Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

速報: ポン・ブルックス彗星(12P)撮れた (2024/3/29)

3月29日は台風みたいな強風が吹き荒れてガクブルしてたのですが、夕方からまるで台風一過みたいな快晴に。SCW の予報でそうなるのは知っていたのですが、風もまだ強いし、黄砂が来てるとかで意外と透明度も低いしどうしようかなと思っていました。

が、明日は用事があるし来週も忙しいしでここを逃すとしばらくチャンスがないということで、自宅マンションの廊下からポン・ブルックス彗星を撮りました。前回はなかなか厳しい写りで「撮れた」とは言い難い出来だったのでリベンジです。

今回は、どうせ長く伸びた淡い尾は写らないだろうから、尾の根本あたりだけでもしっかり撮ろうと RedCat 51 でクローズアップ気味に撮ることにしました。

日没前から準備を始めて日没前後には西の空の霞もだいぶ晴れてなかなかの透明度に。

空が暗くなるのを待っていると、18:30過ぎからガイドカメラに星が写るようになってきました。フルサイズ換算500mmですからさすがに極軸はある程度追い込まなくてはならないので、PHD2 のポーラードリフトアライメントで極軸合わせをしようとしたのですが、その前になかなかキャリブレーションができなくて往生しました。

西の空はまだ明るいるので北の空でガイド星を捉えたのですが、移動量が少ないせいでキャリブレーションに時間がかかり、その間に強風に煽られてガイド星が飛びまくったりしてキャリブレーションに失敗します。

結局西の空が暗くなるのを待ってから西の空の星でキャリブレーションしてから極軸を合わせました。ピント合わせも薄明が残る空に強風という組み合わせでは SharpCap のバーティノフマスク支援ツールの精度が悪くなるようで、結局目視でピント合わせしました。撮影開始は19:15頃。

導入はハマル(おひつじ座α星)を目印に導入したら一発でした。プレビューでも尾がうっすら見えてそうな感じで彗星らしい姿がはっきりわかりました。

強風ということもあって15秒露光で大量に撮る作戦だったのですが、10分足らずで低空に雲が出てきてそのままゲームオーバーになってしまいました。とはいえプレビューであれだけ見えたならそれなりに写っているのでは?ということで処理してみたのがこちら。

ポン・ブルックス彗星(12P)とハマル (2024/3/29 19:22)
ポン・ブルックス彗星(12P)とハマル (2024/3/29 19:22)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折), ZWO IR-Cut Filter / Sky-Watcher Star Adventurer GTi, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.13 による自動ガイド / ZWO ASI294MC Pro (Gain 200, -10℃), SharpCap 4.1.11824.0 / 15秒 x 25コマ, 総露出時間 6分15秒 / PixInsight 1.8.9-2, Lightroom Classic で画像処理

うっすらながら尾が写りました!これだけ写れば撮れたと言ってよいでしょう。左下の明るい星はハマルです。黄色っぽいハマルと緑色の彗星の取り合わせがナイス、と自画自賛。でも構図がちょっと変ですよねぇ。もう少し短い筒、もしくは大きいセンサーで撮るべきだったか… どっちも持ってませんが…

白黒反転画像も作ってみました。

ポン・ブルックス彗星(12P)とハマル (2024/3/29 19:22) (白黒反転)
ポン・ブルックス彗星(12P)とハマル (2024/3/29 19:22) (白黒反転)
撮影データは上に同じ。

尾の構造がなかなか複雑なのがわかります。ふわっとしたダストテイルは上の方に曲がって流れています。イオンテイルは根本で二股に分かれて、一方は長くたなびいて、もう一方は鋭く短く伸びています。

画像処理は PI の CometAlignment ですが、露光時間が短く、彗星の移動速度もゆっくり目だったようで、彗星だけ画像を作ったつもりが星がほとんど流れないせいで星もはっきり写った画像になりました。

等倍で見ると星像がかなり乱れていますが、これは風のせいでガイドが荒れ気味だったからだと思います。まあ、通常の鑑賞距離で見る限りは気にならないので良しとします。

ということで、正直無理かなーと思っていたのですが、横浜の空でこれだけ写れば満足です。頑張って撮ってよかったです。

Galaxy Annotator v0.9.4 をリリースしました(仕様変更、機能追加版)

銀河専用アノテーションツール Galaxy Annotator v0.9.4 をリリースしました。前回のエントリで予告した銀河名出力の設定機能の追加とそれに伴う仕様変更です。

leda-votable-to-galaxy.py の --resolve-order オプションで銀河名が複数ある場合に name に出力する銀河名の優先順位を指定できるようになりました。

v0.9.3 までは HyperLeda のデータベースの objname フィールドにある値をそのまま出力していましたが、ここにはメシエ番号の名前が入っていないので、メシエ天体でも NGC ナントカで出力されてしまい、わかりにくいという問題がありました。

v0.9.4 からは、デフォルトでは --resolve-order M,NGC,IC,PGC を指定したのと同じになります。すなわち、メシエ天体であれば「M31」のようにメシエ番号の名前を、メシエ番号がなくて NGC 番号があれば「NGC253」のように NGC 番号の名前を、NGC 番号もなくて IC 番号がある場合は「IC342」のように IC 番号の名前を、それもなければ「PGC13696」のように PGC 番号の名前を galaxies.json の name フィールドに出力します。

メシエ天体以外でも以下の点で v0.9.3 までとは挙動が変わります。

  • デフォルトでは M,NGC,IC,PGC 以外のカタログの名前が出てこない(はず)
    • 今まで「UGC02838(PGC13696)」のように出力されていたのが「PGC13696」になる。
    • 今までと同じようにしたい場合は --resolve-order NGC,IC のように M と PGC 抜きの優先順位リストを指定すれば OK なはず。
  • 番号の冒頭の 0 を出力しないようにした。
    • 今まで「NGC0253」だったのが「NGC253」になる。

また、注意点として、v0.9.2 までの leda-get-votable.py で取得した votable.xml は使えないので、以前のデータでアノテーションをやり直す時は votable.xml の取得からやりなおす必要があります。

これは v0.9.2 までは HyperLeda から銀河の別名のフィールドを取得していなかったためです。v0.9.3 でこっそり別名のフィールドも取得するようにしたため、v0.9.3 で取得した votable.xml は大丈夫です。

また、対応する Python のバージョンが 3.6 以降になりました。これはリリースノートには書き忘れていましたが、v0.9.3 から既にそうです。文字列出力で F-string を使うようになったのが理由です。実は古いバージョンの Python での動作テストまではしていないので、python 3.10 以降くらいで使うのが安心かもしれません。

ポン・ブルックス彗星(12P)と M31 (2024/3/16) / フラット合わない地獄 / Star Adventurer GTi 復活

3月16日、自宅のマンションの廊下からポン・ブルックス彗星(12P)と M31 のツーショットを撮りました(撮れたとは言わない)。

撮影

当日は雲ひとつないと言っていいほどの快晴でしたが、大気の透明度は最悪で、低空に雲もないのに富士山が霞んでほとんど見えず、昼間は冠雪して輝く稜線がなんとか見える程度の状態。夕方は霞が夕日に照らされて何も見えない状態でした。

近くには月齢6.0の月も出ているし、正直写るとは思ってなくて、でも撮らずに後悔するより撮って後悔しようという気持ちで撮りました。

機材は Micro NIKKOR 55mm F2.8 と ASI294MC Pro です。カブリが厳しすぎて画像処理耐性の低いデジカメでは無理だろうと思って冷却CMOSです。画像処理耐性という点では ASI294MM Pro が上ですが、撮れる時間が限られていてフィルター切替えで撮るのは厳しいだろうということでカラーカメラにしました。

18:00前からスタンバイしていたのですがまだ薄明が強く、18:40くらいにやっとポーラードリフトアライメントができるようになりました。導入はミラクを自動導入して、事前に Stellarium で決めた構図に合うよう調整しました。

光害のカブリがひどく、露出はゲイン128で1コマ15秒。プレビューで軽くストレッチをかけるとギリギリ M31 の中心部が楕円形に見えて、等倍表示にすると 12P がギリギリ恒星とは違う姿で確認できました。彗星であることはわかるものの尾は全然見えず。

近くの電柱が写野に入るまで撮影して19:00過ぎに撮影終了。総露出時間は11分。そのあとついでで木星を中心に入れた星野の写真も撮りました。

結果

結果は… 後述しますが画像処理は大変でしたが、無理やり仕上げたのがこちら。

ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56)
ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56)
Micro NIKKOR 55mm F2.8 (開放) + ZWO 2" IR-Cut Filter / Sky-Watcher Star Adventurer GTi / ZWO ASI294MC Pro (Gain 128, -10℃), SharpCap 4.1.11824.0, 露出: 15秒 x 44コマ / PixInsight 1.8.9-2, Lightroom Classic で画像処理

ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56) (アノテーション付き)
ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56) (アノテーション付き)

ギリギリ尾が写った、ような… 彗星らしい緑色もギリギリ出ています。M31 も、本当に中心部だけですが銀河であることがわかる程度には写っています。一応狙った構図ではありますが、M33 がギリギリ存在がわかる程度には写っていたのは意外でした。

とはいえ「撮れた」と言うのは憚られるレベルの写りですよね…

フラットが合わない

上の写真、背景ムラやカブリがひどいですが、これは本来の背景のムラというよりはフラットのムラの影響が大きいです。というのは、ついでで撮った木星周辺の星野の写真を同じように処理(PI で ABE, PCC してストレッチ)しても、画像下部の大きなカブリは別にするとほとんど同じ形のムラが残るからです。そしてフラットを変えるとムラの形が両方の写真とも同じように変わります。

上の写真は7種類くらい作って一番マシだったフラットを使って、ムラが目立たないようにトーンカーブや彩度を調整して、画面下部のカブリはグラデーションマスクで輝度と彩度を落として仕上げたものです。

撮って出しをホワイトバランス調整のみで仕上げたのがこちら。

ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56) (ホワイトバランス調整のみ)
ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56) (ホワイトバランス調整のみ)

(´・ω・`) …

最初に試したフラットは、前回同様ライトボックスアプリを開いた iPad の画面にコピー用紙を被せて撮ったものを使ったのですが、これは盛大にムラが出て、最初は低空だし霞にもこんなにムラがあったんだなーと思ってたら木星の写真を同じフラットで処理したら同じ形のムラが出て、フラット腐っとるやん!ってことで平坦なフラットを探す旅に出ました。

色々試したのですが、最終的には Kindle (電子ペーパー端末)のフロントライトの輝度を最大にしたやつをレンズ前面に密着させて撮ったフラットが一番マシでした。

その他に試したのは…

https://rna.sakura.ne.jp/share/12P-and-M31-PI-Workspace01.jpg

左上はスカイフラットを使ったもの。朝方にカメラを南西の空(快晴)に向けて撮ったものです。輝度の平坦さでは一番マシだったのですが青空を撮ったせいか色ムラがかなり目立つのでボツに。

左下と右上は有機ELパネルのタブレット(Galaxy Tab)の画面を撮ったフラットを使ったもので、左下は直接、右上はコピー用紙を被せて撮ったものです。左下の方はそこそこ平坦でしたが色ムラが無茶苦茶出てボツに。右上は雲かっていうくらいムラが出てボツに。

右下は iPad + コピー用紙、Galaxy Tab + コピー用紙のフラットフレームを全部混ぜたフラットを使ったもので、ムラの出方はだいぶ柔らかくなりましたが、ムラの輝度の幅自体はあまり変わらずボツに。

コピー用紙を透過させるのは紙の厚みのムラがフラットにも浮いてきてしまってダメですね。かといって直接撮ると液晶のピクセルに由来すると思われるモアレパターン?が浮いたり色ムラが出たり。乳白色のアクリル板とかならもっとマシなんでしょうか。

みなさんがよく使っているLEDトレース台を買おうかなと思ったのですがどれがいいのかよくわからないし、普段は iPad で十分だし、ということで保留に。そもそもここまでフラットのムラに神経質にならなきゃいけないくらいキツいストレッチをかける必要がある時点で敗北なんですよね…

Star Adventurer GTi その後

前々回のエントリで故障したと書いていた Star Adventurer GTi ですが、

なんと復活しました!有償修理の見積もりのためにシュミットに発送する前に念の為もう一度動作確認したところ、あっさり動きました。リュックに保管していただけなのですが… わけがわかりませんが、今発送しても「壊れてない」で返送されて終わりになりそうなので発送はとりやめて症状が再発したらあらためて相談することになりました。

しかしなんだったんでしょう。Star Adventurer GTi の分解レビューはほとんどみつからないのですが、この動画とかを見ても、モーターとウォームの間にクラッチ機構らしきものは見当たらないし、ウォームが外れたとかならこんな簡単に直るとは思えないのですが…

Galaxy Annotator v0.9.3 をリリースしました(不具合修正、機能追加版)

突然ですが銀河専用アノテーションツール Galaxy Annotator v0.9.3 をリリースしました。不具合修正がメインですが、機能追加もあります。

以下の二つの不具合を修正しました。

  • 写野が 0h を跨ぐ場合、leda-get-votable.py で写野内にあるはずの銀河のデータが取得されない #16
  • 写野に極が入る場合、leda-get-votable.py のSQLクエリの座標範囲指定がおかしくなるはず #17

#16 は、ポン・ブルックス彗星と M31 のツーショットのアノテーションをしようとしたら M31 がアノテーションされなくて気付きました。

HyperLeda から銀河データを取得する際に赤経赤緯の範囲を指定して取得するのですが、写野が赤経 0h を跨いでいると単純に赤経の最小・最大から範囲を作ろうとすると予期しない範囲を指定してしまいます。赤経は 0h と 24h が繋がっていますから、天球の裏側(極軸を挟んで反対側)の範囲を指定してしまうのです。

どうしたものか悩んで ChatGPT 3.5 に尋ねたりもしましたが、ChatGPT も僕と同じバグ入りのアルゴリズムを提案する始末。結局、画像の中心点の座標を WCS で天球座標に変換して、対角線を中心点経由で辿って前と後ろの赤経の差を取って二つの差の符号が異なる場合は 0h を跨いでいるので、頂点の赤経の大きい方(23h とか)から 24h を引いて負の値にして範囲指定の最小値にする、というやり方で解決しました、、、と、思います…

#17 の方は天球座標の極を WCS で画像の座標に変換して画像の大きさの範囲内に入るかどうかを見て極が写野内にあるかどうかを判断し、極が写野内にあるなら特別な範囲指定を行うようにしました。

機能追加の方は leda-get-votable.py に -m オプションを追加したというものです。leda-votable-to-galaxy.py の -m オプションと同じで等級の上限を指定することで取得するデータを絞り込むものです。画角が広いレンズで撮った写真で大量の銀河が範囲内にあってデータがなかなか落ちてこない時に使います。

実はこちらの機能追加の方が先だったのですが、実際にはデータが落ちてこない原因はバグ #16 のせいで範囲がクソデカになってたせいだったのでした…

あと、前から気になっていたのですが、メシエ番号のついた銀河についてはデフォルトでラベルをメシエ番号の名称にしたいと考えています。オプション指定方法が練れてないのでまだ実装していませんがそのうち実装する予定です。

撮影用PCの新調とテスト撮影 (追記あり)

ベランダ撮影や画像処理用に使ってきたデスクトップPCを3月2日に新しいPCにリプレイスしました。詳しくは日記ブログの方に書きました。

メインのPC(この記事を書いたりしてるPC)は Linux (Ubuntu)環境で、こちらはサブPCという位置付けです。天文用のソフトは Windows 専用のものが多いので撮影や画像処理はもっぱらサブPCでやってきました。

サブPCの CPU とマザーボードは10年近く替えていなかったのですが、さすがに性能が見劣りするようになってきて、Linux 用が実用的に使える PixiInsight については2021年にリプレイスして性能を追い越したメインPCの方で使っていました。

新サブPCが一通り動くようになってから軽くテスト撮影を行いました。USB に接続する機材が正常に動作するかの確認のためです。

が、昼間に接続テストをしていた段階でCMOSカメラを認識しないポートがあるとか、接続しても USB2 で認識されることがあるとか怪しい雲行き。テスト撮影中もカメラとの接続が切れるトラブルも発生し、翌朝以降原因調査に追われていました。

切り分けをしていくうちに以下のことがわかりました。

使えないUSBポートがある

初期不良なのかなんなのかわからないのですが、新しいマザーボード(ASRock B650 Pro RS)のリアパネルのUSBポートのうち2箇所が機器を接続しても Windows が認識してくれない状態でした。

問題のポートは、リアパネルのLANポート下にある2つの USB Type-A (USB3.2 Gen1)のうちの下の方(USB32_3)と、その隣の列にある2つの USB3.2 Gen2 のうち下の Type-C の方(USB32_TC_1)です。どちらも USB キーボードやマウスも認識せず。Type-C の方は電源だけは来ているらしく、iPhone 15 Pro を繋ぐと充電は始まりました。しかし Windows 側は認識せず。

USB3 のポートでは、リアパネルの USB32_2 と USB32_1 とフロント用の USB32_4,5 USB32_TC_2(Type-C)は大丈夫でした。

BIOS(UEFI)設定で全ポートを明示的に Enabled にしても(デフォルトは Auto)症状は変わらず。何か他のポートと排他条件があるのかと思いましたがマニュアルにもネットの情報でもそれらしき話は見当たらず…

BIOS はバージョン 2.00 で、ASRock のサイトには新しいバージョンがいくつかあり、2.02 では「Optimize USB port compatibility.」との記載もあったので、BIOS アップデートを試みましたが、アップデートに失敗BIOS の Instant Flash 機能でアップデートが開始するものの、プログレスバーが0%表示の状態でいきなり再起動してしまいます。再起動と言っても起動はしなくて BIOS 画面も出ません。リセットキーを押すと正常に再起動するのですが、BIOS バージョンは元の 2.00 のまま。

BIOSTPM 関係の設定を切ったりして5回くらい試しましたが全部同じ。いきなり再起動のたびに HDD がカチャン!と鳴るので電源強制切断みたいな状態になっているらしく、機器にダメージが行きそうなので BIOS アップデートは諦めました。

ということでこの件は未解決のままです…

リピーターケーブルの問題

使えない USB ポートのことは棚上げして、使える方の USB32_2 と USB32_1 で動作確認を進めたのですが、こちらもトラブルがありました。

カメラをポートに直結する分には問題なかったのですが、5m のアクティブリピーターケーブル経由でカメラを繋ぐと Windows がカメラを認識しなかったり、認識しても不安定だったり、一度アクティブリピーターケーブルからカメラを抜き差しするとPCを再起動するまでカメラを認識しなくなったり、という様々な症状が…

使用していたリピーターケーブルはサンワサプライの 500-USB046 です。

居室のレイアウトの関係上ベランダまで USB ポートを引き出すために 5m 以上の延長ケーブルが必要なのですが、USB3 の規格上はケーブル長は 3m が上限です。そこでIC内蔵で信号を増幅して減衰を防ぐアクティブリピーターケーブルを使っていました。

信号は増幅できても電力が足りなくなるケースがあるため、このケーブルにはACアダプターをケーブルの機器側端子に繋いで給電する機能もありますが、今まではACアダプターなしでも問題なく使用できていました。

しかし新サブPCではどうも給電しないと安定しないようです。しかもPCが起動してから給電を始めてもダメらしく、一度給電を止めると後から再度給電してもカメラを認識してくれませんでした。

かといって常時給電するわけにもいかないのです。というのは、ACアダプターのケーブルが1.5mしかなく、コンセントが届かないのです。ベランダ撮影時にはテーブルタップで引っ張ってくるのですが、その際は通路や布団の上をAC100Vの線が横切る形になり、常にその状態で生活するのは厳しいです。天体撮影時に電源を接続してからPCを再起動というのも避けたいところ。

ケーブルの相性の問題もあるかもしれないということで、他のケーブルも探しました。この手の製品はあまりないのですが、UGREEN の「USB 延長ケーブル 5m USB3.0 延長 ロング USB リピーターケーブル アクティブ式 信号強化 Micro USB給電ポート付き」という製品を試してみました。

ACアダプターではなくUSB給電ならUSB2の5mのケーブルで給電できるかも、という考えです。

結果は、このケーブルなら問題なくカメラを認識しました!念の為PC側のUSB2ポートから給電するようにしましたが、給電なしでも認識しました。

なおサンワのケーブルの方も色々試した結果使えるようにする方法を見つけました。その方法というのは「ACアダプターのDCコネクタを常にケーブルに挿しておく」です。カメラ使用時には給電が必要ですが(そうしないとカメラを認識しても動作が不安定になる)、使わない時は給電しなくても大丈夫。

つまり、テーブルタップからACアダプターを外してもDCコネクタが挿さっていればカメラは認識されるようです(意味がわからない)。一度でもDCコネクタを抜くと認識しなくなります。こうなると、PC側からリピーターケーブルを抜き差しするか、PCを再起動するしかなくなります。リアパネルにケーブルを繋いで机の下にPCを入れてしまうと前者は無理なので後者になってしまいます。

ということでサンワのリピーターケーブルの方はACアダプターのDCコネクタ挿して、ACアダプターのケーブルとリピーターケーブルを束ねて養生テープを巻き付けて固定して、うっかり外れないようにしておきました。

リピーターケーブルは惑星のL/RGB撮影のために2本必要なのでとりあえずこれでなんとかなります。とはいえ、サンワのケーブルの挙動は怪しすぎるので UGREEN のケーブルをもう一本発注しておきました…

おまけ

テスト撮影で撮ったばら星雲としし座の三つ子銀河を貼っておきます。

ばら星雲 (Hα) (2024/3/3/ 22:44)
ばら星雲 (Hα) (2024/3/3/ 22:44)
高橋 FS-60CBX (D60mm f355mm F5.9 屈折), FC/FSマルチフラットナー1.04×(合成F6.2), ZWO Ha Filter 31mm / Sky-Watcher Star Adventurer GTi, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.13 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (46Megapixel, Gain 300, -10℃), SharpCap 4.1.11817.0, 3分 x 5 コマ / PixInsight 1.8.9-2, Lightroom Classic で画像処理

しし座の三つ子銀河 (R) (2024/3/4 0:38)
しし座の三つ子銀河 (R) (2024/3/4 0:38)
高橋 FS-60CBX (D60mm f355mm F5.9 屈折), FC/FSマルチフラットナー1.04×(合成F6.2), ZWO R Filter 31mm / Sky-Watcher Star Adventurer GTi, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.13 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (46Megapixel, Gain 300, -10℃), SharpCap 4.1.11817.0, 2分 x 20 コマ / PixInsight 1.8.9-2, Lightroom Classic で画像処理

FC-60CBX での撮影ですが、この鏡筒、テスト撮影ばかりで未だに実戦投入できてません。この春こそ… と思ったら、なんと Star Adventurer GTi が故障してしまいました。赤経方向の操作が不能になり、モーターは回っているものの(音がする)軸が回りません。赤緯方向は問題なし。

3月4日のテスト撮影では問題なかったのに9日のテスト撮影の際にそうなっていました。それまでリュックに保管していただけで壊れるようなことは何もしてないはずなのですが…

シュミットさんに問い合わせてみましたが、修理には保証書が必要とのこと。でも保証書、元箱やらなにやらをいくら探しても見当たらず… 開封時の写真にもそれらしきものが写っていなかったので同梱されていなかったのではないかとも思うのですが、どうしたものか…

追記(2024/3/14): Star Adventurer GTi の故障の件

シュミットさんに保証書見当たらないのだけどと返信したところ、展示品の特価販売なので保証はない、有償修理になるとのこと… マジか。購入時になんか書いてあったかな?うーむ… 修理費用によっては普通に新品買ったほうがマシだったってことになりかねない…

この開封の儀の記事でも書きましたが、届いた時の状態も結構微妙だったんですよね。なぜか電池入ってて電源スイッチ入ったままだったり、本来外さないはずのネジが外れてたり。今後は展示品は少々安くても手を出さない方がいいかなぁ…

3590黒点群 (2024/2/24)

2月24日は久しぶりに晴れ間が見えたので太陽撮影(白色光)をしました。

今月の新月期はせっかくのお天気だったのですが体調の不調等で星を撮れず、丸々一ヶ月以上天体撮影をしていませんでした。やっと少し体調が回復したと思ったら天気も月齢も悪く…

と思ったらデカい黒点が出ているとのニュース。この天気では無理だなと思ったら久々の晴れ間が見えたので干していた洗濯物をどけて撮影しました。お目当ては3590黒点群です。

【注意!】 太陽の観察・撮影には専用の機材が必要です。専用の機材があっても些細なミスや不注意が失明や火災などの重大な事故につながる危険性があります。未経験の方は専門家の指導の元で観察・撮影してください。

3590黒点群 (2024/2/24 13:15)
3590黒点群 (2024/2/24 13:15)
高橋 FSQ-85EDP (D85mm f450mm F5.3 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー(合成F12.1), バーダープラネタリウム アストロソーラーフィルターフィルム, ZWO UV/IR Cut Filter / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM (Gain 185), SharpCap 4.0.9538.0, 露出 1/4000s x 1000/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 4.0.11, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理

3590黒点群 (2024/2/24 13:15)
3590黒点群 (2024/2/24 13:15)
撮影データは上に同じ。

デカいですね…

他にも黒点がちらほら出ていたので撮ったのですが、それをモザイク合成して太陽の形がある程度わかるようにしたのがこちら。

太陽モザイク (2024/2/24 12:54-13:15)
太陽モザイク (2024/2/24 12:54-13:15)

これを使って WinJUPOS で測定したところ、0.5812"/pixel の解像度だとわかりました。太陽表面(赤道上)と地球表面(赤道上)までの距離で簡易的に計算すると、1 pixel = 約415.5km ということで、これで大きさがわかります。

3590黒点群の一番大きな黒点の暗部(真っ黒い楕円形の部分)は幅3万km、高さ1万6千kmあります。半暗部を含めると大きな楕円形の黒点と小さな楕円形の黒点が連なった形になっていますが、大きな方が幅6万km、高さ4万7千km、小さな方と合わせた幅は10万km以上あります。周りに散らばった黒点を含めた黒点群全体だと幅が 18万7千km ぐらいあります。

同じスケールに縮小した地球の写真*1 を重ねてみたのがこちら。

3590黒点群と地球の大きさの比較
3590黒点群と地球の大きさの比較

地球の直径(赤道面)は 12756.274 km です。暗部に地球を3つくらいねじ込めそうです。ちなみに拡大写真の幅が月の公転半径より少し大きいくらいです。

他の黒点の写真も貼っておきます。

3590黒点群、3586黒点群 (2024/2/24 12:54)
3590黒点群、3586黒点群 (2024/2/24 12:54)
撮影データは1枚目と同じ。

3594黒点群、3592黒点群、3590黒点群 (2024/2/24 13:11)
3594黒点群、3592黒点群、3590黒点群 (2024/2/24 13:11)
撮影データは1枚目と同じ。

3594黒点群、3592黒点群、3591黒点群 (2024/2/24 13:13)
3594黒点群、3592黒点群、3591黒点群 (2024/2/24 13:13)
撮影データは1枚目と同じ。

実はカラーカメラでも撮りました。雲が出てきたりして慌てて撮ったのでカメラの向きがモノクロの写真とは合ってないですが…

3590黒点群(カラー) (2024/2/24 13:27)
3590黒点群(カラー) (2024/2/24 13:27)
高橋 FSQ-85EDP (D85mm f450mm F5.3 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー(合成F12.1), バーダープラネタリウム アストロソーラーフィルターフィルム, ZWO UV/IR Cut Filter / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 180), SharpCap 4.0.9538.0, 露出 1/2000s x 1000/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 4.0.11, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理

3590黒点群、3586黒点群 (カラー) (2024/2/24 13:28)
3590黒点群、3586黒点群 (カラー) (2024/2/24 13:28)
撮影データは上に同じ。

3594黒点群、3592黒点群、3590黒点群 (カラー) (2024/2/24 13:31)
3594黒点群、3592黒点群、3590黒点群 (カラー) (2024/2/24 13:31)
撮影データは上に同じ。

カラーだと解像がイマイチだし色もほぼ単色なのでカラーで撮る意味ないんですが、それでもカラーの方が映えるかなとインスタにはカラーの方を上げたのですが、全然人気がないですね… そもそも太陽黒点という対象自体が一般には地味、ということを忘れていました…

最後にカラー版の地球との比較画像も載せておきます。

3590黒点群と地球の大きさの比較
3590黒点群と地球の大きさの比較

*1:ソースはアポロ17号から撮影された「File:The Blue Marble (remastered).jpg」です。

Galaxy Annotator v0.9.2 をリリースしました(不具合修正版)

銀河専用アノテーションツール Galaxy Annotator について、先日のエントリでバグがあったという話をしました。

GalaxyAnnotator v0.9.1 を使用しましたが、スタイル指定の扱いにバグがみつかって、修正したものを使用しました。修正版は明日リリースします。
*1 - NGC4216 と超新星 SN 2024gy (2024/1/22)

遅くなりましたが修正版を先程リリースしました。

スクリプトの修正は galaxy-annotator.py のみで、votable.xml の再取得や galaxies.json の再生成は必要ありません。

不具合というのは、galaxies.json 内で銀河毎の個別のスタイルを指定した場合に発生するもので、以下の二つです。

NameError が出たが、スタイルいじってるうちに治ったとか、マーカーラベルのレイアウトが変になったとか、そのあたりに心当たりがある方はアップデートしてみてください。

実は二つとも原因は同じで、1行足りなかっただけ(変数の初期化漏れ)という…