしか出ないはずです。

センサーの出力から RAW データの記録までの間の信号処理でノイズ除去などを行っているのなら、低感度で撮影して露出不足の画像では絶対値の小さい出力は消えてしまう可能性もあるのですが、逆に高感度ほどより強いノイズ除去がかかるような処理になっているなら低感度の RAW の方がよい、ということになります。オリンパスの RAW はそうなのかも?

しかし、通常の RAW 現像で強いプラス補正をかけると暗部のカラーバランスが崩れる(マゼンタ色のカブリが出る)ものなのですが、今回はそれがなかったのが不思議。と思ったのですが、天体写真だとダーク減算をするのでダークノイズ由来の色カブリがキャンセルされるということでしょうか?

そんなわけで今後は ISO 200 でより長時間の露出を目指すことに。

すっかりオートガイダーの話ではなくなっていますが… ちなみに今回の本来の目的、オートガイド用のノート PC のバッテリー持続時間の改善については、2時間半弱の撮影でバッテリー残量が30%近くあったので3時間くらいは撮影できそうだと確認できました。オートガイド撮影用途でも省電力設定は有効なようです。(つづく)

続き:

*1:接眼部の工作精度のせいか光軸がセンサーの中心から少しズレてしまっているので、カメラを回転すると周辺減光の中心位置が変わってしまうため、カメラを回す前後でフラットを撮っておかないといけない。