Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

バローレンズの拡大率

現在の惑星撮影機材はこんな感じです。

惑星撮影用のパーツ (2018/4/26)

ビクセン フリップミラー、笠井 2.5xバロー、ZWO ADC、ZWO ASI290MC と必要なものを普通に繋いだだけです。望遠鏡の接眼部からカメラまでの全長は25cmくらいになっています。

少しだけ工夫したのはフリップミラーの31.7mmスリーブの筒を短いもの(BORG [7423] + [7317])に交換したところ。今の8cm屈折だとここを短くしてもドローチューブの繰り出しが増えるだけで全体が短くなるわけではないのですが、μ-180C だとピントは主鏡移動方式なので実際短くできますし、μ-180C では合焦位置を後方に引き出すとバッフルによるケラレが発生して口径を生かし切れないという話があって、*1 なるべく短くしたいな、と。

バローレンズとカメラの間に ADC が入っているので拡大率が定格とは違っているはずです。実際に撮った木星の像の大きさから拡大率を計算してみます。

いつもやっている 1.5x Drizzle をかけない素の写真を使います。

木星 (2018/4/28 02:00) (drizzleなし)
木星 (2018/4/28 02:00)

写真上の木星の赤道方向のサイズは114ピクセル。ASI290MC のピクセルサイズは2.9μmなので、焦点面での木星像の赤道方向の直径は 114 * 2.9 = 330.6 μm = 0.336 mm です。

木星の直径(赤道面)は 142984 km、*2 木星までの距離(地心距離)は 4.42074 AU *3 で、1AU = 149597870.7 km なので 598391482.8 km です。

以上から焦点距離を求めるとこうなります。

木星の直径 : 木星像の直径 = 木星までの距離 : 焦点距離
142984 : 0.336 = 598391482.8 : 焦点距離
焦点距離 = 0.336 * 598391482.8 / 142984 = 1406.168 mm

直焦点の焦点距離は480mmなので、バローレンズの拡大率は2.93倍となります。合成F値は17.58です。180mm F12の μ-180C では F35.16 になるはずですが、*4 暗すぎですかね?拡大率の低いバローレンズ買ったほうがいいかな…

バローレンズとADCをフリップミラーの手前に置く構成も考えていて、HIROPON さんの記事を参考に繋がるパーツの組み合わせも考えたのですが、これをやるとバローレンズからカメラまでの距離がさらに伸びてしまい拡大率が上がって暗くなってしまいます。

また、ピントが出るのかという問題もあります。HIROPON さんの場合、合焦位置を探して延長筒等で調整するうちに全長が50cm近いシステムになってしまったとか。50cm だとベランダでは窓にぶつかってしまう可能性があるので、全長は40cm以内にしたいのです。

倍率については WilliamOptics の双眼装置用の1.6倍バローあたりをうまく使えばなんとかなるかもしれません。が、そもそも定格以上の拡大率ではバローレンズの色収差も大きくなるとも聞きます。

というわけで今日は半日そんなことばっかり考えていました…

*1:参照: Star Watching - 180mm telescope -

*2:木星 - Wikipedia より。

*3:iステラの表示より。

*4:【ミューロン180C実写画像】3月27日の月面 - スターベース東京のブログ によると、ピント位置が外にくると焦点距離が長くなるとのことなのでF値がもっと大きくなるかも。