Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

Linked Wavelts で月と太陽を再処理

前回の記事に天リフから結構アクセスが来ているようです。

うれしいです。調子に乗って月面写真と太陽黒点の写真も再処理してみました。

まず月面。5月24日未明に惑星用の機材構成で撮った強拡大の写真です。

アルキメデス、アリスティルス、オートリクス (2019/5/24 03:17) (再処理)
アルキメデス、アリスティルス、オートリクス (2019/5/24 03:17) (再処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1500/2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2019, Lightroom Classic CC で画像処理

カラーカメラで撮った写真ですが、色味がほとんどなかったのでグレースケール化した疑似L画像だけで処理しました。単純にグレースケール化するとコントラストが強いのか、明るいクレーターが強調処理で白飛びしやすいのでLabカラーのLチャンネルをグレースケール化して保存したものをL画像にして処理しました。

Before と比べるとディテールがクッキリ浮かび上がってはいますが、ピンぼけ感は残っています。というか Before は霞がかかったようなボケ方ですが After はピントが合ってない感じのボケ方です。月面なのでもっとキリッとエッジの立った硬質な描写が欲しいのですが…

もう一枚。

プラトー (2019/5/24 03:06-03:08) (再処理)
プラトー (2019/5/24 03:06-03:08) (再処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1500/2000コマをスタック処理 x 4枚をモザイク合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Image Composite Editor 2.0.3.0, Photoshop CC 2019, Lightroom Classic CC で画像処理

4枚モザイクのプラトーです。モザイクした分縮小表示になっているのでピンぼけ感は和らいではいるのですがやはりもっと硬い感じになって欲しい…

Before と比べるとプラトー内部の小クレーターが、斑点に近い写りではなくちゃんとクレーターらしい形に解像するようになりました。

しかし月面写真の強調処理は難しいですね。あまり強く処理すると白飛びするし、影の境界線の周りが明るくなって不自然な描写になってしまいます。

最後は5月8日に撮影した太陽黒点の写真(可視光)です。

【注意!】 太陽の観察・撮影には専用の機材が必要です。専用の機材があっても些細なミスや不注意が失明や火災などの重大な事故につながる危険性があります。未経験の方は専門家の指導の元で観察・撮影してください。

2740, 2741黒点群 (2019/5/8 10:31) (再処理)
2740, 2741黒点群 (2019/5/8 10:31) (再処理)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F??), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 0.7ms x 1000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2019, Lightroom Classic CC で画像処理

セルフLRGB合成で仕上げています。粒状班のパターンの空間周波数が高いので Initial Layer は 1 に設定しました。粒状班のつぶつぶの一つ一つが粒として見えるようになりましたし、黒点もクッキリして悪くないと思います。

撮影時のゲインが低くノイズが少ないせいか、いくらでも強調できる感じだったのですが、ついついやりすぎて粒状班が砂のようにザラザラになってしまって、一度やり直しています。

ということで RegiStax 6 の Use Linked Wavelet Layers (Linked Wavelts)の威力を見てきたのですが、惑星、月、太陽、どれも効果はあるようです。月面は期待ほどではなかったのですが、これは何かもうひと工夫必要なのか、単に元画像のクォリティが低いのか…

Linked wavelets 流行るといいなー。というかみんな既に使っていたりするのかな?日本語でも英語でも詳しい解説記事が見当たらなくて、使ってみたという報告も日本語だとこちらのブログぐらいしか見つけられませんでした。

英語ではちらほら話題になっていますが、reddit で "You're right that linked wavelets can be confusing, mysterious and hard to use effectively." とか言われてたりして… 確かに Linked Wavelets は通常の wavelet と違って直観的でなく、なんというかじゃじゃ馬みたいなところがあります。常用はせずに3倍 Drizzle できるクォリティで撮れた時だけ使っているという人もいました。

Linked Wavelts が何をやっているのかがわかれば少しは扱いやすくなると思うので、動作原理を(できれば噛み砕いて)解説した記事を読みたいんですが、どこかにないですかね。雑誌記事とか論文の形でならあるのかなぁ…