Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

エウロパによるガニメデの掩蔽 (2021/4/6)

4月6日の明け方にエウロパによるガニメデの掩蔽があったので撮影しました。ガリレオ衛星同士の相互食/掩蔽は昨年末から見られるようになり来年春までは頻繁に起こるようです。*1

久しぶりの μ-180C 出動ですが、衛星と木星が無理なくフレームに入るようにバローレンズの拡大率はいつもより抑えめにしました。2倍バローにADCを付けてフリップミラーなしで2.16倍(F25.9, fl=4662mm)です。*2

4:00頃に先に昇ってきた月でピントを合わせたのですが、低空でしかも朝方大気が冷え込んでいるからか、シーイングは相当に悪くピントをあまり追い込めませんでした。土星の輪で追い込もうとするもカッシーニの間隙も全く見えない状況。

これは無理かもと思いつつ勘でピントを合わせて4:10頃に木星を導入してADCの調整。プリズムの開き角を全開にしてなんとか色分散がキャンセルできました。テスト撮影で衛星は一応写りましたが木星の縞模様は極めて曖昧でこれは無理かなと思いつつ4:30から撮影開始。

5分ごとに3000フレーム、露出はゲイン260で1/30秒。大気減光が大きいのでこれでも木星面が飛ばない範囲です。後半は明るくなってきたので1/60秒くらいまで落としています。

プレビュー映像ではエウロパとガニメデは最初は分離して見えていましたが、4:48にはほぼ一つに。またシーイングが徐々に改善するにつれ木星面にイオの影が見えるようになりました。天文年鑑の予報では掩蔽の開始が4:52:24、終了が4:59:42でしたが、5:05ぐらいになってやっと再び分離して見えるようになりました。

画像処理はAS!3でAPは木星に1点のみ。「木星と土星の接近(最接近) (2020/12/21)」の時にAPを増やすと背景に継ぎ目ができてしまう現象があったのでそうしています。

ということで、掩蔽の真ん中あたりに撮った4:55の写真はこうなりました。

エウロパによるガニメデの掩蔽(2021-04-06 04:55:56)
エウロパによるガニメデの掩蔽(2021-04-06 04:55:56)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F25.9), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2, ZWO ASI290MC (Gain 260) / 露出 1/30s x 1500/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

画面左上がエウロパとガニメデです。重なって一つに見えています。木星のすぐ左はイオ。イオの影が木星面の左側の赤道あたりに見えています。

連続写真は Flickr のアルバムで見てください。

エウロパによるガニメデの掩蔽(2021-04-06)
エウロパによるガニメデの掩蔽(2021-04-06 04:35-05:30)

位置合わせは木星面とにらめっこして手動で合わせています。

動画も作ってみました。

エウロパによるガニメデの掩蔽(2021-04-06)
エウロパによるガニメデの掩蔽(2021-04-06) (動画)

Flickr の調子が悪いと動画再生でエラーが出るのでその時はリロードしてみてください。

TMPGEnc Mastering Works 5 のスライドショー作成でトランジションクロスフェードを指定したのですが、妙にヌルヌル動いてます。単にフェードイン/アウトするんじゃなくて中割しているのでしょうか?正確なフレームはタイムスタンプ(JST表記)が表示された瞬間のものだけです。あくまで観賞用ということで。

ということで、一応撮れました。シーイングが悪くて解像度的には不満の残る写りでしたが、一応掩蔽の様子はわかるのでよしとします。

ところで薄明がだんだん明るくなる状況で撮った動画を AutoStakkert!3 で処理するとクオリティの評価が機能してないように見えるのですが…

https://rna.sakura.ne.jp/share/as3-20210406-01.jpg

このようにバックグラウンドが明るさでクォリティがほぼ決まってしまうような状況でまともに選別できてないように見えます。これはなんとかならないんですかね…

*1:「食」は二つの天体と太陽の位置関係が一直線になり太陽から見て手前の天体の影に奥の天体が入る現象、「掩蔽」は二つの天体と観測者の位置関係が一直線になり観測者から見て手前の天体が奥の天体を隠す現象を指します。「日食」や「星食」は厳密には掩蔽です。参照:暦Wiki/食、掩蔽、経過 - 国立天文台暦計算室

*2:WinJUPOS で計測した結果がピクセルサイズ 2.9μm で 0.1283"/pixel でした。