Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

月齢20.6 / 継ぎ目破綻の恐怖 (2021/5/3)

5月3日未明、久しぶりに月を撮りました。連休中ですが家に篭っているだけなの疲れが溜まっていて SX2 をベランダに出す気力もなかったので久々にスカイメモSと BLANCA-80EDT で撮りました。

下弦に近い月齢で、南中までには空が明るくなってしまうので、2:30 頃に撮り始めました。最近の月は南中高度も低く、この時の月の高度は20度弱。シーイングも良くなく薄雲越しでもあり最高の月面など望むべくもない状況ですが、久しぶりなので肩慣らし程度に考えて撮りました。

今回もここ数年やっているデジカメの静音モードで連射したものをスタック & wavelet という撮り方です。2000万画素を数百枚スタックするための画像処理はCPU的にもストレージ的にも負担の重い処理ですが、やるだけの価値はあると思っていたのですが…

最初に出てきたのがこれでした。なんじゃこりゃー!?

AS!3スタック失敗(Surface, AP Size 104)
AS!3スタック失敗(Surface, AP Size 104)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / ケンコー スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO400, RAW) 露出 1/60s x 125/513コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14 で画像処理(スタック、シャープ化)

月面がギザギザの歯の生えた怪物の顔みたいになっています。もちろん AS!3 のスタック処理の失敗で発生した「継ぎ目破綻」なのですが、ここまでブチ壊れた出力を見たのは初めてです。なんでこんなことに…

拡大するとこう。

AS!3スタック失敗(Surface, AP Size 104) (拡大)
AS!3スタック失敗(Surface, AP Size 104) (拡大)

こわっ!

Image Stabilization は「Surface」にしていました。月や金星のように欠けた天体は、COG (Center Of Gravity)で stabilize すると天体の中心が画像の中心からズレてしまって後でトリミングする時に余裕がなくなることがあるので「Surface」でやっています。

今回は極軸をまともに合わせていない状態で、間欠的に連射しているので(SDカードへの書き込み待ちのため)月が写野中心からズレていくため、途中で月を導入しなおしています。それで月の位置が飛んでいる部分があるため AS!3 の天体のトラッキングに支障が生じたように見えます。

そこで Image Stabilization を「Planet (COG)」にしてやり直したのがこちら。

AS!3スタック失敗(COG, AP Size 104)
AS!3スタック失敗(COG, AP Size 104)

一見して激しい破綻はなくなったのでホッとしていたのですがよく見ると破綻が…

AS!3スタック失敗(COG, AP Size 104) (拡大)
AS!3スタック失敗(COG, AP Size 104) (拡大)

ところどころに縦線の継ぎ目が目立つだけでなく、月の左端の模様が二重化していて位置ズレが補正されないままスタックされているのがわかります。

まあ、AS!3 をもう3年以上使っている僕なので、こういう時は慌てず AP Size を大きくしてスタックしなおします。

AS!3スタック失敗(COG, AP Size 256) (拡大)
AS!3スタック失敗(COG, AP Size 256) (拡大)

ダメじゃん。むしろ二重化が激しくなってるし…

これについてはまだ原因がはっきりしません。薄雲が流れる中で撮っていて像のコントラストが変化しているので AP の追跡がうまくいってないのか、あるいは月の周囲の薄雲が照らされている部分の明るさの変化で画像の重心位置がブレて COG による stablization が上手くいってないのかもしれません。

とりあえず撮影した513コマのうち、月の位置が大きくジャンプする前の372コマだけ取り出し、念の為トリミングして位置が少しジャンプする部分の位置を戻した上でスタックし直すと無事スタック出来ました。それを最後まで仕上げた画像がこちら。

月齢20.6 (2021/5/3 02:36)
月齢20.6 (2021/5/3 02:36)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / ケンコー スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO400, RAW) 露出 1/60s x 125/372コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, WinJUPOS 1.2.0.6, Lightroom Classic で画像処理

まあ、なんとかなりました。解像が悪くて等倍で見ると今ひとつですが…

強い wavelet 処理による偽色の発生を避けるため、Lチャンネルを別処理してからLRGB合成する「疑似LRGB合成」をやっています。WinJUPOS は月の南北を垂直に合わせるためだけに使っています。

シーイングが良くてカリカリにシャープな結果が得られるならこのくらいの苦労は苦にならないのですが、ちょっと今回は疲れました…

今月は皆既月食がありますが、刻一刻と月面の様子が変わる月食では今回のような撮り方ではまともな結果が得られそうにないので、素直にワンショットで撮る予定です。