前回の続きです。
前回、低感度長時間露出がイケてるかも?という話をしましたが、その後原則 ISO 200 で 3 〜 5 分の露出で撮るようになりました。1軸ガイドなので赤道儀の極軸合わせはだいぶシビアになりますが、時間さえ惜しまなければ 288mm (フルサイズ換算 576mm) でほぼ失敗なしの精度まで追い込むことができます。
しかし、天体の導入時にはどうしてもクランプフリーで操作せざるを得ないので、クランプの緩め・締めで極軸がズレてしまうことがあるようです。1枚目の撮影中にガイドグラフを見て判断して、ダメなら再調整して撮り直しです。
極軸の精度は 5 分間で累積する赤緯方向のズレが 288mm なら 4 秒角以下、480mm なら 2 秒以下、を目標に追い込んでいます。これで各カットの星像はほぼ真円になるのですが、コンポジットすると背景のノイズが各カット毎に少しずつ赤緯方向にズレていって、ノイズが引きずったような縞模様になって目立ってしまうことがあります。
こういう縞ノイズを避けるには各カット毎にランダムに望遠鏡をズラしてノイズの位置を拡散させて目立たなくするとよいのですが(いわゆるディザリング)、スカイメモ S でそこまで器用なことはできないので 4 枚毎に赤緯微動をほんの少しだけひねって写野をわずかにズラすようにしています。これでもだいぶマシになります。個人的にはこれを「なんちゃってディザリング」と呼んでいます。
そんなふうにして撮った天体のうち、オートガイダー導入のきっかけにもなった赤い星雲の写真を以下に。カメラはいずれも無改造の E-M5 です。
まず、ばら星雲です。
ちょっと周りの星に負け気味の写りではありますが、ちゃんとバラには見えています。
次は、馬頭星雲。
派手さはないものの、ポニーヘッド部分がクッキリ浮かび上がりました。
最後に、わし星雲(または「かもめ星雲」)。
こちらは前の二つよりはだいぶ淡い星雲で、無改造のカメラでは冬の銀河の星々に埋もれてしまってかなり厳しいです。
ということで、個人的には、わし星雲以外はそこそこ満足しています。オートガイダー導入が秋だったので北アメリカ星雲はまだ撮っていませんが、この分なら期待できそうです。
ちなみにどれも処理前の写真の背景の濃度は 50% くらいになります。ホワイトバランスのみ調整したものがこれです。
光害カットフィルターを付けてこれです。つらい… こういう状態で露出時間を伸ばして正味の光量を増やそうとすると最低感度で撮るしかないのです。
もっと露出時間を伸ばしたらどうなるか、まだ試していませんが、E-M5 は 12bit RAW ですし、これ以上伸ばしても画像処理後の階調が狭くなりすぎてダメかなと思っています。明るい恒星の白飛びも既に激しいですし。(つづく)
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