Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

木星、土星、火星 (2018/4/28)

前回初めて ADC (大気分散補正プリズム)を使ってみたのですが、あのあとふと思いつきました。望遠鏡の光学系で発生する色ズレを ADC で補正できるのでは? 大気色分散の向きと色ズレのベクトルを合成した方向に ADC の真上が来るように ADC を斜めにして補正すればいいのでは?と。

ということで、早速試してみました。まずは木星。昨夜の木星は深夜から大赤斑が地球の方を向くという絶好の条件でした。

木星 (2018/4/29 02:00)
木星 (2018/4/29 02:00)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

RGB Align はしていません。ADC の補正だけで例の色ズレが綺麗に消えて、なかなかの仕上がりになりました。大赤斑をこんなにくっきり赤く撮れたのは初めてです。

実は大赤斑が出る前からスタンバイしていたのですが、ふと思い立って木星の自転の様子がわかるように連続写真を撮ってみました。

ついでに動画も作ってみました。


木星の自転とイオとエウロパの公転 (2018/4/29 00:50-02:40)
木星の自転とイオとエウロパの公転 (2018/4/29 00:50-02:40)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理 x 12枚から動画を作成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理, TMPGEnc Video Mastering Works 5 で動画作成

木星の近くをイオとエウロパが回っているのも確認できます。上の方を左から右へ動いていくのがエウロパ、下の方を右から左へ動いていくのがイオです。エウロパ木星の手前を、イオは木星の向こう側を通っているところです。衛星は実際にはもっと暗いのですがわかりやすいように衛星の部分だけプラスの露出補正をかけてあります。

ところで、同じように撮って同じようにスタックしたはずなのですが、AutoStakkert!3 が出力したTIFFファイルのうち数枚について RegiStax 6 に読み込んだ時にやたらコントラスト強調されてハイライトが白飛びしてしまう現象が発生しました。

TIFF を見る限り全部ほぼ同じ明るさ・階調なのに何故でしょうか?とりあえず RegiStax 上でコントラストを50まで下げるとほぼ他のファイルと同じ仕上がりになったので、なんとか無事に連続写真にできたのですが…

さて、木星が西に傾いて望遠鏡もずいぶん無理な姿勢になってきたので、3:00前から土星と火星の撮影に移行しました。

土星 (2018/4/29 03:09)
土星 (2018/4/29 03:09)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/30s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

土星は ADC の補正が効いて前回よりもカッシーニの間隙がクッキリ見えています。さすがに全周クッキリというわけにはいきませんが 8cm の写りとしては上出来?

火星 (2018/4/29 03:17)
火星 (2018/4/29 03:17)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/125s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

火星は前より微妙な濃淡が出ていると思います。もっともこちらは RegiStax の wavelet 処理も変えました。レイヤー2, 3 を弱めに、レイヤー4, 5, 6 をオフにしてみたのですが、これで表面の階調が出やすくなりました。木星土星と同じではダメなんですね。

そんなわけで、ADC の間違った使い方かもしれませんが、こういう使い方もあるということで。