Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

火星 (2020/10/26)

10月26日の月曜日、終業後速攻ベランダに機材を出して火星を撮影しました。こういう時リモートワークは便利です。

元々土曜日の失敗のリベンジは日曜日にと思っていたのですが、疲労が溜まって夜まで昼寝してしまい体調もよくないため日曜の火星撮影はお休みしました。どうせまたシーイングが悪いだろうし… と思っていたら Twitter で東京の人が日曜に撮ったという火星の写真を上げていて「意外にシーイングは良いようです。」などと言っていて実際よく撮れてるのを見て、これはしまったな… と思っていたのでした。

SCW の予報では月曜の夜はずっと曇りということでしたが、今年はそういう天気の方がシーイングが良かったし、またチャンスを逃したら辛いなという思いが勝って撮影に臨みました。実際20:00頃に火星を導入したところで雲が出てきて焦りましたが、10分程で雲が流れてその後はずっと快晴。シーイングも不安定ながらも間欠的に模様がくっきり見える瞬間があり、後半はだいぶ落ち着いてきて手応えあり、といった感じでした。

いつ曇るかわからなかったのでとにかく撮りまくりました。10セットくらい撮ったでしょうか。前半はピントを追い込む暇を惜しんで撮影してしまいましたが、その後当面晴れが続きそうなのがわかって、後半は改めてピントを追い込んでから撮影。結局ピントはそれほどズレてはなかったようでしたが。

実はまだ最初と最後の2セット分しか処理していないのですが、とりあえずこうなりました。

火星 (2020/10/26 20:13)
火星 (2020/10/26 20:13)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2021, Lightroom Classic CC で画像処理

火星 (2020/10/26 21:42)
火星 (2020/10/26 21:42)
撮影データは上に同じ。

どうでしょう。これならリベンジできたと言っていいでしょう。懸案のキンメリア人の海を正面に捉えた写真を撮ることができました。キンメリア人の海、なんだかキツネみたいな形に見えますね。

撮りまくってSSDもいっぱいになったし、狙ったところは撮れたので22:00頃に撤収しました。撤収前にまた撮影システムのフリップミラー側にアイピースを付けて眼視でも火星を見ました。

あいかわらず眩しくて模様も淡いのですが、キンメリア人の海とチュレニーの海、そして西から大シルチスが出てくるのが見えました。でもキンメリア人の海の西端の尖った部分とかは視認できず。眼視の方はなかなか上達しないのですが、とにかく火星から届いた光子を直接網膜に叩き込むことに意義があるのです…!

というわけで、10月1日から今までで火星をほぼ1周することができました。これだけ撮れば WinJUPOS で火星の地図も作れます。次回は火星の地図をお見せできると思います。お楽しみに!

火星(失敗) (2020/10/24)

10月24日の夜は快晴。予報でも一晩中晴れで、久しぶりに雲に邪魔されずに撮れそうと気合も入っていたのですが…

今回狙っていたのは火星のキンメリア人の海。20:30頃までに撮れれば正面に捉えることができるはずでした。18:30から機材の設置を開始、順調に作業を進めて20:00頃に火星を導入。しかしシーイングが最悪。ピントもろくに合わせられません。

鏡筒は作業開始前にベランダに出して温度順応は万全なはずなのですが… ここで部屋の換気扇を回していないことに気付きました。いつもベランダでの惑星撮影の際は部屋からベランダに暖気が漏れないように換気扇を回してベランダから室内に空気が流れるようにしていたのですが、それを怠って暖気がベランダに滞留していたとか?

ということで換気扇を全開で1時間程回してみたものの、シーイングはほとんど改善せず。スタックして wavelet をかけても模様が全然浮き出てこず縁に煎餅のひび割れのようなノイズが浮き出すばかり。例の「おせんべいノイズ」です。

22:00前、火星は南中間近でしたが一向にシーイングが改善しないので諦めて撤収しました。この快晴でまさかのボウズ。せっかく極軸を追い込んだので赤道儀は撤収せずに月没後に何か撮ることも考えたのですが、集中力も切れてしまったし撮りたい対象も思い浮かばなかったのでやめにしました…

翌朝モノクロカメラでテスト撮影した動画を改めて処理してみました。「おせんべいノイズ」ですが、これだけ像が荒れているならAS!3のアライメントがうまくいかず継ぎ目破綻してるのでは?と思いサイズ 360 の1点APでスタックしてみたところノイズがでなくなりました。また全然浮き出さない火星面の模様は以前の「こってり」用の wavelet パラメータをベースに攻めるとある程度浮き出してきました。

火星 (2020/10/24 21:36) (AP1点(APSize360))
火星 (2020/10/24 21:36) (AP1点(APSize360))
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM (Gain 244) / 露出 1/125s x 1500/5000コマをスタック処理 x2 を de-rotation / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

ボケボケですがキンメリア人の海、チュレニーの海、大シルチスの存在はわかります。南極冠も見えています。プレビューでは像が不安定過ぎてほとんど視認できなかったのですが、一応写っているんですね…

参考までに同じ元データからAS!3のAPサイズ・配置だけ変えて処理した画像を以下に。

火星 (2020/10/24 21:36) (通常のAPサイズ・配置(APSize64))
火星 (2020/10/24 21:36) (通常のAPサイズ・配置(APSize64))

これはシーイングが良い時と同じパラメータでスタックしたもの。AP は Size 64 を Min Bright 5 で自動配置です。縁の割れたような模様が目立ちますが、内側の火星の模様も偽の模様が混じっている怪しいものになっています。

「おせんべいノイズ」は縁だけ荒れるから継ぎ目破綻とは別の現象なのかと思っていましたが、気付いてなかっただけで実際には内部もおかしくなっていて、1点APでは発生しないことからも、やはり継ぎ目破綻によるものと考えてよさそうです。

よく言われる、惑星の縁にAPを配置すると継ぎ目破綻が出やすいので縁を外して内側だけにAPを置くと良い、というセオリーにしたがって、Min Bright 60 で自動配置して縁にAPが来ないようにしてみたものが以下。

火星 (2020/10/24 21:36) (APを縁に配置しない(APSize64))
火星 (2020/10/24 21:36) (APを縁に配置しない(APSize64))

縁のひび割れ模様は目立たなくなりましたが、内部の模様が怪しいのは替わりませんでした。

というわけで、このところ好調だった火星の撮影も、悪シーイングの前に撃沈です。かなりショックだったのですが、「おせんべいノイズ」の正体がわかったのは収穫でしょうか…

昼に WinJUPOS で火星の地図の作成の予行演習をして、あとはキンメリア人の海がちゃんと撮れれば完成というところまでいっていたのですが、完成はおあずけです。今夜も晴れそうですがシーイングはどうでしょうか…

火星 (2020/10/20)

前回「次は大シルチスが見たいです」と書きましたがさっそくチャンスがやってきました。

10月20日は快晴。疲労がたまって仕事は休むし家事でもミスが多かったので火星の撮影はお休みするつもりだったのですが Stellarium を見ると21時頃に大シルチスが正面に来るということなのでちょっと無理して撮影することにしました。月もまだ細い時期でこの天気なら DSO を撮りたくなるところですが、今月は火星に全集中です…

18:30 頃から機材の設置を開始。ドリフトアライメントに20:00頃までかけて、ピント合わせに苦労しつつ20:20頃に撮影開始。あわてずゆっくり動いて思い付きで余計なことをしないようにして事故防止を心がけましたが、柱に頭をぶつけるなどヒヤリハットが2、3ありました… 幸い機材の落下等の事故はなかったです。

まだ高度が低いせいか*1 シーイングは安定せず時折すっと良く見える瞬間はあるもののかなりぼやけることも多く、写りはどうなるのかなと思ったのですが、いつものように撮影と並行して仮の画像処理を行うことはせず(並行作業をすると注意力が落ちるので)、ただただ撮影。

2セット(12本)撮ったところで雲が出てきて撮影中断。あんなに晴れていたのに南東の空のかなり広い範囲にわたってうろこ雲が延々流れてきて止まりません。Twitter で愚痴ってたら、同じ時間に東京でDSOを撮っていたHIROPON(id:hp2)さんから東京にさっき来て流れていった雲じゃないかとのお返事。空はつながってるんだよなーと実感しました。

時折雲の隙間から見える火星の姿が見えるのですが、その像が妙に安定して見えて悔しい思いをしました。雲の切れ間とか妙にシーイングいいことあるんですよね… 我慢できずに何本か撮影しましたが雲に邪魔されてまともに撮れませんでした。

今日はこれまでかと思ったら21:00頃から晴れ間が多くなったので必死で約4セット分撮影しました。体調のこともあるしSSDもいっぱいになったのでここで撤収。

撤収前に拡大光学系を付けたままフリップミラー越しに眼視で火星を見ました。アイピースはセレストロンの24-8mmズーム。24mmで250倍くらいだと思うのですが、それでも眩しいし模様が薄い… 倍率を上げれば暗くなってちょうど良いかと思ったら飛蚊症(?)なのか目の中のホコリみたいなのが見えるようになってきて淡い模様を落ち着いて見ることができません。

さすがに大シルチスみたいな大きな地形はそれでも視認できたのですが、よく眼視レポートにあるようなあれこれがこんなふうに見える!っていう感じではないですね。アイピースが悪いのか老眼が悪いのか… 眼視観測は若いうちにやっておくべきって話も聞きますがほんとそうかも。

というわけで撮影した写真です。前回同様リムの二重化をごまかす処理をしています。前回はL画像だけその処理をかけたのですが、今回はRGB画像にも同じ処理をしてごまかした部分に色が残る問題に対処しました。

火星 (2020/10/20 20:25)
火星 (2020/10/20 20:25)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

火星 (2020/10/20 20:35)
火星 (2020/10/20 20:35)
撮影データは上に同じ。

大シルチスがほぼ正面に来ています。これが撮りたかったんです。2年前の大黄雲下の火星では見えなかった細かい模様が見えていますね。その下のチュレニーの海と合わせてなんかイモ虫が踊ってるような形に見えますが…

さらにその下のヘラス盆地はやはり黒ずんでいます。黒い模様に塵が積もって明るくなるのはわかるんですが、明るいところが黒くなるのはどういうことなんでしょう?

北極付近と南西の端に雲が見えるのは相変わらずです。いつも西側に雲ということは火星では朝に雲が出やすいということでしょうか?それとも単に角度の関係で見えやすくなっているだけ?今回は西の端にも雲が見えますし。

火星 (2020/10/20 21:02)
火星 (2020/10/20 21:02)
スタック処理 x3 (L:2, RGB:1)。他は上に同じ。

ちょっと荒れてますが雲に邪魔されて Lx2, RGBx1 しか撮れなかった分です。

火星 (2020/10/20 21:30)
火星 (2020/10/20 21:30)
スタック処理 x5 (L:3, RGB:2)。他は上に同じ。

火星 (2020/10/20 21:42)
火星 (2020/10/20 21:42)
スタック処理 x6 (L:3, RGB:3)。他は上に同じ。

火星 (2020/10/20 21:51)
火星 (2020/10/20 21:51)
撮影データは上に同じ。

火星 (2020/10/20 22:02)
火星 (2020/10/20 22:02)
撮影データは上に同じ。

西からサバ人湾が見えてきました。

というわけであとはキンメリア人の海の西の方を撮れば一周分になって WINJUPOS で火星全体の地図も作れます。横浜は週末まで天気が崩れそうですが、土日に期待したいところです。

*1:高度が低いと言っても40度以上あって、2年前の大接近の時の南中高度よりもずっと高いのですが。

火星 (2020/10/18)

日曜日はうっかり夕方から20時過ぎまで昼寝(?)してしまって、あわててベランダに出ると南の空はほぼ快晴。SCW では22時頃に少し晴れ間が出る以外は曇りという予報だったのでびっくり。すぐ曇ってしまう可能性も高かったのですがダメ元でベランダに望遠鏡を出しました。

重いものを扱うのであわてずに… と安全第一で設置作業をしていたら案の定ドリフトアライメント中に雲が出てきて作業中断。極軸の高度調整が追い込めなかったのですが南の空は雲が薄かったので方位調整だけ最後に詰めてそのまま火星を導入したもののすぐ一面に雲が広がり火星はほとんど見えなくなってしまいました。

今回は空振りかなと思いつつも諦めきれず30分ほど待っていたら、あれほどあった雲がすっかり消えて晴れてきたので急いでピントを合わせて撮影開始。シーイングは間欠的に大きく乱れるものの安定しているタイミングでは悪くはない、という感じでしたが、いつまた曇るかわからなかったのでシーイングの安定を待たずに連続で4セット撮影。その後休憩を挟んで、と思ったらまた雲が広がってきたし、翌日仕事もあるので0時前に撤収しました。

が、結局寝れなくて朝方から始業前まで画像処理をやっていました。仕事が終わってから画像を見直すとちょっと物足りなかったので再処理。あとリムの二重化がやっぱり気になって、どうにかならないかとネットを検索すると A’s balcony というサイトにこんな記事が。

ちょうど『月刊 天文ガイド』11月号の連載記事「「月・惑星」画像高解像度撮影法」で火星のリムの二重化の原因と対策を扱っているとか。さっそく Kindle 版を購入して読んでみました。原因は光学的なもので画像処理でもいまいちいい対策がない、RegiStax の de-ringing は極冠が削れてしまってよくない、観賞用なら強調を弱めた画像と合成してごまかす、としてPhotoshopでごまかす方法が書いてありました。

というわけで、今回は同記事の手法を少しアレンジしたやり方で処理してみました。

火星 (2020/10/18 22:56)
火星 (2020/10/18 22:56)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

火星 (2020/10/18 23:05)
火星 (2020/10/18 23:05)
撮影データは上に同じ。

火星 (2020/10/18 23:13)
火星 (2020/10/18 23:13)
撮影データは上に同じ。

火星 (2020/10/18 23:23)
火星 (2020/10/18 23:23)
撮影データは上に同じ。

子午線の湾からサバ人の湾にかけての大きな模様が正面を向くタイミングでした。12日の写真から60度程東に回った形です。サバ人の湾の丸く抉れたところの東側から北西方向に棘のように伸びる細い模様もギリギリ写っています。

北極付近と南半球の中緯度地域の西の端、赤道地域の東の端に白く雲が見えています。南西部にヘラス盆地が写っていますが、少し黒ずんでパッとしません。2018年の大接近の際には妙に明るく輝いていたのですが何が違うのでしょう?

というわけで、毎回雲に邪魔されて一晩ではあまり広い領域が見れないのが残念ですが、次は大シルチスが見たいです。火星があまり離れないうちにチャンスがあるといいのですが。

惑星写真の画像処理の再検討

先日の火星の写真で wavelet 処理の際のパラメータを大幅に見直したという話をしました。

今回は wavelet パラメータを大幅に見直しています。具体的には今まで Initial Layer 2 で Layer 1〜3 で調整していたのを、今回は Initial Layer 1 で Layer 2〜6 で調整しました。そのままだとかなりキツいノイズが出るのですが Denoise を大きめ(0.25〜0.35)にしてノイズを抑えています。
火星 (2020/10/12)

これを8月1日の木星のベストショットでやってみたらどうだろうということで再処理してみたのですが、wavelet の強度をがっつり上げてもコントラストが思ったように上がらず、これは失敗かなと思いつつ最後まで仕上げてみたのですが、意外にも、これはイケるのでは?という結果になりました。

木星 (2020/8/1 21:45)
木星 (2020/8/1 21:45)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 298), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 335) / 露出 1/60s x 1500/3000コマをスタック処理 x8 (L:4, RGB:4) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

ちょっと淡くて物足りないけど階調が豊かになってかなりナチュラルな感じ?と思って Twitter に貼ってみたところ、天文クラスタの人たちからいっぱい「いいね」をもらってびっくりしました。34件で「いっぱい」?と思われるかもしれませんが、いつも天体写真を貼ってもフォロー外の天文クラスタの人からはほとんど反応がなかったので…

ちなみに以前の仕上がりはこうでした。

木星 (2020/8/1 21:45)

比べてみると、全体的に暗いのは意図的なもの*1 なのでいいとして、なんというかちょっとギトギト過ぎる感じがしてきますね… 細かいディテールまでクッキリ・ハッキリ描写したい!と思ってノイズが浮くか浮かないかの限界まで wavelet を攻める方向性で、濃い色の模様という「図」のあぶり出しばかりに目が行って「地」の部分の階調のバランスが全然見えてませんでした。

と、反省するものの、これはこれでなんか「来る」ものがあるんですよね。なんというか、久しぶりに天下一品の「こってりニンニク入り」ラーメンを食べた時のあの満たされた感覚のような…

実際何度もこれを見返してハァハァしていた(?)ので、こういうのが好きという気持ちは否定できないところですし、再処理したものを見ても何か物足りない感じが残ってしまうんですよね。でも「写真」としては今回の方が正解なんでしょうね。今回の仕上げの方がずっとリアルな感じがするので。

でもやっぱりちょっと物足りないかな?と思ってもう少しだけ wavelet を強くしたものも作ってみたのですが、明らかに階調表現が劣化しているのがわかってしまってボツにしました。解像感と階調性はトレードオフなんでしょうか?なかなかバランスが難しいようです。

L画像だけ見ててもそのへんわかりにくいんですよね。wavelet いじりながらリアルタイムでLRGB合成の結果が見えるといいんですけど…

10月12日深夜の火星のベストショットも改めて階調に注意しながら再処理してみました。色調も少し見直しています。

火星 (2020/10/13 00:33)
火星 (2020/10/13 00:33)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

うーん、リムや南極冠まわりのアーティファクトが軽減しているのはいいんですが、木星のようなガス惑星と違ってふわっとした描写が自然というよりはピンぼけ感に繋がって微妙なような… とはいえトータルで見るとより自然な仕上がりになっている気がします。

というわけで、今後は解像感ばかり追い求めず階調性にも気を配っていきたいと思います。

*1:大赤斑後方(左)の輝点を目立たせたかったので。

火星 (2020/10/12)

10月12日の夜は曇り空だったのですが、夜中から晴れ間が見えそうな予報だったので19:30頃から機材をベランダに出して待機。

22時頃から南の空は時折雲が切れたのでその隙にドリフトアライメントで方位だけ合わせたのですが、東の空は曇ったままで高度調整はできず。そうこうしているうちに南中前の火星が見えてきたので見切り発車で撮影を始めました。結果から言うと極軸は許容範囲内でなんとか最後まで撮影できました。

23:20から翌1:20までの間に7セット撮影。0時頃からシーイングが安定してきて、0:33のオーロラ湾からマリネリス峡谷にかけての地形が正面に来たタイミングの写真がベストショットになりました。

火星 (2020/10/12 23:27)
火星 (2020/10/12 23:27)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

前回から一週間経って前回は東の端の方に回り込んでよく見えなかった地形が見えてくるようになりました。

中央やや左上の指を三本立てたような形の黒いところがオーロラ湾、その左下をほぼ水平に走る黒い筋がマリネリス峡谷です。北極から広がる黒い領域はアキダリアの海です。

火星 (2020/10/12 23:38)
火星 (2020/10/12 23:38)
撮影データは上に同じ。

火星 (2020/10/12 23:49)
火星 (2020/10/12 23:49)
撮影データは上に同じ。

火星 (2020/10/13 00:03)
火星 (2020/10/13 00:03)
撮影データは上に同じ。

火星 (2020/10/13 00:33)
火星 (2020/10/13 00:33)
撮影データは上に同じ。

これが昨夜のベストショット。中央少し上にオーロラ湾とマリネリス峡谷。その左下に太陽湖が見えてきています。左上に小さな虫さされみたいにふくらんでいるのはタルシス三山の一つアスクラエウス山と思われます。

火星 (2020/10/13 01:03)
火星 (2020/10/13 01:03)
撮影データは上に同じ。

火星 (2020/10/13 01:11)
火星 (2020/10/13 01:11)
撮影データは上に同じ。

今回は wavelet パラメータを大幅に見直しています。具体的には今まで Initial Layer 2 で Layer 1〜3 で調整していたのを、今回は Initial Layer 1 で Layer 2〜6 で調整しました。そのままだとかなりキツいノイズが出るのですが Denoise を大きめ(0.25〜0.35)にしてノイズを抑えています。

ベタっとした感じがやわらいで階調が豊かになったような… うーん、見比べてみるとそんなに変わらないかな?もう少し強調を抑えてもいいかも。でもマリネリス峡谷とかプレビュー映像でもかなりはっきり見えていて、それ以上にはくっきりと見せたいと思うと…

というわけで、オーロラ湾周辺の複雑な模様がくっきり撮れて満足です。とはいえまだ火星の半分くらいしか撮れてないので、大チルシスが撮れるまでは頑張りたいと思います。

最接近の火星、フォボスとダイモス (2020/10/6)

火星最接近の日、10月6日の夜は曇りだったのですが、SCW を見ると横浜付近は深夜遅くから晴れそうな気配はあって、迷いましたが20時頃からダメ元で準備を始めました。

まず前回の撮影データのバックアップを取ってSSDの容量を空け、21時半頃からベランダに機材を設置。設置中に東の空の雲が切れてきて火星が見えてきたのですが、ドリフトアライメントに使う南の空は曇ったまま。

雲が薄くなった隙を見ては調整を繰り返してるうちにまた火星が雲に隠れて、23時頃再び火星が出てきたので極軸は最後の追い込みを諦めて鏡筒を載せ替えてました。*1 火星は導入したもののまた雲に隠れてピント合わせもできず、東の空の薄雲越しの月でピントを合わせていたのですが、その月もすぐ雲に隠れてしまいました。

そうこうしているうちにまた火星が見えてきたので再導入。しかし雲が薄くなった隙にピントを合わせようとしても雲の隙間は1分も続かないのでなかなかピントを追い込めません。0時過ぎに晴れ間が見えて、ここは迷いましたが、プレビュー映像では十分合焦しているように見えたのでそのまま撮影開始。1セット(動画 L 3本、RGB 3本)撮影したところでまた曇り。

火星 (2020/10/7 00:14)
火星 (2020/10/7 00:14)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 264), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.2.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

マリネリス峡谷が正面に来ているうちに撮りたかったのですが…

1時前に雲が流れていったので今度はピントを合わせなおして2セット撮影。

火星 (2020/10/7 00:56)
火星 (2020/10/7 00:56)
撮影データは上に同じ。

火星 (2020/10/7 01:05)
火星 (2020/10/7 01:05)
撮影データは上に同じ。

ここでまた雲がでて2時前まで中断。その後晴れてきてもう1セット撮影。

火星 (2020/10/7 01:53)
火星 (2020/10/7 01:53)
撮影データは上に同じ。

オリンポス山が正面に来ています。北半球の中央より少し上辺りに虫さされみたいにふくらんで見えているのがそれです。

火星もだいぶ傾いてきたので、ここで衛星狙いに切り替えるのもありかと Stellarium で確認したところ、ちょうどフォボスが火星から離れた位置にあると知って、衛星を撮りました。プレビューでは露出を上げても全然見えないので目測でフレーミングして撮影です。

火星、フォボス、ダイモス (2020/10/7 02:21, 02:19)
火星、フォボスダイモス (2020/10/7 02:21, 02:19)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2, ZWO ASI290MC (Gain 302) / 火星:露出 1/125s x 2500/5000コマをスタック処理, 衛星: 1/4s x 250/500コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.2.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

右から火星、フォボスダイモスです。

衛星を撮った写真に火星をはめ込み合成しました。WinJUPOS で位置合わせをしています。衛星は wavelet を攻めてあぶり出してコントラストもがっつり上げてやっとこの程度です。シリウスBの時みたいに直焦点で撮ればもっとくっきり撮れるのでしょうか?

その後、撤収前に上の写真の処理をしていて衛星の写真でホットピクセルが目立ってしまうのに気付いて追加でダークフレームを撮影しました。

ということで4時前に撤収完了したのですが、やはり眠れず朝まで画像処理をしてしまいました…

というわけで無理かと思っていた今年の最接近の火星をなんとか撮れました。シーイングもそこそこで、まあまあ満足できる結果が得られました。これから台風も近づいてしばらく雨が続きそうなので、昨夜撮れたのは本当にラッキーでした。次に晴れる頃には裏側の地形も見えるでしょうか。今後も撮れそうな時はなるべく頑張ってみます。

*1:μ-180C にはガイドスコープを取り付ける場所がないので、ドリフトアライメントは RedCat を載せてやっています。RedCat 本来の出番が全然なくてこんなのばっかり…