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Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

LPS-D1 QRO について

以前のエントリ「オートガイダー導入記 (7): 屋外での撮影のテスト」で触れた光害カットフィルター LPS-D1 QRO 48mm (以下 QRO)で発生した問題について顛末をまとめておきます。

昨年10月にオートガイダーを買った時に光害カットフィルターも一緒に購入しました。どうせなら最新のものをと思い、少し値段は高いですが IDAS LPS-D1 QRO 48mm を選びました。

カメラが OLYMPUS OM-D E-M5 なのでマウント内に取り付けるタイプのものは選択できず、レデューサーや直焦アダプターの先端の 48mm ネジに取り付けるタイプのものです。

最初に使用した時にカメラのライブビューでピント合わせをしていて星像が歪んでいるのに気付きました。いくらピントを合わせても星像が微妙に菱型に見えてピントが合わせづらいのです。実際に撮影しても等倍で見ると星像がひし形になっていて特に星団の撮影では気になりました。

テスト撮影したものがこちら。

http://rna.sakura.ne.jp/share/LPS-D1_QRO/no_filter-1.jpg
フィルターなし
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 200, 30s

http://rna.sakura.ne.jp/share/LPS-D1_QRO/LPS-D1_QRO-1.jpg
LPS-D1 QRO 使用
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 200, 30s

写真は Lightroom でカラーバランスをニュートラルにして露光量を背景が 40% になるように揃えて 2 倍に拡大したものです(画面表示では等倍相当)。スカイメモ S をオートガイドで追尾して撮影しています。

QRO 使用では暗めの星の星像が長方形に見えます。また、明るい星の星像は左上から右下の方向に星像が不自然に膨らんでいます。星像が少し横長なのはガイドエラーのせいもあるのですが、カドが立っているのが問題です。

もっともこの程度だと Full-HD 全画面表示ぐらいではほとんどわからないのも事実で、そんなものなのかなぁと思いつつもモヤモヤした気持ちが残っていました。周囲に天体写真を撮る人がいないので実際「そんなもの」なのかどうかわからないし、ネットで探しても QRO を使っている人は見当たりませんでした。*1

QRO は厚さ 1.1mm の薄型ガラス基板を使っているのが売りです(従来品は 2.5mm)。しかしその薄さのせいでフィルター枠内で歪みやすくなっているのでは?と思い、フィルター枠のガラスを押さえているネジを少しだけ緩めてテスト撮影してみると、若干星像が改善されたのですが期待には程遠い結果でした。*2

その後 HIROPON (id:hp2)さんと twitter でやりとりするようになり、この件を相談してみたところ、そういう現象は経験していないし聞いたこともない、不良品かもしれないので販売店に相談してみては、とのアドバイスをいただき、年明けに協栄産業(KYOEI-TOKYO)に写真を添えて問い合わせてみました。

協栄からメーカーのアイキャスエンタープライズ IDAS 事業部(以下 IDAS)に連絡が行き、2週間後 IDAS に着払いで QRO を返送して欲しい旨連絡がありました。フィルターに何らかの異常がある可能性があり、検査したいとのこと。

結果は外観検査や簡易脈理検査では異常なし、精密な検査にはさらに時間がかかる、とのこと。協栄からは、それまでフィルターなしは困るだろうと QRO の交換品と従来品の LPS-D1 (以下無印)を無償で送るので、撮影鏡との相性を確認する意味でも比較して欲しい、と連絡がありました。新月前だったのでこれにはとても助かりました。

そういうわけで、交換品が到着後早速テストしてみました。

http://rna.sakura.ne.jp/share/LPS-D1_QRO/no_filter-2.jpg
フィルターなし
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 200, 30s

http://rna.sakura.ne.jp/share/LPS-D1_QRO/LPS-D1_QRO-2.jpg
LPS-D1 QRO (交換品)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 200, 30s

http://rna.sakura.ne.jp/share/LPS-D1_QRO/LPS-D1-2.jpg
LPS-D1
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1
ISO 200, 30s

QRO 交換品では星像の菱型の歪みは見られませんでした。しかしよく見ると少しトゲが生えたような歪みが。ガイドエラーかとも思ったのですが 8 枚撮ってどれも同じでした。

一方、無印の LPS-D1 では星像の歪みは全く見られませんでした。フィルターなしと遜色ありません。正直、交換品なら十分かな?と思っていたのですが、これを見てしまうと無印の方を使いたくなりますね…

以上を報告したところ、IDAS からはフィルター枠のガラス押さえが公差ギリギリで加工された個体の場合ガラスが歪んでしまう可能性はある、調査して改良したいとの解答がありました。

その後は無印の LPS-D1 を使っていて、QRO 交換品は予備としてとってあります。QRO を使っていて星像に疑問がある方は一度販売店に問い合わせてみると良いと思います。

ちなみにケンコーではカメラ用フィルターとして一時期 1mm 厚のガラス基板を使った製品を出していたのですが、平面性の精度を保つのが難しいという理由で今では基本的に 2mm 厚にしているそうです。昨年11月に発売された高精度保護フィルター ZX でも 2mm 厚で、さらにフィルター枠には特殊な構造を導入してガラスの歪みを抑えているとのことです。

QRO ではフィルターによる収差を低減する目的でガラス基板を薄くしたようですが、それが裏目に出てしまったということでしょうか。大手のケンコーが諦めた路線を進むのは大変でしょうが IDAS さんには頑張ってほしいです。

*1:当時発売されて間もなかったのと、大抵の人は Canon 用のマウント内に取り付けるタイプを選ぶので、フィルターネジ用しかなかった QRO を買う人は少数派だったのだと思う。

*2:実は最初の比較写真は改善後に撮ったもの。