Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

プラトー (2018/10/1)

台風一過の10月1日は体調が最悪で夕方から夜中まで寝ていました。昼頃には日没後火星を撮って月の出の前までにらせん星雲を撮ってそのあと月を撮る、みたいなことを考えてたんですが… 日没頃にはまだ風も強かったのでどっちみち火星とらせん星雲はダメだったでしょうけど。

深夜3時頃に目がさめてベランダに出ると快晴の夜空に月が高く昇っていました。日の出は5:35で、機材設置と温度順応に1時間かけるとしても1時間くらいは撮影できそう。シリウスが瞬いていてシーイングは悪そうだったのですがせっかくの天気なので月面撮影を強行。

案の定シーイングはいまいちだったのですがそこそこ見れる写真は撮れました。5枚撮りましたが、ここではそのうち一枚を。

プラトー (2018/10/2 04:29-04:31 2枚モザイク)
プラトー (2018/10/2 04:29-04:31 2枚モザイク)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F?), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/125s x 1500/3000コマをスタック処理 x 2枚をモザイク合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

プラトー(109km)です。周辺の地形も見応えがあるので2枚モザイクで写野を広めにとりました。プラトーの北(上)に広がるのは氷の海、南西(左下)に見える山脈はテネリッフェ山脈、南(下)に見える山はピコ山、北東(やや右上)に見える谷はプラトー谷です。

プラトーと言えば内部の小クレーターが見えるかどうかが話題になりますが、上の写真ではうっすらと5つ写っているのが見えます。眼視だと「口径20cmクラスの望遠鏡で良シーイングに恵まれると、内部に4つのクレーターが確認できます」(白尾元理『月の地形ウォッチングガイド』p144)とのことなので、いまいちなシーイングでこれだけ写れば御の字でしょうか?

ところで「プラトー」という名前はギリシャの哲学者プラトンに由来するのですが、なんで「プラトン」じゃなくて「プラトー」なんでしょうね?と思ったら、どうも最近では「プラトン」表記が多いようです。

セッピーナさんのブログ『セッピーナの趣味の天文計算』の記事「「プラトン」か「プラトー」か? - 月のクレーターのこと: 」によると、『天文年鑑』では1995年頃から、他の書籍では2011年頃から「プラトン」表記になっているとのこと。ちなみに手元の高橋実『月面ガイドブック』(1974, 誠文堂新光社)では「プラトー」でした。Wikipedia は最初から「プラトン (クレーター)」になっていて、特に表記について議論があった形跡は見当たりません。

しかし、プラトーの欧文表記(?)は Plato なんですよね。そもそもなんでプラトンが Plato なんでしょう?げたのにれのやさんのブログ『げたにれの “日日是言語学”』の記事「英語の 「プラトン」 には、なぜ、n がないのか?」やラテン語たんのつぶやきのまとめ「英語でプラトンはPlatoですが…?」によると、英語の Plato はラテン語由来で、古典ギリシャ語から古典ラテン語に伝わった際に「プラトン」から n が落ちて「プラトー」に変化したとのことです。

ということはラテン語の発音に合わせるなら「プラトー」が正解?でも人名の日本語訳に合わせるなら「プラトン」が正解?まあ、ネットで見かける天文家の皆さんはだいたい「プラトー」って言ってる気がするので僕も「プラトー」にしておきますが、検索のことを考えると併記するのがいいのかも。

月面 (2018/9/28)

昨夜は帰宅後疲れて寝てしまって、目がさめたのが深夜。火星はもう撮れない時間だったのでまた月面を撮りました。シーイングは時折大きく乱れるものの、落ち着いている時はそこそこいい感じで、27日よりはずっとマシでした。結構頻繁に雲が流れてきて、雲が出ている間にスタック処理をしたりして落ち着かない撮影でした。

今回もシステムCから ADC を外した構成で撮っています。写真は一応北が上ですがカメラが30度ほど右に傾いたまま撮ってしまったのでちょっと違和感あるかも…

以下、撮影順とは異なりますが、北から順に。

クレーター名に続くカッコ内はクレーターの直径です。位置関係を表す東西南北は月面上での方向です。写真上では右が東、左が西です。空の東西と逆なので混乱しますが、月面上に日本列島を置いた様子を思い浮かべるとわかりやすいと思います。

まずアリストテレス

アリストテレス (2018/9/29 02:01)
アリストテレス (2018/9/29 02:01)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F?), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/125s x 1500/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

アリストテレス(87km)はアルプス谷の東にあるクレーター。東にある小さなクレーターミッチェル(30km)に少し重なる形で隣接しています。小さなクレーターの近くに後から大きなクレーターができると小さい方のクレーターは破壊されてしまうのが普通で、ミッチェルのように形がしっかり残っているのは珍しいそうです。*1

次はポシドニウス。

ポシドニウス (2018/9/29 00:50)
ポシドニウス (2018/9/29 00:50)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F?), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 11.5ms x 1500/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

ポシドニウス(95km)は晴れの海の東の縁にある二重構造のクレーターです。内部には引っかき傷のような谷が複数走っています。ポシドニウスの東に南北に弧を描いて走る比較的大きな谷は G.ボンド谷です。谷のすぐ東にあるクレーターが G.ボンド(20km)です。*2

次はアリアデウス谷。

アリアデウス谷 (2018/9/29 01:21)
アリアデウス谷 (2018/9/29 01:21)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F?), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/125s x 1500/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

アリアデウス谷は静かの海の西の端から蒸気の海の南東の端を東西に走る長さ250km、幅4〜5kmの大きな谷です。谷の東の端の少し南にある双子のクレーターがアリアデウス(11km)です。谷の中央部では谷の幅の分ぐらい南北に谷が食い違っているのがわかります。谷の南西の大きなクレーターはアグリッパ(44km)です。

次はキリルスとテオフィルス。

キリルス、ティオフィルス (2018/9/29 00:53)
キリルス、ティオフィルス (2018/9/29 00:53)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F?), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/125s x 1500/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

神酒の海の北西の端にある二つの大きなクレーター。写真左がキリルス(98km)、右がティオフィルス(110km)です。重なり方からわかるようにキリルスの方が古いクレーターです。くたびれた感じのキリルスに対してティオフィルスはリムもクッキリしていて中央丘も立派です。

最後はアルタイの崖。写真は8枚のモザイク合成です。

アルタイの崖 (2018/9/29 01:49-01:57 8枚モザイク)
アルタイの崖 (2018/9/29 01:49-01:57 8枚モザイク)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F?), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/125s x 1500/3000コマをスタック処理 x 8枚をモザイク合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Image Composite Editor 2.0.3.0, Lightroom Classic CC で画像処理

アルタイの崖は高さ1〜3km、長さ480kmの長大な崖です。崖の北端の東にある大きなクレーターはカタリナ(104km)、崖の南端のすぐ南にあるクレーターはピッコロミニ(87km)です。

地形のデータについては、白尾元理『月の地形ウォッチングガイド』iOSアプリ Moon Globe を参考にしました。

さて、27日に比べればずっと良く撮れているし、今まで μ-180C で撮った月面の中でもベストに近い写りなのですが、まだ少しぼやけた感じですね… 8枚モザイクでもまだ少しブレた感じが残っています。もう少しキリッとした写りを期待しているのですが… 拡大しすぎなんでしょうか?それとももっと好シーイングに恵まれないとダメ?

あるいはピントが追い込めていないとか?ピント合わせは合焦機構の精度以前にピントの山がつかみづらくて苦労します。土星なんかだとカッシーニの隙間がクッキリ見えるかどうかが基準になるのですが、月面の地形は少々ピントがズレていてもなんとなくクッキリ見えてしまうので… 細かい地形まで頭に叩き込んでおかないとダメなのかも。

そういえば光軸調整を一度もやってないのですが、やったほうがいいのかな?μ-180C は光軸がズレにくいとは聞きますが。ちなみにファインダーも今まで一度も調整していませんが全然問題なく使えています。

そんなわけで月が出てる間は月面撮影またがんばろうと思います。火星もあと一回くらいは撮りたいかな… でも台風でまたしばらく天体撮影はお休み。今年は台風多すぎ!

*1:参考: 白尾元理『月の地形ウォッチングガイド』p20

*2:月の谷の名前はたいてい近くにあるクレーターの名前に由来します。

ヘラクレスとアトラス (2018/9/27)

前のエントリに書いたように、27日の夜は月を撮っていました。が、シーイングが悪くて満足いく結果は得られませんでした。

欠け際が危機の海の西の端にかかっていたのでオニール橋付近を撮っていたのですが悪シーイングでブレてしまい何が写ってるのかよくわからない写真になってしまいボツに。何枚か撮りましたが、唯一そこそこ見れる写りだったのがこれです。

ヘラクレスとアトラス (2018/9/27 23:54)
ヘラクレスとアトラス (2018/9/27 23:54)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F?), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/125s x 1500/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

月面をあちこち流していて目に付いた二つ並んだクレーター。左がヘラクレス、右がアトラスです。ヘラクレスの内部は小クレーターがある以外は平坦ですが、アトラスの内部は山あり谷ありの起伏に富んだ地形です。

今回はシステムCから ADC を外した構成で撮っています。倍率を少し落としたいのと、ゴーストの原因にならないかと思って ADC を外しました。正確な倍率は不明ですが今度火星か土星を撮って計算してみようと思います。しかし ADC って月面撮影でも付けた方がいいんですかね?

μ-180C での月面撮影は直焦点以外はいまだに満足のいく結果が得られていません。なんか惑星よりも難しい気がするのですが…

9月27日22:48頃の流星

9月27日の夜は久々に晴れたので月でも撮ろうとベランダで準備をしていると、南の空高くを流星らしきものが横切るのを見ました。

22時48分頃、ペガサスの四辺形のあたりを(と言っても空が明るくてペガサスの四辺形自体は見えてなかったのでだいたいの位置ですが)西から東へ比較的ゆっくり、でも ISS よりは少し速いくらいの速度で、すーっと流れていって、突然三つくらいに砕けて消えました。

観測地は横浜市北西部。空を見上げた時に既に流れていて流れ始めからは見れていないのですが、消えるまで2秒くらいでした。色はオレンジ色、明るさは火星よりも明るくて-2〜-3等くらいでしょうか?

これ、誰か見た人いますか? Twitter で「流星」で検索しても芸能人ばかりヒットしてしまうのですが、「火球」で検索するとそれらしき報告がありました。

これかなぁ?高度が低いのですが、場所が八王子あたりで横浜から北に離れたところから見ているのでつじつまは合う?

中秋の名月 (2018/9/24)

今夜も曇りで日没時には雲越しに火星がうっすら見えるくらいで天体撮影は無理っぽいなと思っていたら19:00頃から晴れ間が。でもGPVを見ると四方が雲に囲まれていて一時間以内に雲の海に沈む予報。これでは反射望遠鏡の温度順応も間に合わなさそうなので火星の撮影はあきらめたのですが、そういえば今夜は「中秋の名月」だったな、と気が付きました。

東の空には月齢14.7の月が薄雲越しに黄色く輝いています。せっかくなので、久しぶりに8cm屈折と経緯台をベランダに出してデジカメのワンショットで撮影しました。月全体を撮るのはモザイク撮影を除くと「白い満月?」以来で5ヶ月ぶり。

月齢14.7 (2018/9/24 19:26)
月齢14.7 (2018/9/24 19:26)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / ミザールテック K型微動マウント / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO400, RAW) / 露出 1/100s / Lightroom CC で画像処理

経緯台なので水平は見たまま。南中前の月なので月面は左回りに傾いています。満月の少し前なので左側(月面の西側)が少し欠けています。

中秋の名月」と言っても人間の都合で言ってるだけで、月そのものに何かが起こっているわけでもなく、何の変哲もないいつもの月ですね。でも、たまにはこういうのもいいものです。

イラクの月

9月は天候に恵まれず、僅かな晴れ間も予定が合わず全く天体撮影ができていません。以前ならこういう時期にはお買い物に走りがちだったのですが、火星最接近後は憑き物が落ちたように天文関係の物欲も落ちて、ただ実りのない日々を過ごしています…

何もネタがないなーと思っていたのですが、ふと以前気になっていたネタを思い出しました。今年4月に話題になった自衛隊の「イラク日報」の件です。この「イラク日報」、政治的な問題もさることながら、隊員の日常生活が記された「日誌」の記述が面白いと話題になりました。

そんな中で話題になった日誌の一つが2006年4月5日の報告書に掲載された「バスラ日誌」です。

https://rna.sakura.ne.jp/share/Basrah-diary-20060405.jpg

飾らぬ文体で淡々とイラクの自然を綴った文章が味わい深く… と思うといきなりロケット弾が飛んでくる急展開がウケたようですが、天文ファンとして気になるのは前半で綴られた花鳥風月(蚊鳥風月?)の「月」の部分。

 イラクの月は、不思議である。日本でも月が欠けたり満ちたりするのは当たり前だが、イラクの三日月は、真下に弧を描いて輝く上弦の月である。日本の上弦の月は右半分が輝くのだが。

イラクでも南中時の三日月なら右側が輝くはずですし、日本でも沈む前の三日月なら下側が輝くわけで、これはどういうことなのだろう、と気になっていました。こういうのはシミュレーションしてみるに限る、ということで Sterallium で当時のバスラの月を再現してみることにしました。

日誌が書かれた2006年4月5日の月齢は7.5で上弦の月ですが、日誌には「三日月」と書かれています。天文マニアでない一般人が三日月というと月齢2の月ではなく、もう少し太った月でしょうから、隊員が見た月は月齢3.5の4月1日〜月齢5.6の4月3日頃の月でしょうか?

2006年4月1日のバスラでの日没時(日の出日の入り計算 - 高精度計算サイト によると現地時刻の19:07:36) の月を見上げるとこんな風に見えます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/stellarium-moon-20060401-Basrah.jpg

確かに月が横倒しになって下側が輝いています。しかし日本で見たらどうでしょう?上の約6時間前、横浜の日没時の月がこれです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/stellarium-moon-20060401-Yokohama.jpg

バスラの月ほどではないですが、それでもほとんど横倒しですよね。

最初は低緯度地方故に高く昇った月が西に傾いて横倒しになっている時間が長くなって横倒しの月の印象が強いのかなと思ったのですが、バスラの緯度は北緯30.5度と、東京と5度しか違いがありません。日本で言うと種子島あたりと同じです。

日本とイラクの違いもありますが、たまたま日誌が書かれた時期が月が高く昇る時期に当たっていたという要因も大きいのではないでしょうか?月の南中高度は同じ観測地から見ても時期によって変わります。月の赤緯が日々変わるからです。北半球では赤緯が高くなるほど南中高度も高くなります。

4月1日夕方(バスラの現地時間)の月は赤緯22.7度、日誌の前日の4月4日には28.5度まで北上しています。この日の月はほぼ天頂をかすめる高度88度まで昇っていました。月の赤緯がここまで高くなるのは実は珍しいことで、18.6年に1度しかありません。

理由は月軌道面が18.6年周期で回転しているためです。月軌道面は黄道面に対して傾いていますが、これが黄道面上で回転しています。黄道面は赤道面に対して23.4度傾いていますが、月軌道面は黄道面に対して5.1度傾いています。このため月軌道面の回転により18.6年で月軌道面の赤道面からの角度(= 赤緯)が±5.1度変動するわけです。

このあたり、言葉で書くとややこしいのですが、詳しくは国立天文台暦計算室の「暦Wiki/月の公転運動/最北と最南」の図を見ていただけると直観的に理解できるかと思います。

さて、「バスラ日誌」が書かれた2006年はちょうど月軌道面の傾きが黄道面の傾きに足されて月軌道面の赤道面からの角度が最大になる年、つまり月の赤緯の変動が最大になる年でした(Major Lunar Standstill)。そして日誌の前日4月4日には月が最北(赤緯最大)を迎えていました。

この時期の月は特別に高く昇り、長い時間をかけて横倒しになりながら沈んでいたのです。そのため、この時期には横倒しに傾いた月が西の空高く浮かぶのを目にする機会が多く、「真下に弧を描いて輝く」月が印象に残ったのではないでしょうか?

そういうわけで「バスラ日誌」の月が「真下に弧を描いて輝く」のは、低緯度地方のイラクならではというのが半分、18.6年に一度の月が高く昇る時期だったからというのが半分、というのが真相だと思われます。

悩みごと

惑星撮影のシーズンも終盤に入り、新月期を迎えてそろそろ DSO 撮影を再開したいところですが、色々悩んでいます。

この時期南向きベランダから撮れる対象はスカイメモ時代に一度撮ったものばかりでいまいち気が乗らないんですよね。レデューサー使用(f288mm F3.6)で撮ったものを直焦点(f480mm F6)で撮りなおすのもそれなりに有意義とは思うのですが、せっかくならまだ撮ったことのない天体を撮りたいものです。

そうなると野外に機材を持ち出して撮影ということになるのですが、車がない、エレベーターがない、という状況なので、機材一式を一度に手で運ばなくてはいけません。SX2赤道儀(7kg)と三脚(5.5kg)とSG-1000(3.2kg)と鏡筒(2.4kg)にカメラとノートPCで最低でも20kgになります。重さだけでなくかなりかさばりますが両手とバックパックで足りるでしょうか?

このクラスの機材を徒歩で運ぶ例があまりなくて… HIROPON さん(id:hp2)の場合は台車に全部乗せて運搬しているそうですが、1階の玄関で全部積み込んで出発しているようです。自分の場合だと1階に台車を置いて階段を2往復して積み込む形になりそうですが、やはり短い時間とはいえ機材から目を離すのは盗難のリスクを考えてしまいます。そうなると結局階段の昇り降りは機材一式を一度に抱えて移動しなくてはなりません。

HIROPON さんのエントリ「撮影に持参する機材とパッキング」を参考に、赤道儀は「布ケースCB用」、三脚は「RC-30」に入れて片方を肩にかけ、もう片方を右手に持って、左手には鏡筒、残りはバックパックに入れて、と思っているのですが、肩への負担が半端ないような。

赤道儀、両手で持ってもずっしり重いですからね。五十肩なのに大丈夫なのか… やっぱり無謀かな?かといっていまさらスカイメモSで撮るのも…