Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

Linked Wavelets で木星を再処理

またしても6月13日の木星の再処理です。今回は今まで使ったことがなかった RegiStax 6 の機能「Use Linked Wavelet Layers」(以下 Linked Wavelets)を試してみました。結果は…

木星 (2019/6/13 22:07) (再々々処理(セルフLRGB))
木星 (2019/6/13 22:07) (再々々処理(セルフLRGB))
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000/3000コマをスタック処理 x 4 を de-rotation / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 11.0.2, Photoshop CC 2019, Lightroom Classic CC で画像処理

これ、結構違いますよね?かなり解像感上がった気がします。今回は他にも色々やっていますが、解像感という点では Linked Wavelets が効きました。この解像感、本当にディテールを抽出しているのか、それともアーティファクトなのか… ALPO-Japan に寄せられた同じ日の写真と比べる限りはそんなにデタラメなものでもないようには思いますが。

Linked Wavelets は原理が全然理解出来てないのですが、公式ドキュメントを参考に手探りでやってみました。

単に ON にするだけだと盛大にノイズが乗るので、Denoise を上げて抑えるのですが、これで不思議とディテールが浮き上がってきます。謎。ただし、惑星の縁が不自然に明るくなって縁取りっぽくなる傾向があるようで、これを抑える方法はわかりませんでした。

Linked Wavelets 以外にやった色々というのは、以下のようなことです。

  • Waveletscheme は Linear で、Initial Layer を 2 にした。
    • 1 だと大きいレイヤーを使っても強調が不十分だったので。
  • RGB Balance の Auto Balance でカラーバランスを調整した。
    • 今までは Lightroom で手動で調整していたが、こちらの方がよさそう。
  • 「セルフLRGB合成」をしてみた。
    • 同じ元画像に対して wavelet を強めにかけたものをグレースケール化して L 画像に、弱めにかけたものを RGB 画像にして Photoshop で LRGB 合成。
    • wavelet を強めにかけると目立つカラーノイズ(偽色)を抑えるため。

ずっと Linear では強い強調処理はできないと思い込んでいたのですが、Initial Layer を増やすと嘘のようにモリモリ強調できることに気が付きました。びっくり。

カラーバランスはずっと悩みのタネだったのですが、RegiStax で調整するという発想がなくて、ずっと Lightroom で調整していました。が、今更ながら RegiStax の Auto Balance 機能を見つけて試してみたら随分自然な、というかネットでよく見るようなバランスになったのでびっくりしました。というか、ひょっとしてみんなこれ使ってるとか?

「セルフLRGB合成」は僕のオリジナルのアイデアではなくて*1M42 を wavelet 処理してみたけど…」であぷらなーとさんから頂いた以下のコメントにインスパイアされたものです。

ビニングしてからウェーブレットをかける。一度モノクロに変換した物にウェーブレットをかけて、LRGB再合成する。RAW画像のままホットピクセルを除去し、現像なしでビニングしてモノクロ画像にしたものにウェーブレットをかける。
などなど、素材のコンディションによって色々な処理を使い分けています。

実は最初はそのまんま「一度モノクロに変換した物にウェーブレットをかけて」をやってみたのですが、何故かモアレ状のすごいノイズが浮き出てきて使い物にならなかったので、手順を逆にしてカラーのまま wavelet 処理したものをモノクロ化して L 画像にしました。何がまずかったんだろう… モノクロ変換って Photoshop でグレースケールモードにするだけじゃダメなんですかね?

というわけで、wavelet のパラメータ、まず L 画像用の強めのやつ。

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
  • Contrast: 140
  • Brightness: 0
Layer Denoise Sharpen 設定値
1 0.15 0.130 23.2
2 0.15 0.120 22.0
3 0.00 0.100 3.0

次に RGB 画像用の弱めの wavelet パラメータ。

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
  • Contrast: 140
  • Brightness: 0
Layer Denoise Sharpen 設定値
1 0.15 0.130 16.5
2 0.15 0.120 14.6
3 0.00 0.100 3.0

これはもっと弱くしてもよかったかも。

Photoshop での LRGB 合成は以下の手順。

  • RGB 画像のイメージモードを「Lab カラー」に。
  • L 用画像のイメージモードを「グレースケール」に。
  • L 画像を全選択してコピー。
  • RGB 画像で L チャンネルを選択してペースト。
  • レベル補正で中間調入力レベルを 1.6 に。

仕上げの Lightroom の現像設定は以下の通り。トーンカーブ微調整と彩度とノイズ軽減です。

WB   
色温度 0
色かぶり補正 0
階調
露光量 +0.00
外観
テクスチャ +0
明瞭度 +0
かすみの除去 +0
自然な彩度 +23
彩度 +23
シャープ
適用量 0
ノイズ軽減
輝度 20
- ディテール 70
- コントラスト 20
カラー 0
- ディテール 0
- 滑らかさ 0

というわけで、上手い人たちとの差は画像処理の問題じゃないと思ってたけど、割と画像処理の問題だったのかも?ていうかみんな Linked Wavelets 使ってるんですかね?

*1:「セルフLRGB合成」という言葉は僕の造語です。変ですかね?気持ちは通じると思うのですが…