Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

Galaxy Annotator v0.8 (距離精度向上版)をリリースしました

銀河専用アノテーションツール Galaxy Annotator の距離表示機能ですが、やはり近距離の銀河の距離の精度が悪すぎるのが気になり出したので対応版(v0.8)をリリースしました。

スクリプトの修正は leda-votable-to-galaxy.py のみです。距離表示を使わない人はスキップして構いません。

元々距離表示は億光年単位の遠方の銀河の距離を表示するために作った機能なので、赤方偏移(視線速度)のみを元にして距離を計算するという仕様だったのですが、近距離の銀河ではデタラメの数字になってしまうのがやっぱり我慢できなくなりました。M33 が9100万光年になったり大マゼラン雲(PGC17223)が1400万光年になるのはいくらなんでも…

HyperLeda では mod0 という項目があり、ここに赤方偏移以外の方法で測定した距離*1が距離指数(distance modulus)の形で入っています。ここでの距離は光度距離なので光路距離に変換してあります。*2

これに伴い近距離の距離表示の不具合(100万光年未満の距離表示がゼロになる、距離に関わらず100万光年より下の桁が四捨五入されてしまう)を修正しました。

また、今まで遠方の銀河でも100万光年の桁まで表示するという変な丸め処理をしていたのですが、v0.8 からはシンプルに有効桁数(デフォルト3桁)より下の桁を四捨五入して丸めるようにしました。有効桁数は -p オプションで任意の桁を指定できます。

v0.7 までの計算方法と丸め処理は互換性オプションを指定すると v0.8 今でも利用できます。ただし不具合までは再現しません。

ということで、これで M33 は286万光年、大マゼラン雲は16.4万光年と表示されるようになりました。v0.8 で対応予定だったアノテーションのレイアウトやスタイル指定の機能追加は v0.9 以降でやります…

実は v0.8 での M33 のアノテーション処理の作例を貼ろうと思ったのですが肝心の名前と距離の表示が画面の外に出てしまって役に立たない事が判明。やはりレイアウト関係をなんとかしなくては…

とりあえずしし座4重銀河のサンプルを。

しし座4重銀河(NGC3189, NGC3193, NGC3187, NGC3185) (2021/3/14 20:45) (17等までの銀河をアノテーション処理(v0.8))しし座4重銀河(NGC3189, NGC3193, NGC3187, NGC3185) (2021/3/14 20:45) (17等までの銀河をアノテーション処理(v0.8))
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MC + PHD2 2.6.9 による自動ガイド/ ASI290MM (ゲイン75) / 露出 2分 x 60コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.2, Photoshop 2021, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理, GalaxyAnnotator v0.8 でアノテーション処理.

距離の精度改善で以下のように変わりました。

  • NGC3193: 6600万光年 → 1億900万光年
  • NGC3190: 6400万光年 → 7870万光年
  • NGC3185: 6000万光年 → 7830万光年

このくらいの距離の銀河でも結構差がありますね。

*1:複数の測定結果を加重平均したものです。

*2:近距離では光度距離も光路距離もほとんど差は出ませんが念の為。