Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

久しぶりの黒点 (2022/4/22)

仕事の方は一段落ついたので、金曜日は休みを取って昼から太陽を撮影しました。17日に現れた黒点群(2993, 2994)がかなりデカくて活動的なので撮りたかったのですが天候に恵まれず、22日は貴重な晴れ間になりそうだったので。

今回は ASI294MM Pro での撮影です。正直迷ったのですが… 万が一センサーを焼いてしまったら損失がデカいしフィルターも太陽光に晒して大丈夫なのか?とも思って。でも太陽全体を高解像度で撮ってみたくて2インチバローとの組み合わせで撮影しました。

【注意!】 太陽の観察・撮影には専用の機材が必要です。専用の機材があっても些細なミスや不注意が失明や火災などの重大な事故につながる危険性があります。未経験の方は専門家の指導の元で観察・撮影してください。

2993-2996黒点群 (2022/4/22 12:45)
2993-2996黒点群 (2022/4/22 12:45)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成f992mm), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO LRGB Filter (G) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Binning 1, Gain 80, 20℃), SharpCap 3.2.6482.2, 露出 1/1000s x 250/2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

右端の大中小の三つが繋がった形の黒点が2993黒点群、その左下に少し離れて並んだ二つの黒点が2994黒点群、そこから左に離れたところにある黒点が2995黒点群、その左上の小さな黒点が2996黒点群です。

この日の太陽の地心距離は 1.00501 AU = 150347356 km (iステラ調べ)、WinJUPOSの測定では 0.4815"/ピクセル なので画像上の1ピクセルは約350km(横浜から京都までの距離くらい)です。*1 2993黒点群の一番大きな真っ黒い部分の直径が約36ピクセルなので大きさは約12600km。地球の直径(赤道面)が12756kmなので、ほぼ地球一つ分の大きさということになります。

太陽 (2022/4/22 12:57)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成f992mm), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO LRGB Filter (L) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Binning 1, Gain 80, 20℃), SharpCap 3.2.6482.2, 露出 1/2000s x 250/2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

こちらは太陽全体です。画像の向きは、宇宙天気ニュースの画像とにらめっこして、なるべく太陽の北が上になるように調整しています。太陽全体が写っているので WinJUPOS の Image measurements を使って合成焦点距離を算出しました。

拡大光学系はこんなふうに組みました。

2インチバロー使用時の接続状況
2インチバロー使用時の接続状況

48mmネジにバローレンズのレンズ部分をねじ込み
48mmネジにバローレンズのレンズ部分をねじ込み

カメラ側から、

  • ASI294MM Pro
  • EWFmini
  • ZWO 11mm 延長筒 (ASI294MM Pro 付属)
  • 笠井 T2延長リング(20m + 15mm)
  • ZWO M42M-M48F-16.5mm (ASI294MM Pro 付属)
  • GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (レンズ部分のみ)
  • ビクセン 42T→50.8AD
  • 笠井 CNC2インチHP直焦点アダプター

という構成。2インチバローのレンズ部分は48mmネジ(オス)になっているので、M42M-M48F-16.5mm の48mmネジ(メス)にねじ込んでいます。これでバローレンズの拡大率は約2.07倍です。もっとシンプルにいきたいところでしたが、笠井 CNC2インチLP直焦点アダプターの先に2インチバローを付ける方式だと光路長が足りず合焦できませんでした。

ビクセン 42T→50.8AD の細いネジ2本留めで重い冷却CMOS + EFW を保持できるか心配だったのですがなんとかなりました。*2


撮影はいろいろとゴタゴタがありました。まずフィルターの問題。最初の拡大像*3は粒状班のつぶつぶもよく解像していていい感じなのですが、2枚目の全体像は等倍表示するとあまり改造していません。違いはフィルターだけです。解像している方は G フィルター、していないほうは L フィルターを使っています。

実は LRGB 合成をやろうとして拡大像では L,R,G,B 全部撮っていたのですが、L だけ wavelet 処理すると斜めにブレたような像になってしまったのです。

2993黒点群、2994黒点群 (G) (2022/4/22 12:45)
2993黒点群、2994黒点群 (G) (2022/4/22 12:45)
(1枚目の写真の等倍クロップ)

2993黒点群、2994黒点群 (L) (2022/4/22 12:40)
2993黒点群、2994黒点群 (L) (2022/4/22 12:40)
ZWO LRGB Filter (L) / 露出 1/2000s x 250/2000コマをスタック処理 (他は1枚目の写真と同じ)

最初はシーイングが悪かったのかな?と思っていたのですが、3回やって3回ともそうなるし、カラーフィルターを使用したものは R,G,B,Ha どれも大丈夫です。L,R,G,B,Ha,L,L の順で撮って3つのLがどれもダメ。

フィルター以外はシャッタースピードが違い、G は1/1000秒、L は1/2000秒です。L の方がローリングシャッター歪みが強く出てスタック時に何か悪影響が?と思って AS!3 のパラメータをいじってみたのですが改善せず。

この時に Quality Estimator を Local (AP) から Global (Frame) に切り替えたものが、解像感が落ちるかわりに流れる感じが軽減していたので、2枚目の全体像の写真ではそのパラメータで処理しました。

一体何なんでしょう?それはこの日の夜に撮った M60 + NGC4647 の撮影の際に明らかになった、かも?(まだ確信なし)

この撮影ではもう一つトラブルがありました。上の写真では撮影に SharpCap 3 を使っていますが、最初は SharpCap 4 で撮っていました。が、撮影時間が妙に長くて、よく見るとフレームドロップが大量に発生していて Bin1 のクロップ無しだと 1.6 fps とかになってしまってました。

プレビュー中はフレームドロップが発生していないので、保存先のSDD(PCIe 3.0 NVMe)に何かトラブルが?と思ってディスクの最適化を実行したのですが、改善せず。SharpCap の設定に保存先ディスクのスピードテスト機能があるのを見つけて実行してみたのですが、1GB/s 以上の速度が出ています。

SharpCap 3 ではこんなことなかったよな?と思って 3 に切り替えたところフレームドロップゼロ、フレームレートも Bin1 のクロップ無しで 4 fps 弱で撮影できました。うーん、一体何なんでしょう?こちらはまだ謎なまま。

というわけで色々ありましたが久しぶりのデカい黒点で興奮しました!

*1:tan(0.4815") = y / 150347356[km] から y = 0.000002334 * 150347356[km] = 350.9[km]. 地球と太陽の半径を考慮しても349kmでほぼ変わりません。

*2:というか、よく考えたら最初に ASI294MM Pro で満月撮った時(https://rna.hatenablog.com/entry/20211021/1634822016)も似たような構成でした。https://www.flickr.com/photos/rnanba/51614396304/in/dateposted/ https://www.flickr.com/photos/rnanba/51614396424/in/photostream/

*3:ROIを設定してクロップしただけで光学的な拡大率は同じです。