Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

M42 に画像処理技術を総動員

2017年10月に撮った M42 のベストショット、以前 RegiStax で wavelet 処理をかけるのを試したのですが、イマイチでした。

その後 Photoshop で少し工夫したりもしましたが、もう一つという感じでした。

wavelet 処理をすると暗部にノイズが浮いてしまうのと、当時はあまり気にしていませんでしたが星の周りに黒い縁取りができてしまうのも困りものです。

このあたり、その後出てきた StarNet++ や DeNoise AI を使えば色々解決できるのでは… と思い立ち、持てる技術を総動員して遊んでしまいました。

  • Lightroom で仕上げた画像を TIFF 書き出しして元画像を生成
  • 元画像を StarNet++ で starless 画像を生成
    • パラメータはデフォルト
  • starless 画像と元画像を Photoshop で合成して高品質な starless 画像2を生成
    • 元画像から starless 画像を減算して色域指定(ハイライト)で星のみの選択範囲を作る
    • 元画像のレイヤーを上の選択範囲で切り抜く
    • starless 画像のレイヤーにガウスぼかしをかけて網状パターンを消す
    • 元画像のレイヤーの下に starless 画像のレイヤーを配置
  • starless 画像2を DeNoise AI で処理して denoise 画像1を生成
    • Remove Noise:60, Sharpen:0, Recover Original Detail:0
  • denoise 画像1を RegiStax で wavelet 処理して wavelet 画像を生成
    • Waveletscheme: Linear
    • Initial layer: 1
    • Step Increment: 0
    • Wavelet filter: Gaussian
    • Use Linked Wavelets: ON
    • Layer 1: 38.0, Denoise: 0.30, Sharpen: 0.100
    • Layer 2: 24.5, Denoise: 0.35, Sharpen: 0.100
    • Layer 3: 14.0, Denoise: 0.30, Sharpen: 0.100
  • 元画像から starless 画像2 を減算して star 画像を生成
    • starless 画像2 にトラペジウムが混じってしまったのでトーンカーブでハイライトを潰してから減算
  • wavelet 画像に star 画像を加算して wavelet+star 画像を生成
    • wavelet 画像には Camera RAW フィルターでさらなる強調処理
    • wavelet 画像にもトラペジウムが混じってしまっているのでトーンカーブでハイライトを潰してから加算
  • wavelet+star 画像を DeNoise AI で処理して最終画像を生成
    • Remove Noise:15, Sharpen:0, Recover Original Detail:0

結果はこうなりました。

M42 (2017/10/26 01:49) (HDR, RegiStax, StarNet++, DeNoise AI)
M42 (2017/10/26 01:49) (HDR, RegiStax, StarNet++, DeNoise AI)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 30秒 x 8コマ, 1分 x 8コマ, 2分 x 10コマ, 4分 x 10コマ 総露出時間 72分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC, RegiStax 6.1.0.8, StarNet++ 1.1, DeNoise AI 2.0.0, Photoshop 2020 で画像処理

M42中心部 (2017/10/26 01:49) (HDR, RegiStax, StarNet++, DeNoise AI)
M42中心部 (2017/10/26 01:49) (HDR, RegiStax, StarNet++, DeNoise AI)
同上

どうでしょう?なかなかすごい、と言いたいところですがトラペジウム周辺は失敗ですね… 星をうまく分離できなかったし、偽の模様が被っているような…

正直ここまでくると「画像処理」というよりは「CG」です。飾っておく分にはいいのかもしれませんが、写っているディテールに根拠があるのかと言われると甚だ疑問なわけで、「写真」としては安心して見ることができません…

単純に wavelet 処理だけした結果と比べると、暗黒星雲の模様には一部不自然な部分がありますし、一部の微光星は消えてしまっています。ないはずのものがあったりあるはずのものがあったりするのはやはり「写真」としては失格なのでは…

もっと上手くやればマシにはなるのでしょうが、画面全域において上手くできているか、あるいは上手くいってないとしてそれが何故か説明できるかというと、この処理プロセスではなかなか困難なのではないでしょうか。

ということで StarNet++ も DeNoise AI も原則使わない方向に気持ちが傾いています。