Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

2786黒点群、2785黒点群、ほか (2020/12/1)

先月24日からまた大きめの黒点が出たと話題になっていたのですが、ばたばたしていて12月1日の今日になってやっと撮りました。例によって在宅勤務の昼休みにベランダから。

2786黒点群、2785黒点群 (2020/12/1 12:42)
2786黒点群、2785黒点群 (2020/12/1 12:42)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 135) / 露出 1/2000s x 1250/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

中央左よりの大きな黒点とその左側に散らばった小さな黒点が2786黒点群、右下の少し小さな黒点が2785黒点群です。2786黒点群の下の方に見えるごく小さな黒点は2788黒点群、のはず…

今日はシーイングがもう一つだったのか、粒状班のつぶつぶの写り具合がイマイチです。黒点のない部分、ちゃんとスタックできているのかどうか… wavelet も弱めにしてあります。

それにしても2786黒点群かなりデカいです。同じ距離に置いた地球と比べてみましょう。

2786黒点群、2785黒点群の大きさを地球と比較 (2020/12/1 12:42)
2786黒点群、2785黒点群の大きさを地球と比較 (2020/12/1 12:42)

真っ黒な部分だけで地球が一個すっぽり入りますね。

また、昨日太陽の東端*1 の裏側で中規模フレアが発生していたあたりから新しい黒点が見えてきていました。宇宙天気ニュースの更新時点ではまだ黒点番号がついていませんでしたが、順番的には2790黒点群になるのでしょうか?

新しい黒点群 (2020/12/1 12:47)
新しい黒点群 (2020/12/1 12:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 135) / 露出 1/2000s x 1250/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

いまいち写りが悪いですが周囲に白斑も見えています。これも大きくなるのでしょうか?

*1:天球の東側=画像の左側の端。太陽面上では西端になる気がするのですが、宇宙天気ニュースの表記に従います。

NGC253 ちょうこくしつ座銀河、M74 (2020/11/13)

このところばたばたしていてブログを書くのが遅れてしまいましたが、11月13日の夜にちょうこくしつ座銀河(NGC253)と M74 を撮りました。ちょうこくしつ座銀河も M74 も過去に2回撮っていますが、今回は惑星用のCMOSカメラ ASI290MC でアップで撮ってみようというものです。

と言っても、最初からちょうこくしつ座銀河を狙っていたわけではなくて、本当は M33 を撮るつもりでいました。南向きベランダからではギリギリなので何分くらい露出できるだろうかと思いつつ機材を組み立てて自動導入してから極軸を回していってガイドカメラで写野を確認していったのですが、ずっとベランダの天井しか写らないことが判明…

念のため極軸を合わせてからもう一度確認してみましたが、やっぱりダメでした。M33 はスカイメモS時代に一度ベランダから撮っていたはずなのに、と思ったら当時はカメラ三脚の脚を一本ベランダの縁に乗り上げる形で無理やり設置して撮っていたのですね…

SX2 で同じことをやる勇気はちょっと… それに三脚の大きさもカメラ三脚より一回り大きいので、そこまでしても M33 は見えないかもしれません。ベランダ天体撮影のこういう問題を解決するためにバランスウェイトを使って鏡筒を赤緯軸からオフセットさせる変態的な工夫をしている人もいるそうですが…

それはともかく、ちょうこくしつ座銀河。Gain 100、3分露出で19:30頃から撮っていたのですが光害カブリがひどかったので結局21時より前に撮ったコマは捨てることにして予定を延長して23:00頃まで撮影。

最後の方は西に傾いて撮り始めより低い高度でしたがカブリはずっと少なかったです。光害地で早い時間帯に低空の対象は厳しいというのと、横浜の市街地が東の方にあるのも大きな要因かもしれません。

NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2020/11/13 20:57)
NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2020/11/13 20:57)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン100) / 露出 3分 x 32コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

前回 E-M5 で撮ったものよりはよく解像しているとは思うのですが…

やはり銀河外周部の淡い部分の写りが厳しいですね。明るい銀河でエッジオンに近い向きのものなら光害地でもそこそこ写るものですが、南中高度が20度台ということもあってこのくらいが限界かもしれません。この先は赤外で撮るくらいかなぁ…

M74 の方はちょうこくしつ座銀河の撮影が押して撮影開始が遅れ、予定コマ数が撮れませんでした。24:15頃にベランダの天井にぶつかって撮影終了です。一応仕上げたものがこれです。

M74 (2020/11/13 23:00)
M74 (2020/11/13 23:00)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン100) / 露出 4分 x 17コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

今までで一番よく撮れているというか、今までとあまり変わりないというか…

M74 は高度が高いので少し長めの4分露出で24コマ撮る予定でした。ベランダの天井の限界と、途中USBケーブルがハーフピラーに接触してガイドが大きく乱れたコマを捨てたことでコマ数が足りなくなりました。

露出時間については、この頃ちょうど長時間露出 + 低ゲイン vs 短時間露出 + 高ゲインでどちらがノイズ的に有利かみたいな議論があったので、長時間露出 + 低ゲイン派としてはがんばりたかったのですが、うちの SX2 は赤緯ガイドに自信がないので日和りました…

結果的にはケーブル絡みのトラブルを除けばオートガイドは好調で、前半は赤経/赤緯RMSエラーは ±1.0"/±1.3" 程度、後半は ±1.0"/±1.0" 程度で絶好調でした。

気になったのは M74 で星像が丸くならなかったこと。この時は赤緯ガイドエラーが赤経よりだいぶ小さかったので横に伸びたのだと思ったのですが、最後の方の赤緯赤経のエラーが同じくらいになったコマでも伸びていたので光学的な問題かも?ちょうこくしつ座銀河の方では問題なかったので謎なのですが…

この日は M74 が予定通り撮れなかったのがショックでうっかりフラットを撮る前にカメラを取り外すというミスをやってしまい、フラットを撮ることができませんでした。

カメラは2インチスリーブに取り付けていたので、一度外してしまうとカメラの傾きを同じにすることがほぼ不可能です。なので上の写真はフラットなしで仕上げています。1/2.8インチの小型センサーなのであまり目立ちませんがそれでも若干中央部が明るくなってしまっていますね…

ちなみにこの日の撮影は SB-10 の接続ケーブルに汎用の RS-232C ケーブル(ストレート全結線)を使うテストでもありました。使用したのはサンワサプライの KR-M2 というケーブルです。

別途7mmのフェライトコアを2個取り付けて使用。

特に問題なく使用できたので予備のケーブルとしてとっておこうと思います。一応大丈夫でしたが、何かあったら赤道儀の本体ごと保証が効かなくなると思われるのでお勧めはしません…

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商用での利用および電子媒体以外での利用に関しては、個別に可否を検討しますので必ず事前にご連絡ください。

なお、僕の撮った天体写真の多くは光害地での撮影ということもあり天体写真としては決して質の高いものではありません。正直言って素材としての利用価値はあまりないと思います。再利用可能な高品質の天体写真としては NASA が所有するものが有名です。NASA の写真の利用条件の詳細についてはJAXAが公開しているガイドラインの日本語訳が参考になると思います。ご検討ください。

最後に

要は常識的な範囲での利用については基本的なとやかく言うつもりはありません。ただし出典の明示だけはお願いします。コラージュや挿絵等の形での無断での利用も基本的には訴えたり削除を要求したりということはありませんが、あまりいい気がしないのも事実です。

僕は学生時代からネットの「フリーカルチャー」にどっぷり浸かって生きてきたので、コンテンツの著作権についてあまりうるさいことを言いたくないというのが正直なところです。特に自作のソフトウェアについては原則オープンソースライセンスで公開するようにしています。

文章や写真についてもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採用することを検討しましたが、文章や写真については思想や信条に関わることが多く、再利用された場合に再利用した人や団体の思想や信条への賛同とみなされるリスクがあるためこのような形にしました。

以上、当ブログの読者の99.9%ぐらいの人には全く関係ない話でした。

*1:普通いちいちそんなことは必要ないと思うのですが、「プレアデス星団を再処理」での一件があったので今後のために…

SX2の電源ケーブルの補修

先日断線したSX2赤道儀シガーソケット電源ケーブルの件。

新品のケーブルは届いたのですが、断線したケーブルも直せるものなら直して予備にとっておきたいと思って、こちらのサイトを参考にシガープラグをバラしてみました。

先端がねじ込んであって、回して外すとバラせるんですね。結果はこんなんなってました…

ビクセンSX系赤道儀用シガーソケット電源ケーブルが壊れた

プラグの横に出っ張ってバネになってる端子の部品がポロリと落ちてきました。マイナス側の銅線とはんだ付けされていたところが銅線の根本からちぎれてしまってます。ていうかこの状態でよく動いてたな…

ケーブルをほどいて被覆を剥いて銅線を巻きつけて戻すと普通に導通するようになって使えそうな感じだったのですが、もう一度バラすと銅線が緩んでいたので、これはやっぱりはんだ付けしないと危ないなと思って必要な道具を買い揃えました。

はんだごてだけでもうケーブルより値段高いんですが… まあいいでしょう。何十年ぶりかのはんだ付けで緊張したり、はんだのにおいが懐かしかったりしつつ、こうなりました。

シガーソケット電源ケーブルの補修

かなり不格好ですが、まあ大丈夫かな。元に戻してテスターで導通とショートしてないことを確認して、最後に SB-10 に繋いで正常に起動することを確認しました。

これでまた断線しても予備もあるし修理もできるし安心です。

2781黒点群 (2020/11/5)

11月5日、宇宙天気ニュースで新しい黒点が出たと聞いて、リモートワークで在宅なのをいいことに昼休みに太陽を撮りました。8cm 屈折とASI290MCによる撮影です。

2781黒点群 (2020/11/5 12:28)
2781黒点群 (2020/11/5 12:28)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 150) / 露出 1/2000s x 1250/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

黒点が出たと聞いた時にはどうせまたちっちゃいのでしょ、とか思ってたんですが結構デカいですね…

2.5倍バローの本当の拡大率がわからなくて今まで合成F値不明にしていましたが、今回はデジカメで撮った太陽全体の写真も撮って比較することで合成F値を出しました。

太陽 (2020/11/5 12:47)
太陽 (2020/11/5 12:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12), Kenko PRO ND-100000 77mm / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/2500s x 64/226コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic, WinJUPOS 11.3.0 で画像処理

一応太陽の北極が上に来るようにしたつもりです。WinJUPOS でもさすがに太陽の傾きはわからないので国立天文台暦計算室の「太陽の自転軸」で自転軸の傾きを計算して、その値(23.57度)だけ傾けました。一応カメラを水平(赤道と並行)にセットしたはずなので、ということなのですが、目分量でセットしているので誤差はあると思います。

この画像を ASI290MC で撮った画像と重ねて黒点の大きさが合うようにスケールしてピクセルサイズの差も考慮して計算したところ、結局2.5倍バローレンズの拡大率は2.5倍で正解でした…

ということで写真の縮尺がわかったので、黒点の大きさを地球の大きさと比較してみましょう。

2781黒点群の大きさを地球と比較 (2020/11/5 12:28)
2781黒点群の大きさを地球と比較 (2020/11/5 12:28)
地球は File:Terrestrial planet size comparisons.jpg - Wikimedia Commons の写真を使用。

地球ちっさ!

想像以上に地球が小さいというか、太陽がでかいというか、太陽の直径は地球の109倍あるのでこんなものですかね。ちょっとびっくりしました。

それにしてもこのサイズの黒点は久々ですね。ここ一年ほど黒点が少なく無黒点の日も多くて太陽活動周期の極小期と見られていたのですが、今年の9月には第25太陽活動周期の開始が確認されました。

第25太陽活動周期は2025年7月に極大期を迎えると見られ、徐々に黒点も増えていくものと思われます。さすがに太陽望遠鏡を買う予定はなく白色光での撮影しかしないので黒点しか撮れないのですが、2014年10月の2192黒点群みたいな肉眼黒点レベルの大黒点を撮りたいものです。

最遠の満月 (2020/10/31)

10月31日は10月2度目の満月(ブルームーン)で、同時に今年の最遠の満月でもありました。今年は最近の満月を一応撮ることができたのでできれば同じ機材で最遠の満月も撮って組写真にしたいなと思っていたのでした。

正確な最遠は23:49。SCW の予報では横浜はずっと晴れそうだったのですが、結構近くまで雲が流れてくる予報だったので、用心して20:00頃から準備を始めて21:00頃に一度撮影しました。

E-M1 Mark II で撮るのは久しぶりだったので、撮影前になって用意していたリモートケーブルが E-M5 用(コネクタ形状が違う)だったのに気付いて焦りました… E-M1 用が見当たらなかったのですが、幸いというか E-M1 用の方は電源が不安定だったため予備を買ってあったのでそれを使うことができました。

画像処理も仕上げまでやってうまくいくのを確認して、あとは23:49まで待つばかり。22:40頃、寒くなってきたのでピントの変化が気になってベランダに出て再調整しようと思ったら写野に月が見当たりません。

一応ドリフトアライメントで極軸も合わせているのに満月一個分以上も流れるのはおかしいな、と思っていたらなんと赤道儀が動いていません。SB-10 の電源も落ちています。SX2 の電源を入れ直したり電源ケーブルを抜き差ししたりしたのですが一向に電源が入りません。

ACアダプタのパイロットランプは点灯しているので電源そのものは問題ないはず。SB-10 と SX2 を繋ぐD-subケーブルはよく断線すると聞いていたのでそれかなとも思いましたが、まずはシガーソケット接続の電源ケーブルの導通をテスターで確認したところ、マイナス側接点(ソケット外周に触れる側)が導通していません。

ACアダプタ側のソケットにもテスターを当ててみましたが12V出ているようです。SB-10 は赤道儀に繋がずにAC電源を直結して起動することもできるので、D-subケーブルの問題ではないことを確認するために問題の電源ケーブルで直結起動を試みましたが起動しません。

やはり電源ケーブルか、と思いつつもう一度直結してみたところ SB-10 が起動しました!改めてテスターを当てると導通が戻っているようです。とりあえず SX2 に繋いで再び電源を入れると無事赤道儀が動き出しました。

とはいえ、ケーブルかコネクタの接触が不安定ということではあるのでいつまでもつかわかりません。まあ21:00に撮った分はあるので、また止まったら諦めるということで… と思っていたのですがその後は電源は落ちることなく最後まで撮影することができました。

撮影方法は例のごとく電子シャッターで数百枚連射です。それを LightroomTIFFに出力して*1 AS!3でスタックして*2 出力から Photoshop でモノクロの疑似L画像を生成して、RegiStax6 で疑似LとRGBを wavelet 処理して、Phothoshop で LRGB 合成して*3 Lightroom で色調や階調を4月の最近の満月の写真に合うように微調整して、最後に WinJUPOS で月の北極が上になるように向きを調整して*4 こうなりました。

最遠の満月 (2020/10/31 23:49)
最遠の満月 (2020/10/31 23:49)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/320s x 128/361コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic, WinJUPOS 11.3.0 で画像処理

シーイングは8cmで撮る分には十分良く、コマ数多かったこともあってこの機材で撮った月面としてはベストなのでは?月が遠い時に限って… と思うと複雑な気分ですが。

さてこれを4月7日の写真と並べてみます。

2020年の最近の満月と最遠の満月 (2020/4/7, 2020/10/31)
2020年の最近の満月と最遠の満月 (2020/4/7, 2020/10/31)

最近の満月の方は厳密には翌日の昼に満月だったので少し欠けていますが…

最近の満月は地心距離約35万7000km(測心距離は約35万3000km)、最遠の満月は地心距離約40万6000km(測心距離は約40万km)で、5万km以上差があります。視直径は12%の差があります。

というわけで三年ぶりに最近・最遠両方撮ることができました。なかなか両方撮れることはないのですが来年も狙ってみようと思います。

それにしても電源ケーブル… 一応 Amazon に純正品の在庫があったので注文しました。予備も合わせて2本買おうとしたら一度に1本だけとの警告が出て1本しか注文出来ませんでした。転売対策?こんなの転売する人いるの?

SB-10のケーブルの方も予備を買っておこうかと思いましたがどこも在庫がないようです。一部のRS232Cケーブルが流用できるとは聞いているのですが、大丈夫かなぁ… ちょっと考えてから決めようと思います。

*1:LRの現像設定はデフォルトでシャープネスが40になるのでそれは0にします

*2:128/361 コマをAPはサイズ104自動配置(1597個)でスタック。Core i5 6600 で30分近くかかります。

*3:イメージモードをLabカラーにして、RGBのLチャンネルを疑似LのLと差し替えてレベル調整等。

*4:月の場合は自動調整できないので要は手動で画像回転するだけですが微調整がやりやすいので WinJUPOS を使っています。Measurements して de-rotation で出力。

火星の地図と南極冠の偏心

10月1日から10月26日にかけて火星のほぼ全面を撮ることができたので、WinJUPOS で火星の地図を作ってみました。

正距円筒図法(equirectangular projection)で描いたものを以下に。

火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (0º中心)
火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (0º中心)


これだと経度(西経)180度の部分が左右に別れてしまうので、地図の中心を180度にしたものも。

火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (180º中心)
火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (180º中心)

北緯60度を越えたあたりが真っ黒ですが、これは今回の接近では地球と火星の位置関係が火星を下(南)から見上げる形になっていて北極圏が死角に入って見えないからです。逆に南の方は南極まで全部入っています。

これだけだとどこが何だかわからないので主な地形の位置にマーカーを置いて地名が確認できるようにしました。

火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (0º中心・マーカー付き)

❶ シレーンの海 ⓫アキダリアの海
オリンポス山 ⓬真珠の海
❸アルシア山 ⓭子午線の湾
❹パボニス山 ⓮サバ人の湾
❺アスクラエウス山 ⓯大シルチス
❻太陽湖 ⓰ヘラス盆地
❼マリネリス峡谷 ⓱インディス平原
❽ルナ湖 ⓲チュレニーの海
❾オーロラ湾 ユートピア平原
クリュセ平原 ⓴キンメリア人の海

地名は『月刊 星ナビ』2018年7月号の付録の地図の表記を元にしています。ここに示した地名の多くは地球から見える模様(アルベド地形)を元に命名された古典的な地名で、実際の地形にはそぐわないものもありますが、天文学者ではない一般の天文家の間で広く使われている地名です。

ところで、この地図の南極冠の白い部分を見ると奇妙なところがあります。火星の南半球は今夏で南極冠はずいぶん小さくなっているのですが、その位置に偏りがあるのです。

南極冠が南極点の周りに均等に広がっているなら地図の下辺は端から端まで白くなっているはずなのですが、この地図では白い部分が経度90度〜330度近辺にのみ存在して300度〜120度あたりには存在しません。つまり南極冠の領域が南極点からズレている(偏心している)ということです。

そこで極射影図法の地図も作ってみました。

火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (極射影・南極)
火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (極射影・南極)

円形の地図の中心が南極点です。こうして見ると明らかに偏心していますね。これまで撮影した火星の写真を WinJUPOS の Measurements で位置合わせしていて、南極冠が南極点から東西にズレていることがあり、というか安易に南極冠の中心を南極点に合わせるとどうしても地形がズレてしまうのに気付いてはいたのですが、これで納得がいきました。

しかしなんでこんなことになっているのでしょう?南極冠の氷が太陽の輻射熱で溶ける(ドライアイスなので正確には昇華する)のなら火星の自転で均等に暖められるはずなのでこうはなりません。なので地熱の分布に偏りでもあるのかな?と思ったのですが、TwitterでHIROPONさん(id:hp2)がこんな記事を教えてくれました

どうやら南極冠の偏心は昔から知られており、夏の間にだけ見られる現象のようです。その理由は長らく謎だったのですが、2008年に探査機による気象観測データの分析で明らかになったということです。

すなわち、ヘラス盆地(上の地図の⓰)の影響で南極上空の風の向きが変わり、西側に低気圧、東側に高気圧ができ、降雪(ドライアイスの雪)が西側に偏っているのが原因とのこと。その結果、南極冠の西側は積雪で、東側は霜でできた形になり、夏になると表面の滑らかな雪の部分より表面の粗い霜の部分が昇華しやすいため西側の雪の部分だけが残るのだそうです。

地熱関係ありませんでした… しかし大気が薄いのに(大気圧は地球の1%以下)気候の違いがここまではっきり出てくるものなんですね。よく考えれば2018年に火星全球を覆い尽くしたのダストストーム(大黄雲)みたいな激しい気象現象もあるので当たり前と言えばそうなんですが。

というわけで、ここまでやるとただ写真を撮っただけではなくて「観測」したなという気分になれますね。しつこく火星を撮り続けた甲斐がありました。

10月6日の最接近以降徐々に離れていく火星ですが、11月2日には視直径20秒を切ってどんどん小さくなっていきます。寒気が入ってくるとシーイングも悪くなるし惑星観測もこのへんでシーズンオフということになります。ずっと惑星ばかり撮っていたのでそろそろDSOも撮ってみたいなぁ…

2020/11/1: 訂正

すみません、編集ミスで地図の⓱と⓲の地名が入れ替わっていました。正しくは⓱がインディス平原、⓲がチュレニーの海です。現在修正済みです。