Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

ちょうこくしつ座銀河(NGC253), かに星雲(M1) (2017/9/30)

9月30日は久々に Deep-Sky を撮影しました。元気がなかったのでベランダからですが、ちょうこくしつ座銀河(NGC253)とかに星雲(M1)を撮りました。ちょうこくしつ座銀河は初めての撮影。

土曜日は疲れて一日中寝ていて、昼過ぎに一晩中晴れの予報を見たものの、外に出るのは億劫で、かといって南向きのベランダから撮れる天体には目新しいものがないし、などと気が進まない感じでしたが、そういえばかに星雲はどうだろう?とふと思い出しました。

かに星雲昨年11月に撮影したのですが、この時はレデューサー使用(f288mm)だったので小さくしか写りませんでした。オートガイダー導入前の昨年10月にはレデューサーなし(f480mm)で60秒露出を試してみたのですがブレまくりで失敗していました。

今ならオートガイダーで6分露出ができるのでレデューサーなしでも撮れますが、一つ気がかりが。かに星雲といえば赤いフィラメントですが、こういう赤い光は光害カットフィルターなしだと写りが悪いのです。

今まではレデューサーなしの撮影では光害カットフィルターを外していました。レデューサーなしだと約2.8倍の露出時間が必要になるのですが、*1 ガイド精度的に、というか極軸合わせの精度や機材の撓みなどの問題があるので、露出時間をこれ以上増やすのは無理です。

それで今までは光害カットフィルターを外して光量を倍にすることで露出を稼いでいました。先日の亜鈴状星雲(M27)もフィルターなしで撮っているのですが、レデューサー使用・フィルターありで撮ったものと比べると星雲の赤い色が薄く霞んでしまっています。

というわけで、今回はレデューサーなし・光害カットフィルターあり、での撮影を試してみようと思い立ったわけです。前回は90秒露出で、6分露出ならその4倍、露光量は約1.5倍なので前回よりはよく写るはず、と。


22:30頃から機材の設置を始めて23:00頃には極軸合わせも終わったのですが、かに星雲が昇るのは深夜遅く。それまでの間に何かを撮ってみようと思い、ちょうど南中する前のちょうこくしつ座銀河(NGC253)を狙うことにしました。

横浜の空でも肉眼で見えるディフダ(デネブ・カイトス)から南に星を辿ってスムーズに導入できました。さすがにライブビューでは見えませんが、60秒露出で試し撮りするとぼんやりと細長い姿が浮かんでいたので、月が沈む前でしたが無理やり撮ってみました。

NGC253 (2017/9/30 23:40)
NGC253 (2017/9/30 23:40)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 10コマ 総露出時間 60分 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.18, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

条件も悪く正直期待していなかったのですが、思った以上によく写りました。露出不足気味ではありますが、中心部の暗黒帯の複雑な模様がちゃんと写っています。というか、でかいですね… 写真を見てびっくりしてしまいました。

ちょうこくしつ座銀河は、本で見た記憶はある、ぐらいの認識だったのですが、デネブ・カイトスを見てふと思い出したのでした。たまたま先日小惑星探査機 OSIRIS-REx が地球スイングバイの際にこの近くを通ったので*2、なんとか観測できないかなと星図を見ていた時に目にとまって憶えていたからです。*3

そんな感じで予備知識なしに思いつきで撮ったわけですが、撮ってよかったと思える天体でした。


月が沈んだ後、かに星雲が高度45度を超えたあたりの01:30頃、そらし目でなんとか確認できるおうし座の暗い方の角の先の星(ζ星)に望遠鏡をなんとか向けて、すぐ近くのかに星雲を導入。

極軸がズレていて調整のため2回撮影を中断しましたが、2:00過ぎになんとか撮影開始。8枚撮ったところでまた赤緯方向にガイド星がズレていってしまったので予備のカットは撮らずに薄明前に撮影終了。結果はこんな感じでした。

M1 (2017/10/1 02:12)
M1 (2017/10/1 02:12)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 8コマ 総露出時間 48分 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.18, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

露出は足りているかと思ったのですが、まだ露出不足気味ですね… 赤いフィラメントはぼんやりとは写っていますが期待したほどはっきりは写りませんでした。無改造のデジカメではこんなものなんでしょうか。でもこのくらいの焦点距離だと、かに星雲のもやもや感(カニ玉感?)がだいぶ見えてきて気持ちいいです。

縮小画像では目立ちませんが、等倍で見ると赤経方向のガイドエラーがはっきり見えていました。その分ディテールも潰れているはずです。RMSは±1.4〜1.5秒で経験上スカイメモSとしてはベストに近いはず。普段は極軸のズレで赤緯方向にガイドが流れて結果的に星が丸く写って目立たないのですが、今回は極軸を追い込んで赤緯方向のエラーが抑えられた分目立ってしまったようです。

やはり換算1000mm級の直焦はスカイメモSには荷が重いようです。そろそろちゃんとした赤道儀を買ったほうがいいですかね…

*1:レデューサーが0.6倍なので (\frac{1}{0.6})^2 で約 2.78 倍。

*2:参照: 小惑星探査機「オシリス・レックス」を観測しよう - AstroArts

*3:ちなみに OSIRIS-REx は当日雨天で観測できませんでした。