Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

ADCについて色々言ってきましたが…

6月21日の撮影では木星は急いでいたので ADC (大気分散補正プリズム)はゼロ補正のままで撮影して、土星と火星は補正ありで撮っていました。土星で ADC の調整をしていて気付いたのですが、補正前の色ズレの量が以前8cm屈折(BLANCA-80EDT)で撮っていた時にくらべてずっと小さいのです。

ということは以前の色ズレはほとんどが大気色分散ではなく光学系由来のものなのでは… との疑念が生じたので、21日に ADC の補正なしで撮った木星を RGB Align なしでスタックしなおしてみました。

木星 (2018/6/21 20:22) (RGB Align なし)
木星 (2018/6/21 20:22) (RGB Align なし)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

イオを見るとわかりやすいのですが、右斜め方向に色ズレがあるのがわかります。その量は RegiStax の測定では Red: X=1, Y=2, Blue: X=-2, Y=-2 でした。

μ-180C は純粋な反射光学系ですがバローレンズが入っているのでそれに由来する色ズレが混じっている可能性はありますが、この時の木星は水平から左に20度ほど傾いていて、色ズレの方向的にも大気色分散だとしてだいたいつじつまが合います。

色ズレの量は計算するとBlue-Greenで0.2秒弱。木星の高度は約40度で、HIROPON さんのブログの「大気による色分散量と補正量」によると B-G は 0.75秒になるはずなのでちょっと小さすぎるのですが… ゼロ補正のつもりが少し補正が入っていたのでしょうか。

それはそうと、以前の記事「ADCの間違った使い方」の補正前の写真ですが、明らかに色ズレが大きすぎます。ていうか、そもそも色ズレの向きが逆ですよ?今まで気づきませんでした…

大気色分散は正立像では青が上に浮き上がって赤が下に沈んで見えるはずです。以前の写真ではその逆になっています。ということは今まで ADC を徹頭徹尾「間違った使い方」、つまり光学系の色ズレをキャンセルするのに使っていたことになります…

そもそも BLANCA-80EDT でなぜ色ズレが発生しているのか、ということですが、僕は最初、接眼部のたわみで片ボケ気味になって色収差が表面化したのでは、と思っていたのですが、それだとたぶん赤ハロが出るだけで赤と青で像がズレない気がします。

では何が原因だろうと思っていたら、天文中年の部屋2の「笠井トレーディング BLANCA-130EDTⅡについて」に「玉ズレ」による色ズレの話がありました。対物レンズの三枚玉の芯が揃ってなくて色ズレが発生するというのです。うちのもこれかもしれません。

というわけで今後は ADC の「正しい使い方」をマスターすべくがんばりたいと思います。