先日の火星の写真で wavelet 処理の際のパラメータを大幅に見直したという話をしました。
今回は wavelet パラメータを大幅に見直しています。具体的には今まで Initial Layer 2 で Layer 1〜3 で調整していたのを、今回は Initial Layer 1 で Layer 2〜6 で調整しました。そのままだとかなりキツいノイズが出るのですが Denoise を大きめ(0.25〜0.35)にしてノイズを抑えています。
火星 (2020/10/12)
これを8月1日の木星のベストショットでやってみたらどうだろうということで再処理してみたのですが、wavelet の強度をがっつり上げてもコントラストが思ったように上がらず、これは失敗かなと思いつつ最後まで仕上げてみたのですが、意外にも、これはイケるのでは?という結果になりました。
ちょっと淡くて物足りないけど階調が豊かになってかなりナチュラルな感じ?と思って Twitter に貼ってみたところ、天文クラスタの人たちからいっぱい「いいね」をもらってびっくりしました。34件で「いっぱい」?と思われるかもしれませんが、いつも天体写真を貼ってもフォロー外の天文クラスタの人からはほとんど反応がなかったので…
ちなみに以前の仕上がりはこうでした。
比べてみると、全体的に暗いのは意図的なもの*1 なのでいいとして、なんというかちょっとギトギト過ぎる感じがしてきますね… 細かいディテールまでクッキリ・ハッキリ描写したい!と思ってノイズが浮くか浮かないかの限界まで wavelet を攻める方向性で、濃い色の模様という「図」のあぶり出しばかりに目が行って「地」の部分の階調のバランスが全然見えてませんでした。
と、反省するものの、これはこれでなんか「来る」ものがあるんですよね。なんというか、久しぶりに天下一品の「こってりニンニク入り」ラーメンを食べた時のあの満たされた感覚のような…
実際何度もこれを見返してハァハァしていた(?)ので、こういうのが好きという気持ちは否定できないところですし、再処理したものを見ても何か物足りない感じが残ってしまうんですよね。でも「写真」としては今回の方が正解なんでしょうね。今回の仕上げの方がずっとリアルな感じがするので。
でもやっぱりちょっと物足りないかな?と思ってもう少しだけ wavelet を強くしたものも作ってみたのですが、明らかに階調表現が劣化しているのがわかってしまってボツにしました。解像感と階調性はトレードオフなんでしょうか?なかなかバランスが難しいようです。
L画像だけ見ててもそのへんわかりにくいんですよね。wavelet いじりながらリアルタイムでLRGB合成の結果が見えるといいんですけど…
10月12日深夜の火星のベストショットも改めて階調に注意しながら再処理してみました。色調も少し見直しています。
うーん、リムや南極冠まわりのアーティファクトが軽減しているのはいいんですが、木星のようなガス惑星と違ってふわっとした描写が自然というよりはピンぼけ感に繋がって微妙なような… とはいえトータルで見るとより自然な仕上がりになっている気がします。
というわけで、今後は解像感ばかり追い求めず階調性にも気を配っていきたいと思います。
*1:大赤斑後方(左)の輝点を目立たせたかったので。