Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

モノクロ冷却CMOSカメラ購入(その3): M42 オリオン座大星雲 (2021/11/5)

11月5日は ASI294MM Pro の DSO 実写テスト二回目を行いました。ターゲットは M45「プレアデス星団」と M42「オリオン座大星雲」です。が、結果から言うと M45 の方は失敗、M42 も色々問題はあるのですが「iPad 見て気にならない」という志の低い基準ではまあ、成功ということで…

前回は「ちょうこくしつ座銀河」を撮ったのですが、

色的には地味でLRGB合成がうまくできたのかいまいちわからないというのもあって、青い M45 とピンク色の M42 を撮ってみようというわけです。

まず一応はうまく撮れた M42 の方から。

M42 (2021/11/6 00:52-03:24)
M42 (2021/11/6 00:52-03:24)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) + ED屈折用フィールドフラットナーII (合成F6) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro(Binning 1, Gain 150, -10℃), SharpCap 3.2.6482, 露出 L: 4秒 x 6 + 8秒 x 6 + 15秒 x 6 + 30秒 x 6 + 1分 x 8 + 2分 x 15, R: 8秒 x 4 + 15秒 x 4 + 30秒 x 4 + 1分 x 6 + 2分 x 8, G: 8秒 x 4 + 15秒 x 4 + 30秒 x 4 + 1分 x 6 + 2分 x 8, B: 8秒 x 4 + 15秒 x 4 + 30秒 x 4 + 1分 x 6 + 2分 x 8 / DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

多段階露光で撮影し、HDRで仕上げたものです。色合いはうまく再現できました。特別なことはせず普通にカラーバランスを整えただけです。

4年前にほぼ同じ光学系で M42 を撮影しています。カメラは OM-D E-M5 で、やはり多段階露光とHDRで仕上げました。

どちらも光害カットフィルターは使用しなかったので、赤み控え目のナチュラルカラー(?)です。今回の方が少し彩度マシマシで恒星の色が若干エグい?M42 の鳥の頭みたいな部分の首の前にある赤い星がちょっと赤すぎるかも。

ノイズ感は今回の方が若干良好かな、ぐらいの感じですが、L画像の露出時間で比べると前回より少し短め(前回が 4分 x 10コマ = 40分、今回のL画像が 2分 x 15コマ = 30分)で、解像度は約1.6倍(Bin1 なので)なのを考えるとなかなか優秀。同じくらいに縮小するとはるかに低ノイズに見えます。

今回はガイドエラーが大きめだったせいか、解像感は若干劣る感じ。星像も等倍で見ると少し横に伸びています。解像度は 0.99"/ピクセル なので、そもそもRAのRMSエラーが1.0"前後のガイド精度ではなかなか厳しいのですかね。SX2 の限界なのか、ガイドスコープが小さすぎるのか…

そしてガイド精度のムラのせいなのか、シーイングの違いなのか、RGB毎に星像の大きさや形が微妙に違ってしまって、RGB合成すると輝度が飽和した恒星の縁に色が付いてしまいます。等倍で見るとよくわかりますし、1/2に縮小しても鑑賞距離より近づいてよく見ればわかります。

この現象は失敗した M45 の方が顕著で青い星なのに輝星の飽和部分の周りがピンク色になってしまいました。ガイド精度が悪くて南中前に最初に撮って高度も低かったR画像の星像が肥大していたからだと思います。

M45 プレアデス星団 (2021/11/5 221:25:40-23:43:40) (失敗…)
M45 プレアデス星団 (2021/11/5 221:25:40-23:43:40) (失敗…)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) + ED屈折用フィールドフラットナーII (合成F6) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro(Binning 1, Gain 150, -10℃), SharpCap 3.2.6482, 露出 L: 30秒 x4 + 1分 x 6 + 2分 x 16, R: 2分 x 8, G: 2分 x 8, B: 2分 x 8, DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, FlatAidPro 1.2.3, Lightroom Classic で画像処理

これはチャンネル別にトーンカーブの形を歪めて誤魔化してますが誤魔化し切れてませんね。

ちなみにこの写真が失敗なのは、フラットを撮る前に縦位置で M42 を撮るためにカメラを回転させたため*1 後から撮ったフラットが合わなくなったからです。一応カメラを90度回転して撮ったフラットも撮ったのですが、完全には合いませんでした。

なお、前回の課題だったフラット撮影の問題は、赤道儀に載せたままの鏡筒を真下に向けてベランダの床に置いた iPad を撮影するという方法で撮ることでほぼ解決しました。この方法だとフィルターを切り替えてのフラット撮影でも安定したフラットが得られます。

ベランダの床は排水のために少し傾いており、鏡筒が光源の面に対して完全に垂直になるように調整するのは難しくて、フラットの輝度に若干傾斜が出ました。とはいえこれは最後に段階フィルターで補正すればなんとかなる感じ。

正しいフラットが撮れた M42 の方では概ね色ムラもなく良好な結果が得られました。しかし M45 の方は色ムラが結構出てしまい FlatAid でも被写体が大きすぎて背景があまりフラットにならず、M45 の淡いガスの部分を炙り出せなくなりました。

回転角のズレでフラットが合わなくてもそこはRGBで差はないから色ムラの原因にはならないと思うのですが何故でしょう?単に撮影時の光害カブリの違いのせい?

話を M42 に戻しますが、もう一点問題が。写真の下半分だけ星像が縦にかなり伸びています。どうもカメラが光軸からシフトまたはチルトしてるっぽいんですよね… フラットナーの効きが弱いとはいえ、横位置で撮った M45 の左右の端の星像はほとんど伸びていないので、フラットナーの収差の問題ではなさそうです。

チルトなら写真の上半分の星像も伸びているはずなので、シフトでしょうか?でも冷却カメラの重さでドローチューブが傾いているのならセンサーの上側、像の下側の方が光軸に近いはずで、シフトが原因なら下側の星像が伸びるのは辻褄が合いません。

ということで課題関係をまとめると、

  • R, G, B のガイド精度やシーイングの違いで星像の大きさに差が出ると輝星の飽和部分の周りに偽の色が付いてしまう
  • カメラ + EWF の重さで接眼部が撓むのか(北を上とする構図の場合)カメラが縦位置だと写真の上下のどこかに星像が伸びる部分ができる
  • フラット撮影はフラットパネルを地面に置いて撮れば安定して R, G, B でフラットが安定せず色ムラになる問題は解決する

前回の課題についてはフラット問題はほぼ解決。低空を撮った時のガイド不良の問題については今の所低空で撮らない以外の対処方法がなさそうです。先日のレナード彗星の撮影では対物レンズをヘリコイドで動かす合焦方式で接眼部にドローチューブがない RedCat 51 では低空を撮っても問題なかったので、要は接眼部の頑丈さ次第ということです。

輝星に偽の色が付く問題については、常に十分な精度の出る赤道儀を買うとか、途中でシーイングが乱れたら諦める、ぐらいしか手がない?みんなどうしてるのでしょう。モノクロ冷却カメラとか使う人は赤道儀もいいの持ってるから悩まないとか?でもシーイングの方は特に長焦点で撮る時は問題になりそうですが…

星像が伸びる問題はとりあえず接眼部のあちこちのネジを締め増しして様子見ですかね。モノクロ冷却カメラ、なかなか難しいです… (続く)

続き:

*1:BLANCA-80EDT はアリガタ直付けの鏡筒なので鏡筒回転ができず接眼部もしくはカメラアダプターのスリーブ接続部を回転する必要があります。