Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

2021年の天文活動をふりかえる (その1)




昨年は年内の活動をブログエントリにまとめるのが遅れて1月の半ばあたりまで去年の分のエントリをアップしていたところ、仕事が急激に忙しくなりブログどころか天文活動もほぼ不可能になってしまい、4月末あたりまでそんな状況が続きました。

1月中には2021年の振り返りエントリを、と思っていたのですが全然書ける状況ではなく、GWになってやっと時間がとれるようになったので、そろそろ書こうと思いつつ、5月になってそんなエントリ上げても、という気持ちも…

とりあえず、準備しかけて放置していた「統計編」をベースに色々とふりかえっていきます。「統計編」は今回始めての試みで、1年間何を撮ってきたか、機材をちゃんと活用できているか、等を集計して来年の(もう今年ですが…)活動の指針にしようというものです。

チャートは Char.js を使って JavaScript で動的に描画しています。今時のブラウザなら動くと思います(IE11はダメです)。チャートは色分けになっていますが、チャートの上にマウスを持っていくと項目名と数値が表示されます。

撮影対象別集計

まずは撮影回数を撮影対象の種類別に集計したチャートを。

2021年の撮影対象は惑星と月と銀河で過半を占めていました。夏から秋にかけてのベランダ閉鎖がなければ木星土星をもっと撮っていたのですが…

とはいえ過去最高の木星をタイムラプス撮影できたのでそれで十分おなかいっぱい感はありました。

銀河は春の銀河祭り(赤外/ノーフィルター)の分ですね。これをきっかけにアノテーションツール Galaxy Annotator を自作して撮った後の楽しみ方が広がりました。



今年は忙しくて銀河祭りは中止になってしまい、Galaxy Annotator の開発も止まったままですが… アイデアは色々あるのでなんとか再始動したいところです。

彗星はあまり積極的に撮らないのですが2021年は5位にランクイン。レナード彗星とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のおかげですね。


流星は全く撮らない年も多いのですが、昨年はふたご座流星群を動画で撮りました。動画をチェックするのはダルいのですが、今年に入ってからアストロアーツのつのださんが公開したツールを改造して動画から流星検出とダイジェスト動画の生成ができるようになったので今年はもっと撮るかも?


でも動画だとどうしても 1/30s 以上の露出時間で撮れないので F0.95 のレンズでも絵的に映えないんですよねぇ。でも静止画だと流れてる!って感動に乏しくて。

DSO は銀河と散光星雲に偏っています。星団、あんまり撮りませんね。特に球状星団。冷却CMOSとHαフィルターを買ったので輝線星雲優先になってたのもあったし、実際光害地でもHαは面白いようによく写るので…

球状星団と言えば M13 を未だに撮ってないのはどうかと思うので、今年あたりはなんとかしたいのですが、ベランダからは撮れない位置で外に機材を持ち出さないといけません。スカイメモSでは8cm屈折と冷却CMOSは文字通り重荷過ぎるし、もう少ししっかりして持ち運びもできる赤道儀を買うか、それとも SX2 をどうにか持ち出すか…

「衛星」も木星土星の衛星を撮ってるので実質「惑星」カテゴリでしょうか。月・惑星関係が20回、DSO 関係が19回(ただし写野内に複数の種類があるものはそれぞれカウントしています)で、概ねバランスよく撮影している感じです。

流星が少ないのと昨年は太陽を撮りませんでしたが、まあ、オールラウンダーと言ってよいのではないでしょうか。まあ、オールラウンダーということはより先に進む際に機材投資が対象のタイプ毎に分散してしまうので必ずしもよいことではないのですが…

使用鏡筒/レンズ別集計

次は、機材関連。まず、使用鏡筒/レンズ別の集計です。

8cm 屈折の BLANCA-80EDT が過半数を占めました。18cm 反射の M-180C (μ-180C)ではまだ DSO は撮っていないのと、月の全景も BLANCA-80EDT を使っているのでこうなりました。

一時期 RedCat が宝の持ち状態になりかけていましたが、2021年はそこそこ活用できた感じです。彗星の撮影に使った他、当初の目的でもあった大きめの DSO の撮影にも使いました。



接眼部がしっかりしているので冷却CMOSとの組み合わせでも安心ですし、スカイメモS でもギリギリ運用可能で、野外での撮影でも重宝しました。写りも良いし、F値が明るくてピントがシビアな割にピントリングが渋くて往生する以外は本当にいい鏡筒です。

μ-180C は相変わらず光軸も出荷時のまま無調整で使っていますが、問題なく使えてます。遠征で車に乗せたりしたら調整が必要なのかもしれませんが、ベランダで使う分にはメンテナンスフリーに使える感じで助かります。

μ-180C については今年は純正フラットナーレデューサーとの組み合わせで懸案の DSO 撮影(オフアクシスガイダー使用)にチャレンジしてみようと思います。というか、実は先日チャレンジしました。まだ課題は多いですが、まるで無理というわけでもなさそう。後日エントリを上げる予定です。

使用カメラ別集計

続いて使用カメラ別の集計です。

2021年は月惑星に加えて銀河の撮影にも惑星用CMOSカメラを使っていたので ASI290MM/MC で半数近くを占めました。惑星撮影には両方使ってて二重カウントになってるせいもありますが…

2021年はやはり新規に投入した冷却CMOSカメラ ASI294MM Pro が早速活躍してくれました。失敗分もカウントしていますが、既にメインカメラのポジションです。




いきなりモノクロカメラは無謀かとも思ったのですが、なんとか実用になっています。撮影も画像処理も大変ですが、個人的には苦労する甲斐はあるかな、という印象。一晩に多くの対象を撮りたい人には向きませんが。

Hαフィルターによるナローバンド撮影も始めたので、馬頭星雲みたいなHαの赤い星雲を撮るのが楽しくてしかたがないです。というかモノクロカメラで良かったことの半分以上はこれですね。

ASI294MM Pro は Binning 1 で使用すると ASI290MM より高解像度なので、太陽面や月面の撮影にも使えます。もう OM-DE-M1 Mark II の出番がないのでは?とも思いますが、フォーサーズマイクロフォーサーズの電子式ピントリングを動かす手段が今のところないので、これらのレンズを使う場合はまだ必要です。

また、動きの速い天体をカラーで撮るのはモノクロCMOSでは厳しいのですが、レナード彗星の撮影もなんとかなったので(むちゃくちゃ忙しい撮影になりましたが)画質を考えるとなるべく冷却CMOSで撮りたい気持ちです。でもここは ASI294MC Pro が欲しいかなぁ…

使用架台別集計

機材系の最後は使用架台別の集計ですが、SX2 とスカイメモSしか持ってないので…

ベランダではSX2、野外(含むマンションの廊下)ではスカイメモS、という使い分けです。スカイメモSは重い冷却CMOSカメラでの撮影では制約が大きいですし、SX2 は長焦点のオフアキガイドで十分な精度が出ない気がするので、どちらもアップデートしたい気持ちはありますが、先立つものが…

SX2 を野外に持ち出す算段もいまだに付かず。小さめのハーモニックドライブ赤道儀で全部まかなうか?とも思っていたのですが、こないだビクセンワイヤレスユニット買ったばかりなんですよね。ビクセンさん、RST-135クラスのハーモニックドライブ赤道儀出しませんか?って、出てもすごい値段になっちゃうんだろうなー…

撮影場所別集計

次は撮影場所別の集計。

まあ、ひきこもり天文家なので圧倒的に自宅ベランダですね、これは。マンションの廊下もひきこもりのうちと見るなら一回だけ徒歩圏内の公園で M31 を撮ったっきりですね。導入むっちゃ苦労したし、自動導入可能でポータブルな赤道儀が欲しい、などと堕落したことを言ってしまいますが、もういいトシなので許して…

撮影月所別集計

続いて撮影日時にまつわる集計。まず、撮影月別の集計。

2021年は8月から9月末までベランダが封鎖されていたため8月はナシ、9月も1回だけでした。それ以外は一年中撮ってる感じですが、10月以降は冷却CMOSカメラ導入に伴うテスト的な撮影もあり、年末にレナード彗星が接近したこともあって、過半数がこの時期に集中しました。

ともあれ、一年中楽しめる趣味として天文活動を続けていられるのは良いことです。今後も続けていきたいです。

撮影時刻別集計

最後に撮影時刻別の集計。基本的に撮影開始の時刻です(木星等は de-rotation 時の基準時刻)。

まあ、2021年は太陽撮らなかったので金星食以外は全部夜ですね…

夜の撮影はだいたい日没後ベランダに機材を出してドリフトアライメントしてってやってると、最初の撮影対象は21時台に撮影開始になることが多くて、2つ目の対象を撮る場合は0時頃になる感じでしょうか。

この集計、特に得るものはなかったですね…

2021年ベストショット

ここで2021年のベストショットを選んでおきます。サムネにいい感じの写真を載せたいので…

木星 (2021/7/17 2:16)
木星 (2021/7/17 2:16)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 276), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 360) / 露出 1/60s x 1500/3000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.0.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

色々ありましたが、個人的にはやはりこれ。2018年に μ-180C で木星を撮るようになってから数えても木星はこれがベストショットです。拡大光学系もカメラも機材はずっと同じなのでほぼシーイングがベストだったということですね。

正直、これなら C9.25 (23.5cm シュミカセ)で撮った写真にも勝ってるのでは?C11 (28cm シュミカセ)ともいい勝負かも?下剋上じゃあ!とか思ってたんですが、2021年の夏は全国的に?好シーイングに恵まれたようで、その後、ネットには凄い写真が続々とアップされたのでした…

やはり惑星撮影はシーイングが命。とはいえ、絶好のシーイングに遭遇するためにも、遭遇した際にバッチリ撮れるようにするためにも、シーイングの乱れに心を乱すことなく日々精進を続けなくてはなりませんね。

その他いろいろ

その他、2021年の心に残った出来事を。

まず、『月刊 星ナビ』の「ネットよ今夜もありがとう」という天文系ブログやサイトの紹介記事にこのブログが載ったこと。

載った人が次に載せる人を決めるリレー形式の連載で、僕のところにはだいこもんさん(id:snct-astro)からバトンがまわってきました。あらためましてどうもありがとうございます!そして僕が受け取ったバトンは「もりのせいかつ」の k さんに渡したのでした。

このリレーは、HIROPONさん(id:hp2) → だいこもんさん(id:snct-astro) → 僕(id:rna) という形ではてなの天文ブログが続いたので、この機会にはてな内でバトンを回していくかとも思ったのですが、それもちょっと… と思って春の銀河祭りの際に銀河の撮影の件でお世話になった k さんに渡しました。

と思ったら、後日 k さんのブログははてなブログにお引越し(「もりのせいかつ 別館」)。やはりはてな村の陰謀…?ではなくてココログの容量がいっぱいになったのだとか。というわけで k さん(id:mayururii)、今後ともよろしくお願いします。

コミュニティ関連といえば、昨年は天リフのライブ配信イベントをちょいちょい見るようになりました。スパチャとか初めてやりましたね。

世は動画配信時代で、長時間露出と画像処理が必要な天文趣味はなかなか配信では映えない趣味でしたが、電子観望技術の進歩でライブ配信で楽しく天体を見ることができるようになり、天リフさんもそのへん力を入れています。たぶんこのへんが今後の天文の普及のカギになるところだと思うので、是非頑張っていただきたいです。

さて、天文趣味のバックグラウンドには天文学という膨大な知識が蓄えられた学問があり、科学的な知識を深めることで楽しみも深まります。2021年は「光年」について少し真面目に勉強しました。最初は「○○億光年先の銀河が写った!」とか自慢したかっただけだったんですが…

宇宙における「距離」というのは奥が深くて、光が1年かけて進む距離=1光年という単位もなにかとミスリーディングで最近では一般向けには使わなくなっているとのこと。宇宙モデルとか宇宙論パラメータとか未だにさっぱりなんですが、自分の手が届かないところにも大事な知識がたくさん積み上がっているのを実感した一件でした。

「その2」では…

これで2021年のまとめはおしまい、と思ったのですが、ベストショットをまとめて見られるエントリがあった方がいいですし、ここ数年やってるスライドショーも作っておきたいので近日中に「その2」をアップしたいと思います。