5月3日の夜は快晴の予報だったので、月が出る1:00前までに M64 と M83 を撮る計画を立てていたのですが、夕方に寝落ちしてしまって出遅れてしまい、結局 M64 だけ撮りました。前回に引き続き赤外域まで使ったノーフィルターのモノクロCMOSカメラでの撮影です。
夕方の薄明の終わる20:15頃から撮影開始の予定が21:40までずれ込んでしまいました。南中高度の高い M64 は途中でベランダの天井に隠れて撮れなくなるのですが、撮影開始が遅れたことで総露出時間2時間の予定が90分で限界に。そこから雲の通過でボツになった分を除いて80分露出(2分×40コマ)になりました。
結果はこちら。
2x Drizzle でスタックしたものを軽く wavelet 処理しています。等倍だと結構ザラザラした仕上がりですが Full-HD 全画面ぐらいなら悪くない仕上がりではないかと。
M64 は2年前にデジカメで撮っていましたが、やはり赤外域まで露光しているせいか暗黒帯のコントラストが落ちる傾向はあります。
銀河周辺部の淡い部分の描写はほぼ同等でしょうか。もう少し写ると思っていたのですが、時折薄雲が出るような透明度の悪い空だったのでコントラストが落ちているせいもあるのかも。とはいえ、センサーの解像度が上がった分暗黒帯の構造が見えてきたのでよしとします。
さて、今回は次期 PHD2 の新機能「マルチスターガイド」を開発版(2.6.9dev4)でテストしました。マルチスターガイドは複数のガイド星を使ったオートガイドで、シンチレーションの影響によるガイドの乱れを抑える効果が期待できます。
脳みそアイコンからガイド設定で Use multiple stars にチェックを入れてガイド星を自動選択させると8個ぐらいの星に丸いマークが付いて選択されます。あとは普通にガイドを開始するだけです。雲の通過などで一部のガイド星が隠れても問題なくガイドが続くようです。
気になるガイド精度ですが、明らかに安定します!ガイドカメラの露出時間は2.5秒ですが、ガイドグラフのギザギザの振れ幅が半分くらいになって、RMSエラーも半分近くまで改善しました。RA/DEC共に±1.0秒以下になることは稀だったのですが、今回は±0.7秒前後に。
マルチスターガイドは絶好調のように見える。 pic.twitter.com/BHdDZxHxZR
— ナょωレよ″丶)ょぅすレナ (@rna) May 3, 2021
今までDECのガイドエラーが気になっていたのですが、極軸が追い込んであればDECはほとんどブレません。DECの蛇行(ハンチング)もゼロではありませんが、振れ幅も小さく、すぐ収束して落ち着く感じです。むしろRAのピリオディックモーションの方が大きくて星像が東西方向に伸びて写ります。これはRAの MinMo を下げて Agr を上げると改善しました。
と言ってもガイドグラフ上だけのことなのでは?とも思ったのですが、撮影したフレームの星像も締まっているように見えます。今まではシンチレーションで揺れた星像に振り回されて余計な修正を行ってかえってガイドが乱れていたのではないかと思われます。
シンチレーションの影響はガイドカメラの露出を長くすることで抑えられるとされていますが、ピリオディックモーションに短周期の成分がある赤道儀だとRAの追尾精度が落ちてしまう可能性があります。マルチスターガイドで短い露出でもシンチレーションの影響を抑えられるならそれに越したことはありません。
ところで、ガイド精度が上がったためなのか、赤外域まで使った撮影法のせいなのか、あるいはその両方なのか、今回撮った写真ではいつもより暗い星まで写っているようです。
写真のこの部分を切り出して、
17等より暗い星に印を付けてみました(等級はwikisky.org調べ)。
前回の撮影では17等台が限界でしたが、今回は18等台まで写っています。19等は流石に写っていませんでしたが、18.8等までは写っています。
等級は可視光での明るさなので、赤外まで含めて撮るのはある意味チートなのですが、SQM 18.7 ぐらい(Light pollution map 調べ)の光害地でここまで写るとは思っていませんでした。
春の銀河祭りもそろそろ終わりですが、もう少しモノクロで色々撮るか、カラーで撮り足してLRGB合成するか… あるいはオフアキとフラットナーレデューサーともっと大きなCMOSカメラを買って μ-180C で銀河を、というのはさすがに間に合わないかな…