Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

月面モザイク撮影 (2022/3/12)

仕事は終わってないのですが徹夜で仕上げた中間納品の後の土日はさすがにお休みしました。土曜日は夕方から夜中まで快晴、深夜から曇りの予報。

何か撮ってみたいとは思ったものの晴れている間は月齢9.7の月がずっと出ているので DSO は無理、むしろその月を撮る?久々に μ-180 で月面モザイク撮影にチャレンジとか?などと思ったものの、この日の月は南中高度が80度以上で、薄明終了後に撮影開始では撮影途中でベランダの天井に月が隠れてしまう可能性大。

それならば「シリウスBチャレンジ」でも、と思って夕方まだ明るいうちからベランダに機材を設置。ファインダー越しでもさすがにまだシリウスは見えないので月面でピント合わせなどしているうちに、シーイングも悪くないしやっぱり月面写真も撮りたいなと思って、まだ薄明の残っている18:30頃から撮影開始。仮処理の結果も悪くなく、ついついそのまま月面全体をモザイク撮影してしまいました…

今回は ASI294MM Pro の Bin 1 (SharpCap 4.0 では「46 Megapixel mode」)で撮りました。いつもの ASI290MM と比べるとセンサーサイズが約3.6倍(対角長23.2mm)でピクセルサイズは約20%小さく(2.315μm)、モザイク撮影しやすい上に高解像度。

しかし転送速度はかなり落ちます。Bin 1 だと 3.5fps くらいまでしか出ません。この速度では月惑星を撮るには厳しいですし、そもそも μ-180C の周辺像はコマ収差が大きくフォーサーズイメージサークルでも周辺は甘くなります。スターベース東京さんのテストによると実用的に良像範囲は直径8mm程度、ピクセルサイズによってはそれ以下とのこと。

ということで ROI を設定して 4232 x 4232 の範囲でキャプチャーすることにしました。対角長13.9mmなのでこれでも大きすぎるのですが、多少像が甘い部分が出ても3年前にやらかしたみたいに糊代が足りなくてモザイクが欠ける悲劇が発生するよりはマシなので…

fps はこれでも 6.5fps くらいしか出ません。1000フレーム撮ると2分半くらい。惑星撮影には遅すぎる感じですが月面ならフレーム数もそこまで必要ないのでなんとかなるはずと、これでいきました。

シーイングは中盤から乱れ気味で、ピントも少しズレてきた?と思ってピントを再調整したのですが、シーイングが乱れた中でのピント合わせには厳しいものがあり、後半はピントに不安を抱えたまま撮影を続けていました。

1セット1000フレームを18セットで1時間以上かかりました。懸案のベランダの天井問題ですが、月明かりでベランダの床に落ちた影を見て天井によるケラレがあるかどうか確認していたのですが、撮影後半に見た時点では天井の影と鏡筒の影は分離していて、撮影後10分後ぐらいに見た時は重なっていたので、最後の方で少しケラれていたかも。

各セットで撮った動画を画像処理して 3200 x 3200 くらい(対角長約10.5mm)にクロップしたものを、最近公開終了になってると話題になっていた*1 Microsoft ICE (Image Composite Editor)でモザイク合成。 速度も仕上がりの安定感も Photoshop よりこっちですね。大事に使っていこうと思います。

最後に月の南北の向きを合わせるために WinJUPOS の image measurement で向きを調整して1枚だけで de-rotation (画像回転だけになります)したのですが、画像がデカすぎてやたら時間がかかりました。

というわけで結果はこうなりました。元画像は 7840 x 9800 (約7680万画素)です。

月 (2022/3/12 18:26-19:33)
月 (2022/3/12 18:26-19:33)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Bin 1, Gain 150, 10℃), SharpCap 4.0.8667.0, 露出 1/250s x 500/1000コマをスタック処理 x 18枚をモザイク合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic, Microsoft ICE 2.0.3.0, WinJUPOS 12.0.7 で画像処理。

どうでしょう?これは成功と言ってよいのでは?

写真クリックすると Flickr に飛ぶので、そこで写真をクリックすると拡大、さらにクリックするとさらに拡大表示になります。その状態でマウスを動かすと月面がグリグリ動くのであちこち眺めてみてください。

等倍で見るとやや甘いところもあるのですが、高解像度すぎて Flickr の拡大表示で最大にしても等倍表示にはならないので、まあ、よしとします。北から順に撮ったので前半のシーイングが良いタイミングで撮ったアルプス谷のキレとかアペニン山脈のゴツゴツした感じとかがなかなかよく写っていて、それだけでも満足です。

Registax のパラメータは全部同じにしてありますが、シーイングがやや悪かった後半部分は Lightroom の「テクスチャ」を少し強めにかけて解像感を気持ち揃える感じに仕上げています。

縮小画像だけだともったいないので、欠け際を中心に 2048 x 2048 で切り出したものを以下に。

プラトー、アルプス山脈周辺 (2022/3/12)
プラトーアルプス山脈周辺 (2022/3/12)

コペルニクス、エラトステネス周辺 (2022/3/12)
コペルニクス、エラトステネス周辺 (2022/3/12)

ヒギヌス谷、中央の入江周辺 (2022/3/12)
ヒギヌス谷、中央の入江周辺 (2022/3/12)

プトレメウス、アルバテグニウス周辺 (2022/3/12)
プトレメウス、アルバテグニウス周辺 (2022/3/12)

雲の海周辺 (2022/3/12)
雲の海周辺 (2022/3/12)

ティコ、デランドル周辺 (2022/3/12)
ティコ、デランドル周辺 (2022/3/12)

グラビウス、マギヌス周辺 (2022/3/12)
グラビウス、マギヌス周辺 (2022/3/12)

うーん、いいですね。ずっと見ていられますね。時間ができたらクレーターの名前とかを記入したバージョンも作ってみたいと思います。

というわけで、ずっと天体写真が撮れなかったストレスも解消したし、3年前のリベンジも果たせたし、実にいい撮影でした。

なお、シリウスBチャレンジの成果についてはまた後日アップします。