昨夜は深夜から ADC の補正を有効にして木星を、その後2:00頃から土星と火星の撮影をしました。ADC のテストを兼ねているのでカラーカメラのみで撮影しています。
ADC (大気分散補正プリズム)ってなんだかめんどくさそうだしパスしようかなーと思っていたものの、さほど高価なものでもないし「後悔は買ってからすればよい」*1 と思って勢いで買ってしまったわけですが、結論から言うと、意外とテキトーに使ってもそれなりに効果が出るので買って損はない、と思います。
先に結果から。まずは土星。
カッシーニの間隙がやっと写りました!って、写ってますよね?画像処理のアーティファクトとかじゃないですよねこれ?
土星は2:00頃から撮っていたのですが、高度が低いうちはいまいちシャープさに欠けて、A輪とB輪の間の段差みたいなものは写るんですが「隙間」は写りませんでした。3:00過ぎて高度が上がってやっと写りました。
カッシーニの間隙は2xテレコン付きで接続したデジカメの拡大ライブビューで「電視」するとギリギリ視認できたことがあるのですが写真にはっきり写ったのは初めてです。木星表面の縞模様も見えていますが、これもデジカメのワンショットではほとんど写りませんでした。
次に火星です。まだまだ高度も低いし、距離も遠いのですが、どの程度写るものか試してみました。
うーん、まだまだですね… プレビューでは像がむちゃむちゃ揺れて模様を見るどころではありませんでした。表面の濃淡はなんとなく見えていますがなんだかよくわかりませんね。もう少し高度が上がってから撮ったものもあるのですが、露出オーバーになってしまって火星の明るい部分が飽和してしまったのでボツに。
土星も火星も ADC で適当に補正を入れて、さらに Registax 6 の RGB Align で赤と青のチャンネルを少しずらしています。火星の方は像が小さい上揺らぎがひどくて ADC の調整ができそうになかったので、土星で調整した状態のままで撮りました。
ADC があるのに RGB Align を使っているのは、以前も触れたように原因はよくわからないのですが光学系に問題があって大気色分散がなくてもわずかに色ズレが発生しているからです。直焦点撮影だと1pxあるかないかのズレでほとんど問題にならないのですが、2倍以上に拡大すると目立ってきます。今回の撮影だと水平方向のズレになっていました。
RGB Align で色ズレが補正できるなら、ADC なしで RGB Align だけでも十分じゃないか?という疑問は当然あるのですが、そのあたりを木星で検証してみました。
まず ADC をゼロ補正の状態で撮ったものがこれです。
木星はほぼ南中していて、画像の垂直方向の色ズレが大気色分散、のはずです。それにしてはちょっとズレが大きいような… 光学系の色ズレの分も入っているのかも?
ADC の補正を入れるとこうなります。
垂直方向の色ズレが明らかに軽減しているのがわかります。
では、ADC 補正なしの画像を RGB Align で修正するとどうなるでしょう?
こうなりました。やや眠い感じがするのですが、ADC 補正ありの時とシーイングが違った可能性もあるので判断しかねます。
最後に ADC の補正ありで光学系の色ズレを RGB Align で修正したものがこれです。
やっぱりこちらの方がクッキリしてますね。最終的には色収差のない反射系の光学系で繰り返し撮影して検証したいところですが、暫定的には「ADC は意外と手軽に効果が得られるし、RGB Align 以上の効果はある」という結論です。
ADC はプリズムの向きを水平に保つ必要があるため、長時間の撮影や撮影対象の切り替えで望遠鏡の向きが変わると ADC を回転させなくてはならなくなり、カメラの向きの再調整が必要になったり、補正量の調整中に像の位置がズレてしまってそれを追いかけるのに苦労したり、*2 それなりに手間はかかりますが、使って損のないアイテムだと思います。
*1:参照: アイサツ・コトワザ・ヤクザスラング・感嘆詞・掛声 - ニンジャスレイヤー Wiki*
*2:ズレないように調整しろとマニュアルにはあるのですが、どうしてもズレてしまいます…