試用期間も残り少ない DeNoise AI ですが、先日から過去の画像もいろいろと処理してみたところ、だんだん傾向が見えてきた気がしました。以前掲載したものと一部重複しますが、DeNoise AI の試用前・試用後を14枚分まとめて紹介して検討します。
それぞれ観賞用に仕上げた最終画像を DeNoise AI で処理しています。ただし、最後の2つは試しにノイズリダクションなしで仕上げたものを DeNoise AI で処理しています。各写真のタイトルに付した三つのパラメータは、Remove Noise/Sharpen/Recover Original Detail です。パラメータは試行錯誤して個人的に一番いい感じに見える値を採用しています。
各画像は flickr の写真ページにリンクしてあります。flickr の写真ページでは写真をクリックすると拡大表示されます。縮小画像ではノイズ処理の効果がわかりづらいのでぜひ拡大表示で見てください。等倍画像もダウンロードできます。
最初から flickr で一気見したい場合は flickr のアルバムの方で見てください。
アルバム: DeNoise AI 使用前・使用後
1. ばら星雲
使用前
ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用(3))
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/
OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 12コマ 総露出時間 3時間 / RStacker 0.6.4, DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC, StarNet++ 1.1,
Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 984mm 相当にトリミング
無改造の E-M5 で撮ったばら星雲です。ノイズリダクションを強力にかけてあるので DeNoise AI いらないような…
使用後
ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (DeNoise AI 15/15/0)
元々ノイズリダクションがかかってるのであまり違いは感じられませんが不自然なところも見当たりません。Sharpen の効果なのか黒い模様がややくっきりしています。
2. M64 黒眼銀河
使用前
M64 黒眼銀河 (2019/2/2 01:10) (+wavelet)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/
OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 8コマ 総露出時間 2時間 / RStacker 0.6.4, DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC,
Lightroom CC, RegiStax 6.1.0.8 で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング
こちらも E-M5 で撮ったもの。wavelet 処理で暗黒帯を強調したものと強調前のものを合成して wavelet で浮いてきた暗部ノイズをごまかしたものですが、それでも銀河周辺の淡い部分にノイズが残っています。
使用後
M64 (2019/2/2 01:10) (DeNoise AI 20/0/5)
銀河周辺に残ったノイズは完全に消えています。暗黒帯のディテールも失われていません。
3. M83
使用前
M83 (2019/3/9 01:26)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/
OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC,
Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング
こちらは wavelet は使わずに普通に処理しています。ノイズリダクションは強めにかけています。周辺の淡い部分はノイズでボソボソになっていて銀河の一部に見えない感じです。
使用後
M83 (2019/3/9 01:26) (DeNoise AI 15/0/10)
銀河周辺のボソボソした部分がふわっとした淡く広がった星雲状の描写になりました。一方で銀河の腕のディテールはほとんど失われずに残っています。
4. M8 干潟星雲
使用前
M8 (2019/5/12 01:02) (
HDR) (3)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/
OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 2分 x 8コマ, 4分 x 8コマ, 8分 x 7コマ 総露出時間 1時間44分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC,
Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1100mm 相当にトリミング
無改造の E-M5 で撮ったもの。多段階露光でHDR処理した干潟星雲です。光害の影響もあって星雲周辺の淡い部分は強調処理に無理がかかってかなりノイジーです。
使用後
M8 (2019/5/12 01:02) (DeNoise AI 15/0/0)
ノイズは消えたのですが、階調が不自然な部分が出てきています。画像周辺の恒星が一部ドーナツ状になっているのも気になります。
階調の不自然な部分(星雲の北側の淡い部分)を拡大するとこうなっています。
M8 (2019/5/12 01:02) (DeNoise AI 15/0/0) (拡大)
どうも星雲の暗い部分と少し明るい部分の境目がディテールとして認識されてシャープなエッジとして描出されてしまっているように見えます。
5. M27 亜鈴状星雲
使用前
M27 (2019/8/2 20:05)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン177) / 露出 1分 x 100コマ 総露出時間 1時間40分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC, StarNet++ 1.1,
Lightroom CC で画像処理
こちらは惑星用CMOSカメラで撮ったものです。ガイドが不安定だったため、青い星雲の部分に流れたようなノイズ(いわゆる「縮緬ノイズ」)が目立ちます。
使用後
M27 (2019/8/2 20:05) (DeNoise AI 15/5/0)
全体的なノイズ感は減っていますが、縮緬ノイズの流れが微妙に模様として残っています。
6. NGC7293 らせん星雲
使用前
NGC7293 らせん星雲 (2019/10/4 22:10)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC,
Lightroom CC で画像処理
惑星用CMOSカメラで撮ったものです。低空で光害の影響が強く、無理な強調処理でかなりノイジーな仕上がりになっています。
使用後
らせん星雲 (2019/10/4 22:10) (DeNoise AI 20/0/0)
星雲中央の青い部分のノイズはきれいに消えています。しかしリング状の赤い部分と外側の黒い背景との境目がノイジーなままです。ここはディテールと判断されたのでしょうか。
使用前
M1
かに星雲 (2019/10/5 01:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC,
Lightroom CC で画像処理
これも惑星用CMOSカメラで撮ったもの。中心部は十分明るいのでノイズは少ないのですが外周部の赤いフィラメントがややノイジーです。
使用後
M1 (2019/10/5 01:47) (DeNoise AI 15/0/0)
外周部のノイズはまあまあうまく取れています。ちょっともやもやした感じになっていますが。星雲内部のフィラメントのディテールは失われずむしろ若干くっきりしています。かにパルサーも潰れずに残っています。
使用前
M45
プレアデス星団 (2019/10/31 23:39)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/
OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 8分 x 7コマ 総露出時間 56分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC,
Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1049mm 相当にトリミング
こちらは E-M5 で撮ったもの。ガスの流れのディテールを潰したくなかったので青い星雲の淡い部分に少しノイズを残したままにしています。
使用後
M45 (2019/10/31 23:39) (DeNoise AI 15/5/0)
ガスの流れのディテールはちゃんと残っていますが、ノイズもきれいに取れているとは言い難い感じです。
9. NGC253 ちょうこくしつ座銀河
使用前
NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/
OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC,
Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング
E-M5 で撮ったもの。低空で光害の影響を強調処理で消したあおりで銀河の両端の淡い部分はけっこうノイジーです。
使用後
ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06) (DeNoise AI 15/0/10)
両端の淡い部分のノイズはうまく処理されているように見えます。中央の暗黒帯の入り組んだディテールはしっかり残っています。
10. 馬頭星雲
使用前
馬頭星雲 (2019/11/2 01:04)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン201) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Photoshop CC,
Lightroom CC で画像処理
惑星用CMOSカメラで撮った馬頭星雲のクローズアップですが、露出が不足しているのか全体的に結構ザラザラしています。
使用後
馬頭星雲 (2019/11/2 01:04) (DeNoise AI 20/5/0)
赤い星雲のノイズはだいぶきれいに取れましたが、赤い星雲の背景と暗黒星雲のモコモコの境目はノイジーなままです。ここはディテールと判断されたのでしょうか?
11. M100
使用前
M100 (2020/2/23 23:58)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン240) / 露出 1分 x 96コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Lightroom CC で画像処理
これも惑星用CMOSカメラで撮ったものです。銀河の周辺部の淡い部分は露出不足でノイジーになっています。
使用後
M100 (2020/2/23 23:58) (Denoise AI 20/15/15)
淡い部分のノイズはきれいに取れて、銀河の腕のディテールも損なわれていません。むしろよりくっきりしています。
12. M104 ソンブレロ銀河
使用前
M104 (2020/2/24 01:46)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン240) / 露出 1分 x 96コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1,
Lightroom CC で画像処理
同じく惑星用CMOSカメラで撮ったもの。銀河周辺の淡いハローは露出不足でザラザラしています。暗黒帯の模様が微妙に出ているような単なるノイズのような…
使用後
M104 (2020/2/24 01:46) (Denoise AI 20/15/15)
淡いハローはふんわり仕上がりました。暗黒帯の濃淡はノイズと判定されたようでスムースに均されています。
13. M81 ボーデの銀河
使用前
M81 (2020/3/20 22:37) (ノイズリダクションなし)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 16コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2,
Lightroom CC で画像処理
こちらは無改造の E-M1 Mark II で撮ったもの。先日のエントリに載せたものとは別にノイズリダクション一切なしで仕上げたものです。明るい中心部以外点描画みたいにザラザラです。
使用後
M81 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 15/5/0)
ザラザラの部分はふわっとした淡い星雲になり、その中に埋もれていた銀河の腕はディテールとして浮かび上がってきました。先日のエントリに載せたものよりもディテールがよく出ています。
14. M82 葉巻銀河
使用前
M82 (2020/3/20 22:37) (ノイズリダクションなし)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 16コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2,
Lightroom CC で画像処理
M81 と同時に撮ったもの。やはりノイズリダクションなしで仕上げたものです。ザラついてはいますが淡い部分が少ないので弱めのノイズリダクションでも十分見れるかも。
使用後
M82 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 10/5/0)
ザラつきが解消されました。中心部の燃えるような模様のディテールもしっかり残っています。
まとめ
こうして見ると、DeNoise AI が得意なのは銀河のような白っぽい対象のようです。逆に赤い星雲は苦手なようで、黒い背景との境目をディテールと判断してトーンジャンプみたいになったりノイズを消さなかったりするようです。その点青い星雲はまだマシなようです。
おそらく DeNoise AI の AI は雲や青空のような写真で学習しており、天体写真に多い赤い星雲というのは想定外なのでしょう。階調豊かな高品質の写真ならともかく、激しく強調して階調に乏しくノイズが浮きまくったような写真だと、人工物を見て培った知識で色の差が大きい部分をディテールと判断してしまうのではないでしょうか。
「縮緬ノイズ」も DeNoise AI の苦手とするところのようですが、これはさすがに仕方がないかなぁ…
というわけで、もっぱら銀河のために DeNoise AI を買うかどうかという話なのですが、M81 の処理結果を見るとなかなか魅力的ではあるんですよね… もう少し考えてみようと思います…