Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

木星の自転を止めて撮るには?

天リフを見ていて天下一画像処理会でご一緒した(?)木人さんのブログのこの記事が目に留まりました。

木星を撮影する時に動画1本(一度にスタックする単位)をどのくらい時間までかけてよいのか?という話です。木星は自転が速いため、フレーム数を稼ごうと一本の動画の撮影にあまり長い時間かけてしまうとスタックした結果がブレたようになってしまいます。ではどのくらいなら大丈夫なのか?

木人さんの記事ではドーズの限界を基準に撮影時間を決める方法を紹介しつつ、実際に画像処理するとドーズの限界を越えて解像してしまうので、もっと厳しく見積もる方がよいのでは?としています。具体的にはドーズの限界を基準にすると口径20cmなら2分が目安となるところ、90秒くらいがよさそう、ということです。

ドーズの限界を基準にするのは2年ほど前に天文誌の記事でも見たことがあったのですが、本当にそれでいいのか?という疑問がありました。というのは、8cm 屈折で3分間隔で撮った木星をタイムラプス動画を1フレームずつ見るとフレーム単位で自転が認識できてしまうからです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/22_23_26_lapl4_ap50_Drizzle15-2.gif

8cm ならドーズの限界は1.45秒、3分間に木星面の中心にある模様が動く距離は約0.72秒です。*1 ということは、ドーズの限界の半分程度の移動距離でもスタックすればブレた像に見えるはずなのです。

そもそもドーズの限界というのは二重星がある程度綺麗に分離して見える距離で、これより近いからといって一つの星に見えるわけではなく、実際にはダルマ状または長円状の星像として見えるわけですから、スタックしてブレて見えない基準としては緩すぎるのではないでしょうか。

では何を基準にすればいいかというとよくわからないのですが… とりあえずドーズの限界の半分以下にはしたいということで、自分は口径18cmで1/60秒露出で3000フレーム(50秒)で撮るようにしています。

木人さんの記事にもあるように、少々の位置ずれはスタックの際の歪み補正で修正されてしまうはずなのでそこまで神経質にならなくてもよいのかもしれません。でも経験上1/60秒露出で5000フレーム(83秒)で撮ったものは微妙にブレてるように見えるんですよね。気のせいかもしれませんが…

*1:木星の自転周期は 9時間55.5分(= 595.5分)、一分間あたりの回転角は 360度/595.5分 = 0.61(度/分)、木星面の中心の点が3分間に移動する距離は、木星の視直径を45秒とすると、(45秒 / 2) * sin(3 * 0.61度) = 0.72秒。

金星とアルデバラン (2020/7/11)

ネオワイズ彗星(C/2020 F3 (NEOWISE))が話題ですね。

https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2020/07-topics05.html

7月11日未明、ネオワイズ彗星を撮ろうと2:00過ぎからマンションの最上階の廊下でスタンバっていたのですが、横浜からだと北東方向の雲が全然切れず、3:15頃まで粘りましたが、目印のカペラすら一度も見ることなく終わってしまいました。

東の空は時折雲が途切れて金星がよく見えていました。あの晴れ間がこっちに来てくれれば!と思いながら撮ったのがこの写真。

金星とアルデバラン (2020/7/11 02:40)
金星とアルデバラン (2020/7/11 02:40)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (71mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO400, RAW) / 露出 2.0秒 / Lightroom CC で画像処理、トリミング

明るく雲を照らしている星が金星、金星のやや右斜め下に見える赤っぽい星がアルデバランです。

アルデバランは肉眼ではほとんど見えていなかったのですが、写真には写っていました。そういうこともあるので北東方向の写真も念の為撮っていたのですが雲しか写っていませんでした。

部分日食 (2020/6/21)

6月21日は部分日食の日。横浜からもそこそこ欠けた太陽が見えるはず、なのですが天気は曇り。でも雲の隙間から垣間見えるのを期待して15:40からマンションの廊下にスタンバイ。数秒から30秒程度ですが何度か雲の隙間から欠けた太陽を撮ることができました。17:20以降は空が厚い雲に覆われてこれ以上は無理ということで17:30に撤収しました。

flickr のアルバムにまとめましたので欠けていく様子をご覧ください。

【注意!】 太陽の観察・撮影には専用の機材が必要です。専用の機材があっても些細なミスや不注意が失明や火災などの重大な事故につながる危険性があります。未経験の方は専門家の指導の元で観察・撮影してください。

部分日食 (2020/6/21)
部分日食 (2020/6/21)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12), Kenko PRO ND-100000 77mm / ミザール K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200〜3200, RAW) 露出 1/60〜1/4s / Lightroom CC で画像処理

最大食分は17:10頃だったのですが雲の向こうで見逃しました。17:13のショットが一番欠けていますが残念ながら半分雲に隠れて全体が写っていません。それでも爪のように尖った太陽の姿はなかなかのものでした。

次に横浜から見られる日食は2030年の部分日食。2035年皆既日食は皆既帯から外れているのですが、遠征するべきか?ってその頃はもう高齢者になっていますね… 遠征できる元気があるといいのですが。

木星、土星、火星 (2020/6/16)

6月16日の深夜に惑星を撮影しました。平日ですが梅雨の間の貴重な晴れ間なので頑張って撮りました。その甲斐があって途中トラブルはありましたが良い写真が撮れました。翌日昼休みに横になったらそのまま夕方まで寝てしまいましたが…

今回は気合を入れてLRGB撮影です。ガイドスコープに付けっぱなしだった ASI290MM を久しぶりに使いました。鏡筒をベランダに出して温度順応させながらドリフトアライメントで極軸を合わせたのですが、星の揺れがいつになく小さかったので好シーイングを期待しつつ0:30頃から撮影開始。

1:30頃まで撮って画像処理をしてみるとL画像にゴミのような謎のノイズが浮いてきて使い物になりません。しかしRGBの方は何ともありません。フィルターにゴミが付いているのか?と思ってモノクロカメラからUV/IRカットフィルターを外して再撮影しました。

前半で撮った画像はノイズのことは抜きにしてもボケボケで期待はずれだったのですが、後半戦は打って変わって細部までよく写りました。ベスト記録更新と言ってもいい写り。画像処理にも気合が入り、WinJUPOS の de-rotatin も入ってフルコース。

まずは木星

木星 (2020/6/17 02:25)
木星 (2020/6/17 02:25)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25"(RGB), ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 217), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 296) / 露出 1/60s x 1500/3000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

北赤道縞の複雑な模様がよく解像しています。赤道帯もずいぶん荒れて?います。大赤斑が見えない時間帯だったのが惜しまれます。前半戦ではギリギリ大赤斑が見えていたのですが… それでもここまで模様の入り組んだ木星面を撮ったのは始めてなので興奮しました。

次は土星

土星 (2020/6/17 02:41)
土星 (2020/6/17 02:41)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25"(RGB), ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 217), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 296) / 露出 1/30s x 1500/3000コマをスタック処理 x4 (L:2, RGB:2) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

北半球の縞模様が細いものまでよく見えています。カッシーニの間隙も一応全周見えています。輪の開きは2017年がピークであれからだいぶ小さくなりました。2025年には輪を真横から見る形になって、見かけ上輪が消失します。

https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2020/07-topics03.html

土星の de-rotation は輪の部分に土星本体の影が写り込んでしまったりしていまいち信用していないのですが、この写真でも少しそれが見えますね。他の人の写真では見たことがないので何かを間違えているのだと思うのですが…

最後はまだ小さな火星です。

火星 (2020/6/17 02:56)
火星 (2020/6/17 02:56)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25"(RGB), ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 217), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 296) / 露出 1/125s x 2500/5000コマをスタック処理 x4 (L:2, RGB:2) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

先週の写真と比べると驚くほど細かい模様が写っています。とはいえちょっとLを強調しすぎたかも。ちょっとどこがどこだか地図を見てもよくわかりませんでした。

話は変わって前半戦の「ゴミみたいなノイズ」について。フィルターの汚れかと思っていたのですが、どうもよくわかりません。フィルターのゴミなら同じ場所に同じ影が写るはずですが、センサー面のあちこちで撮ったにも関わらず決まって惑星像の縁の近くにノイズが出てきます。おせんべいの端にあるヒビみたいに見えるので「おせんべいノイズ」と名付けました。

具体的にはこのようなものです。wavelet は弱めにかけてあります。

「おせんべいノイズ」の例 (木星)
「おせんべいノイズ」の例 (木星)

不思議なことにRGB画像の方では全く見られませんでした。シーイングが悪かったり筒内気流で像が歪んだりが原因ならRGBの方も同様のノイズが出てもいいはずなのですが…

AutoStakkert!3 の継ぎ目ノイズの可能性も考えましたがやはりRGB画像に出てないのが不可解だし、丸い水滴の跡のようなノイズが出るのは継ぎ目ノイズにしては不自然な気がします。APはサイズ104を自動配置で80個です。

ちなみに土星だと輪が欠けたような写りになります。

「おせんべいノイズ」の例 (土星)
「おせんべいノイズ」の例 (土星)

一体なんなんでしょうね?フィルターは目視で裏表確認したのですが、特に汚れは見つかりませんでした。

というわけで謎は残りましたが、諦めずに取り続けたおかげでベストショットが撮れました。次は大赤斑が見える時にこのくらいの結果を出したいです。

天下一画像処理会 : 惑星の部 応募作品解説

あらまし

天文系VTuberけむけむさん主催の「天下一画像処理会 : 惑星の部」に応募しました。天下一画像処理会はけむけむさんが用意した同じ生データを参加者が各々工夫して画像処理した結果を持ち寄ってけむけむさんが動画にまとめるという企画です。

発表動画はこちらで見られます。

画像処理手順が出てきますが、1画面にまとめるという制約があるため概略のみとなっています。そこでこのエントリで詳細を解説することにしました。

自己紹介

https://rna.sakura.ne.jp/share/tenkaichi-planet-nanba-20200607-01.jpg

名前: なんばりょうすけ
Twitter: @rna
Hatena: id:rna
ブログ: https://rna.hatenablog.com/

横浜の自宅から天体撮影をしているアラフィフおじさん。
DSO、惑星、月、太陽(可視光)、彗星、なんでも撮ります(ベランダから撮れる範囲で)。

生データ

第2回の今回は木星土星の動画(カラーのみ)を処理する回でした。生データの動画は以下の3つ。

  • 木星(小): 8 bits RAW, 3000 frames
  • 木星(大): 8 bits RAW, 3005 frames
  • 土星(大): 8 bits RAW, 3001 frames

撮影機材については説明がなかったのですが、こちらの動画を見たところ、鏡筒は GS-200RC(1600mm F8) で、小は2倍バロー、大は2倍バローと2倍テレコンの二段重ねでしょうか。カメラは生データについてきたカメラ設定の記録によると ASI385MC です。

それにしてもこの木星の模様、なんか見覚えがあるような… と思ったら、撮影日時は 2018年4月28日深夜の木星でした。そう、同じ日に僕も木星を撮っていたのです。

当時はまだ μ-180C が届いてなくて 8cm 屈折(BLANCA-80EDT)で撮っていたのですが、この日は好条件で 8cm 屈折による木星のベストショットが撮れました。この時の画像は後に再処理してこうなりました。


処理手順

処理手順の概要を図解したものが以下になります。

https://rna.sakura.ne.jp/share/tenkaichi-planet-nanba-20200607-02.jpg

生データがカラー動画なので、去年から始めた「セルフLRGB合成」で処理しました。元画像から擬似L画像を作って、元画像とは別に画像処理して最後にLRGB合成して仕上げます。

ポイントは以下の通り。

  • AS!3ではフレームを多め(1500〜2000フレーム)にスタック(ノイズ抑制)
  • RS6では
    • Use Linked Wavelets を ON (ディテール炙り出し)
    • De-ringing 使用(惑星の縁が明るくなる現象を抑制)
  • カラー画像の Wavelet 処理は弱めに(カラーノイズ抑制)

以下各処理について解説します。画像毎の処理パラメータの詳細は処理結果の章にまとめます。

前処理

最初 AutoStakkert!3 (AS!3)にそのまま生データの動画を入力したのですが、木星(大)の動画で Analyse すると破損フレームがベストフレームに選ばれてしまうというアクシデントが発生しました。破損フレームというのはこれです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/Jupiter-004_Bilinear_F_00001364.png

このままスタックするとマズいことになりそうなので木星(大)の動画は TMPGEnc Video Mastering Works 5 (TVMW5) でカット編集して破損フレームを除去し、非圧縮AVIでエンコードしたものを AS!3 に入力しました。

TVMW5 の出力のコーデックは 24 bits RGB(RV24) でしたが、デベイヤーされるわけではないので実質モノクロです。AS!3 に入力するとベイヤーパターンは自動認識で正しく設定されました。

スタック

AS!3 で普通にスタックします。動画は各1本のみで de-rotation スタックできないので、フレーム数は多めにします(1500〜2000フレーム)。

木星(大)の AP Size は最初は64に設定していたのですが、継ぎ目破綻らしきノイズが発生したので AP Size 104でやり直しました。AP の配置は全部自動配置です。

大気色分散はぱっと見目立たないようでしたが、ADC を使っていないようだったので RGB Align は ON にしておきました。

疑似L画像生成

スタック結果の画像(RGB画像)から Photoshop (PS) で擬似L画像を作ります。疑似L画像を作る目的は、カラーノイズを避けて強い wavelet 処理をかけるためです。カラー画像で強い wavelet 処理をかけようとするとカラーノイズが目立ってしまって、あまり強調できませんが、モノクロ化した画像ならより強い処理に耐えられます。

Photoshop での処理手順は以下の通りです。

  • Lab カラーモードに設定 [イメージ - モード - Lab カラー]
  • チャンネル一覧で L チャンネルのみ選択された状態にする
  • グレースケールモードに設定 [イメージ - モード - グレースケール]
  • TIFFで保存 [ファイル - 別名で保存]

ここで画像の保存に「書き出し」を使ってはいけません。「書き出し」は PNG 等の非圧縮形式に等倍で出力する場合でも再サンプリングがかかるようで、書き出した画像を wavelet 処理するとモアレのようなノイズが浮いてきて使い物になりません。

wavelet 処理

wavelet 処理には RegiStax 6 (RS6) を使います。RGB画像と疑似L画像はそれぞれ別のパラメータで処理します。RGB画像は弱めに、疑似L画像は強めに wavelet をかけます。

原因はよくわかりませんが、RS6 に同じような露出の画像を読み込んでも、特定の画像だけやたら画像が明るくなることがあります。そのまま wavelet 処理すると白飛びが発生しがちなので、そういう時は Contrast を落として処理します。

ポイントは Use Linked Wavelets を ON にすることです。これによってディテールをより浮かび上がらせることができます。実はどういう原理なのかよくわかっていないのですが…

Linked Wavelets は wavelet を強くするとノイズも強烈に浮いてくるのですが、これを Denoise で抑え込む形でバランスをとっていくのが基本です。いまいち直感的に理解できない挙動があり、慣れないと扱いにくいのも事実です。

wavelet を強くかけると惑星の縁が明るくなってしまって立体感が損なわれる副作用が出てきますが、これを抑えるために De-ringing 機能を使います。Dark と Bright を ON にして、Bright を上げていくとコントラストが強い部分のギラつきが和らぎます。縁に限らず惑星面の模様も影響を受けるので考えものなのですが、見映え重視で使っています。

また、wavelet 処理の影響で惑星周辺がうっすら明るくなったり、画像の端に出るノイズが強調されてしまったりするのを抑制するために Mask 機能も使っています。このあたりはあまりよくわかってなくて、今のところデフォルト設定で Low を上げるだけです。

ちなみに RS6 のバグなのか、Mask 機能を使用したまま別の画像を開くと wavelet 処理がかからなくなったりすることがあります。Use Mask や Toggle を ON/OFF してるうちに直ったりもするのですが、ややこしいので RS6 を再起動してやり直しています。

RGB画像では RGB Balance 機能でカラーバランスを調整します。Auto でいい感じになるので、いつも Auto で設定して仕上げで微調整しています。Photoshop 等でイチから調整するよりはずっと楽なので使っておくのがよいと思います。

LRGB 合成

wavelet 処理したRGB画像と疑似L画像はそれぞれ PS に読み込んで以下のような手順で合成します。

疑似L(wavelet):

  • Lab カラーモードに設定
  • チャンネル一覧でLチャンネルを選択
  • 全選択してコピー

RGB(wavelet):

  • Lab カラーモードに設定
  • チャンネル一覧でLチャンネルを選択
  • ペースト

あとは RGB(wavelet) 画像の方に仕上げ処理を施します。明るさを調整して彩度を上げてトーンカーブで模様の少しコントラストを調整して完成です。

処理結果とパラメータ詳細

木星(小)

木星、イオ、エウロパ (2018/4/29 01:28) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)
木星、イオ、エウロパ (2018/4/29 01:28) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)

AS!3 設定
  • Image Stabilization: Planet(COG)
  • Quality Estimator: Laplace Δ: ON, Noise Robust 4, Normal range: Local (AP)
  • Reference Frame: Double Stack Reference: OFF, Auto size (quality based): ON
  • RGB Align: ON
  • AP Size: 64 AUTO (19APs)
  • Number of frames to stack: 1500
RS6 設定

疑似L:

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
    • L1: Denoise: 0.06, Sharpen: 0.100, 22.0
    • L2: Denoise: 0.07, Sharpen: 0.100, 2.4
    • L3: Denoise: 0.05, Sharpen: 0.100, 1.1
  • De-ringing: Dark side: 10, Bright side: 10
  • Mask: Low: 6, Hight: 255, Radius: 2, Feather: 5, Method: Lo-Hi Intensity
PS 仕上げ

木星(大)

木星、エウロパ (2018/4/29 01:40) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)
木星エウロパ (2018/4/29 01:40) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)

AS!3 設定
  • Image Stabilization: Planet(COG)
  • Quality Estimator: Laplace Δ: ON, Noise Robust 4, Normal range: Local (AP)
  • Reference Frame: Double Stack Reference: OFF, Auto size (quality based): ON
  • RGB Align: ON
  • AP Size: 104 AUTO (30APs)
  • Number of frames to stack: 2000
RS6 設定

疑似L:

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
    • L1: Denoise: 0.16, Sharpen: 0.100, 35.5
    • L2: Denoise: 0.10, Sharpen: 0.100, 14.0
    • L3: Denoise: 0.05, Sharpen: 0.100, 1.8
  • De-ringing: Dark side: 10, Bright side: 105
  • Mask: Low: 10, Hight: 255, Radius: 2, Feather: 5, Method: Lo-Hi Intensity
  • Contrast: 75
  • Brightness: 0

RGB:

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
    • L1: Denoise: 0.16, Sharpen: 0.100, 24.5
    • L2: Denoise: 0.10, Sharpen: 0.100, 8.5
    • L3: Denoise: 0.05, Sharpen: 0.100, 1.1
  • De-ringing: Dark side: 10, Bright side: 105
  • Mask: Low: 10, Hight: 255, Radius: 2, Feather: 5, Method: Lo-Hi Intensity
  • RGB Balance: Auto balance (Red: 1.02, Green: 0.90, Blue: 2.19)
  • Contrast: 75
  • Brightness: 0
PS 仕上げ

土星

土星 (2018/4/29 03:09) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)
土星 (2018/4/29 03:09) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)

AS!3 設定
  • Image Stabilization: Planet(COG)
  • Quality Estimator: Laplace Δ: ON, Noise Robust 4, Normal range: Local (AP)
  • Reference Frame: Double Stack Reference: OFF, Auto size (quality based): ON
  • RGB Align: ON
  • AP Size: 104 AUTO (13APs)
  • Number of frames to stack: 2000
RS6 設定

疑似L:

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
    • L1: Denoise: 0.15, Sharpen: 0.100, 35.5
    • L2: Denoise: 0.10, Sharpen: 0.100, 8.5
    • L3: Denoise: 0.05, Sharpen: 0.100, 1.8
  • De-ringing: Dark side: 10, Bright side: 55
  • Mask: Low: 10, Hight: 255, Radius: 2, Feather: 5, Method: Lo-Hi Intensity
  • Contrast: 100
  • Brightness: 0

RGB:

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
    • L1: Denoise: 0.16, Sharpen: 0.100, 24.5
    • L2: Denoise: 0.10, Sharpen: 0.100, 7.3
    • L3: Denoise: 0.05, Sharpen: 0.100, 1.1
  • De-ringing: Dark side: 10, Bright side: 55
  • Mask: Low: 10, Hight: 255, Radius: 2, Feather: 5, Method: Lo-Hi Intensity
  • RGB Balance: Auto balance (Red: 0.94, Green: 0.92, Blue: 2.53)
  • Contrast: 100
  • Brightness: 0
PS 仕上げ
  • ノイズを軽減: 強さ:6, ディテールを保持:50, カラーノイズを軽減: 0, ディテールをシャープに: 50
  • 色相・彩度: 色相: -3, 彩度: +30, 明度: 0
  • 明るさ・コントラスト: 明るさ: 20, コントラスト: 0
  • トーンカーブ: ごくわずかにS字型にしてコントラストアップ。

おまけ: 土星と衛星

土星の画像ですが、Stellarium で当日の衛星の位置を確認すると、写野内に衛星が5つありました。レア、ディオネ、テティスエンケラドゥス、ミマスの5つです。ひょっとして写っているのではと思い、疑似L画像を wavelet でガンガン攻めて衛星を炙り出してみました。

土星の衛星 (2018/4/29 03:09) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)
土星の衛星 (2018/4/29 03:09) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)

RS6 のパラメータは以下の通り。

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
    • L1: Denoise: 0.20, Sharpen: 0.100, 70.5
    • L2: Denoise: 0.20, Sharpen: 0.100, 62.5
    • L3: Denoise: 0.20, Sharpen: 0.100, 51.5
    • L4: Denoise: 0.25, Sharpen: 0.100, 35.5
    • L5: Denoise: 0.15, Sharpen: 0.100, 2.4
  • De-ringing: Dark side: 10, Bright side: 55
  • Mask: Low: 4, Hight: 255, Radius: 4, Feather: 5, Method: Lo-Hi Intensity
  • Contrast: 100
  • Brightness: 0

残念ながら土星の輪のすぐそばにいたミマスは輪から溢れた光に埋もれてしまいましたが、残りの4つの衛星は確認できました。これを土星の処理結果と合成してみました。

土星と衛星 (2018/4/29 01:40) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)
土星と衛星 (2018/4/29 01:40) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)

土星と衛星 (キャプション付き) (2018/4/29 01:40) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)
土星と衛星 (キャプション付き) (2018/4/29 01:40) (撮影:けむけむ、画像処理:なんば)

エンケラドゥスが確認できない方はモニターを掃除して部屋の灯りを消してご覧ください…

むすび

一枚の惑星写真ができる過程には様々な要素が絡み合ってきます。シーイング、筒内気流、ピント、光軸、拡大光学系、ADC、カメラのノイズ、画像処理、等々。そのため、他人の写真と比較した時に、違いがどこにあるのか絞り込むのは簡単ではありません。特定の要素のみ変えて、他の要素を揃えて比較するということが簡単にはできないからです。

でも画像処理については、同じ生データを使えば画像処理以外の要素を完全に揃えられるので比較が可能です。とはいえ、他人の生データを触る機会なんて通常ありません。貴重な機会を用意してくださったけむけむさん、本当にありがとうございます!

みなさんの処理結果と比べることで、課題も見えてきました。解像感のある表現という点では一定の水準に達したかなと思っているのですが、de-ringing の影響なのか不自然な点があるのに気が付きました。

具体的には、惑星の縁に近い部分で解像感が急に落ちたり、土星の輪が少し削られたようになったり、という点です。de-ringing はどうも思ったように調整できないのですが、もっと詰めていきたいと思います。

そして今年は画像処理以外のところでも改善すべき点を見つけていって、ベストな状態で火星の最接近を迎えたいと思います。

木星、土星、火星 (2020/6/9)

6月9日の深夜に久々に惑星を撮りました。今期はまだ昼の金星以外に惑星を撮っていません。というか木星土星はもう一年ほど撮っていません。この日は薄雲の漂う怪しい天気でしたが、前の日の深夜の関東は最高のシーイングだったそうで、Twitter に東京荻窪天文台③が素晴らしい木星の写真を撮影されていたので、ひょっとして今日も?と思い、無理を押して撮影しました。

結果から言うと、シーイングはダメでした… 最初に木星を撮ったのですが、合焦位置から僅かにずれたところでは激しい川の流れのような気流の乱れが見える状況で、木星面の細部が見えずピント合わせに苦労しました。

結局土星の輪の方がピントを合わせやすいと考えて先に土星を撮り、それから木星を撮り直しました。そして最後に火星を撮りました。どれも薄雲越しかそれに近い状況でゲインは上げ気味、ノイズが多いので5000コマ撮影して3000コマをスタックしています。

撮った順番とは前後しますが木星から。

木星 (2020/6/10 02:32)
木星 (2020/6/10 02:32)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 340) / 露出 1/60s x 3000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

ひどいですね… 最初は3000コマで撮影して de-rotation するつもりで何本も撮っていましたが、処理してみるとあまりにひどすぎて WinJUPOS で手間を掛ける気になれず、5000コマで撮ることにしました。露出時間は約1分半で木星の自転によるブレが少し心配になるのですが、ここまでボケボケなら関係ないだろうと思って。

シーイングがまともなら北赤道縞のうねりやそこから伸びるフェストーン、南半球には白斑も写ってそうなのですが、何もかも曖昧にしか写っていません。

次は土星

土星 (2020/6/10 01:53)
土星 (2020/6/10 01:53)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 402) / 露出 1/30s x 3000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

これもひどいですね。カッシーニの間隙は全周は写らず、輪の描写自体も曖昧です。一応カッシーニの間隙でピントを合わせたのですが、隙間がちゃんと見えていたわけではなく、揺れる像の中に段差のようなものを見出すのが精一杯でした。

なお、写真の向きは「木星の北極が上」です。木星でカメラの向きを合わせたままで撮って、撮ったままの向きで仕上げています。

最後に火星。

火星 (2020/6/10 03:20)
火星 (2020/6/10 03:20)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 280) / 露出 1/60s x 3000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

これは意外と悪くない?でも、そう見えるのは2年前の大黄雲下の曖昧な模様しか見たことがないからかもしれません。視直径はまだ9.8秒で、10月6日の最接近時の半分に満たない小さな姿ですが、南極冠の広がりがくっきりと見えています。中央の黒い帯はキンメリア人の海でしょうか?

というわけで久々の三惑星でしたがかなり残念な結果になってしまいました。そろそろ梅雨入りなので当分おあずけかもしれませんが、撮り続けないと好シーイングにも出会えないのでなるべくがんばろうと思います。

ところで、けむけむさん主催の天下一画像処理会:惑星の部に応募しました。

常々、他の人の撮った素晴らしい惑星写真と自分の残念な惑星写真を比較しても、シーイング、筒内気流、ピント、ADCの設定、スタックパラメータ、waveletパラメータ等々、要因が多すぎて何が悪いのかよくわからなくて歯がゆいなと思っていたのですが、天下一画像処理会では元データはみんな一緒で画像処理だけに要因が絞られるため、比較検討が捗るのが素晴らしいと思って応募しました。

提出した画像処理手順は画面一枚分という制約があり書けなかった事が多々あるので、手順やパラメータの詳細を13日の発表後にエントリにまとめてアップしたいと思います。

二日月、水星、金星 (2020/5/24)

5月24日の日没後、自宅で月と水星と金星の接近を撮りました。月は新月の翌日ということで二日月(月齢1.7)です。先週はずっと天気が悪く、22日の水星と金星の接近は撮れませんでしたが、24日は久々に晴れ間が出て三角に並んだ月と水星と金星が撮れました。

二日月、水星、金星 (2020/5/24 19:37)
二日月、水星、金星 (2020/5/24 19:37)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (83mm F2.8) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 1.6秒 / Lightroom CC で画像処理

細い月の右上が水星、水星の右下が金星です。水星の右上に見えている星はぎょしゃ座の五角形を形作る星の一つでエルナトという星(1.65等)です。

18:45くらいからスタンバイしていたのですが、19時過ぎくらいに月と金星に気付き、カメラのライブビューでは水星も見えていました。水星は空が明るいうちは肉眼ではなかなか見えなかったのですが、19:40くらいには肉眼でもはっきり見えるようになりました。

流れるちぎれ雲に邪魔されたりもしながら19:45くらいまで撮影しました。地上の風景を絡めたショットも撮ったのですが、あまり映えないので個人的な記録にとどめました…

先週は M61 の超新星(SN 2020jfo)を撮りたかったのですがずっと天気が悪く、この日も結構雲が流れる空模様だったので撮影は諦めました。既に減光しつつあるようですが23日に14.7等とのことなので来週中くらいならなんとかなるかなぁ…