Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

M5, M20 (2018/4/21)

4月21日は朝から快晴。予報では翌朝まで快晴ということで月が沈む深夜からは天体撮影日より。相変わらず空の透明度が微妙なのが気がかりですが、リハビリも兼ねてやるだけやってみるという気持ちで20:00頃からベランダに機材を出して撮影準備。

深夜から薄明前にかけて M20 (三裂星雲)を撮るつもりでいたのですが、それまでに何か撮ろうと思ってマルカリアンチェーンを撮ってみることにしました。フルサイズ換算 960mm 相当だと写野ぎりぎりいっぱいの対象なので構図合わせに神経を使います。

21:00頃に試し撮りしたところ12分30秒の露出で背景輝度は68%でした。月がまだ出ているせいか光害のせいもあるのか高度の割に背景が明るいのですが、ぎりぎりなんとかなりそうなので撮影続行。

最初カメラの電源をOFFにしたまま撮影開始してしまったのですが、今回はたまたま PHD2 の手動ディザ撮影を試そうと思って1枚ずつ撮っていたため1回分のタイムロスで済みました。気を取り直して撮影開始してまず1枚撮影したのですが、ガイドが安定しません。それをなんとかしようとしてやらかしてしまいました。

まずキャリブレーションをやりなおし。次にオートガイダーの露出を0.5秒から1秒に変更。これはシーイングの影響で星像がふらつくのにつられて右往左往するのを抑止するためです。少しマシになったのですが、まだ安定しません。

ひょっとしてアライメントしたのが悪影響を与えているのか?と思ってSB10からアライメントデータを全部削除してみたのですが、なぜか追尾が止まってしまいました… 再開する方法がわからずあたふたしているうちに星は流れていきます。

結局適当な恒星を自動導入すると恒星時追尾が再開したのですが、再度マルカリアンチェーン(というか M86)を導入しようとすると SB10 が鏡筒を反転しはじめました。 M86 が既に子午線を越えていたので telescope-west では導入できなくなっていたのでした。

telscope-east になってしまうとカメラが逆さになってしまうので接眼部を回転させる必要があります。が、今回は先にフラットを撮っていたのに接眼部を回転すると撮り直しになってしまうし、ピントも合わせ直しだし、後で三裂星雲を撮るときはまた telescope-west に戻すので、また諸々やり直しです。

面倒すぎるし、トラブルの元なので、もうマルカリアンチェーンはあきらめて他の天体を撮ることにしました。それで撮ったのがへび座球状星団 M5 です。

M5 (2018/4/21 23:09)
M5 (2018/4/21 23:09)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

M5 は昨年撮ったのであまり乗り気でなかったのですが、撮ってみると結構満足できました。光害カットフィルターを使ったおかげで背景の処理がやりやすくなったし、スカイメモSに比べるとガイド精度がよくなっている分、微光星までよく写っています。

M5 は RAW を見ただけでもよく写っているのがわかったので気をよくして三裂星雲の撮影にとりかかりました。1:30頃に試し撮りした段階ではさすがに高度も低く背景が明るかったのですが、それでも RAW を Lightroom でちょっといじっただけでも三裂星雲がクッキリと写っていて期待が持てます。

M5 は淡い部分がない球状星団なのでディザはやりませんでしたが、三裂星雲は手動ディザをやりました。でも12分毎の作業はせわしないし時間も余計にかかるので、2枚おきにディザを実行しました。結果は…

M20 (2018/4/22 01:42)
M20 (2018/4/22 01:42)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

縮小画像だとわからないのですが等倍で見ると「縮緬ノイズ」が出てますね… やっぱり1枚ずつディザしないとダメなのかも?まあ、普通に鑑賞する分には目立たない程度なので良しとします。三裂星雲はレデューサーなしで撮ったのは初めてです。意外と小さい星雲なのでクローズアップで撮れて満足です。

もう少し露出をかけたかったのですが、背景輝度は既に70%前後だし、そもそも12分露出で8枚撮ると天文薄明開始ギリギリまでかかったのでこれ以上露出を伸ばすと一夜では撮れません。長時間ガイドできればFが暗くても撮れると思っていましたが、なかなかそういうわけにはいかないですね。

上の写真はいつものようにトリミングで2倍近く拡大したもので、トリミング前はこんな感じでした(スタックがズレて重ならない分少しトリミングしています)。

M21, M20 (2018/4/22 01:42)
M21, M20 (2018/4/22 01:42)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1000mm 相当にトリミング

散開星団の M21 も写野に入っていますが、フラットナーなしなので結構星像がのびてしまっています。M21 と三裂星雲をバランスよく写野に入れようとすると両方共星像が悪くなってしまうので三裂星雲中心の構図にしました。

なお、ガイドの方は M5 を撮る前に極軸を再調整して(方位が少しズレていた)、アライメントは取らずに運転したところ、その後はかなり安定。赤経赤緯共にRMSエラーは1.0秒前後。

アライメント取らないのが効いてる?そんなことってあるんでしょうか?それとも高度が低めの対象なら安定して高度が高いとダメとか? BLANCA-80EDT の三脚座は構造的に柔いので姿勢によって安定しないということはありそう。ちゃんとした鏡筒バンドで固定したら安定するのかなぁ…

2月の M100 以降は自分のただでさえ低い志の目で見ても満足できない写真しか撮れずかなり落ち込んでいましたが、久しぶりにまともに Deep Sky を撮れました。これからも失敗してもあきらめずに天文を続けていきたいと思います。