Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

モノクロ冷却CMOSカメラ購入(その4): 馬頭星雲 (2021/11/11)

11月11日の夜は馬頭星雲を撮りました。今回はHαのナローバンドでも撮影してカラー画像に合成して赤い星雲がクッキリ写った写真にできるかどうかのテストです。

実は前回の M42 でもHαは撮っていたんですが、LRGB合成でいっぱいいっぱいでしたし、星像の伸びと色付きの問題が発覚して、これ以上手間をかけるのもなーという気持ちになって放置していました。

でも今回はHαが主役です。ナローバンドフィルターは光量ががっつり減るのでHαは Bin 2 (120万画素), Gain 300 の4分 x 8 で撮りました。HDR合成のために2分 x 8 も撮っています。驚いたことに4分露出のプレビューはストレッチしなくても「馬の首」がはっきり見えています。

撮影開始が遅れて深夜1時過ぎからになってしまったのでHαだけにしようかと思っていたのですが、是非これに色を付けて見てみたいと思い、LRGBを各 1分 x 8 (Lだけ 30秒 x 8 も追加)で撮りました。

ガイドは好調。今回は赤経方向のガイド精度を上げるために PHD2 の PPEC を試しました。ガイドしながらガイド星の揺らぎの傾向を学習して途中から揺らぎを予測して先回りして赤経軸の速度を調整するというものです。パラメータはよくわからないのでデフォルトのまま。

今回は接眼部の調整もテーマで、事前に締められるネジは全部締め直してガタが残らないように調整。そのおかげなのか縦位置での画像下部の星像の伸びは多少マシになりました。でも下から20%弱ぐらいの領域は縮小画像で見てもわかる程度には伸びでいます。

やはり接眼部の強度が原因と思われる、子午線越え後に時間が経つとガイドエラーとは無関係に赤経方向に星像が流れる現象ですが、これは今回は見られませんでした。やはりドローチューブが横滑りしていたのが原因だったようです。

ということで撮影自体は比較的スムースに終えたのですが、画像処理がなかなか思うようにいかず苦労しました。なんとか満足できる範疇まで持っていった結果がこちら。

馬頭星雲 (2021/11/12 01:38-03:14)
馬頭星雲 (2021/11/12 01:38-03:14)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) + ED屈折用フィールドフラットナーII (合成F6) + ZWO LRGB Filter & ZWO Ha Filter / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro(Binning 2, Gain 300, -10℃), SharpCap 3.2.6482, 露出 Hα: 4分 x 8 + 2分 x 8, L: 1分 x 20 + 30秒 x 8, R: 1分 x 8, G: 1分 x 8, B: 1分 x 8 / DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

今までもベランダから何度か撮った馬頭星雲ですが最高の仕上がりになりました。ポニーヘッドの暗黒星雲らしいモクモクしたディテールがクッキリ写り、背景の赤い星雲にもまさに雲のような構造が浮かび上がっています。

Hαだけを仕上げたモノクロ画像を見るとディテールの描写がほぼほぼHα由来であるのがわかります。

馬頭星雲 (2021/11/12 01:38-02:25) (Hα)
馬頭星雲 (2021/11/12 01:38-02:25) (Hα)

Hαの総露出時間は48分ですが、1時間足らずでここまで写るとは思いませんでした。今までは無改造デジカメ(OLYMPUS OM-D E-M5) + 光害カットフィルターで総露出時間2時間とか、

惑星用の非冷却カラーCMOSカメラ(ZWO ASI290MC) + UV/IRカットフィルターで総露出時間1時間半とか、

そういう撮り方をしていて、横浜の空だとこんなものかな、と半ばあきらめていたのですが、冷却モノクロカメラ + ナローバンド、最強ですね。

撮る前はナローバンドは暗いのでこの程度の露出時間では… とあまり期待してなかったのですが。バックグラウンドとのSN比の高さが相当効いているようです。逆に言えば光害がいかに邪魔なのか思い知らされるわけですが…

主役のHα画像はLとRにブレンドしています。画像処理で苦労したというのはこの部分で、Hαをブレンドした時のカラーバランスがなかなかうまくいかなかったのです。

最初はLにだけブレンドしていました。僕の雑なLRGB合成の理解ではLチャンネルにRGB合成した色がそのまま乗るものだと思っていたのですが、妥当なカラーバランスに調整したLRGB合成画像が、LにHαをブレンドした途端に赤い星雲の色が茶色っぽくなってしまうのです。

ネットを色々検索すると、ぴんたんさん(FlatAidPro の作者)のブログに Photoshop でLRGB合成するとサーモンピンクになることがあるという話がありました。

対策も書いてあって意味もわからず真似してみたのですがうまくいかず。あ、でも今良く見たらHαはLに比較明合成って書いてありますね。僕は単純にレイヤーを重ねて不透明度を調整してブレンドしてました。そのせいなんだろうか…

で、そこから試行錯誤した結果、RGB画像の方のガンマ値を調整すると多少それっぽい色が出てきたので一度はそれで仕上げました。こんな感じ。

馬頭星雲 (2021/11/12 01:38-03:14) (Hα+L+RGB 合成いまいち版)
馬頭星雲 (2021/11/12 01:38-03:14) (Hα+L+RGB 合成いまいち版)

燃える木星雲(NGC2024)はこっちの方が黄色っぽくてデジカメに近い色になっています。が、やはり馬頭星雲のバックの赤い星雲が茶色っぽいのが気になってしまいます。

そのあと色々検索していて、どこで見たのかメモるのを忘れててわからなくなってしまったのですが、LだけじゃなくてRチャンネルにもHαをブレンドするといいよみたいな話があって、それを参考に仕上げると赤い星雲が綺麗に赤くなりました。

それが最初の写真なのですが、上の写真と比べると今度は燃える木星雲が赤っぽくなってるのが気になってしまいますね… そこはちょっと妥協してしまいました。

ということで課題関係はこんな感じ。

  • Bin 2 悪くない。使い勝手もいい。
  • 赤経ガイド精度が足りない問題、PPEC が効いた?そもそも Bin 2 で撮れば精度は十分かも。
  • R, G, B のガイド精度やシーイングの違いで輝星の飽和部分の周りに偽の色が付く問題、今回も若干あるが画像処理で解決できるのかどうか不明。今の所運まかせ…
  • 縦位置で星像が伸びる部分ができる問題、接眼部のネジの締め増しで多少良くなったが、まだ不十分。どうやって調整するか要検討。
  • フラット撮影は前回と同じ方法で今回もうまくいった。
  • Hα撮影は強力だがカラー画像にするとカラーバランスの調整が難しい。今後の課題。

Bin 2 の約1200万画素ってちょっとどうかなと思っていたのですが、低ノイズなら体感の解像感が向上するので無理に Bin 1 (約4700万画素)で撮らなくても十分かなと思いました。画像処理も軽いですし。

赤経ガイド精度は PPEC が効いたのかなんなのかよくわからないですが、様子見です。シーイングの影響は Bin 1 ならそこまで神経質にならなくてもいい?

接眼部の調整はどうしたものか。もう少し考えます。ていうか、もっと工作精度のしっかりした鏡筒を買うという手も…

そんなわけでまだまだ課題はありますが、モノクロ冷却カメラ、なんとかやっていけそうな気持ちがちょっとは出てきました…

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