Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

M100 (2018/2/23)

昨夜は久々の快晴。GPV の予報は朝まで晴れ、月齢は7.6で深夜からは春の銀河が狙えるということで、夕方からそわそわしていました。が、この日は睡眠不足で猛烈に眠く、この状態で重いもの持ったり機械を操作したりするのは危険と思い、21時の帰宅でしたが目覚ましをセットしてすぐに仮眠。23時に目覚ましで起きてさっそくベランダに機材を設置しました。

今回はSX2赤道儀でのオートガイドの試験を兼ねてかみのけ座のフェイスオン銀河 M100 を撮ることにしました。8cm F6 の直焦点、光害カットフィルター使用で15分露出にチャレンジです。

SX2(というかSB10)で撮影するには事前に色々設定が必要です。SB10のメインメニューから「架台の設定」画面を出して以下の設定をしました。

架台の種類
デフォルトでは「極軸を合わせていない赤道儀」ですが、「極軸を合わせた赤道儀」に設定しました。こうしないと追尾中に常に赤道儀側で補正動作が入るためオートガイドに支障が出るとのことです。ドリフトアライメントの際も赤緯方向の追尾を止めないといけないのでこの設定でないとダメなはず。
子午線超え
「強制追尾停止」と「鏡筒反転メッセージ」を「Over 30º」に設定しました。子午線超えから2時間は反転せずに追尾を続ける設定です。もう少し伸ばした方がいいかな?今回は南中前から合計2時間の露出の予定なのでとりあえずこれで。
方向キー
デフォルトでは「高度方位」ですが、フレーミングしやすいように「赤経赤緯」に設定しました。が、今見ると「X-Y」に設定するよう推奨されてますね… ガイドがいまいち安定しなかったのはこれが原因?

今回は15分露出なのでカメラの方も設定が必要でした。E-M5 の BULB はデフォルトでは8分で強制的に切れてしまいます。カスタムメニューの「E.露光/測光/ISO」の「BULB/TIMEリミッター」を「30分」に設定しておきました。

PHD2 の方も SX2 用に「機器と接続」画面から新規に機器プロファイルを作成。既存のプロファイルで使っているカメラを指定してもダークライブラリは引き継がれず作りなおしになって手間取りました。

ここまで設定していつものように PHD2 でドリフトアライメントを開始しようとしたのですが、その前にキャリブレーションに失敗。ガイドカメラの映像を見ると星がどんどん流れていて何事かと思ったら、どうも追尾が止まっていたようです。

SB10 がいつのまにか CHART MODE に入っていたようでそのせい?よくわかりませんがとりあえず ENTER キーで SCOPE MODE に戻してレグルスを自動導入してから方向キーで望遠鏡を赤道付近に動かして、ドリフトアライメントを開始。

どういうわけかドリフト中のガイドグラフがかなり暴れていて不安に駆られます。RA の RMS が2秒超えだったり、DEC もずいぶん乱れて調整しにくいことこの上なし。スカイメモS よりひどいような… 大丈夫か?風はほぼ無風で望遠鏡が揺れてるわけでもなさそうで謎です。

慣れない架台で手間取りましたが50分ほどかけてそこそこ追い込めたかな、というところで極軸調整は終わりにしました。あとは2軸ガイドでどうにかなるはず… 時刻は0時50分。ちょうど月が沈んだ頃です。

M100 は自動導入で導入するつもりで今回は周囲の星の並びとか予習してきませんでした。まず自動導入でアークトゥルスを導入しましたが写野外になってしまって、目視で狙いを定めてなんとか写野内に導入してアライメントを取りました。

そのままバーティノフマスクでピント合わせ。シンチレーションが大きくていまいちピントに自信が持てなかったのですが、今回はオートガイドのテストと割り切って適当なところで切り上げました。

そしていよいよ M100 を導入。カメラのライブビューでは全然見えないので60秒露出で試し撮りすると、写野中心から西にズレた位置にうっすらと星雲状の像が写っていました。方向キーでフレーミングを調整したのですが、速度が速すぎるし、キーを離しても慣性が残っていてすぐオーバーランしてしまって苦労しました。これは後で調整しなくては…

1:14、なんとか南中前に撮影が開始できました。心配していたガイド精度はオートガイドが始まると落ち着いてきて両軸ともRMSエラーは1.0秒前後で安定。30分経過してもしっかり追尾しています。

ただ、赤緯方向の修正動作が思ったより頻繁に発生しているのが気になりました。プラスマイナス両方に修正が入っているので極軸のズレによるものだけではなさそう。5分以内のスパンで見ると赤緯のエラーはスカイメモSの1軸ガイドより大きいくらいです。

ターゲット表示では半径2秒の参照円内に大半が命中しており、追尾精度はスカイメモSの倍くらいでしょうか。でも、もう少し精度が良いかと思っていたのですが… 途中赤緯の振れ幅が増大して RMSエラーが1.5秒弱まで増えることもあり、架台の性能をフルに出せているのか疑問です。

ガイドパラメータは、赤経が「ヒステリシス」でヒステリシス10、積極性75、最小移動検知量0.20、Max RA duration 2500、赤緯が「レジストスイッチ」で積極性100、最小移動検知量0.20、大きな変位に対する高速切り替え有効、Use backlash comp 無効、Max Dec duration 2500、赤緯ガイドモード Auto です。赤経の積極性を少し上げた以外はデフォルト値です。

とはいえ、スカイメモSで赤緯軸方向のズレがどれだけ膨らむかハラハラしながらガイドグラフを眺めていたのと比べるとずっと楽なのは確かです。撮影を中断して極軸の再調整とかしなくていいし…

そんなこんなですが、子午線超えも無事通過してトータル2時間露出の撮影は大きなトラブルもなく終了。赤道儀の電源を切ってフラットとダークを撮って薄明前の4:36に撤収完了。

赤道儀とカメラの電池が足りるか心配でしたが、どちらも大丈夫でした。SG-1000 の残量は GOOD、カメラの方も目盛2つ残った状態で余裕です。

結果はこれです。

M100 (2018/2/24 01:14)
M100 (2018/2/24 01:14)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 8コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.28, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

うずまき… いいですね。二本の腕の微細な構造も見えてきています。巻いている腕の外側に淡く広がった部分はさすがに写っていませんが、横浜の空ではこれが限界ですかね。

赤緯方向のガイドエラーが多めだったせいで若干星像が縦長ですが、許容範囲でしょうか。ピントは結局大丈夫でした。ノイズが多めですがこんなものですかね… コンポジット枚数を増やしたいところですが、16枚なら4時間… 一晩で撮るのは厳しいかも。

ということで、初めての2軸オートガイドはうまくいきました。これならレデューサーなしの直焦点で色々狙っていけそうです。