6月13日撮影の木星の写真は Linked Wavelets の導入等、画像処理方法を変えたことで見違えるように解像感がアップしました。
これに気を良くして昨年のベストショットを新しい方法で再処理して、before → after の順に並べたものをアルバムにまとめてみました。
惑星写真の画像処理
画像処理方法の変更に伴う before-after
以下 After の画像を順番に見ていきます。
まずは火星。
火星 (2018/8/1 01:06) (IR+RGB) (2019/6/30 再処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), L: IR 850nmパスフィルター 1.25", RGB: ZWO IR/
UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM, RGB: ZWO ASI290MC / L, RGB: 露出 1/60s x 2000/5000コマをスタック処理 x 4 を de-rotation したものをLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 10.3.9,
Photoshop CC 2019,
Lightroom Classic CC で画像処理
7月31日夜の最接近の火星です。ダストストームで地形がほとんど見えない状態でした。L 画像を赤外線(IR)で撮影することで地形を浮かび上がらせていますが、元々あまりクッキリとは写っていません。
L、RGB共に wavelet 処理をやり直しました。IR で撮った L 画像はノイジーなのでやや控えめな強調です。火星は縁の二重化が目立つのですが de-ringing で目立たなくしています。LRGB 合成は Photoshop で手動合成です。元々模様が淡くあまりはっきりしませんが、若干ディテールの描写が改善しています。
火星 (2018/8/25 23:09) (2019/6/30 再処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/
UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8,
Photoshop CC 2019,
Lightroom Classic CC で画像処理
こちらはダストストームが晴れてきて複雑な模様が見えてきた頃の火星です。カラーカメラのみでの撮影なのでセルフLRGB合成で処理しています。
これも de-ringing に苦労しましたがあまりうまくいかず二重化が残ってしまいました。強調処理のせいで南極冠の境目が二重になっているのもクッキリしてきましたが、これは実際の模様ではないと思います。このあたりは画像処理のせいとも光学的な現象とも言われていますが、よくわかりません… とはいえ、中央の真珠の海や左の方のオーロラ湾のディテールがだいぶはっきりしてきて悪くはないかなと。
次は土星。
土星 (2018/7/29 20:42-20:44) (1500/3000 LRGB) (2019/6/30 再処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/
UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM, RGB: ZWO ASI290MC / L, RGB: 露出 1/30s x 1500/3000コマをスタック処理したものをLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 10.3.9,
Lightroom Classic CC で画像処理
昨年の土星のベストショットです。再処理で土星本体の縞模様や北極付近に写っている白斑が少しはっきりしてきました。
こちらは L と RGB 1本ずつを de-rotation して合成するので L, RGB 別々に wavelet 処理したものを WinJUPOS でLRGB合成しました。元々土星は強調処理をキツくすると輪の描写がギトギトしてくるのであまり強調をかけないようにしてきたのですが、今回は wavelet をがんばりつつ、de-ringing をかけたり、Layer 4 でマイナスの wavelet をかけたりして輪がエグくならないようにしてみました。
最後に木星です。
木星 (2018/7/29 19:52-20:07) (2019/6/30 再処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/
UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM, RGB: ZWO ASI290MC / L, RGB: 露出 1/60s x 1500/3000コマをスタック処理 x 6 を de-rotation したものをLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 10.3.9,
Photoshop CC 2019,
Lightroom Classic CC で画像処理
これは昨年の大赤斑が見えてない方のベストショットです。北赤道縞のウネウネやそこから伸びる青いフェストゥーンがクッキリ写ったお気に入りの写真だったのですが、再処理でそのあたりがよりクッキリ解像するようになりました。
やはり wavelet を強めた分縁の二重化が強まったため de-ringing で抑えています。LRGB合成は WinJUPOS で偽の模様が出る疑惑があったため、Photoshop で手動でやっています。
木星 (2018/7/8 20:06) (2019/6/29 再処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/
UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1500コマをスタック処理 x 2 を de-rotation スタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 10.3.9, RegiStax 6.1.0.8,
Photoshop CC 2019,
Lightroom Classic CC で画像処理
これは大赤斑が見えてる方のベストショット。RGBのみの撮影なのでセルフLRGBです。解像感も上がりましたが、なんだか生々しい感じに仕上がりました。これに比べると Before の方は油絵っぽいベタっとした仕上がりです。
というわけで、新しい画像処理方法は、たまたまうまくいったわけではなく、ちゃんと一般的に通用するものらしいということがわかりました。