Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

木星の自転を止めて撮るには?

天リフを見ていて天下一画像処理会でご一緒した(?)木人さんのブログのこの記事が目に留まりました。

木星を撮影する時に動画1本(一度にスタックする単位)をどのくらい時間までかけてよいのか?という話です。木星は自転が速いため、フレーム数を稼ごうと一本の動画の撮影にあまり長い時間かけてしまうとスタックした結果がブレたようになってしまいます。ではどのくらいなら大丈夫なのか?

木人さんの記事ではドーズの限界を基準に撮影時間を決める方法を紹介しつつ、実際に画像処理するとドーズの限界を越えて解像してしまうので、もっと厳しく見積もる方がよいのでは?としています。具体的にはドーズの限界を基準にすると口径20cmなら2分が目安となるところ、90秒くらいがよさそう、ということです。

ドーズの限界を基準にするのは2年ほど前に天文誌の記事でも見たことがあったのですが、本当にそれでいいのか?という疑問がありました。というのは、8cm 屈折で3分間隔で撮った木星をタイムラプス動画を1フレームずつ見るとフレーム単位で自転が認識できてしまうからです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/22_23_26_lapl4_ap50_Drizzle15-2.gif

8cm ならドーズの限界は1.45秒、3分間に木星面の中心にある模様が動く距離は約0.72秒です。*1 ということは、ドーズの限界の半分程度の移動距離でもスタックすればブレた像に見えるはずなのです。

そもそもドーズの限界というのは二重星がある程度綺麗に分離して見える距離で、これより近いからといって一つの星に見えるわけではなく、実際にはダルマ状または長円状の星像として見えるわけですから、スタックしてブレて見えない基準としては緩すぎるのではないでしょうか。

では何を基準にすればいいかというとよくわからないのですが… とりあえずドーズの限界の半分以下にはしたいということで、自分は口径18cmで1/60秒露出で3000フレーム(50秒)で撮るようにしています。

木人さんの記事にもあるように、少々の位置ずれはスタックの際の歪み補正で修正されてしまうはずなのでそこまで神経質にならなくてもよいのかもしれません。でも経験上1/60秒露出で5000フレーム(83秒)で撮ったものは微妙にブレてるように見えるんですよね。気のせいかもしれませんが…

*1:木星の自転周期は 9時間55.5分(= 595.5分)、一分間あたりの回転角は 360度/595.5分 = 0.61(度/分)、木星面の中心の点が3分間に移動する距離は、木星の視直径を45秒とすると、(45秒 / 2) * sin(3 * 0.61度) = 0.72秒。