Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

「かにパルサー」ってこれですか?

昨夜撮ったかに星雲(M1)の写真に中性子星「かにパルサー」は写ってるのか?という件ですが、どうやらギリギリ写っているようです。拡大写真に印を付けてみました。

かにパルサー (2019/10/5 01:47)
かにパルサー (2019/10/5 01:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

中央の二重星みたいになってる星の小さい方の星がそれのようです。かにパルサーの位置は以下のサイトで確かめました。

そもそも中性子星って可視光で光ってるの?と思ったのですが、かにパルサーの場合、パルサーとして発生している電磁波*1 が電波だけでなく可視光の波長にも及んでいて、それが見えているそうです。

なので、可視光でも電波と同じように33ミリ秒周期で点滅しています。これは1968年にかにパルサーが発見されてすぐに観測されています。*2 点滅の様子の動画はこちらで見ることができます。

これはキットピーク国立天文台4メートルマイヨール望遠鏡で撮影されたものだそうです。1/30秒周期の点滅を撮るには16等星を1/60秒以下の露出で撮らないといけないのでアマチュアの機材では無理そうですね…

かにパルサーで動画と言えばこんなのもあります。ハッブル宇宙望遠鏡で撮ったかに星雲の写真にはかにパルサー付近を中心に広がる波紋のような模様が写っていますが、この模様が水面に広がる波紋のように動くのです。その動画が HubblsSite で見ることができます。

これは約1週間毎に撮った10枚の写真から作られたタイムラプスムービーですが、こんなにダイナミックに動くんですね… そして、どうやらアマチュア天文家でもこの波紋の変化が観測できるらしいのです。Dave Goodin さんが撮った動画がこちら。

2年かけて半年毎に撮影したものをタイムラプスムービーにしたそうです。確かにかにパルサーの位置から波が広がるような模様の変化が見られます。撮影機材等はわかりませんが、写り具合からすると30cmクラスの望遠鏡で撮ったもののように見えます。

この「かにウェーブ(?)」、8cm の解像度ではさすがに無理っぽいですが、20cm クラス以上なら写りそう?誰かチャレンジしてみませんか?うちは μ-180C をガイド撮影する機材が揃ってなくて当分無理そうです…

*1:磁場を持った天体が高速回転することによるもの。

*2:参照: Pulsar | cosmic object | Britannica.com

NGC7293 らせん星雲、M1 かに星雲 (2019/10/4)

10月4日は体調が悪く会社を休んで夕方まで寝ていました。夕方起きると外は快晴。GPV でも朝まで快晴の予報だったので19:30頃からベランダに機材を出して極軸合わせ。月が沈むまで時間があると思ってだらだらドリフトアライメントをやってたら2時間くらい経ってしまいました。

何を撮るか候補はいくつかありましたが、今回も惑星用のCMOSカメラで小さめの天体を狙うことに。月没後はシーズン的にラストチャンスと思われるみずがめ座の惑星状星雲 NGC7293 らせん星雲、その後深夜からおうし座の超新星残骸 M1 かに星雲を撮ることにしました。

らせん星雲は二年前に一度失敗しています。この時は低空で透明度が低かったせいかまともに写りませんでした。昨年も狙ってはいたのですが寝落ちして撮れなかったという…

今回も1分露出ではほとんど何も見えず、2分露出でやっとうっすらと丸い姿が見えるか見えないかという状況でしたが、とにかく2分露出で48コマ撮影。ガイドが暴れて1/3ほどボツになりました。撮影後半は一方向赤緯ガイドに切り替えて、ある程度安定してくれました。

かに星雲が昇るまで時間があるのでその間にダークとフラットを撮影して DeepSkyStacker と Lightroom で処理したところ、なんとか星雲が浮かび上がってきてモノになりそうなのを確認。撤収後改めて Photoshop CC を使って仕上げたのがこれです。

NGC7293 らせん星雲 (2019/10/4 22:10)
NGC7293 らせん星雲 (2019/10/4 22:10)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

それなりに「らせん」っぽく写りました。リングの内部の青みもうっすらですがわかります。本当は星雲の左上に「眉毛」のような赤い星雲が見えるはずなのですが、横浜の空では淡すぎて写りませんね…

ちなみにダーク減算で取り切れなかったと思われるホットピクセルの跡が3箇所残っていたのですが面倒なので手動でレタッチしました。後で撮ったかに星雲の写真には出てこなかったのですが…

らせん星雲と言えば先月 HIROPON さんが東京で撮っていました。

やはり「眉毛」は写っていませんが、HIROPON さんの写真の方が階調がよく出ているような… デジカメとCMOSカメラの違いもあるのでしょうが、NB1 フィルターで光害カブリが少ないのが効いてる気がします。

日付が変わって1:30頃からかに星雲の撮影にとりかかります。が、アライメントが不十分だったのか自動導入に失敗。近くまで来てはいるのですが目立つ星も見当たらず、仕方がないのでゆっくり南東方向に鏡筒を振っておうし座のζ星(Tianguan)を探してそこから星を辿ってなんとか導入できました。

ガイドは引き続き一方向赤緯ガイドですがドリフト方向が逆になっていたので North と South を入れ替えました。ガイドは終始安定、というか絶好調でRMSエラー±0.8秒台でした。

結果はこちら。

M1 かに星雲 (2019/10/5 01:47)
M1 かに星雲 (2019/10/5 01:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

かに星雲二年前に非改造デジカメで撮っていますが、その時にはよく写らなかった赤いフィラメントが今回はくっきり写っています。このくらい写るとかに星雲を撮ったぞー!って気になれますね。

かに星雲は西暦1054年に観測された超新星の爆発でできた星雲ですが、中心には超新星爆発で誕生した中性子星「かにパルサー」があります。16.5等ということでぎりぎり写ってそうなんですが位置がわからなくて確認できません。Stellarium にも載っていないようです。中性子星とか撮ったことないので写っていると嬉しいのですが…

天体衝突検出ソフト DeTeCt を使ってみた

木星土星などの巨大ガス惑星への小天体の衝突による発光を検出するフリーソフト DeTeCt を使ってみました。

きっかけはもちろんこのニュース。

この観測で検出に使われたのが DeTeCt です。

GitHub公式ドキュメントもあるのですが、これはほぼソースコードを読む人用のドキュメントになっていて使い方はほとんどわかりません… 名前が一般的な単語過ぎてなかなか情報が集められなかったのですが*1 結局以下からダウンロードできる Quick Users's Guide が一番わかりやすかったです。

インストールと起動

インストーラーはついていません。ダウンロードした zip をフォルダーに展開すると DeTeCt.exe が入っているのでそれをそのままダブルクリックして起動します。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-01.png

起動するとメイン画面が表示されます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-02.png

ファイル・フォルダの選択

メニューの [File - Open video file] で動画ファイルを選択します。複数選択はできません。複数の動画をバッチ処理したい場合は [File - Open folder recursively] でフォルダを選択するとサブフォルダも含めたフォルダ内全ての動画が処理されます。

動画は AVI, SER の両方に対応しています。カラーカメラで撮った AVI の場合は設定でベイヤーパターンを指定する必要があります。[Preferences - Advenced settings] で以下の設定画面が開くので Other の Debeyering code で正しいベイヤーパターンを設定します。*2

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-03.png

その他の設定については通常はデフォルトのままで構いません。

ファイル・フォルダを選択するとメイン画面の Execution log に選択されたファイル名が表示されるので確認します。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-04.png

検出の実行

ファイルが選択された状態でメイン画面下部の [Detect impacts] ボタンを押すと検出が開始します。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-05.png

検出は結構時間がかかります。1024x768ピクセル3000フレームの動画1本を処理するのに5分10秒かかりました(Core i5 6600@3.3GHz)。衝突発光の候補が検出されると検出画像が表示されます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-06.png

これは3秒で閉じてしまいますが、結果フォルダ(後述)内に同じ画像があるので後から確認できます。

検出結果の報告画面も表示されます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-07.png

この報告内容は結果フォルダの output.log にも保存されます。

メイン画面の Execution log にも逐一結果が出力されるので、フォルダ指定でバッチ処理した場合はそちらをチェックすると処理途中でも個別ファイルの結果が確認できます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-08.png

検出結果の見方

検出結果はファイルにも出力されます。ファイルは検出の実行毎に作成される結果フォルダに出力されます。結果フォルダは動画ファイルのあるフォルダの下の Impact_detection_run@{実行日時} という名前のフォルダです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/DeTeCt-09.png

{動画ファイル名}_dtc_max-mean.jpg が実行後に表示された検出画像です。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/21_44_33_dtc_max-mean.jpg

検出画像上には赤と緑の二つのクロスヘアが表示されていますが、赤が DeTeCt の検出アルゴリズムで衝突発光候補が検出された場所、緑が検出画像上の最大輝度の場所です。

二つのクロスヘアが一致あるいは非常に近い場合は本物の衝突かもしれません。全然別々の場所に表示されている場合は誤検出(ホットピクセルや雲の通過等のノイズによるもの)である可能性が高いです。

衝突検出の確からしさについては、発光の輝度や発光が続いたフレーム数などから判断した Confidence というスコアを参考にします。*3 Confidence は結果報告画面に表示される他、output.log にも記録されます。

2019-08-18 21:27:33 - 1 detected in frames ranging from 2108 to 2115 (max @ 2109). Confidence: 0.543392.
2019-08-18 21:27:33 - WARNING: impact detection algorithm and detection images are inconsistent.
2019-08-18 21:27:33 - Please check detection image.

今回の例では Confidence は0.543392なのですが、これは全然ダメみたいですね… Quick User's Guide によると1.5以下の Confidence は誤検出の可能性が高いとのこと。Quick User's Guide の p11 以降に本物の検出の例と誤検出の例が検出画像と Confidence 値付きで掲載されているので参考にしてみてください。

上の出力に出てくる「WARNING: impact detection algorithm and detection images are inconsistent.」という警告ですが、これはおそらく赤と緑のクロスヘアが離れている時に出るのだと思います。

結果フォルダにはもう一つ {動画ファイル名}_dtc_mean.jpg という画像が出力されています。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/21_44_33_dtc_mean.jpg

これは動画の各フレームのピクセル輝度の平均値を記録したもので、概ね衝突発光の無い時の見え方を表すものです。センサー上のゴミやゴーストなどがあるとこの画像から確認できることがあります。

その他

検出結果の提出方法とか WinJUPOS との連携とか色々あるのですがそのへんは調べきれてません…

バッチ処理してみた結果…

試しに2019年6月13日夜に撮影した動画を全部処理してみました。どの動画(3000フレーム)でも衝突候補が1個報告されたのですが、ほとんどが Confidence が0.5前後、赤と緑のクロスヘアはバラバラだし画像上でもはっきりした発光は確認できず、誤検出のようでした。

Confidence 1.5 以上のものは5件、そのうち2.40707の1件はクロスヘアがぴったり一致していて、これは!?と思ったのですが、画像を見るとほとんど識別できないくらいの明るさで、持続時間は5フレーム(60fps)、動画を実際に見ても全くわからないものでした…

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/22_28_29_dtc_max-mean.jpg
https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/22_28_29_dtc_mean.jpg

もう一つ、AVI動画処理のテスト用に2018年7月8日夜に撮った動画を1本処理したところいきなりクロスヘア一致、Confidence 3.28296 というベスト記録更新の候補が出てしまいました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/20_05_57_dtc_max-mean.jpg

https://rna.sakura.ne.jp/share/DeTeCt/20_05_57_dtc_mean.jpg

しかしこれも持続時間は5フレーム(60fps)で動画で見ても全くわからない代物でした。たぶん宇宙線か何かのノイズでしょうね…

というわけで、木星土星の動画を溜め込んでる方は一度 DeTeCt を走らせてみてはいかがでしょう。ってみんな走らせてるけど見つからないから黙ってるだけだったりします?

*1:Google 検索は大文字小文字を区別して検索する方法がないらしいので…

*2:ベイヤーパターンがわからない場合は AutoStakkert!3 に動画を読ませて Status 右の市松模様の上にマウスオーバーするとツールチップテキストでパターンが表示されます。

*3:スコアの計算式は Quick User's Guide の p9 を見てください。

M27 亜鈴状星雲 (2019/8/2)

8月2日は久々の快晴。と言っても低空は霞んで富士山が全く見えなかったりで透明度はイマイチっぽいのですが、せっかくなので何か撮ろうということで、こぎつね座の惑星状星雲 M27 (亜鈴状星雲)を撮りました。

M27 は過去3回撮っているのですが、今回は前々からやってみようと思っていた CMOS カメラでの撮影にチャレンジ。CMOS カメラと言っても Deep Sky 用のカメラは持っていないので惑星用の ASI290MC での撮影です。そして今回はいつもの長時間露出ではなくて、1分露出で100フレーム撮影というのをやってみました。

SharpCap での撮影ですがライブスタックではなく、スタックは DeepSkyStacker でやりました。デベイヤーで悩みたくなくて撮影モードは RAW ではなく RGB24 にしたのですが、これ、よく考えたら 8bit/チャンネルですよね。失敗した… でもスタックしてみるとそれなりに仕上がりました。

M27 (2019/8/2 20:05)
M27 (2019/8/2 20:05)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン177) / 露出 1分 x 100コマ 総露出時間 1時間40分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, StarNet++ 1.1, Lightroom CC で画像処理

M27 は青と赤のコントラストが見どころなのですが、光害カットフィルターを使ったせいか、青みがいまいち出なかったのが残念。しかし、非改造のデジカメではなかなか出なかった赤い縁取りがくっきりと浮き出たのは収穫です。

M27 は高度が高く、南中時にはベランダの天井にぶつかるおそれがあったので、天文薄明が終わるのを待たずに撮影開始したのですが、時間がなくて極軸をあまり追い込まなかったせいか、ガイドが不安定でグラフはノコギリ状態。ゆっくり+5秒角ほど流れてガクッと-5秒角まで戻す、のくり返し。

DEC の Agr を30まで落として、Mx DEC を 1000ms に落として若干安定したかと思ったのですが、またノコギリ運動。そんな状態なので3〜4枚に1枚は「ガクッ」のところにぶつかってボツに。使える100枚を撮るために実際には140枚ほど撮りました。

画像処理は例によって StarNet++ を使って星雲と星を分離して処理しています。

ASI290MC、惑星状星雲には使えそうということで、次は M57 環状星雲あたりを、と思ったのですが、8cm F6 ではちょっと小さすぎるのと、ベランダからは撮れないので機材を外に持ち出す課題をクリアしないといけないのが… これは来年ですかねぇ。

「ばら星雲」はこのくらいにしておきます…

ほんの軽い気持ちで StarNet++ を使用したばかりに再処理ループが止まらなくなったのですが、このへんで手を打とうと思います。

ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用(3))
ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用(3))
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 12コマ 総露出時間 3時間 / RStacker 0.6.4, DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, StarNet++ 1.1, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 984mm 相当にトリミング

StarNet++ で作った星なし画像に星だけ画像を比較明合成、という基本は変わらないのですが、星だけ画像の強調処理が弱すぎて微光星が消えてしまっていたので、レベルとトーンカーブを調整して微光星を復活させ、それだけでは輝星が白飛びしてエッジが立ち過ぎて不自然になってしまったので、星マスクを使ってエッジが立たないようにしました。

その他、カブリを取り除くのに使った段階フィルターが効きすぎて消えてしまっていた微光星をフィルターを弱めてサルベージしたり、レベル補正をキツくしなくても微光星が目立つように明瞭度を上げておいたり、等の工夫をしました。

が、やはりせっかく目立たせた星雲を星の下に埋もれさせるのは忍びなくて、結局星の強調は控えめに… 星の数自体は増えたので、星がいっぱい散らばってる状況だけは一応再現したつもりです。

画像処理の自由度が上がれば上がるほど何をどこまでやるかの判断にセンスが問われるわけで、迷い、戸惑い、右往左往してしまうわけですが、最後には目をつぶってジャンプするしかないのかなぁ… もっと確信を持って、こうだ!と、できればいいのですが。

「ばら星雲」をさらに再処理

前回の StarNet++ を使って再処理した「ばら星雲」ですが、もう少しだけ手を加えました。

ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用(2))
ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用(2))
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 12コマ 総露出時間 3時間 / RStacker 0.6.4, DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, StarNet++ 1.1, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 984mm 相当にトリミング

画像の隅(特に左上隅など)に目立っていた StarNet++ が消しきれなかった星の跡をなんとか消しました。星の跡が主に星雲のない部分に目立っていたことから、出力画像のシャドー部を選択するマスクを作って星雲の部分を避けてぼかしを強くかけたところ、ほとんど目立たなくなりました。

それにしても、星マスクの時も迷っていましたが、この手の処理ってどこまでやっていいのかなぁ、と未だに引っかかる部分があります。星の肥大はセンサー上で起きている人工的な現象だから、それを緩和するのは「嘘」ではない気もしますが、見る側の人間が星の明るさを星像の大きさで認知している以上、星の明るさを偽っているという面はあります。

無いものを有るように描く、あるいは有るものを無いように描くのはアウト、という線引きはあると思うのですが、グレーゾーンは残ります。強調処理はシグナルを増幅する限りにおいては「嘘」ではない気がしますが、同じだけ増幅すれば目立ってくるはずの暗い恒星が目立たないように処理するのは程度によっては「有るものを無いように描く」ことになりはしないでしょうか。

と、頭では思っていても、実際に処理したものを見ると「これが見たかった!」っていう気持ちに理屈が押し返されるのを感じてしまって、これでいいかな?という気持ちにもなってくるのですが…

でも諸先輩の仕上げた写真と見比べると、やっぱりこれはやり過ぎかなぁ、という気持ちにもなってきます。うーん…

StarNet++ で「ばら星雲」

最近話題の StarNet++ で、1月1日に撮影した「ばら星雲」を処理してみました。

StarNet++ については HIROPON(id:hp2) さんと id:snct-astro さんがブログで紹介しているのを見て知りました。


「星雲マスク」の使い方はよく知らないのでいまいちピンと来なかったのですが、星なし(星雲だけ)画像と星だけの画像を別々に処理して合成したら「ばら星雲」みたいな細かい星と星雲が重なったややこしい天体の写真がすっきりできるのでは?と思って試してみました。

まず最初にやろうとしたのは DeepSkyStacker (DSS) で処理した出力を StarNet++ で処理したものを強調処理、というワークフローですが、これは失敗でした。元画像が光害カブリがひどいせいなのかもしれませんが、星が抜けた部分がシミみたいになっていたり、画像の端の方の星が全然取れていなかったりして使い物になりませんでした。

README.txt を見ると "don't forget that the input should be a STRETCHED image, not linear data" とあって、STRETCHED image って?と思ったのですが、どうも強調処理した後の画像を入力する必要があるようです。

そんなわけで、まず DSS の出力を PhotoShop に読み込み、段階フィルターでのカブリ除去、レベル補正、トーンカーブ調整などを施して、星雲が十分に強調されかつ背景が黒くなる状態にしました。こんな感じ。

StarNet++ 使用前
StarNet++ 使用前

これを StarNet++ に入力します。StarNet++ はコマンドラインアプリですが、配布 zip を展開したディレクトリ(StarNet_Win)の下に cd しないと "Checkpoint file not found!" と言われて起動できないので、StarNet_Win の下で画像ファイルを指定する引数をフルパスで指定して起動しました。

処理は非常に重いです。入力画像は約1600万画素ですが、CPU が Core i5 6600、メモリ 8GB の環境だと、STRIDE (第3コマンドライン引数) 32 で約50分かかりました。

結果はこちら。

StarNet++ 使用後(STRIDE 32)
StarNet++ 使用後(STRIDE 32)

細かい星まですっきり取れていてなかなかのものですが、等倍で見るとそれなりにアラはあります。

StarNet++ 出力画像(中央部)
StarNet++ 出力画像(中央部)

大きな星を除去した部分に格子状のノイズが乗っているのがわかります。

StarNet++ 出力画像(左上隅)
StarNet++ 出力画像(左上隅)

こちらは周辺部(左上隅)の等倍画像ですが、結構跡が残っています。ひょっとして収差で伸びた星は苦手だったりするんですかね? StarNet++ はニューラルネットワークを使った画像処理なので挙動がイマイチ読めませんが…

さて、この画像をどう使うかですが、格子状ノイズの問題があるし、星のない部分もニューラルネットワークが何をしてるかわからないということもあるので、これをそのまま星雲画像として使うのは躊躇われます。そこで以下のようにしました。

  • 出力画像にガウスぼかしをかける(A)
  • 入力画像と A を比較暗合成(B)
  • 強調前の元画像にレベル補正とトーンカーブ調整をかけて星だけ画像を作る(C)
  • B と C を比較明合成

B の処理は、星のある部分だけ StarNet++ の出力(をぼかしたもの)で埋めるというものです。出力画像の星のあったところだけぼかしをかけられるならそれでもいいんですが、そんなことはできそうにないので。

C の星だけ画像は元画像から作るのでその気になればいくらでも星を細くできるのですが、あんまり星を細くするとむちゃくちゃ不自然な仕上がりになるので、ある程度強調をかけて微光星が少し浮いてくるようにしました。

C は少々星雲が残っていても最後の比較明合成で強調済みの星雲に負けるので無理に「星だけ」にする必要はありません。

結果はこちら。

ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用)
ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 12コマ 総露出時間 3時間 / RStacker 0.6.4, DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, StarNet++ 1.1, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 984mm 相当にトリミング

うーん、ちょっと嘘くさいですかねぇ… 前回の星マスクで仕上げた画像と比べると星雲の目立ち具合が劇的に改善してはいるのですが…

四隅の星の消し残しはどう処理したらいいかわからないので放置してあります。鑑賞距離で見る分にはあまり気にならない、ですかねぇ、いや、やっぱりちょっと気になるか。出力画像をぼかす際にダスト&スクラッチとかでもっと派手にお化粧した方がよいのかも。

というわけでこの StarNet++、元々星なし画像を使った処理はやってなかったので、他の方法との比較については他のみなさんに任せますが、精度の高い星なし画像を自動で作れるのは魅力です。コマンドラインアプリですが、重たいアプリなので下手に Photoshopプラグインとかになっているよりも、バッチ処理ができるこの形式の方が便利でしょう。

ニューラルネットワークによる自動処理ということでちょっと抵抗もあるのですが、元々星マスクにしても星雲マスクにしても実用的な綺麗なマスクを作る過程で一定の恣意的な処理は入ってしまうので、気にしても仕方がない気もします。

というわけで今後は StarNet++ を使っていきたいと、、、いや、どうしようかなー…