Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

ドリフト法による極軸調整

赤道儀の極軸合わせの方法の一つ「ドリフト法」を簡単にまとめました。北極星が見えない南向きのベランダ等で極軸を合わせるのに便利な方法です。ポータブル赤道儀など極軸望遠鏡を持たない赤道儀で極軸を精密に調整するのにも使えます。

以下は観測地が北半球の場合の手順です。星の移動方向の上下左右は正立像で見た時の方向です。オートガイダーの映像や直焦点に取り付けたカメラのファインダーなどで見た場合に相当します。眼視でガイド星を見る場合は上下左右を逆に読み替えてください。

準備

  • 赤道儀の極軸は北に向けておきます
  • 極軸の高度は観測地の緯度と同じにします
  • 架台の水平出しはしっかりやります

ドリフト法では極軸の向きを方位と高度を分けて調整しますが、水平出しができてないと高度を調整した時に方位もズレてしまって面倒なことになります。しっかりと言っても三脚に付いている泡式の水準器で合わせられる範囲で十分です。

方位調整

  • 南天の赤道付近かつ子午線付近の星を導入します
  • 自動追尾で数分待ちます
  • 星が上下(南北)のどちらにズレたかをチェックします
    • 上(北)にズレた場合は極軸は西にズレています
      • 極軸の方位を東の向きに調整します
    • 下(南)にズレた場合は極軸は東にズレています
      • 極軸の方位を西の向きに調整します
  • 星が上下(南北)に動かなくなるまで調整を繰り返します

極軸の方位ズレと星の動く方向の関係を図解すると以下のようになります。

https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/drift-alignment-01.png

https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/drift-alignment-02.png

このイメージを頭に入れておくと調整方向がどっちなのか迷わなくなります。調整量は星のズレの量から計算できるはずですが、勘で動かして慣れる方が手っ取り早いと思います。

高度調整

  • 東の空から昇る星を導入します
  • 自動追尾で数分待ちます
  • 星が上下(南北)のどちらにズレたかをチェックします
    • 上(北)にズレた場合は極軸は上にズレています
      • 極軸の方位を下向きに調整します
    • 下(南)にズレた場合は極軸は下にズレています
      • 極軸の方位を上向きに調整します
  • 星が上下(南北)に動かなくなるまで調整を繰り返します

https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/drift-alignment-03.png

https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/drift-alignment-04.png

西の空に沈む星でドリフトする場合はを上下の調整方向は逆になります。

必要に応じてさらに方位調整と高度調整を繰り返して極軸の精度を追い込みます。

フルサイズ換算600mm程度までの直焦撮影で5分程度の露出時間なら、方位調整、高度調整、もう一度方位調整、で30分ぐらいかければ十分だと思います。

PHD2 Guiding のドリフトアライメント

オートガイダーを導入済みならフリーのオートガイドソフト PHD2 Guiding のドリフト法支援機能が使えます。これを使用すると極軸ズレの量が把握でき、方位・高度の調整量の目安も表示してくれるので調整が捗ります。

準備

通常のドリフト法と同じ準備をしたら PHD2 Guiding で以下の操作を行います。

  • キャリブレーションを先に済ませます
  • メニューの [ツール - ドリフトアライメント] を選択します
    • 「ドリフトアライメント - 方位角調整」ダイアログが開きます
      https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/PHD2-drift-alignment-02.png

方位調整

注意: PHD2の最近のバージョンでは赤いラインの傾きの上向き・下向きとガイド星のドリフト方向の北・南の対応関係が不定になっているようです。実際に方位調整した際に傾きが急になってしまった場合は、方位・高度とも調整方向を全て反対向きに読み替えてください。

  • 南天の赤道付近で南中している星を導入します
  • ダイアログの [ドリフト] ボタンを押すと1軸オートガイドが開始します
    https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/PHD2-drift-alignment-01.png
  • ガイドグラフに赤緯方向の誤差が蓄積していき誤差のトレンドラインが赤いラインで表示されます
    https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/PHD2-drift-alignment-01_02.png
    • 赤いラインの傾きが上向きならガイド星が北にズレています
    • 赤いラインの傾きが下向きならガイド星が南にズレています
  • オートガイダーの映像にはオーバーレイでガイド星を中心とした円が描画されます
    https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment//PHD2-drift-alignment-01_01.png
    • 円の大きさは極軸の誤差の大きさを表します
  • 赤いラインの傾きが安定したら [調整] ボタンを押してガイドを止めます
  • 極軸の方位を調整します
    • 傾きが上向きなら極軸の方位を東の向きに調整します
    • 傾きが下向きなら極軸の方位を西の向きに調整します
    • 調整量はオーバーレイ描画された円からガイド星がはみ出さない範囲が目安です
  • 調整したら [ドリフト] ボタンを押して再びトレンドラインの傾きをチェックします
  • 赤いラインの傾きが十分フラットになるまで [ドリフト] と [調整] を繰り返します

高度調整

  • ダイアログの [>高度] ボタンを押します
    • 「ドリフトアライメント - 高度調整」ダイアログが開きます
      https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/PHD2-drift-alignment-03.png
  • ダイアログの [ドリフト] ボタンを押すと1軸オートガイドが開始します
    • (表示等は方位調整と同じなので省略します)
  • トレンドラインの傾きが安定したら [調整] ボタンを押してガイドを止めます
  • 極軸の方位を調整します
    • 傾きが上向きなら極軸の高度を下向きに調整します
    • 傾きが下向きなら極軸の高度を上向きに調整します
    • 調整量はオーバーレイ描画された円からガイド星がはみ出さない範囲が目安です
  • 調整したら [ドリフト] ボタンを押して再びトレンドラインの傾きをチェックします
  • 傾きが十分フラットになるまで [ドリフト] と [調整] を繰り返します

西の空に沈む星でドリフトする場合はを上下の調整方向は逆になります。