前回の続きです。
カメラレンズでの追尾撮影にも慣れてきた昨年2月、いよいよ望遠鏡を使った撮影にチャレンジします。北極星の見えない南向きのベランダからスカイメモSの恒星時運転に任せたノータッチ追尾で撮影します。
使用する望遠鏡は 笠井トレーディング BLANCA-80EDT + 0.6x レデューサー です。カメラレンズ風に言うと 288mm F3.6 に相当します。カメラはマイクロフォーサーズの OLYMPUS OM-D E-M5 なので、フルサイズ換算576mmのレンズになります。この望遠鏡の性能や使い勝手については別の記事にまとめました。
極軸望遠鏡は使えませんので、極軸合わせにはドリフト法を使います。ドリフト法は実際にガイド星を追尾して追尾誤差に合わせて極軸を調整する方法です。別の記事に具体的な方法と原理を簡単にまとめました。*1
ガイド星の動きは同じ望遠鏡に2xテレコンバーターを付けたカメラの拡大ライブビュー(14倍)でチェックしていました。作業時間は30分くらいかかりました。今はオートガイダーを利用する便利な方法でやっているのですが、やはり30分くらいかかります…
最初は慣れれば短時間で済ませられるようになるだろうと思っていたのですが、ドリフト法は調整が進んで追尾誤差が少なくなるほど残りの小さな誤差を蓄積させて検出するのに長い時間がかかってしまい、少々手際よく作業してもどうにもならないようです。
最初の夜のターゲットは「しし座の三つ子銀河」にしました。8秒露出です。
なんとか三つの銀河が写っていました。ギリギリ写っている NGC3628 (写真上)は明るいカメラレンズを使っても固定撮影では全然写らなかったので結構嬉しかったです。
その後は調子にのって少しずつ露出時間を伸ばして冬の深夜に春の銀河を次々撮りました。極軸合わせに慣れてくるとスカイメモSの追尾精度でもこの焦点距離で20秒くらいまではブレずに撮れることがわかりました。
まずはもう一度しし座の三つ子銀河。
あまり代わり映えはしませんが M66 (写真左下)の渦巻の腕が少しは見えるようになってきました。
同じくしし座の三つの銀河、M95 と M96 と M105 も撮りました。
これはイマイチ。知らないとどれが銀河かよくわかりません。
次はおとめ座の、と言ってもおとめ座銀河団の銀河密集地帯からは離れたところにある「ソンブレロ銀河」こと M104 です。これはよく写りました。
小さいながらも UFO みたいな形がよくわかります。
次はかみのけ座の M98 と M99 です。
かすかながら M99 (左下)のくるっと渦巻いている腕がわかります。こういうのが見たいんです、こういうのが。フェイスオン銀河*2の台風みたいな、あるいは鳴門の渦潮みたいな渦巻き。こういうのが好きなんです。あ、M98 (右上)も一応銀河らしく写っています。
次はそのすぐ北にある M100 です。これもフェイスオン銀河なのですが…
M100 (中央)も画像処理で思いっきり強調すると渦巻きっぽいのが確認できるのですが、ノイズが多すぎて残念な感じ。露出時間が全然足りないということです。
次は M98。M100 から南東方向に少し降りたところにあります。
アンドロメダ銀河を超ちっちゃくしたような姿です。縁の部分に暗黒帯があるのがわかるようなわからないような。
M98 からさらに南東に進んで、次は M90。
これも露出が足りない感じです。残念。
天体一つにつき20秒露出で8枚なので撮影自体は5分とかからず、サクサクと撮れました。全体的に露出が足りない感じですが、望遠レンズでは見えない銀河の形が写っていて DSS から画像が出てくるたび一人盛り上がっていました。
望遠レンズでは見えないと言えば球状星団もそうです。かみのけ座の銀河を撮ったついでに同じかみのけ座の球状星団 M53 も撮ってみました。
星の粒が見えていて球状星団らしい姿に写っています。この写真だけ4枚コンポジットです。追尾精度が甘くて使えるカットがこれだけしかありませんでした。
ということで、スカイメモSを買う前は全然使い物にならなかったらどうしよう、と思っていたのですが、それは杞憂でした。他人に自慢できるような写真ではないですが、自己満足できる程度の写真は撮れることがわかりました。
光害の影響も、20秒くらいでは光害で明るい背景が飽和してしまうこともなく、その点はまだ余裕がありそうで、それならばもっと露出時間を伸ばしたいと思ってしまうのですが、そうなると本格的な赤道儀が必要なのか…
この時はまだ散光星雲のような淡い天体を撮っていません。M42 は別格ですが、他はそもそも写るのか。「馬頭星雲」とか「ばら星雲」みたいな赤い星雲は無改造のカメラで写るのか、改造が必要なら改造用に新しいカメラも必要だし… などと悩む日が続きます。(つづく)
続き: