Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

IC405 勾玉星雲 (2022/11/2) / PixInsight 始めました / 火球を見た

11月2日の深夜に IC405 勾玉星雲を撮りました。昨年の12月に無理やりベランダから撮って失敗したので、今回は公園にでかけてリベンジです。

今回はいつもの公園ではなくダイエットがてら散歩していて見つけたもっと広い公園で撮影しました。撮影中、散歩中のおじさんに声かけられたりしましたが… なぜ女の子は声をかけてこないのでしょう?おじさん同士は互いに引かれ合う性質があるとでもいうのでしょうか?

この日は上弦を少し過ぎた月齢8の月が深夜0時頃まで出ていたため23:00頃に出動。広いとはいえ公園の四隅には明るい照明があり、目の周りを両手で遮らないとカシオペア座すら視認困難でした。なんとか北極星を見つけて極望でざっくり極軸を北に向けてから PHD2 でドリフトアライメント。

ガイドカメラはノートPC(Let's Note CF-SZ6)と相性が悪くて一時期退役状態だった QHY5L-IIM ですが、先日のエントリで紹介した「裏で音楽または動画をループ再生する」という驚愕の回避法を実戦投入。

効果はあったようでカメラトラブルは発生せずに4時間で大容量バッテリー(70Wh)の残量が55%と余裕でした。ただ、やはりバッテリーの減りは若干速くなったようで、昨年の撮影では3時間で残量75%でしたから、25%ほど減りが速いようです。

もっとも撮影そのものはトラブル続きでした。それは後述するとしてまずはリザルトを。

リザルト

IC405 勾玉星雲, IC410 おたまじゃくし星雲, IC417 (2022/11/3 01:19)
IC405 勾玉星雲, IC410 おたまじゃくし星雲, IC417 (2022/11/3 01:19)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折), ZWO LRGB Filter, ZWO Ha Filter / Kenko-Tokina スカイメモS, 30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (11 Megapixel, -20℃, Gain 300), SharpCap 4.0.9268.0, 露出 Ha:2分 x 20コマ, R:30秒 x 32コマ, G:30秒 x 32コマ, B:30秒 x 32コマ, 総露出時間 88分 / PixInsight 1.8.9-1, StarNet++ 2.0.2, Lightroom Classic で画像処理

右が IC405 勾玉星雲(あるいは曲玉星雲)、左が IC410 で「おたまじゃくし星雲(Tadpole nebula)」とも呼ばれている星雲です。

その左上の小さい星雲は IC217 で、海外では Spider nebula と呼ばれている星雲で、写真では見切れていますがそのすぐ左の NGC1931 と合わせて "The Spider and the Fly" nebulae と呼ばれています。Stellarium の日本語キャプションではそれぞれ「蜘蛛銀河」「ハエ星雲」と訳されています。なぜ「銀河」?

実は RGB ではむちゃくち淡くしか写っていなくて、上の写真は RGB に Hαをブレンドしています(詳細は後述)。そこそこいい感じに仕上がりました。これはリベンジできたと言ってよいでしょう。まあ、露出時間短めだし等倍で見ると粗はあるんですが…

写真の主役とも言えるHαはこれです。

IC405 勾玉星雲, IC410 おたまじゃくし星雲, IC417 (Hα) (2022/11/3 01:19)
IC405 勾玉星雲, IC410 おたまじゃくし星雲, IC417 (Hα) (2022/11/3 01:19)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折), ZWO Ha Filter / Kenko-Tokina スカイメモS, 30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (11 Megapixel, -20℃, Gain 300), SharpCap 4.0.9268.0, 露出 Ha:2分 x 20コマ, 総露出時間 40分 / PixInsight 1.8.9-1, Lightroom Classic で画像処理

やはり星雲の構造はHαの方がよく見えますね。IC410 が「おたまじゃくし星雲」と呼ばれているのは丸い明るい部分が頭で右上から伸びて左回りにくるんと曲がってる細い星雲がしっぽという見立てでしょうか?

画像処理

PixInsight はじめました

さて、今回初めて画像処理の大半を PixInsight で処理しました。トライアルライセンスで試したのですが、使いこなす、というところまで行けるかはわからないけど必要最低限使えそうということがわかったので、今回の画像を仕上げた後すぐに商用ライセンスも購入しました。円安どこまで行くかわからないし…

PixInsight (以下、PI)は、だいこもん(id:snct-astro)さんや k (id:mayururii)さんが使っているのを横目で見ていて、システマティックに再現性のある処理ができ、サードパーティーが拡張可能で日々コミュニティの手で進歩しているソフトという印象があり興味を持っていたところ、星沼会丹羽雅彦さんの著書『PixInsightの使い方 [基本編] たのしい天体写真シリーズ』(以下、PI本)が出版されました。

まずはこれを読みながらトライアル版を試してみるか、ということで Kindle 版を買ったのが8月。

でもいつものことながら積読になってたんです… が、秋の間に FSQ-85EDP のテストでいくつか撮っているうちに*1 モノクロ冷却カメラで LRGB 撮影した画像の処理の扱いの難しさに疲れ果てて、もうちょっとなんとかならんかな、と思って重い腰を上げてトライアル版ライセンスをリクエストしたのが先月。

Linux 版があって Ubuntu で動作実績があるのにも背中を押されました。今、家で一番速いマシンが Ubuntu 20.04 入れてるメインマシン(Ryzen 3 PRO 4350G (4C8T/3.8GHz))なんですよね。

今まではゲーム用を兼ねている Windows のサブマシン(Core i5-6600 (4C4T/3.3GHz))が最速で天体撮影や画像処理もそっちでやっていたのですが、グラボのファンが止まって異臭がして取り外してからゲームから遠ざかっているうちに仮想通貨ブーム等でグラボが高騰。PC自体の買い替えも先延ばしにしてるうちにメインPCを新調したところそちらが最速になってしまったという…

トライアル版のダウンロードはセキュリティ上の理由とやらで PI の開発元が手動で確認してからメールで案内があるとのことでいつになるかと思いましたが朝リクエストして夜にはメールが来てDLできました。

丹羽さんのPI本はデジカメ画像を使った基本的な処理フローのチュートリアルになっているので、昨年4月に OM-D E-M1 Mark II 撮った M8 と M20 の写真を使って試してみました。

PI の独特な構造やUIデザインには初見殺しの趣があり、本で丁寧な解説を読んでおいて正解でした。というか途中から本を見ずに先に進んでみたらほとんど何もできなくて結局本に戻ってきました…

素直に本を読んで先に進んだらここまでできました。

驚いたのは ABE (AutomaticBackgroundExtractor)の優秀さ。PCC (PhotometricColorCalibration)の色合わせの優秀さにも驚きました。なんなら STF (ScreenTransferFunction)のオートストレッチの優秀さにも驚きました。なんか驚きっぱなしです。

ただ、ノイズ処理は基本的な機能ではそこまでアグレッシブにはやってはくれなくて、特にこの画像の場合いわゆる「縮緬ノイズ」が多いため、等倍で見ると結構ひどいことになっています。そこであぷらなーとさんの「クールファイル補正法」をだいこもんさんがPIで実装した手順を試してみました。

が、手順を間違えたのかうまくいかず… 後から手順を自動化したスクリプトを教えてもらったのですがバタバタしていてまだ試せていません。

さて、ここまでやって一番問題だったのはストレージの消費量です。ライトフレーム16コマの画像処理ですが、27.5GBも消費しました(元のRAW画像は含まず)。まあこれはクールファイル補正法の中間ファイルが半分くらいあるのですが、それにしても厳しい。中間ファイルは消しても問題ないようですが、どれを消すと何が面倒になるとかよくわからないのでそのままにしてあります。

あと、機能間での画像データの受け渡しが大量の中間ファイルを経由するせいか以外と処理が重いです。HDDのIOがネックになっている模様。ここは SSD を使いたいところですがストレージの消費量を考えると大容量 SSD が必要になり… まあ、当面は足りそうなので、その間に消せるファイルとそうでないファイルの見分けが付くようなることを目指します。

今回の画像処理

と、ここまでやっただけでいきなりモノクロカメラの撮影画像の処理は無謀かなと思ったのですが、まず一度はやってみなくては、と頑張ってみました。逃げたら一つ、進んだら二つ手に入る、と言いますし…

基本的なところとわからないところは主にPI本の丹羽さんのサイトを参考にしました。基本的なところはこちら。

初っ端から曼荼羅めいた図に圧倒されて挫けそうになりましたが、よく見れば DSS でやるよりは楽かも?と、気を取り直して WBPP からスタート。

実は撮影中のトラブルでゲインが違う画像やセンサー温度が違う画像が混じっていたのですが、WBPP に画像を登録して自動仕分けされる際にそういうパラメーターは見てくれないので、ゲイン違いだけは捨てて後はそのまま処理しました。

ちなみに SharpCap で darkflat として設定した fits ファイルを PI は認識してくれなくて「わからんから light にしといたよ」という警告が出て light に振り分けられてしまうのですが、これは手動で dark に振り分けておけば露出時間のマッチングで勝手に flat 用の dark として扱ってくれます。

ちなみにフィルター毎の flat の露出をヒストグラムの山が合うように調整して撮ってたのですが、どうも10ms以下の露出の違いを区別して振り分ける方法がないようで全部同じ種類のダークとしてまとめられてしまいましたが、もうそのまま処理してしまいました。

WBPP した結果をとりあえず STF でオートストレッチしてみると… 結構撮れてる?

https://rna.sakura.ne.jp/share/PI-20221106/Screenshot from 2022-11-03 11-04-31.png

丹羽さんの記事ではこのあと DynamicCrop してますが、いきなり操作法がわからず省略…

とりあずそのままそれぞれに対して ABE をかけて、RGB はこの後 ChannelCombination でカラー画像にしてから PCC → HistogramTransformation → SCNR → TGVDenoise で処理。Hαは HistogramTransformation → SCNR → TGVDenoise。

パラメータは割と適当ですが、ABE の次数(polyDegree)は星雲が消えないように減らしたいものの光害のムラのことを考えて 2 に、HistogramTransformation のパラメータは STF のオートストレッチの値をそのまま使いました。ArcsinhStretch というのをみんな使ってるみたいですが原理を理解していないせいかイマイチいい感じにならず、オートストレッチが一番マシだなと思ってそれにしました。結果はこんな感じ。

https://rna.sakura.ne.jp/share/PI-20221106/Screenshot from 2022-11-03 16-16-29.png

RGB画像の星雲、淡いですね…

ここからは HαのブレンドPhotoshop でやっていた時はなかなか悩ましい処理だったのですが、ここでは丹羽さんとそーなのかーさんの最新版レシピ?を使いました。

これは StarNet2 の PI プラグインを使う方法ですが、Ubuntu 20.04 ではプラグインのインストールがうまくいきませんでした。所定の場所にファイルを配置して PI でプラグインを Search しても認識してくれないのです。

仕方がないのでHα画像を16bit TIFFにエクスポートしてCLI版 StarNet2 で処理したものを PI で読み込んで処理を続行しました。処理フローが途切れて history に記録されないのが辛いところですが…

最後に Lightroom Classic で調整して処理したのが冒頭の写真です。せっかく PCC で色合わせしましたが、全体的に赤カブリのような雰囲気になっていて星雲の形がわかりにくかったのでかなり色調をいじってしまいました。でも星の色とかはそんなには偏ってないはず…

最終的なストレージ消費量は21.3GB(元画像含まず)。元画像入れると36.2GBですが、このくらいならなんとかなるかな?

火球を見た

機材の設置作業中、確か二重星団の導入に苦労していた時だったと思うのですが、2022/11/3 00:53 頃、北の空にむちゃくちゃ明るい流星を見ました。慌ててツイートしたのがこちら。

カシオペア座の方を見上げた時にいきなりブワッと緑色に縁取られた眩しいくらいの光が目に飛び込んできて、上から下にほぼ垂直に落ちていって、一瞬でスッと消えました。

最初に見えた時の位置は北極星より高くカシオペア座よりは低い位置だったと思います。明るさはその時の空で一番明るく見えた火星よりもずっと明るかったです。朝になって藤井大地さんが動画を公開していました。

時間といい、方向といい、この火球だと思います。おうし座北流星群だったんですね。流れ始めの部分は見えてなかったようで、タイミング的には大きく爆発した瞬間ぐらいに顔を上げていたようです。電磁波音の方は気が付きませんでした。

こんな明るい火球は久しぶりに見たのでびっくりしました。あ、そういえば願い事言うの忘れてた。まあタイミング的に間に合いませんでしたが…

トラブル

今回の撮影はそこそこトラブル続きでした。忘れ物については事前にチェックリストを作って念入りに確認してから出発したので大丈夫でしたが、まず事前に予定していたターゲットを撮れませんでした…

予定では勾玉星雲の前にサクッとペルセウス座二重星団(h+χ)を撮るはずでした。

が、まずPHD2のキャリブレーションが終わらない。これはプロファイルの設定がミスってて(でも前回からいつ変更したのだろう?)赤緯ガイドがOFFになっていなかったのが原因だったようで、再設定後一度切断してから再接続するとうまく行きました。

その後極軸を合わせてピントを合わせて二重星団の導入を試みましたがスターホッピングの開始点となるカシオペア座がほとんど見えません。両手で目の周りを遮って公園の照明が目に入らないようにすればなんとか見えるのですが、その状態では星を見たままで鏡筒を操作できず、星が見えない状態で記憶した方向に向けるようにしたのですが、全然ダメでした。

15分ほど頑張って、これは無理!と判断し、時間も押していたので勾玉星雲の撮影に入ったのです。勾玉星雲はカペラから南に降りていくだけなので比較的スムースに導入できました。

勾玉星雲の撮影の方では SharpCap の操作でミスを連発。まず最初ゲイン300で撮っていたはずがいつのまにか250になっていました。幸いすぐ気付いてゲイン違いは4コマのみで済みましたが、いつのまにミスったのか不明なまま。おそらくタッチパッドのタップが発動して意図せず設定UIに触れてしまったのだと思うのですが…

その後もう一つのミスに気づきました。冷却カメラの設定温度です。いつも通り-10℃に設定していたつもりが、気がつくと-20℃まで冷やしていました。これは撮影がだいぶ進んでから気付いたのでもうやり直せません。そのまま-20℃で最後まで撮りました。

冷やせば冷やすほどノイズが減るとはいえ、-20℃となると帰宅してから気温の高い(というか寒くない)室内でダークやフラットを撮るのは冷却パワー的に厳しいものがあります。気温10℃の野外でも冷却パワーが65%ぐらいまで上がっていました。おかげで帰宅してすぐまだ寒いうちにベランダでふらふらになりながらダークやフラットを撮るはめになりました。

立て続けのミスで自分が信じられなくなり、その後の作業はずいぶんと神経をすり減らすものになりました。そうこうしてるうちに気がつくと夜露が降りまくってて頭がびっしょり濡れています。カバンやコートやケーブル類を小分けする用のビニール袋も濡れていて、そのまま地面に落ちたりしていたので泥だらけ。後が大変でした。

幸いダンボール製の巻き付けフードのおかげなのか望遠鏡のレンズは曇らずに済んだのですが、今後はレンズヒーターも必要かなぁ… しかしベランダで撮っている時は夜露に悩まされることは全然ないのですが、なんででしょうね?

そして極めつけのミスは撤収時に機材をバラす時に気付きました。なんとスカイメモSを微動雲台に固定できていませんでした!!

赤道儀本体と極軸調整用の微動雲台は、本体に取り付けたアリガタを微動雲台のアリミゾに嵌めて押さえネジを締め込んで固定するのですが、そのネジがユルユルでした。えええ… 確かに締めたと思ったのですが一体… ガイド中に赤緯ガイドが時々カクッとズレてたのはそのせい?

後で別件でスカイメモSを組み立てていて気付いたのですが、どうもアリガタをやや斜めに傾いた状態で嵌めたままネジを締めてもなんとなく固定できてしまうようで、でもその状態で機材を載せると重みで傾きが解消されて水平になり、結果的にネジが緩んだ状態になるようです。

一応ミゾに嵌った状態ではあるし、アリガタにはストッパーが付いているので簡単には崩壊はしないと思うのですが、ストッパーはネジ一本で、ここに荷重のかなりの部分がかかる形になるので耐えきれなくなってネジが折れたらアウトです。

撮影結果には満足していますが、ちょっと先が思いやられる「近征」でした。

P.S.

FSQ-85EDP でテストがてら色々撮影しているのですがなかなかブログにまとめる時間がとれません。9月30日と10月1日に撮った惑星の画像処理もまだ途中です。それに加えて11月8日には皆既月食天王星食ということでいつになるのやら…

*1:まだブログにまとめてません。そのへんは後日…