Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

木星 (2021/7/16)

7月16日、関東地方はやっと梅雨が明けました。今夜は晴れるんだろうなと思いつつ体調が悪くて23時頃まで寝てました。目がさめてからやはり外が気になってベランダに出ると少し雲が出てはいますが、木星土星、そして空高くアルタイルが見えています。Sky&Telescopeの木星アプリJupiterMoonsを見ると深夜1:30頃には大赤斑が正面に来るとのこと。

というわけで頑張ってベランダに機材を出して途中雲に邪魔されつつ極軸を合わせて、その間に鏡筒の温度順応も済ませて1:00頃から撮影。え、なんかシーイングむっちゃ良くない?と思って夢中で撮影して、これまた途中で雲に邪魔されつつも3:00頃まで撮影。もう少し撮れそうでしたが、動画データが500GBに達したし、夜明け前だからか少しシーイングも乱れてきたのでそこで撤収しました。

ちなみに大赤斑が正面に来たのは2:20頃で予報よりだいぶ遅れていましたが、おかげでいいタイミングで撮れました。

とりあえず寝落ちする前に AS!3 のスタックとスタック画像の仮 wavelet 処理まで一通りやったのですが、どれも昨年ベストコンディションだった8月1日に匹敵しそうなヤバそうな写り。急いで3セットだけ処理したのですが、昼前に見直すと「こってり」し過ぎだなと思ってL画像の「あっさり」バージョンを作って再処理。昼寝して夕方起きて見直すと今度はあっさりし過ぎなような… と思って昨年8月1日の画像の階調を参照しつつ「こってり」のブレンドを増やしてみたり。

というわけでできたのがこれです。*1

木星 (2021/7/17 1:44) (A+60%K)
木星 (2021/7/17 1:44) (A+60%K)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 276), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 360) / 露出 1/60s x 1500/3000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.0.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

木星の左側にポツポツとある光点はイオの軌跡です。イオは、ちょうど撮り始めの1:40に木星の後ろから顔を出してきました。3セットの derotation なので3つ写っています。WinJUPOS って衛星の位置は表示するけど derotation はしないんですね。

ていうか、かなりキてるような!?複雑な模様の細部がかなり詳細まで写っています。先日「元気がない」とか言ってましたが、やっぱりそんなことはないですね。でも、なんか大赤斑の色が薄くなっているような… 気のせい?画像処理の加減でそう見えるだけ?

リング状の縁と中心部はそこそこ赤いのですが、その間の部分の色がずいぶん淡くて、逆にひときわ色付いている北赤道縞の南側の褐色の濃い部分と同じくらいの色合いになっているように見えます。比較のために昨年のベストショットを以下に。

木星 (2020/8/1 21:45) (A + K 10%)
木星 (2020/8/1 21:45) (A + K 10%)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 298), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 335) / 露出 1/60s x 1500/3000コマをスタック処理 x8 (L:4, RGB:4) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

やっぱりもっと赤いですよね、例年は… ちょっと心配です。

まだ大量に未処理のデータがあるのですが、これからちまちま WinJUPOS に入力して処理していきます。今回は途中雲に邪魔されましたが、その後はベストシーイングに近い状態がずっと続いたので、1時間半くらいぶっ続けで撮りました。十分なデータがあるので木星の自転のタイムラプスムービーも作るかも。

ちなみにモノクロカメラ、カラーカメラ共にセンサーにゴミが乗ってる部分があってそれを避けるためカメラ切り替えの度に木星の位置をずらさないといけなくて大変でした。その時うっかり木星を写野外に飛ばしてしまって再導入のために一度カラーカメラを外さなくてはならなくなったり。モノクロカメラの方は先日自己流のクリーニングをしたのですが、かえってゴミが増えているという… 翌朝とりあえず定評のあるペンタ棒を注文しましたが、うまくいくかどうか。

*1:タイトルの A は「あっさり」 K は「こってり」で、「あっさり」バージョンに「こってり」バージョンを60%ブレンドという意味です。

メインPC新調

家のPC環境は、日常作業や開発に使うメインPC(OS は Ubuntu Linux)と天体撮影・画像処理・動画編集等に使うサブPC(OS は Windows 10)とその他サーバーという構成なのですが、ついカッとなってメインPCを新調しました。

サブブログ(天文以外のあれこれを書いてます)の方に詳しく書きました。


天文関係では Stellarium の設定の移行とか、astrometry.net の星表データの移行とかが参考になるかもしれません。

Athlon 5350 (4C4T/2.05GHz) から Ryzen 3 PRO 4350G (4C8T/3.8GHz)*1 への移行なのですが、何をするにしてもサクサク動いて驚きました。Web を見たりメールを見たりテキスト編集やプログラミング程度なら低スペックPCで十分と思ってメインPCは古いPCのお下がりか低スペック省電力のシステムにしていたのですが、認識を改めなくてはなりません。

単純な演算速度にしても astrometry.net の solve-field が30秒で完了する*2 のに驚愕。このくらい速いと色々使いみちも出てきそうですね。

このところ体調が悪くてすぐにとはいきませんが GalaxyAnnotator の開発もそろそろ再開しようと思います。

*1:BIOS設定でTDP 35Wに制限しています。

*2:3240 x 2160 モノクロJPEGで、--downsample 2 --sigma 1.0 オプションを指定。

Topaz Sharpen AI で火星を処理してみたけれど…

先日ついカッとなって Topaz Labs の AI 製品をセット買いしてしまいました… Gigapixel AI, DeNoise AI, Sharpen AI のセットで、特価で $159.99 でした。

Sharpen AI については今年の3月に惑星写真に適用した例が「RB星のブログ」で紹介されています。

RB星さんをして「恐ろしいほどまでの危険領域だと思います・・・危険!!!」と言わしめる Sharpen AI ですが、調整パラメータの組み合わせが結構あって、危険領域があるのは確かなんですが、パラメータ次第では安全地帯はあるのか?というあたりを検証するには一通りのパラメータの組み合わせで処理してみるしかありません。

Sharpen AI のパラメータは以下の組み合わせになります。カッコ内の文字(S, N, G)は画像一覧の Settings 欄に表示される設定項目の省略記号です。

  • Model Type: Motion Blur / Out of Focus / Too Soft
  • Image Quality: Normal / Very Noisy / Very Blurry
  • Remove Blur (S): 0-100
  • Suppress Noise (N): 0-100
  • Add Grain (G): 0-100

Model Type と Image Quality は UI 上ではまとめて Image Quality になっていますが、3択のメニューが二つあるので分けて分類しました。

Model Type の Motion Blur はブレのある画像用のモデル、Out of Focus はピンぼけ画像用のモデル、Too Soft は汎用のモデルのようです。

Image Quality の Normal は普通の画像、Very Noisy はノイズの多い画像、Very Blurry はボケの大きい画像に対して選択すると良いようです。

シャープ化の効き目はもっぱら Remove Blur (S) のスライダーで調整します。これにノイズ除去の Suppress Noise (N) と粒状性を上げる Add Grain (G) を組み合わせて、スライダーの設定だけで100万通りあります。

これに Model Type と Image Quality の組み合わせを合わせて全部で900万通りの設定があるわけですが、さすがに全部やるわけにはいきませんし、一覧するのも大変なので、N と G を 0 に固定して、S を粗く三段階動かしたものの一覧を作成しました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/TopazSharpenAI-Mars-ss-01.jpg

PC かタブレットで見てください(要 JavaScript)。今時のブラウザなら動くはずです(IE では動きません)。画像のロードに時間がかかるので表示が始まるまで気長に待ってください…

Model Type, Image Quality, サンプル画像の絞り込みは、画面右上のメニューボタン [≡] を押すと出てくるメニューの項目をクリックで ON/OFF するとできます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/TopazSharpenAI-Mars-ss-02.jpg

S の範囲は 25, 50, 75 の三段階ですが、 Out of Forcus のモデルは他より感度が高い(少し上げるだけで効き目が大きい)傾向があったので 12, 25, 37 の三段階にしています。

サンプル画像は2020年10月に撮った火星の写真5種類です。色が単調な方が模様のシャープ化の傾向がわかりやすいというのと、当時の火星が本来どんな模様だったかを比較するのに他の人が撮った高解像の写真が得やすい(準大接近だったので同じ頃に多くの人が撮っている)のでこれを選びました。

だいたいの傾向は以下の通りです。

  • Motion Blur:
    • Normal: 基本的にザラザラした感じに仕上がる。S50 以上は wavelet のアーティファクトがパターンとして強調されてしまうが、全体的には不自然なところは少ない。
    • Very Noisy: Normal と似た傾向だが、よりキツ目に処理される感じ。
    • Very Blurry: 輪郭が破綻する。火星の縁の雲の部分をブレと勘違いしている?
  • Out of Focus:
    • Normal: S20 以上は wavelet のアーティファクトがパターンとして強調される。Motion Blur よりくっきり強調される感じ。
    • Very Noisy: Normal と似た傾向だが、パターン化したアーティファクト同士が繋がって模様のようになる傾向がある。
    • Very Blurry: S25 以上は油絵状態。
  • Too Soft:
    • Normal: wavelet のアーティファクトのパターン化は弱め。逆に言うと特別クッキリした感じにもならない。
    • Very Noisy: Normal より若干ボケたような感じ。
    • Very Blurry: ウロコのようなパターンが出やすい。S25 以上は油絵化。

N の効き方を見るため、Out of Forcus / Normal のみ、S を 25, G を 0 に固定して、N を 0, 25, 50 の三段階動かしたものを一覧にしました。

N を上げたら細かいアーティファクトのパターン化が抑えられるかと思ったのですが実際は逆でした。むしろ模様がよりクッキリ、細く、鋭くなることで、アーティファクトも強調されてしまいます。

G の効き方を見るため、Out of Forcus / Normal のみ、S を 25, N を 0 に固定して、G を 0, 25, 50 の三段階動かしたものを一覧にしました。

これはそのまんま粒状感が増えるだけみたいです。その量もわずかなのであまり代わり映えしません。

ということで、一通り見てきましたが、どの設定でもスライダーを上げていくと wavelet のアーティファクトと思われる薄い濃淡がパターンとして強調されてしまい、なかなか厳しいものがあります。強調された模様も、たとえば ALPO-Japan に投稿された Damian Peach 氏の火星の写真*1と比べると「似ても似つかない」と言ってよいレベルに見えます。

かといってスライダーを抑え気味に使う限りは Lightroom の「テクスチャ」や「シャープ」あたりとあまり変わらない印象で、やはり使いどころがないのでは… というのが正直なところです。

*1:これとか、これとか。

月面X (2020/12/22)

昨日HDDの整理をしていたら昨年12月22日の木星土星の大接近(2日目)の撮影データのバックアップ*1 がみつかって、なにげなく中を見ていたら本番撮影前にピント確認のために撮った月面にいわゆる「月面X」が写っているのに気が付きました。

これ、撮ってた時は全く気付いてなくて、昨日初めて「あれ?これ「月面X」じゃね?」ってなりました。以前「月面X」にはあまり興味がないという話を書きましたが、本当に興味なかったんだなぁ、と我ながら…

というわけで、せっかくなので仕上げてみました。

月面 (2020/12/22 16:11)
月面 (2020/12/22 16:11)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), William Optics 1.6倍バロー (合成F9.6), ZWO ADC 1.25", ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 112) / 露出 1/250秒 x 1500/3000コマをスタック処理(1.5倍 Drizzle) / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理。

月面X (2020/12/22 16:11)
月面X (2020/12/22 16:11)
撮影データは上に同じ。

ピント確認のためだけに撮ったものなので構図が無茶苦茶ですが… 日没前の青空に浮かんだ月ですので、色調は青かぶりしたままにしてあります。バローレンズの倍率が低くて8cmの分解能を活かしきれてないのが残念ですが、そこそこくっきり写ってますね。

調べてみるとこの日は2020年最後の「月面X」だったそうで「森の青葉 Ⅱ-BORGで身近な野鳥撮影ブログ」森の青葉さんが写真を撮っていました。

これはよく写ってますね。Nikon1 J5 あなどれないな…

そんな「月面X」ですが、今年は6回あって、直近では6月17日21:30頃だそうです。

今週の木曜日なんですが、天気予報では今週はずっと雨で無理そうです。まあ、興味はないんですけど…

*1:本当は外付けHDDにバックアップしているのですが、撮影前にSSDの空き容量を確保するため、急遽空いてる内蔵HDDにコピーしたものが残っていました。

木星とM16の再処理とか『星ナビ』のバトンとか

週末は6月9日の夜に撮った写真の再処理をしていました。

まず木星

木星 (2021/6/10 02:52) (再処理)
木星 (2021/6/10 02:52) (再処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 304), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 387) / 露出 1/60s x 1000/3000コマをスタック処理 x8 (L:4, RGB:4) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.0.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

L画像の wavelet をもう少し「攻めた」パラメータで「こってり」仕上げたものを元の画像に33%だけブレンドしました。ちょっとだけ縞模様の詳細が見やすくなった?

最初からいい感じのパラメータに調整できればいいのですが、L画像だけ見ていいぞ!って思ってもLRGB合成すると色の階調が思ったのと全然違う(大抵はベタっとした感じになってしまう)ことが多く、なかなか一発では決められません。

なので、迷ったら wavelet 強めと弱めの二つのL画像を作って Photoshop のレイヤーで重ねてレイヤーの不透明度のスライダーを調整して良さそうなポイントを探ることにしています。リアルタイムで wavelet いじりながらLRGB合成のプレビューを見れるツールがあるといいのですが…

ちなみに木星の模様が元気なさそうって言ってましたが、RB星さんが同日に撮った写真を見ると全然そんなことはなくて、細かい模様が解像してなかっただけでした。


次に M16 わし星雲。

M16 わし星雲 (2021/6/9 23:01) (再処理)
M16 わし星雲 (2021/6/9 23:01) (再処理)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MC + PHD2 2.6.9dev4 による自動ガイド / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 20 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.6, Lightroom Classic, StarNet++ (7079110, TF2), Photoshop 2021 で画像処理

あんまり代わり映えしませんね… 星マスクの不備で恒星の周りが暗く落ち窪んでたのを改善しました。が、左端と右側の一部に変なカブリが残ってますね… うまい修正方法がわからずそのままです。

元々は黄色いカブリはフラットダークを撮ってなかったせいでは?と思って朝方にベランダに出て撮って再処理していたのですが、これはほとんど変化なし。そこでフラットの偏りを是正するためにフラットを半分に減らして再処理したのが上の写真。でもあんまり変わりませんでしたが、せっかくなので星マスク処理を修正して仕上げました。

これを撮った翌日にだいこもんさん(id:snct-astro)が蔵王で撮った写真と比べると残念感がすごいのですが、光害地でしかも無改造デジカメで撮ってたらこれが限界ですかねぇ。


さて、先日『月刊 星ナビ』7月号が発売されました。

先月僕が受け取った「ネットよ今夜もありがとう」のバトンですが…

これ、結構迷ったのですが、結局銀河の赤外撮影の件でお世話になった「もりのせいかつ」のkさんに渡しました。

はてなには天文ブロガーがまだ何人かいるのですが、はてな内でぐるぐる回すのもちょっと、というのと、この連載については「フォトコン常連のベテランでもまだバトンが回ってない人が結構いる」という話を聞いていて、それならば、と。これでバトンははてな宇宙域を離れましたがいずれ戻ってくる日も来ると思いますので日々の鍛錬を怠らないようにしましょう!

土星、木星 (2021/6/9)

6月9日の深夜、M16 を撮った後は土星木星を撮りました。μ-180C は最初からベランダに出していたので温度順応は済んでいましたが、拡大光学系の組み立てとか導入とかピント合わせに時間がかかるとはいえ、2時頃から準備すればいいかと思っていたのですが、M16撮影中に調べたら2:37天文薄明開始とかでびっくり。

M16の予備のコマをもう2コマ撮りたかったのですが諦めて撮影を終わりにしてフラット撮ってベランダの隅でタイマーでダークを撮りながら惑星撮影の準備。2:18、明るい木星は少々空が明るくなっても影響は少ないと見て土星から撮影を始めました。

土星 (2021/6/10 02:18)
土星 (2021/6/10 02:18)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4)*1, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 304), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 387) / 露出 1/30s x 2500/5000コマをスタック処理 x2 (L:1, RGB:1) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.0.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

シーイングはやや不安定ながら安定した瞬間はそこそこキレのいい像が見えてプレビューでカッシーニの間隙が全周視認できました。

しかし輪が随分狭くなってきましたね。3年前、この機材で土星を撮り始めた2018年に撮った写真がこれです。

土星 (2018/7/29 20:42-20:44) (1500/3000 LRGB)
土星 (2018/7/29 20:42-20:44) (1500/3000 LRGB)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM, RGB: ZWO ASI290MC / L, RGB: 露出 1/30s x 1500/3000コマをスタック処理したものをLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 10.3.9, Lightroom Classic CC で画像処理

2025年にはいわゆる「輪の消失」が起こります。土星の輪の厚みは数十メートルしかないので地球から輪を真横から見る角度になると、輪が見えなくなるのです。「輪の消失」は土星が一回公転する間に2回、約15年周期で起こり、前回は2009年でした

土星の写真は一応LRGB合成していますが de-rotation していない「なんちゃってLRGB」です。模様が少ないのをいいことにズルしています。土星の de-rotation は何度やっても土星本体が輪を突き破ってしまってうまくいかないんですよね… なにが間違っているのか。そろそろ真面目につきとめなくては。

土星は2セットで切り上げて木星です。3:00頃まで6セット撮りました。残念ながら大赤斑は裏側で見えませんでした。

木星 (2021/6/10 02:52)
木星 (2021/6/10 02:52)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 304), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 387) / 露出 1/60s x 1000/3000コマをスタック処理 x8 (L:4, RGB:4) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.0.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

全体に縞が細めでうねりも少なくてなんというか元気がない感じが… いや、別に元気があれば縞が太くなるとかうねるとかいう話でもないのでしょうけど。

ちなみに撮影した6セット全部スタックしたかったのですが、de-rotation で縁にノイズが出るのを抑え切れず4セットで de-rotation しました。Measurement が甘いんですかね?久しぶりで腕が鈍ったのかな…

木星の衝は8月20日。今年は去年より視直径が1.5秒ほど大きいので頑張りたいと思います。

そういえば去年モノクロカメラのセンサーにゴミが乗ってたのを2月に赤外で銀河を撮る前に分解清掃して、F6ではちゃんとゴミ取れてるように見えてたんですが、今回F41で撮るとむしろゴミ増えてました… 今回はゴミの部分を避けて撮りましたが、視直径が大きくなると厳しくなってくるのでなんとかしなくては…

*1:今まで木星の視直径を元にした計算でF40.4としていましたが、WinJUPOSでの計測値から再計算したところF41.4になったので訂正しました。機材構成自体は変わっていません。

M16 わし星雲 (2021/6/9) / StarNet++ TF2 について

6月9日*1 は梅雨の晴れ間で新月期ということで天体撮影。体調は悪かったのですが、前夜、夜明け前にコンビニに行った時に木星がよく見えていたのに撮れなかった(温度順応待ってる間に夜が明けてしまうので)のが悔しかったので、無理して撮影しました。*2

土星木星が昇る深夜までに何を撮ろうかと考えて、M16 わし星雲を撮ることにしました。M16 は4年前スカイメモS時代にレデューサー付きで撮って以来で、8cm F6 直焦点で撮るのは初めてです。

23:00前から撮影して、6分露出で2コマ毎に PHD2 の手動ディザで22コマ撮りました。ガイドはマルチスターガイドのおかげで絶好調(RMSエラーの Total が1.0"以下)。ディザに時間を取られて*3 1:40 頃までかかりました。23:00前の2コマは低空で背景が明るかったのでボツにして20コマをスタックして仕上げました。

M16 わし星雲 (2021/6/9 23:01)
M16 わし星雲 (2021/6/9 23:01)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MC + PHD2 2.6.9dev4 による自動ガイド / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 20 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.6, Lightroom Classic, StarNet++ (7079110, TF2), Photoshop 2021 で画像処理

むむむ、やはり「わし」の翼は淡くてほとんど見えませんね… かなり頑張ってあぶり出してこれです。無改造デジカメではこんなものでしょうか。

M16 わし星雲 中央部 (2021/6/9 23:01)
M16 わし星雲 中央部 (2021/6/9 23:01)
撮影データは上に同じ。

中央部の「創造の柱」はそこそこよく写りました。ガス雲の中で星が生まれていることから付いた名ですが、これってアマチュアの機材でも赤外で撮ったら柱の中の星写るんですかね?

マスク処理用画像には StarNet++ を使いましたが、今回はまだ正式にリリースされていない TensorFlow 2 バージョンを使いました。

実行には Python の実行環境が必要です。以下最新の Anaconda 環境で、の使い方です。

  • conda install tensorflow で TonsorFlow をインストール。
  • github から starnet_v1_TF2.py をダウンロード。
  • dropbox から starnet_weights2.zip をダウンロード。
  • 適当にフォルダを作って starnet_v1_TF2.py と starnet_weights2.zip を展開して出てくるファイルを全部コピー。
  • 同フォルダに run.py を作成(後述)
  • python run.py {入力ファイル(カラーTIFF)} {stride} を実行

フォルダのファイル一覧はこんな感じになります(__pycache__ フォルダは実行後に生成されるものです)。

https://rna.sakura.ne.jp/share/starnet-TF2.png

run.py は以下のコードです。

import tensorflow as tf
from PIL import Image as img
import logging
tf.get_logger().setLevel(logging.ERROR)
from starnet_v1_TF2 import StarNet

import tifffile as tiff
import sys
import os.path as path

stride = int(sys.argv[2]) if len(sys.argv) > 2 else 128

starnet = StarNet(mode = 'RGB', window_size = 512, stride = stride)
starnet.load_model('./weights', './history')

in_name = sys.argv[1]
name, ext = path.splitext(in_name)
out_name = name + '_starless' + ext
starnet.transform(in_name, out_name)

サンプル(starnet_v1_TF2_transform.ipynb)を参考に書きました。モノクロTIFFの場合は mode = 'RGB' のところを mode = 'Greyscale' に書き換えてください。

元画像 hoge.tiff を引数に渡すと元画像と同じフォルダに foo_starless.tiff が出力されます。stride は StarNet++ 1.1 の stride と同じです。デフォルトは 128 です。進捗状況は一切表示されないのでひたすら待ってください… Core i5-6600 3.3GHz で30分くらいかかりました。

結果ですが、StarNet++ 1.1 で気になっていた星のあった場所の穴埋め部分に出る網目状のノイズが少なくなっている気がします。僕の撮る写真はどれも光害でガビガビなので実力がイマイチわかりませんが、どなたかよく撮れた写真で試してみてください…

ところでまた黄色カブリが発生しました。以前 RedCat 51 で出たのと似たようなカブリです。RedCat 51 のせいじゃなくて E-M1 Mark II のせい?フラット処理はしているのですが、フラットの品質があまりよくなかったせいか、星雲をあぶり出すため強い処理をすると浮かんできました。

今回はカラーバランスをいじって誤魔化しましたが、E-M1 Mark II のせいだとすると困るなぁ… これは CMOS カメラ買えということですか!?

*1:初出時タイトルと冒頭の部分で6月10日としていましたが誤りでしたので訂正しました。

*2:翌日潰れました…

*3:赤緯軸が移動先で止まらずハンチングを起こすので安定するまで時間がかかる…