9月30日と10月1日は二夜連続の惑星撮影祭り、まだ未処理の撮影データがありますが、ぼちぼち処理した分を上げていきます。今回は9月30日の土星です。
土星の de-rotation ができるようになったので、調子に乗って17本(Lx9, RGBx8)、フレーム数にして1万7千フレームを使って画像処理したのがこちら。
衛星は左からエンケラドゥス、ミマス、ディオネ、テティス。例によって同じデータから強力な wavelet 処理で衛星をあぶり出したものを合成しています。WinJUPOS の衛星のスタックをONにして処理したので暗いミマスも難なくあぶり出せました。
土星面の方は嵐などは見当たりませんが、今までで一番低ノイズで、微妙な濃淡の縞模様もよく見えます。A環の外側に見える空隙のようなものはさすがに「偽エンケ」だと思います。
明るい縁の内側に黒い線が入るのは回折像によるものだそうで「リムの二重化」と呼ばれる現象です。火星で特に目立つことが知られており以前ブログでも紹介しました。
今回の写真だと環に土星の影が落ちて環が切れたようになっている部分でも「二重化」が発生しているので、A環の空隙のように見えるところも「二重化」だと思います。
この後、撮影時のクロップ設定(ROI)なしで撮った土星がこちら。
5本しか撮ってなくてスタックしたフレーム数が少なく、若干ノイジーです。wavelet 処理はノイズが目立たない程度に抑えたため、最初の写真よりふわっとした仕上がりになっています。
衛星は左からエンケラドゥス、ミマス、ディオネ、テティス、レアです。写野が広がったので右端のレアが入りました。実はタイタンも木星の下の方に位置していたのですが、残念ながら写野の外。鏡筒をもう少しだけ下に振ったらギリギリ入ったのですが、撮影時には気付いていませんでした… 残念。
2022/10/13 2:24 追記: 土星好きの子供の話
そうそう、最初の土星の写真を先にインスタに上げたら(自分にしては)いっぱい「いいね」が付いて、みんな土星好きだなぁ、と思ってたら「土星好きの3歳の息子が喜んでいます」って母親さんからのコメントがあってびっくりしました。本で見た土星が同じ姿で今も浮かんでいると知って満足したそうです。
天体写真というと、本に載ってるのと代わり映えのしない、なんなら画質の劣る写真を撮って何の意味があるのか?って思いにふと駆られがちですが、本で同じような写真を見ていても「昨夜撮った」写真があることに意味を見出す人もいるんですね。
僕たち天文家が飽きもせず同じ対象を何度も繰り返し見たり撮ったりするのも、もちろん、もっと良く撮りたいからとか、何か変化があるかもしれないからとか、そういう理由はあるのだけど、その根本のところにはこの3歳の子と同じで「その天体の今の姿を見たい」って気持ちがあるのかもしれません。
せっかくなので是非とも観望会で生の土星を息子さんに見せてあげて欲しいと返信しておきました。喜んでくれるといいなぁ。