時系列的には前回のエントリと前後しますが、先日冷却CMOSカメラ一式を購入しました。
10月13日深夜にカッとなって KYOEI-TOKYO の通販で ZWO ASI294MM Pro、ZWO EFWmini (EFW: 電動フィルターホイール)、ZWO LRGB フィルターセット 31mm、ZWO Hαフィルター(7nm) 31mm、のLRGB撮影用機材一式、ついでに笠井のED屈折用フィールドフラットナーIIも注文しました。合わせて28万1100円(税込)。
前々からDSO撮影用に冷却CMOSカメラが欲しいとは思っていたのですが値段も値段ですし二の足を踏んでいました。しかし昨今の半導体不足に伴う電子機器の供給状況の悪化もあって、今のうちに買っておかないと当分手に入らないかも、という焦りもあってついついポチってしまいました。
モノクロカメラを選んだのはかなり無謀な選択だったと思うのですが、春に ASI290MM で撮った銀河の写りの良さがずっと印象に残っていて、ASI294MM と ASI294MC Pro で L+RGB 撮影というのも考えていたのですが、さすがに値段が…
それならモノクロカメラでの LRGB 撮影の方が解像度やノイズ耐性の面でも有利だし、周りにあまりやってる人がいないのでチャレンジ精神をくすぐられるというのもあるし、対象あたりの撮影時間が増えるのは遠征やってない身では複数夜撮るのもアリというスタンスなので我慢できるかなと思って決めました。
カメラ関係は即納の品だったのですが笠井のフラットナーだけ納期が不明で、あまり遅れるようなら送料出すから別便でと言っていたのですが、10月19日に一式届きました。
購入した品物
まず ASI294MM Pro の中身です。
ケーブルと延長リングやスペーサーが同梱されています。カメラ本体は専用のソフトケースの中に入っていました。ソフトケースは一眼カメラの交換レンズ用のケースのような作りで結構しっかりしたものです。
次に EFWmini の中身です。
EFW 本体には1.25インチのノーズピースとホルダーが取り付けられた状態で入っていました。ZWO ADC に付いているものと同じです。どちらも撮影では使うことがない部品ですが蓋がわりに使えということでしょうか。専用の蓋作るより安くつくんですかね?
最後にフィルターです。
R-Filter が抜けてるみたいに見えますがズレて見えないだけで、無事でした。
フラットナーの方は写真撮ってなかったですが、2インチスリーブに挿すタイプの普通のものです。
KYOEI TOKYO に注文したのはここまでですが、冷却カメラは冷却用にUSBとは別口で電源が必要なのを忘れていました。対応の AC アダプターは KYOEI でも売っているのですが、仕様を満たすアダプターを Amazon で購入しました。
12V/3A以上でプラグが外径5.5mm/内径2.1mmセンタープラスのものということで、サクル扱いのこれを買いました。価格は1880円だったのですが、配送料が700円でした。うっかりしてた…
もう一つポータブル電源のシガーソケットから電源が取れるように同型のプラグに変換するケーブルも買いました。
APS-JAPAN扱いのものです。和歌山のマリン用品ショップだそうですがこういうのも扱ってるんですね。
ついでにベランダ撮影の予備電源としてシガーソケット出力のACアダプターも買いました。
これは中国の業者の扱いですね。ペライチですが内容的にはまともな日本語の説明書が付いています。Amazon のシステム経由でサポートしているようです。
電源とケーブルはいずれも実際にカメラに繋いで冷却パワー50%程度になるまで冷却して問題なく動作することを確認しました。
接続テスト
必要な物品は揃ったので物理的な接続と電気的な接続のテストです。
まず物理的な(望遠鏡への)接続ですが、補正レンズを使うのでフランジバックが合うように延長筒を正しく組み合わせなくてはなりません。KYOEI が付けたドライバー類の CD-ROM と日本語説明書が同梱されていましたが、カメラ本体のマニュアルは英語のものだけです。
延長筒や EFW の接続方法については KYOEI-TOKYO の商品ページに日本語で図示されていますが、英語マニュアルのものとは少し異なります。小径のフィルターを使うのでフィルターをカメラ側に寄せてケラレを防ぐためカメラを EFW に直結する英語マニュアルの方法で接続することにしました。
カメラから望遠鏡の接眼部に向かって以下の順で組みます。
- ASI294MM Pro (出荷時に付いている T2 extender 11mm は外す)
- EFWmini (出っ張っている方をカメラ側に向ける)
- M42-M42 adapter (male to male) (EFWmini 同梱の両側T2オスネジのアダプター。単体で売っている ZWO 両側Tマウントオスアダプターと同じものと思われる)
- T2 extender 11mm (出荷時に ASI294MM Pro の先に付いているもの)
- M42-M48 16.5mm extender (ASI294MM Pro 同梱の延長筒の一つ)
- ED屈折用フィールドフラットナーII
T2 extender 11mm は最初みつからなくて焦りました。よく見るとカメラの先に出ている黒い筒がそれでした。キャップを被せられるように最初からカメラに取り付けてあったようです。最初はカメラの一部だと思っていたし、ただの黒い筒で M42-M48 16.5mm extender と違って外側に何も印字してないので気付きませんでした… これは撤収時にはキャップが付けられるようにカメラに戻しておきます。
カメラの側面にはヒートシンクのフィンが出ていますが、これが意外と薄くて力を入れると曲がりそうですし、手を切る危険性もありそうなので、カメラの取り付け・取り外しの際にはこの部分を強く握らないように注意が必要です。
次に電気的な接続のテスト。カメラ同梱の長いUSB3ケーブル(A-B)でPCとカメラを接続、これもカメラ同梱の短いUSB2ケーブル(A-B)でカメラ内蔵のハブとEFWを接続。カメラの電源はUSB3から供給されますが、冷却は別口で12VをACアダプターから給電。エントリ冒頭の写真では12Vを給電しておらず、これでは冷却はできませんが撮影はできます。
カメラと EFW の制御には N.I.N.A(1.10 HF4 BETA001) を使いました。64bit 版で大丈夫なようです。事前にカメラドライバーと ASCOM Platform と ASCOM ドライバーを ZWO の公式からダウンロードしてPCにインストールしておきました。*1 なお後述するようにその後の撮影テストでは結局使い慣れた SharpCap を使っています。
N.I.N.A を使ったのはいつもの SharpCap ではカメラの冷却速度を制御できないからです。冷却カメラはゆっくり冷やしてゆっくり戻さないと結露の原因になります。このあたりは6月の天リフ超会議「ガチ天2021」の南口さん(星見屋店長)の講演を参考にしました。
「いまさら聞けないオフアキの話・カメラに優しいCMOSカメラの冷やし方」星見屋・南口店長講演/天リフ超会議「ガチ天2021」
最初 N.I.N.A からカメラの接続がエラーになって困りました。ASI_ERROR_GENERAL_ERROR でカメラの初期化に失敗するようです。何度か試しているうちに繋がったのですが、エラーが出る条件がよくわかりません。接続前に冷却用の12V電源を給電してないとエラーになりやすい?
EFW は「ASCOM FilterWheel(1)」を選択して制御できました。以下の動画はフィルターが1番の状態から N.I.N.A で3番のフィルターを選択した時のものです(フィルターはまだ取り付けていません)。
冷却も10分で0℃まで冷却後、また10分で室温まで昇温するテストをしましたが、結露などの問題は出ませんでした。なお冷却後のカメラ本体は少し冷たい程度で手で触れても問題ありませんでした。というかペルチェで冷やしているから熱くなるかと思ったのですが、ヒートシンクとファンで効率的に放熱できているようでヒートシンクも特に熱くはなっていませんでした。
テスト撮影
この後、実際に望遠鏡(BLANCA-80EDT)に接続して0℃まで冷却して地上の鉄塔を撮影しました。ASI290MM/MC はカメラ背面のロゴが正位置になる向きに取り付けると撮影画像も正位置になりましたが、ASI294MM Pro はロゴが正位置の向きだと撮影画像が倒立像になりました。なのでちょっと気持ち悪いですが、ロゴが逆さまになるように取り付けて撮影しました。
テスト撮影は N.I.N.A を使ったのですが、プレビュー表示にラグがあるようで、映像を見ながらのピント合わせがかなりやりにくかったです。実際テスト撮影した画像もピントが来ていませんでした。SharpCap だとそこまででもないし、Bin 1 でも ROI を設定すれば十分なフレームレートで表示でき、スムースにピント合わせができます。
ではピント合わせだけ SharpCap を使う?でも冷却前に合わせたピントは冷却後ズレてしまいそうです。N.I.N.A で冷やしてから一度 N.I.N.A からの接続を切って SharpCap でピント合わせする?でもカメラの接続を切ると冷却も切れるのでカメラが急速に温まってしまいます。
カメラに優しいのは1分あたり2〜5℃までのゆっくりした冷却/昇温だそうですが、実際うっかり0℃以下から昇温を待たずにカメラを切ってしまったのですが、それを大きく上回る速度でカメラが温まってしまいました(幸い結露はしませんでした)。
なので、N.I.N.A と SharpCap を切り替えて使うのはナシ。N.I.N.A は他にも冷却パワーが上がらなくなったり突然落ちたりのトラブルがあったので、結局その後の撮影では SharpCap を使って、冷却は手動で少しずつターゲット温度を下げていくことにしました。どうせドリフトアライメント中は手が空く時間があるので、その間にチマチマと温度を下げていけばいいのです。
フィルターの取り付け
今回は少しでもケラレないようにと枠なしの31mmフィルターを買ってしまったのですが、これがなかなか扱いにくいです。
EFWmini 自体は穴のところにネジが切ってあって枠付きの1.25インチ(アメリカンサイズアイピースの先にねじ込むタイプ)も使えます。実際10月20日の満月の撮影ではアメリカンサイズ用の IR パスフィルターを EFW に取り付けて撮りました。
これはバローレンズを使ってF値が大きいのと、月だけ残して正方形にトリミングするので仮に周辺が多少ケラレても構わないからです。
1.25"用フィルターではF5程度までケラレないそうですが、RedCat 51 がF4.9なので微妙… 31mm だとF2までOKとのことで、31mm にしたのでした。
さて、フイルターの取り付けですが、ZWO のマニュアルには EFWmini 用の記述がなく、フィルター押さえのリングの取り付け方が不明だったのですが、結局こうしました。
こんなんでいいんですかね? フィルター穴毎に3つのネジ穴を使えばいいと思ったのですが、ネジ穴の一つが隣のフィルター穴と共有になっていて、リングを重ねざるを得ませんでした。
リングの3つの穴のうちフィルターの中心を挟んで相対する2つの穴があるので、リングのその穴の部分がホイール面に接するようにして、もう一つの穴の部分を隣のフィルター穴用のリングの上に重ねる形にしました。瓦を重ねるような感じです。これで安定してフィルターを押さえられるようなのですが…
フィルターは干渉フィルターで裏表があるそうです。枠なしフィルターだと一見して裏表がわからないため、フィルター面の反射を見て判別しなくてはなりません。KYOEI TOKYO の商品ページに判別方法が書いてあって、反射で見える物体が二重に映って見える方が対物側になるそうです。
スマホで撮った写真で見るとわかりやすいですが、肉眼では結構わかりづらいです。フィルターの色によってもかなりわかりづらいものがあり(Bだっけか?)、だいぶ神経をすり減らしました… いっそ全部スマホで撮って確認したら良かったかな?
リングのネジ留めではホイールがどうしても回ってしまいますが、EWFがホイールの回転角をエンコーダーか何かで検知できるのかどうかよくわからなかったので、最後に元の位置に手で戻しました。マニュアルに特に注意書きはなかったので元に戻さなくても大丈夫なのかな?
というわけで次回は実写編です。
*1:同梱の CD-ROM からもインストールできるのですが、最新版を入れておこうと思って。