Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

速報: ZTF彗星 (2023/1/27) / N.I.N.A 始めました / PixInsight で彗星の画像処理

1月27日は空も曇ってたので夕方からビールを飲んでたのですが、SCW を見ると関東は深夜から晴れの予報。ずっと撮りそびれていたZTF彗星を撮るチャンスか、と思いつつも昼の雨で公園は地面が濡れてるだろうしちょっとな、と思っていたのですが…

Stellarium で彗星の位置を確認すると随分北の方まで来ていて、以前マンションの廊下から撮った M82/M81 よりも北極星寄り。

なら公園まで行かなくても撮れる?でもデジカメだと写りが厳しそうだし、ASI294MM Pro で撮るとフィルター切り替えが大変だし… というのも、彗星の場合、LRGBの各フィルターでの撮影時刻が離れると彗星核基準でスタックした時に星がカラフルになってしまうし、ZTF彗星に関しては割と短時間で尾の形を変わるとの報告もあって彗星の方もカラフルになってしまいそう。そうなると短時間露出でRGBを1コマずつ撮っていくしかありません。

レナード彗星の時は1コマ1分露出でそれをやったのですが、手動でフィルターを切り替えていたのでむちゃくちゃ大変でした。

今回は移動速度や形の変化等諸々考えて1コマ30秒露出で撮りたかったので自動でフィルターを切り替えながら連続撮影できないとお話になりません。ということで N.I.N.A のシーケンサーで自動撮影することにして付け焼き刃で N.I.N.A の使い方を勉強してシーケンスを作成して室内でテスト。

23時くらいまでには準備ができたのですが疲れてしまって横になったらなんか気力がどんどん萎えてしまって意識が朦朧としてきて、一応目覚ましをセットしてたので1:00頃に目が覚めたものの、撮りたい、でも寝たい、がグルグル頭の中で回転して布団から出られず…

でも最終的にはルーレットは「撮りたい」で止まり、観念して起き上がって1:30頃から機材の運搬と設置を開始。風が強いわ寒いわで半ば後悔しつつ、でも重たい SX2 を運搬してしまうと今更戻るのは馬鹿みたいって気持ちになってなんとか設置を完了させました。

鏡筒は RedCat 51 です。ASI294MM Pro のマイクロフォーサーズの画角では尾がはみ出るはずですが、尾の先の方の淡い部分は横浜の空ではどうせ写らないと割り切りました。

極軸合わせは PHD2 のポーラードリフトアライメントで10分くらいで完了。SB10にZTF彗星は載ってないのでコカブ(こぐま座のβ星)を導入しようと思いましたが、北向きの鏡筒は赤道儀にぶつかりやすいのが心配で手動で導入しようとしたところ、赤緯軸が天の北極を越えて動かせなくて失敗。これどうやるんですかね?結局自動導入で事なきを得ましたが。

どうも天球の北極星近くは慣れなくて方向感覚がわからなくなってしまいがちなのですが、コカブからZTF彗星の導入は割とスムースにいけました。数秒の露出でプレビューにはっきり彗星らしい姿が映ったので。

はっきりと言っても尾はコマの近くの一部しか見えず、アンチテイルもあるせいで尾の向きがイマイチわからなかったのですが、事前に見た他の人の撮った写真から見当を付けた向きに合わせて撮影開始。

最初の方でオートガイドを開始するのを忘れてたり、後半またDECのハンチングが始まってガイドが乱れ気味だったりもしましたが、DECのRMSエラーは±2秒角程度で済み、短焦点で露出時間も短かく、11Megapixelモードで解像度を落として撮ったのでほぼ問題なく撮れました。

深夜2:30から5:16の天文薄明の直前まで2時間半くらい撮り続けました。N.I.N.A のシーケンサーによる自動撮影のおかげで、彗星の移動に合わせてフレーミングをやり直した以外は機械任せで済んだので、途中で部屋に戻って取ってきた双眼鏡(PENTAX 7x21HD 7倍21mm)で眼視でもZTF彗星を見ようとしたのですが…

コカブの近くで探しやすい位置にあったにもかかわらず結局視認できませんでした。コカブの西の4等星がギリギリ見えるくらいだったので5〜6等のZTF彗星を見るのは厳しい条件だったと思います。なにしろ周囲から3つくらいのLED電灯に照らされていて暗順応ナニソレ?みたいな環境だったので…

撮影を終わってカメラの昇温後機材の撤収、そして引き続きベランダでフラットとダークを撮影。ダークの撮影中に夜が明けてきてどこからか光線漏れしてダークがカブるなどのトラブルもありましたが(鏡筒に黒いTシャツをかぶせて対応)なんとか撤収完了。

一眠りしてから PixInsight で画像処理。PixInsight で彗星の画像処理をするのは初めてですが丹羽さんのサイトの情報のおかげでなんとかなりました。まだ全部は処理できていないのですが、撮影終了前の総露出時間40分(4:30-5:13)を処理した結果がこちら。

ZDF彗星 (C/2022 E3) (2023/1/28 04:54)
ZDF彗星 (C/2022 E3) (2023/1/28 04:54)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折), ZWO LRGB Filter / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (11 Megapixel, Gain 300, -10℃), N.I.N.A 2.1 / LRGB: 30秒 x 20コマ, 総露出時間 40分 / PixInsight 1.8.9-1, Photoshop 2023, Lightroom Classic で画像処理

画像の向きは概ね北(天の北極)が上です。この時間には子午線の少し手前で地上から見上げるとこの画像を逆さまにした向き(尾が左側に流れる)ように見えていたはずです。細く長く伸びるイオンテイルとふわっとしたダストテイル、そしてそれらと反対方向に、彗星の進行方向の反対側に伸びる短い「アンチテイルが」見えています。

尾が見やすいように白黒反転画像を見てみましょう。

ZDF彗星 (C/2022 E3) (2023/1/28 04:54) (白黒反転)
ZDF彗星 (C/2022 E3) (2023/1/28 04:54) (白黒反転)

長く伸びたイオンテイルが写っているのがわかります。よく見ると根本近くで2つに枝分かれしている?微かな写りですが、横浜の空では尾は写らないかと思っていたので意外でした。

N.I.N.A 始めました

ということで今回は N.I.N.A を初めて実戦で使いました。SharpCap でも有料版には撮影シーケンスを組む機能があるのですが、せっかくなので以前から気になっていた N.I.N.A を試してみました。以前試した時は ASI294MM Pro を繋いだ時にトラブったので最新版(Version 2.1)を落として再チャレンジ。

とりあえず室内で ASI294MM Pro で冷却が問題ないこと、EWFmini でフィルター切り替えが問題ないこと、シーケンスが機能すること、を確認。

EWF は ASCOM 経由で使いましたが、直接接続もいけるっぽい?ASCOM ドライバ側でフィルター名が設定してあっても N.I.N.A 側は Slot 0 とかのままなので、N.I.N.A 側の設定で改めて設定する必要がありました。設定方法がなかなかわからなかったのですが、「オプション - 機材」から設定できました。しかしこれは「機材 - フィルターホイール」の画面でも設定できるようにして欲しいなあ…

撮影シーケンスの設定は「シーケンサー - 高度なシーケンサー」でやりました。最初「シーケンサー - 新しい目標の追加」を使っていたのですが、ループの設定方法がわからなかったので、ググったら「高度なシーケンサー」を使うやり方がみつかったのでそれを参考にしたのですが、実は普通のシーケンサーでも「シーケンスモード」を「循環(ループ)」に設定して「トータル#」にループ回数を設定すればシーケンス全体のループはできるみたいです。

シーケンサーでは撮影開始前に冷却カメラの冷却を完了させる設定もあります。以前手動の撮影で冷却が目標温度に達する前にうっかり撮影を開始してしまっていたのに後で気付いたことがあったのでこれは便利と思ったのですが、これってカメラ側の設定で冷却に10分とか設定してあると、シーケンス開始から10分かけて冷却しようとするっぽい?

冷却は接続後にすぐ開始して冷却途中でピント合わせやら導入やらをやるので、シーケンス開始時には目標温度の近くまでは冷却されているので、そこからさらに10分とかになると困ります。なので今回はシーケンサー側の冷却設定はオフにしました。

もっとも本番撮影前にシーケンスを開始してなくても冷却が途中で止まってしまうトラブルがあり、この時は一度カメラの接続を切って最初から冷却しなおしたのですが、テスト時に冷却に時間がかかっていたのもそういうトラブルだったのかも?要確認です。

シーケンスは途中で停止すれば次は停止したところから再開になり、最初からやりなおす場合はリセットする必要があります。「高度なシーケンサー」画面なら画面一番上のシーケンスの名前が書いてある行の右端あたりにあるリロードアイコンみたいなアイコンのボタンを押すと進捗が0に戻ります。

普通のシーケンサー(目標セット)だとそのボタンが見当たらない… と思ったら画面左上の方にある目標名が書いてある右端が尖った鉛筆みたいな形のラベルの上にマウスをホバーさせるとボタンが出てきました。なんでこんな初見殺しのUIなのか…

ともあれフィルターを順次切り替えながら撮影するシーケンスをなんとか作成して室内でのテストも完了し、実際の撮影もつつがなくできました。

ただ、プレビューの表示が遅くて導入はピント合わせがやりにくいのは以前試した時から変わりありませんでした。このへんは SharpCap の方が使いやすいですね。プレビュー表示のストレッチ設定を切れば少しマシですがそれでも遅い。ピントをずらしながら「ヤマ」を掴むとか無理なので、ピント合わせはバーティノフマスク一択だと思いました。

プレビューと言えば撮影中にプレビューのストレッチ表示が無効の状態でLだけストレッチがかかって表示されることがあって(ストレッチ表示のトグルボタンを2回押すとリニア表示になった)何か失敗して露出オーバーになったかと思ってビビりました。

N.I.N.A は機能が豊富で天体撮影(特にDSOの撮影)における様々なニーズに応えるように工夫されていますが、微妙に不安定な部分があったり、UIが複雑で誤操作した時に初心者は何が起こったのかわからなくなることもあったりで、かなり慣れが必要なソフトだなと思いました。

気軽な電子観望や月・惑星の撮影では SharpCap の方に分がある印象です。とはいえ、便利そうだけど今回急に使ったのでまだ試していない機能もたくさんあるので、今後も色々試していきたいです。

PixInsight で彗星の画像処理

彗星の画像処理についてはこれまでは DeepSkyStacker の彗星核基準コンポジットで処理してきましたが、せっかく PixInsight があるのでそちらで処理してみました。参考にしたのはこちらの記事。

はい、PixInsight といえばお馴染みの丹羽さんの記事です。こちらの記事ではカラーカメラで撮った画像を処理していますが、今回はモノクロカメラで撮っているのでそのあたりも含めて気付いたこと工夫が必要だったことなどをメモしていきます。

処理フローはこんな感じです。

graph TD
    subgraph raws
    Rs_raws
    Gs_raws
    Bs_raws
    Ls_raws
    end
    subgraph registered
    R_regs
    G_regs
    B_regs
    L_regs
    end
    subgraph comet_registered
    comet_R_regs
    comet_G_regs
    comet_B_regs
    comet_L_regs
    end
    subgraph star_registered
    star_R_regs
    star_G_regs
    star_B_regs
    star_L_regs
    end
    subgraph comet
    comet_R
    comet_G
    comet_B
    comet_L
    end
    subgraph star
    star_R
    star_G
    star_B
    star_L
    end
    raws -- "WeightedBatchPreprocessing\n(Linear Defects Correction, Subframe Weighting, Image Registration)" --> registered
    registered -- CometAlignment --> comet_registered
    comet_registered -- "ImageIntegration(Median, Linear Fit Clipping)" --> comet
    comet -- "(Subtract)" --> star_ca
    registered --- star_ca(( )) -- "CometAlignment (Subtract)" --> star_registered
    star_registered -- "ImageIntegration(Avarage, Linear Fit Clipping)" --> star
    
    comet_R & comet_G & comet_B --- comet_cb(( )) -- ChannelCombination --> comet_RGB
    star_R & star_G & star_B --- star_cb(( )) -- ChannelCombination --> star_RGB
    
    comet_RGB & star_RGB --- pm1(( )) -- "PixelMath(comet_RGB + star_RGB)\n AutomaticBackgroundExtractor\n ImageSolver\n SpectrophotometricColorCalibration\n HistgramTransformation" --> comet_star_RGB
    comet_L & star_L --- pm2(( )) -- "PixelMath(comet_L /1.6 + star_L /1.6)\n AutomaticBackgroundExtractor\n HistgramTransformation" --> comet_star_L
        

最後の comet_star_RGB と comet_star_L を Photoshop で LRGB 合成(CameraRaw で調整した L を輝度レイヤーにして不透明度60%で CameraRaw で調整した RGB のレイヤーに重ねる)して仕上げました。*1

彗星のみ画像(comet)の作成

まず CommetAlignmnent について。WBPP の Image Registration の結果は LRGB 別々に registered のサブフォルダに格納されますが(L なら Light_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-30.00s_FILTER-L_mono とか)、CommetAlignment に時系列で連続したフレームを読み込む際に複数のフォルダを行ったり来たりしてファイルを選択するのは面倒ですし選択漏れが出たりもするので、一つのフォルダにまとめてしまった方がやりやすいです。

Linux 環境ならコマンドラインから registered の親ディレクトリに cd して、

mkdir all_registered_lights
cd all_registered_lights/
ln -s ../registered/Light_*/*.xisf .

とかやってシンボリックリンクを張るのが手っ取り早いです。*2 こうすれば Add Files する時にファイルダイアログ内で Name でソートすれば全フレームが撮影順に並びます。本当はファイルダイアログ内にサブフォルダ内まで含めて検索する機能があればいいのですが…

さて、読み込んだフレームの最初のフレームと最後のフレームで彗星核を認識させるのですが、ここで問題が。L,R,G,B の順に撮影したので最初のフレームは L なのですが、L は露出オーバー気味で彗星核が白飛びに近い状態になっているためクリックしても彗星核を認識しないのです。コンソールには「Error: PSF fitting error: No significant data.」というエラーメッセージが出力されました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/PI-20230129/CA-PSF-fitting-error.jpeg

エラーメッセージでググッても全く情報がなくて困ったのですが、最後の B フレームでは問題なく彗星核を認識してくれたので、とりあえず最初の L フレームの一つ前の B フレームを追加してそれを最初のフレームにすることで回避しました。

最初と最後のフレームで彗星核を認識されると、途中のフレームの彗星核の位置は自動設定されます。これは認識した彗星核の位置から座標を線形補間したもののようで、一瞬で終わります。これは露出オーバーの L フレームについても問題なく設定されました。

ただし、後で Apply Global で registration を実行した際に L フレームの処理で「Warning: PSF fitting error: No significant data. Using interpolated centroid coordinates.」という警告が出ていました。どうも registration の際に画像から彗星核の位置を再計算しているようで、その際にまた L フレームで計算に失敗し、フォールバックで補間された位置を採用しているようです。結果をみた限りはそれで特に問題はありませんでした。

丹羽さんの記事には書いてませんが、CometAlignment の Target Frames でフレームを選択して Set Reference するとそのフレームが彗星核での位置合わせの基準になるフレーム(reference frame)になります。reference frame には Target Frames の一覧の先頭カラム(フレーム番号のカラム)に → マークが付きます。

デフォルトでは先頭フレームに → マークが付いているので ImageIntegration でスタックした結果の彗星の位置は先頭フレーム(撮影開始時刻のフレーム)での彗星の位置になります。上の写真では撮影開始と撮影終了の中間の時刻(04:54)のフレームを reference にしました。

reference frame がどうであろうと星のみ画像と合成した最終画像の品質には特に影響はないですが、reference frame を把握していないと最終画像に写っている彗星が何時の時点の位置に写っているのかわからなくなるので控えておきましょう。*3 控えておいた時刻は最終画像の撮影時刻に設定します。

CometAlignment の結果は LRGB 全部一緒のフォルダに保存されます。これを ImageIntegration で Add Files するのですが、今度はさっきとは逆に LRGB が別々のフォルダに仕分けてある方が扱いやすいので、保存先フォルダに cd してコマンドラインからこんな風にして仕分けました。

mkdir L R G B
mv 2023-01-28_*_L_* L
mv 2023-01-28_*_R_* R
mv 2023-01-28_*_G_* G
mv 2023-01-28_*_B_* B

チャートの「ImageIntegration(Median, Linear Fit Clipping)」では「彗星のみ画像」を作ります。Image Integration - Combination に Median を指定しますが、丹羽さんの記事で Average よりオススメ(星の消し残りが激減する)とのことなのでそうしました。Pixel Rejection (1) - Rejection algorithm は15枚以上なら Linear Fit Clipping が良いとのことなのでそうしました。

Pixel Rejection (2) - Linear fit high の値は試行錯誤しましたが、光害地ではストレッチで無理をして星の消し残りが目立ちがちなので星消しが強めになるよう小さめの値(0.6)を採用しました。今思えばもうちょっと大きめにしても良かったかも…

星のみ画像(star)の作成

L,R,G,B の各彗星のみ画像(チャートの comet_R, comet_G, comet_B, comet_L)ができてそれぞれ xisf ファイルに保存したら、今度は星のみ画像を作ります。

CometAlignmnet の Subtract - Operand Image に彗星のみ画像を設定して作るのですが、モノクロカメラ撮影した場合は L,R,G,B それぞれについてそれをやらなくてはならず、そのためには Target Frames で L,R,G,B いずれかのフレームだけにチェックを入れて、対応する彗星のみ画像を設定する必要があります。

フレームにチェックを入れたり外したりするには Target Frames の一覧の第2カラム(? のカラム)の ✓ マーク(または ✗ マーク)をダブルクリックするか、もしくは対象フレームを一覧で選択して(複数選択可) Toggle Selected します。

複数フレームのチェック入れには後者の操作が楽ですが、それでも L,R,G,B のループで並んでいるフレームから L だけとかを選択するには単純な範囲選択では選択できず、結局全フレームをチクチククリックして選択するしかありません… フレーム数が多いとかなりめんどくさいです。一覧に検索絞り込み機能があれば絞り込んで全選択でいけるんですが…

なお、ここでは L,R,G,B 毎の作業になるので Output - Output Directory に設定する出力先フォルダも L,R,G,B 毎に別々のフォルダを指定しておくと後で作業が楽になります。

星あり彗星画像(comet_star_RGB, comet_star_L)の作成

ここまで来たら「彗星のみ画像」と「星のみ画像」を合成して「星あり彗星画像」(あるいは彗星を止めた画像)を作成しますが、まずは彗星のみ画像と星のみ画像をそれぞれ R,G,B を ChannelCombination して RGB 画像にします。

R, G, B それぞれを星あり彗星画像にしてから ChannelCombination でも結果は同じですが、Image Identifier を書き換えながら PixelMath を繰り返すのは面倒なので先にそれぞれの RGB 画像(comet_RGB, star_RGB)を作ります。

comet_L と star_L、comet_RGB と star_RGB をそれぞれ PixelMath で合成しますが、L の方は露出オーバー気味でそのまま加算すると真っ白になってしまったので 1.6 で割ったものを加算しました。

L と RGB の星あり彗星画像はそれぞれ ABE してストレッチしますが、RGB の方はストレッチする前に SPCC でカラーバランスを整えます。ChannelCombination あたりで plate solve 結果が失われていてそのままでは SPCC できないので先に ImageSolver で plate solve を再実行してから SPCC します。

だいたいこんなところでしょうか。かなり手間がかかるので今後はバッチ処理にしたいところです…

まとめ

まだ未処理のデータがたくさん残ってますがとりあえず処理すれば彗星らしい姿が拝めることがわかったのでホッとしました。残りのデータもおいおい処理していきたいと思います。って去年の10月の木星のデータもまだ残ってるんですが…

とにかく3時間くらい物運んだり立ちっぱなしだったりだったので疲れました。まだ筋肉痛が残ってます…

*1:半透明にして L を重ねるのは RGB の輝度成分をブレンドしてノイズを減らす意図です。

*2:CometAlignment ではシンボリックリンクで大丈夫なのですが、何故か ImageIntegration では実行時にエラーになりました。ImageIntegration でも使いたい場合はハードリンクにするといいかも。

*3:register されたファイルの History 等にも reference frame の情報がないので控えてないと本当にわからなくなる?どこかに情報が残ってないのでしょうか?

M42 オリオン座大星雲とトラペジウム (2023/1/20) / PixInsight で HDR 処理 / WBPP で空き容量のやりくり

1月20日の夜、ついカッとなって SX2 を分解調整したのですが(これについては後日エントリを書きます)その後試運転がてら M42 を撮りました。何度も撮りましたが FSQ-85EDP で撮るのは初めてです。

SX2 の調整は赤緯ガイドのハンチング(ガイドグラフの蛇行)の原因と思われる赤緯バックラッシュを減らすのが目的だったのですが、最初のうちは良さそうな感じだったものの、結局またハンチングが発生して2分露出のコマは何度も撮影中断になりあまりマコ数を稼げませんでした…

試運転とはいえせっかくなので多段階露光で M42 中心部のトラペジウムを描出するのを目指しました。

M42 オリオン座大星雲 (2023/1/20 21:49)
M42 オリオン座大星雲 (2023/1/20 21:49)
高橋 FSQ-85EDP, フラットナー1.01× (合成F5.4) / ZWO LRGB filter, Ha Filter / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (46 Megapixel, Gain 150, -10℃), SharpCap 4.0.9268.0 / L: 0.5秒 x 32コマ + 1秒 x 16コマ + 4秒 x 16コマ + 15秒 x 16コマ + 60秒 x 24コマ, RGB: 1秒 x 32コマ + 2秒 x 16コマ + 8秒 x 16コマ + 30秒 x 8コマ + 120秒 x 12コマ(Bだけ10コマ), 総露出時間 119分12秒 / PixInsight 1.8.9-1, Lightroom Classic で画像処理

上の写真のトラペジウムの部分を切り出したのがこちら。

オリオン座大星雲中心部 (2023/1/20 21:49)
オリオン座大星雲中心部 (2023/1/20 21:49)

ちゃんとトラペジウムが4つの星に分解しています。

結構良く写ったと思います。が、ガイドが悪かったのかピントが甘かったのかはたまたシーイングが悪かったのか星像の締まりが以前撮ったものに比べるとイマイチですね…

とはいえ隅々まで星が歪まず丸く写っているのは気持ちいいですね。

輝星のまわりの青ハロっぽいのは B だけピントが甘かったせいで、レンズのせいなのかフィルターのせいなのかよくわかりません。露出の長いコマは L, R, G, B を数枚ずつ撮ってローテーションしてるので B だけシーイングが悪かったということはないと思います。

以前からそうなんですが G でピントを合わせると B のピントがちょっとズレるんですよね。R はあんまりズレないんですが。画像処理でなんとかできそうな気もしますが、今回は HDR 処理で手一杯だったのでそのままにしてあります。

PixInsight で HDR 処理

画像処理は PixInsight です。丹羽さんのこちらの記事を参考にしました。

処理フローはちょっとアレンジして、というか勘違いして少し違った風になりましたが、こんな感じです(Rs, Gs, Bs, Ls は多段階露光したフレームのセットです)。

graph TD
    subgraph raws
    Rs_raws
    Gs_raws
    Bs_raws
    Ls_raws
    end
    subgraph flattened
    Rs
    Gs
    Bs
    Ls
    end
    raws -- WBPP, ABE --> flattened
    Rs & Gs & Bs --- _a(( )) -- ChannelCombination --> RGBs
    RGBs -- HDRComposition --> RGB_HDR
    RGB_HDR -- ImageSolver\n SPCC\n HistogramTransformation\n HDRMultiscaleTransformation\n ArcsinhStretch --> RGB_stretched
    Ls -- HDRComposition --> L_HDR
    L_HDR -- SPCC\n HistogramTransformation\n HDRMultiscaleTransformation\n ArcsinhStretch --> L_stretched
    RGB_stretched -- ChannelExtraction --- _rgb(( ))
    L_stretched --- _rgb(( )) -- LRGBCombination --> LRGB

最後の LRGB を tiff 保存して、ノイズ処理とトーンカーブ、彩度等の微調整は Lightroom Classic でやっています。

SPCC の前に ImageSolver を入れているのは WBPP で付与されたメタデータ astrometric-solution が HDRComposition の結果には含まれないようで、SPCC がエラーになってしまうからです。無駄なので単に astrometric-solution をコピーする方法があればそれで解決したいのですが…

HDR 処理としては HDRComposition と HDRMultiscaleTransformation が肝ですが、HDRMultiscaleTransformation の方は丹羽さんの記事にもあるように試行錯誤が必要になります。最終的にはこんな感じに落ち着きました。

  • Number of layers: 7
  • Number of iterations: 1
  • Overdrive: 0.000
  • Median transform: OFF
  • Scaling function: Linear Interpolation (3)
  • To lightness: OFF
  • Preserve hue: OFF
  • Luminance mask: ON
  • Midtones Balance: Automatic

あと、最初はストレッチ前の画像(HDRComposition の結果)にそのまま HDRMultiscaleTransformation をかけていたんですが、これだとうまくいきません。Luminance mask が全然効かないので、これは元の画像のレベルが低すぎるなと思って HistogramTransformation で輝星が飽和しない程度にストレッチをかけました。

丹羽さんの記事をよく見たらストレッチ後の画像にかけるって書いてあったんですが… 先にストレッチしちゃうとハイライトが飽和しそうな気がして。でも HDRComposition の出力は 64bit float なので画面で白飛びして見えるようでも簡単には飽和しないっぽいです。

HDR 処理の結果は等倍でよく見ると輝星の中心付近に階調の段差ができていたりして(後で気付いた)もう少し詰めていきたいですね。

あとダークノイズっぽい暗部の線状のノイズが残っているのですが原因不明。今回 Bias フレームを使わなかったのですかそれと関係ある? dark flat 使ってるので不要と思うのですが… それとも WBPP で LOCAL NORMALIZATION に失敗してそのまま先に進んでるのがまずい?

WBPP で空き容量のやりくり

46Megapixel で多段階露光ということで元データのサイズはダークフラット等合わせて706フレーム、合計66GBにもなり、これを中間ファイル生成の多い PixInsight で処理するのは大変でした。

WBPP で一括処理しようとするとストレージに数100GBの空き容量が必要と表示されて、これが用意できなくて、どうしようかと悩んで試行錯誤した末、以下のようにしました。

  • まず Dark, Flat 全部と L の Light だけ WBPP に追加
  • WBPP 実行
    • 最後にログを保存する
  • 保存したログから Best reference frame のファイルパスをメモ
  • R の処理
    • Best reference frame 以外の中間ファイルを消す
      • calibrated, registered フォルダのファイル全部
      • ldd_lps フォルダのファイルは Best reference frame のファイル以外全部
    • Light のフレームを全クリアして R の Light を追加
    • Registration Reference Image を manual に切り替えて Best reference frame のファイルを設定する(入力欄にパスをコピペでOK)
      • Light 追加の前に設定すると時々設定が auto に戻ってしまうので注意
    • WBPP 実行
  • G, B の処理についても同様に繰り返す

Registration Reference Image を設定するのが肝で、これによってチャンネル間でフレームの位置合わせの基準を一致させます。これをしないと LRGB 合成の際にチャンネル間で位置がズレてしまいます。

Reference Image のファイル名は今のところログを見て調べるしかないようです。ログは手動で保存しなくても logs/{タイムスタンプ}.log にもログが残っているのでそれが使えるのですが、こちらは出力が大量にあるので処理完了後の画面から保存したやつのほうが扱いやすいかと思います。

これで空き容量 170GB くらいの HDD でやりくりしました。毎回 100GB 強の中間ファイルが生成されます。Dark, Flat は中間ファイルを消しても一度処理が完了して master が出力されていれば以後は自動的に master が使われるようになるので大丈夫です。

しかし Light の処理は別で、Image Integration のステップが Light の中間ファイルに依存するので、Image Integration の対象となるフレーム一式の全処理(Pipeline の一連の処理)が終わるまで中間ファイルを消せません。

なので、特定のフィルターで撮ったフレーム一式とか、多段階露光の特定の露出時間のフレーム一式とか、一つの mastar フレームを生成するまでの一連の処理の単位でしか処理を分割できません。

なお、WBPP の Pipeline を途中からやり直す場合は、中間ファイルが残してあれば、ステップ毎に生成済の中間ファイル(キャッシュ)を見つけて処理をスキップして次のステップでキャッシュを再利用、という形で処理時間(と電力消費)を節約できます。が、PixInsight が落ちてしまった(不正終了してしまった)場合は別です。たとえばこういう場合。

メモリは32GBあったんですけどメモリ不足でOS側から強制終了されてしまいました… WBPP は可能な限りアプリを全部終了してから実行しましょう。

この後 PixInsight を再度起動して WBPP をやり直したのですが、完了済みのステップで生成された中間ファイルが再利用されずやり直しになってしまいました。

メモリ不足以外にも何らかのバグで WBPP が途中で落ちることがあるので、用心深く行きたい場合は、Pipeline のステップを最初のステップだけ選択して一度 WBPP の実行を完了させてから、中間ファイルは残したままで、次のステップを追加で選択して再実行、というのを繰り返していくと良いでしょう。

まとめ

リザルトはピクセル等倍で見るとやや不満の残るものの、鑑賞距離で見る限りはでは自己ベストかな、と。撮影も画像処理も課題はありますが、FSQ-85EDP を使いこなせるようにがんばります。SX2 は… うーん…

太陽、3190黒点群 (2023/1/20)

1月20日はリモートワークの昼休み中にベランダで太陽を撮りました。久しぶりにデカい黒点が出たというのは聞いていたのですが、天気や体調の関係でなかなか撮れず、昨日やっと撮れました。

FSQ-85EDP の方は太陽撮影用のフィルターを取り付ける方法がまだ用意できてなくて、久々に BLANCA-80EDT を引っ張り出してきて ASI294MM Pro と ASI290MM で撮りました。

【注意!】 太陽の観察・撮影には専用の機材が必要です。専用の機材があっても些細なミスや不注意が失明や火災などの重大な事故につながる危険性があります。未経験の方は専門家の指導の元で観察・撮影してください。

太陽 (2023/1/20 12:23)
太陽 (2023/1/20 12:23)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成 f994mm), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO LRGB Filter (R) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (46 Megapixel, Gain 150, 15℃), 4.0.9268, 露出 1/2000s x 1000/2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 12.1.2, Photoshop 2023, Lightroom Classic で画像処理

黒点がいっぱい見えていますが、一際目立つ中心付近の大きな黒点は3190黒点群です。肉眼黒点じゃないかと言われていたので日食メガネで確認しましたが見えるような見えないような… という感じでした。

黒点番号付きの画像はこちら。

太陽 (2023/1/20 12:23) (黒点番号付き)
太陽 (2023/1/20 12:23) (黒点番号付き)

3190黒点群のクローズアップがこちら。*1

3190黒点群と3194黒点群 (2023/1/20 12:40)
3190黒点群と3194黒点群 (2023/1/20 12:40)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成 f994mm), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO LRGB Filter (R) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (46 Megapixel, Gain 150, 15℃), 4.0.9268, 露出 1/2000s x 1000/2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2023, Lightroom Classic で画像処理

右下のつぶつぶしてるのは3194黒点群です。しかし3190黒点群、デカいですね。どのくらい大きいか、地球の大きさと比べてみました。

3190黒点群と地球の大きさの比較
3190黒点群と地球の大きさの比較

真ん中の黒い部分に地球が2つくらい入るでしょうか。ちなみに地球の大きさの計算は面倒なので Stellarium で観測地を太陽にして地球の視直径を表示してそこから計算しました。

このあと ASI290MM でも撮影しました。バローレンズを2.5倍にしてクローズアップのつもりでしたが、付属のノーズピースをそのまま挿すと倍率が出ていないのと*2 ピクセルサイズが 46Megapixel モードの ASI294MM Pro より大きい(約1.25倍)ので、ピクセル等倍ではむしろ小さく写っていました…

3198, 3197, 3196 黒点群 (2023/1/20 13:08)
3198, 3197, 3196 黒点群 (2023/1/20 13:08)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成 f1135mm), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO LRGB Filter (R) / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM (Gain 140), 4.0.9268, 露出 1/2000s x 1000/2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2023, Lightroom Classic で画像処理

3192, 3191, 3186 黒点群 (2023/1/20 13:01)
3192, 3191, 3186 黒点群 (2023/1/20 13:01)
撮影データは同上

3190, 3194, 3184 黒点群 (2023/1/20 13:06)
3190, 3194, 3184 黒点群 (2023/1/20 13:06)
撮影データは同上

こちらの方がクッキリ写っているのはフレームレートが高いせいでしょうか?

シンチレーションによる歪みが純粋にランダムならフレームレートは関係ないはずですが、実際にはぐにゃぐにゃと時間軸に沿って歪みが動くので十分に速いフレームレートで撮れば連続するフレーム間に相関が出てスタックの際の AP の追跡誤差が少なくなる気がします。

また、太陽の自転周期は地球の公転による流し撮り(?)の効果も含めると赤道付近では約27日になりますが、太陽の視直径が大きいので意外と動きが速くて、低フレームレートで長時間かけて撮影するとブレてしまうのかも?

太陽の赤道直径は 139万2000km、今回の ASI294MM Pro での撮影では太陽の直径が 4062 pixel で1ピクセルの長さは 342.7km でした。太陽の赤道の一周の長さは直径×πで 437.3万km、27日(2332800秒)で一周するので1秒で1.87km 回りますから、太陽の中央付近では3分ぐらい(183秒)で1ピクセル分動く計算になります。

太陽全体の写真では5.3fpsくらいしか出てなくて、2000フレーム撮るのに6分20秒かかっています。もっとも3190黒点群の撮影では20.7fpsで1分36秒で撮り終えているのですがブレ感に差があるようには見えないので、数ピクセル程度のズレはスタックの際のアライメントで吸収されてしまうのかもしれません。

そもそもいつも撮ってる木星で同じ計算をすると18秒で1ピクセル動いてしまうのですが、1分くらいかけて撮ったフレームをスタックしても特にブレている感じはありません。

あるいは太陽の粒状斑自体の動きでブレてしまうのかも?粒状班の動きはかなり速く、「太陽の科学館」の説明では「数分の時間スケールで様子が変化していきます」とのこと。

なので、数分かけて撮影したものをスタックするとブレたようになってしまうのかも?もっとも口径8cmの分解能では個々の粒状斑が見えているわけではなく、もう少し大きなスケールの構造が見えているわけで、ブレて見えるほどの変化があるのかどうか…

というわけで、ASI294MM Pro での太陽撮影は100%満足というわけではないですが、そこそこ満足できる写りになりましたが、こうなると μ-180C でなんとか撮れないかという思いが…

ちなみに ASI294MM Pro での撮影は、去年の4月に撮った時とほぼ同じ機材構成です。*3

上の記事では一箇所抜けがあって、EWFmini と ZWO 11mm 延長筒の間に ZWO T2 to T2 アダプター(光路長2mm)が入ります*4。これでバーローレンズ後端からのバックフォーカスは80mm、拡大率は上の写真を WinJUPOS で測定した値から計算すると2.07倍になりました。*5

*1:これは上の画像のクロップではなく、別途 2072x1410 の ROI を設定して撮ったものです。上の画像(元は 5640x5644)だとフレームレートが 5.3fps でしたがこれは 20.8fps 出ています。

*2:撮影画像上の黒点の大きさから計算すると2.365倍くらいでした。

*3:笠井 CNC2インチHP直焦点アダプターのかわりにビクセンのフリップミラーを使いました。

*4:これがないとM42ネジがメス同士になって繋がりません。

*5:WinJUPOS の測定値が 0.4802秒/pixel で、ピクセルサイズが 2.315μm なので、2.315/1000/tan(0.4802/60/60) = 994.3836mm、元が480mmなので2.0716325倍。

ぼっちちゃんはガンマ線バーストの一番星を見るか? (追記あり)

先日 Twitter を見ていたら、こんなツイートが流れてきました。

「ぼざろ」はアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』のことです。劇中で主人公たちが演奏したオリジナル曲「星座になれたら」の歌詞に対するツッコミです。公式PVはこちら。

問題の箇所は歌詞の最初の方にあります。歌い出しからそこまでを以下に引用します。

もうすぐ時計は6時
もうそこに一番星

影を踏んで夜に紛れたくなる
帰り道

どんなに探してみても
一つしかない星

何億光年
離れたところから
あんなに輝く

結束バンド「星座になれたら」

夕方まだ薄明の時間帯に見えた一番星が「何億光年」先の星だというのです。この一番星は「どんなに探してみても 一つしかない星」とのことなので1等星程度とは考えにくく、明らかにマイナス等級の星で、常識的に考えると金星、木星、接近時の火星ぐらいしか候補がなさそうで、「何億光年」はないだろ、と僕も思っていたのですが、こんなリプライが…

ガンマ線バースト(GRB: Gamma-Ray Burst)は「宇宙最大のエネルギーが解放される現象」で、その実態はまだ謎に包まれていますが、極超新星(hypernova)や中性子星またはブラックホールの連星の合体の際に発生すると考えられています。*1

GRB赤方偏移の観測から発生源の天体は地球から数十億光年か、あるいはもっと遠くに離れたところにあるのが普通で、これが数億光年の場所で発生した場合どのくらいの明るさになるのか直感的にはよくわかりませんが、果たしてその可能性はあるのでしょうか?

前提

まず、『ぼっち・ざ・ろっく!』の世界において物理法則や存在する天体については現実世界と基本的に変わらないものと仮定します。作中では実在の地名が頻繁に出てきますし(下北沢、金沢八景江ノ島など)、主人公の後藤ひとり(通称:ぼっち)が科学番組でブラックホールの解説を見ているシーンもあるのでこれは妥当な仮定であろうと考えます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/bocchi-the-rock/bocchi-09_01.jpg
『ぼっち・ざ・ろっく!』第9話より

ただし、作中で発生する天文現象については、現実に起こりうる範囲の現象については、個々の現象が架空のものでありうると考えます。例えば作中の星空に流星が描かれたとしても、通常実在の流星を特定した上で描くとは考えにくいからです。新星、超新星GRB等の出現についても同様に考えます。

歌詞には「何億光年」とありますが、とりあえず1億光年(光路距離)で-3等前後より明るくなる可能性があれば「可能性あり」とします。

GRB 080319B と同等のGRBなら見えたか?

GRB 080319B は2008年3月19日に発見された観測史上最も視等級が明るいGRBです。距離(光路距離)は75億光年もあるにも関わらず、明るさのピークは5.8等に達し、肉眼で見える6等以上の明るさが30秒間続きました。現在までで肉眼で見ることが可能だった唯一のGRBです。*2

この GRB 080319B と同等のGRBが地球から1億光年の距離で発生したとして、どのくらいの明るさになるか考えます。

単純計算すると

ざっくり単純計算で考えると等級は距離10倍で5等増えるので、75億光年で5.8等の明るさなら、7.5億光年で1.8等、7500万光年で-3.2等。1億光年だともう少し暗くなるので金星(-4等程度)ほどではないものの、木星(最大で-3等程度)程度には明るく見えそうです。これなら一番星として見える可能性が…

光度距離(luminosity-distance)で考える

とはいえ、75億光年ともなると、単純計算ではだいぶ誤差が出るのでもう少し真面目に計算します。まず、75億光年というのは光路距離(light-travel distance または lookback distance)で、光が75億年かけて届いた距離、という意味です。「光年」の意味については以前以下の記事で書きました。

日常的な意味での距離で考える場合は光源の見かけの明るさは距離の二乗に反比例します。天体について「明るさは距離の二乗に反比例する」の関係を基準にした距離を光度距離(luminosity-distance)と言います。光度距離は、観測者から比較的近い距離にあるうちは光路距離と同じと考えていいのですが、75億光年ともなると宇宙そのものの膨張による空間の歪みの影響が無視できなくなります。

このあたりを補正するには赤方偏移と光度距離の関係式を利用する必要がありますが、簡易的には日本天文学会の「天文学辞典」にある「赤方偏移と宇宙年齢および距離」という表を参照して計算できます。

SimbadGRB 080319B のデータによると、GRB 080319B の赤方偏移 z は 0.9382 でした。「赤方偏移と宇宙年齢および距離」の表では z = 0.95 で光路距離(ルックバックタイム)は 75億3900万光年、光度距離は 203億4600万光年 になります。

絶対等級 M と見かけの等級 m の関係は、光度距離 r (単位はパーセク)を使って以下のように表せます。*3

 m - M = 5 \log r - 5

光度距離をざっくり200億光年とすると 1パーセク = 32.6光年 なので、200億光年 = 約613496932パーセク、上の式に代入して絶対等級 M を計算すると約 -33.14 等となります。

これが1億光年の距離にあると何等に見えるか計算します。歌詞の「何億光年」は、一般的な用法としては光路距離を指すものと考えられるので、これも光度距離に変換したいところですが、1億光年程度だと上の表にも載ってないほど近くて、光路距離と光度距離の差はほとんどないのでそのまま計算します。

1億光年 = 約3067485パーセク で、上の式に代入して見かけの等級 m を計算すると、約 -5.71 等となりました。これは最大光度の金星と比べても倍以上明るいです。というか昼でも見えるレベルです。距離を3億光年と置いても -2.98 等で、これなら「何億光年」離れていても文句なしに一番星になれます。

GRB 080319B ほどの絶対等級の GRB は一般的か?

とはいえこれは観測史上最も明るい GRB の話なので、「現実的に起こりうる」と言ってもイレギュラー過ぎるのでは?という気もしてしまいます。そこで、Simbad に赤方偏移と等級が登録されている全ての GRB について1億光年の距離で何等に見えるか計算してみました!

例によって Pythonastropyastroquery を使って計算します。結果のうち1等級以上になる GRB は以下の通りでした。*4

name z mag lookback_distance luminosity_distance abs_mag bocchi_mag
GRB 990123 1.600000 8.95 9,780,744,826 39,619,317,645 -36.47 -4.04
GRB 051008 2.770000 14.11 11,474,781,449 77,238,205,954 -32.76 -0.33
GRB 060607 3.073800 15.09 11,728,956,633 87,518,330,127 -32.05 0.38
GRB 061007 1.262200 12.95 8,891,326,642 29,598,499,457 -31.84 0.59
GRB 050922C 2.199600 14.69 10,833,763,768 58,443,498,302 -31.58 0.86
GRB 060605A 3.710000 16.53 12,134,220,786 109,533,072,317 -31.10 1.33
GRB 060206 4.055900 17.09 12,302,905,346 121,737,254,079 -30.77 1.66

abs_mag は絶対等級、bocchi_mag は「ぼっち等級(1億光年の距離での見かけの等級)」です。GRB 080319B に匹敵する明るい GRB がみつかりました。GRB 990123 です。絶対等級で-36等、ぼっち等級は-4等です。

この GRB 990123 は発見時にも注目されていたようで、アストロアーツの天文ニュースに解説記事が載っていました。

光度のピークが100秒近く続いてその後急激に暗くなり10分後には14等以下になったとのこと。

実は最初に検討した GRB 080319B はこの中にはありません。Simbad に等級が登録されてないからです。赤方偏移(z_value)と等級(flux(V) または flux(B))が登録されていない GRB については計算できないのでスキップしています。Simbad に登録されている12010件の GRB のうち赤方偏移と等級が両方登録されていたのは72件のみでした。なお、GRB 080319B について見かけの等級を5.8等として同じスクリプトで計算すると、絶対等級が-38.20等、ぼっち等級が-5.76等でした。

ということで、少なくとも2件ぼっち等級が-3等より明るい GRB が存在することがわかりました。一般的とまでは言えないかもしれませんが、それぞれ1999年と2008年なので人生で複数回遭遇しうる程度の頻度で発生するとは言えます。

結論

「何億光年離れた」GRB が一番星として見えるだけの明るさになることは現実に起こりうる範囲の現象であることがわかりました。したがって「星座になれたら」で歌われた一番星は GRB であると考えられ、、、って、常識的に考えるとやっぱり無茶なんですが(ピーク光度は数分しか続かないし)まあ、絶対にあり得ないとは言えない、というレベルではありうる、かも…

https://rna.sakura.ne.jp/share/bocchi-the-rock/bocchi-04_01.jpg
『ぼっち・ざ・ろっく!』第4話より

追記 (2023/1/18)

計算に使ったスクリプトソースコードを以下に公開しました。

Simbad のサーバーに負荷がかからないよう1月17日時点の GRB のデータをリポジトリに含めてあります。軽く試す場合はそのデータで試してみてください。クエリ結果の著作権の扱いがよくわからないのですが、まずければあとで消します…

あと、GRB に興味が出てきてブルーバックスの『宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト どこから来るのか、なぜ起こるのか』という本を買いました。

まだ途中ですが、読みやすい文章で発見からその正体が見えてくるまでの紆余曲折の歴史が紹介されていて面白いです。初版は2014年ですが、文中に重力波の検出(2015年)についての注釈があり、2015年に少し手を入れてあるようです。

ガンマ線バーストと言えばよくベテルギウス超新星爆発の時に発生するのではないかとか、直撃したら人類滅亡みたいな物騒な話が取りざたされていますが、そのへんの話については本書の最後の方に書いてあります。ぼっちちゃんが地上で GRB の一番星を見て無事でいられるのか?という点が気になる方は是非読んでみてください。

*1:参照: ガンマ線バースト | 天文学辞典

*2:参照: GRB 080319B - Wikipedia

*3:参考: 見かけの等級 | 天文学辞典

*4:計算に使ったスクリプトソースコードは後日追記します。→ 2023/1/18 に追記しました。

NGC7293 らせん星雲、M45 プレアデス星団 + UGC02838 (2022/10/20)

あけましておめでとうございます。年末の藤井旭さんの訃報でなんとなく喪中みたいな気分でもありますが、星の巡りを祝うことくらいはきっと許してもらえると信じて…

さて、なんと今年も一年のふりかえりエントリが間に合いませんでした!そもそも一昨年(2021年)の振り返りが5月までずれ込んだ挙げ句、2回シリーズの1回だけアップしてそのままになっているのですが…

昨年もそうでしたが、今年も前年に撮った写真の処理が終わらないまま年を越してしまいました。9月30日と10月1日に撮った木星の写真の画像処理がまだ大量に残っていて、大晦日はこれを処理しながら年を越したのですが、まだ残っています。

そして SNS 等に速報は流したものの、まだブログには載せていなかったのが、昨年10月20日に撮影した NGC7293「らせん星雲」と M45「プレアデス星団」の写真です。これは PixInsight で再処理してからアップしようと思っていたのですが、そういうことを言い出すとキリがないのでまずは従来の方法で処理したものをアップしてしまおうと思います。

で、タイトルにある UGC02838 とは?これは後ほど説明したいと思います。

さて、昨年10月20日は夕方からベランダに SX2 を出してワイヤレスユニットのテストから始めたのですが、ファームウェアアップデートがどうしてもうまく行かず結局 SB10 を使うことにしました…*1

気を取り直して極軸合わせして20:00過ぎかららせん星雲の撮影を開始しました。この日の撮影は FSQ-85EDP の実写テストを兼ねています。星像チェックのために ASI294MM Pro の 46 Megapixel モードで撮りました。

NGC7293 らせん星雲 (2022/10/20 20:12)
NGC7293 らせん星雲 (2022/10/20 20:12)
高橋 FSQ-85EDP, フラットナー1.01× (合成F5.4) / ZWO LRGB filter, Ha Filter / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ZWO ASI290MM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (46 Megapixel, L:Gain 150 RGBHa: Gain 300, -10℃), SharpCap 4.0.8949.0 / L: 30秒 x 50コマ, RGB: 各 30秒 x 28コマ, Ha: 3分 x 12コマ, 総露出時間 103分 / DeepSkyStacker 4.2.6, FlatAid Pro 1.2.7, Photoshop 2022(23.5), Lightroom Classic で画像処理, フルサイズ換算 1422mm 相当にトリミング。

どうでしょう?ギリギリですが「眉毛」(左斜め上に弓状に伸びる細い星雲)が映っています。中央のドーナツの穴の部分の青をもう少し出したかったのですが、RGBの露出時間少ないし難しいですかね。それでも中心星*2の青い色は出ました。星雲は、この星の放射する紫外線でガスが電離して光っています。

らせん星雲は2019年に一度 BLANCA-80EDT と ASI290MC で撮っています。

冷却のないカメラなのでさすがにノイジーですが、ドーナツの内側のシュワシュワ感はこちらの方が出ているような… 今回の写真はノイズ処理を強くかけすぎた?今度 PI で再処理する時はそのへん気をつけてやってみようと思います。

この後プレアデス星団を撮りますが、その前に9月26日に撮ったちょうこくしつ座銀河のL画像を撮り増ししました。これは先日アップした写真で使いました。

よく見ると9月26日に撮った分はフラットナー使ってなかったような… そのまま WBPP 大丈夫だったんですかね?

さて、プレアデス星団の撮影は23:00頃開始しました。平日ですし、高度が高くて南中時にはベランダの天井に隠れてしまうのでサクッと撮りました。すなわちLは撮らずRGBのみ。途中でBのピントがやや甘いのに気付いてピントを合わせ直しましたが、画像処理では全部合わせてスタックしています。

M45 プレアデス星団(すばる) (2022/10/20 23:15)
M45 プレアデス星団(すばる) (2022/10/20 23:15)
高橋 FSQ-85EDP, フラットナー1.01× (合成F5.4) / ZWO LRGB filter / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ZWO ASI290MM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (46 Megapixel, Gain 300, -10℃), SharpCap 4.0.8949.0 / R: 1分 x 18コマ, G: 1分 x 27 コマ, B: 1分 x 44コマ, 総露出時間 89分 / DeepSkyStacker 4.2.6, FlatAid Pro 1.2.7, Photoshop 2022(23.5), Lightroom Classic で画像処理, フルサイズ換算 990mm 相当にトリミング

青い星雲のガスの流れはそこそこ写ったと思います。反射星雲ですし横浜の空だとこれが限界でしょうか。追加で光害カットフィルターを使えばもう少し淡いところまで写りそう?でもフィルター二枚重ねは大丈夫でしょうか?ゴーストとか出やすくなりそうな…

ゴーストと言えば事前のテスト撮影で輝星でゴーストが出るのを確認していたので、どうなるかと思ったのですが、これを見る限りあまり気にしなくてよさそうな雰囲気です。

縮小画像だとわかりにくいですが、画像の右側(西側)は荒れ気味です。青い星雲があるからとコマ数をBに偏らせてRとGを減らしたのですがそのせいで色ムラが出やすくなったようです。が、それだけでなくフィルターホイールが偏心しているせいなのか右側に偏った周辺減光が出ていて右端のあたりは露出不足気味でフラット補正後はノイジーになってしまうようです。

クリスマスイブの深夜、ひとり暗い部屋でこの写真を眺めながら「これはまた撮り増ししなきゃなぁ」などと思いながらこの西側の領域を眺めていたところ、なにやらひっかき傷のようなものを見つけました。エレクトラの右の方です。

M45 のエレクトラの西側 (2022/10/20 23:15)
M45 のエレクトラの西側 (2022/10/20 23:15)

うわ、これは画像処理で何かしくじったかな?と思って拡大してみると… これは、銀河?

UGC2838 (2022/10/20 23:15)
UGC2838 (2022/10/20 23:15)

ネットで他の人の画像を見るとやはり同じような細長い天体が写っています。Wikisky で調べると、DSS2の画像にやはり同様の天体が写っています。

マウスオーバーすると USNOA2 1125-01239047 という名前が出てきました。クリックして開いたページには情報がなく、そこにある VizieR のリンクをクリックすると Not Found になります。なんなのこれ?見た目はどう見ても銀河なのですが…

と思って、銀河ならばと HyperLeda で調べてみると「知らない天体だが simbad で検索して出てきた位置で探すと UGC02838 にマッチした」とのことで、正体はやはり銀河でした。

HyperLeda に載っているのなら、と Galaxy Annotatorアノテーションしてみました。

M45 + UGC02838 (2022/10/20 23:15)
M45 + UGC02838 (2022/10/20 23:15)

距離はなんと2億8500万光年と出ました。

というのをクリスマスの夜につぶやいていたのですが、Twitter の天文家のみなさんには全く話題にならず。まあ、こんな夜はみなさんお忙しいことでしょうし……

ということで、そのうちブログのネタにしようと思っていたところ、元旦に海外の天文家 Alex Hawkinson さんがこの天体のことをつぶやいて話題になりました。

すごい!こんな遠くの銀河で暗黒帯まで写っています。

起業家で投資家としての顔も持つ Hawkinson さんですが、2年前からこの天体のことが気になっていて、昨年、所有する一番デカい望遠鏡で40時間露出(!)で撮影したのがこれだそうです。データが書いていないのですが別の M81 の写真のツイートのスレッドを見ると一番デカい望遠鏡というのは Planewave CDK24 (61cm F6.5 反射)のようです。口径の暴力!資本主義の悪魔!

労働者の僕は*3 口径8.5cmの望遠鏡を抱えてぢっと手を見るばかりですが、同じ天体に興味を持っていた人がいるのは喜ばしいことです。ネットで探してもほとんど情報がないし他に撮ってる人いないみたいなんですよね。

というわけで、この実写テストで FSQ-85EDP を使っていけそうな感触を得ました。接眼部も頑丈で BLANCA-80EDT + 高機能DXマイクロフォーカス接眼部 で悩まされたドローチューブの撓みもなさそうです。四隅の星像はスケアリング(tilt)調整でもっと追い込める気がしますが、個人的にはこのままでも問題ないと思っています。今年は積極的に活用していこうと思います。

*1:この時 Twitter でボヤいてたらくろくまさんにビクセンのサポートから Wi-Fi チャネルを変えて試すように言われたという情報をいただきました。後日実際チャネルを変更してファームアップに成功したのですが、また別のトラブルが… その件は別途エントリに書こうと思います。

*2:惑星状星雲の中心にある白色矮星になりつつある星。まだ高温で主に紫外線を放射している。

*3:技術者はサラリーマンでもプチブル扱いらしいですが、知識や技能が生産手段で肉体がそうでないというのもよくわからないので、自分では労働者を自認しています。まあタカハシの屈折望遠鏡買うとかどう考えてもプチブルだろ!と言われたら返す言葉もございませんが…

藤井旭さんの訃報が…

昨夜 Twitter を見ていると藤井旭さんの訃報が…

12月28日に亡くなったとのこと。星ナビ公式と天文ガイド公式からツイートがあったので間違いないようです。*1

小学生の頃、初めて買った児童書でない天文書藤井旭さんの『全天 星雲星団ガイドブック』でした。30年ぶりに天文趣味に復帰した時に引っ張り出してきたのもこの本でした。

https://rna.sakura.ne.jp/share/Fujii-book-01.jpghttps://rna.sakura.ne.jp/share/Fujii-book-02.jpg

子供の頃に憧れていたのがこの本に載っていたアマチュア天文家による天体写真です。今では光学技術とデジタル技術の進歩のおかげで比較的安価な機材でも手間をかけずに当時のハイアマチュアレベルの天体写真が撮れるようになり、僕の人生の中で数少ない「夢が叶った」経験になりました。

僕らの世代だと同じような経験をしている人は大勢いると思います。

僕たちアマチュア天文家を星へと導き、そして星になった藤井旭さんのご冥福をお祈りします。

*1:何か事情があるのか、どちらのツイートも今は削除済です。誤報との続報もないので亡くなったこと自体は事実だと思います。

水星、木星、火星 (2022/12/24)

12月24日の夕方に水星を撮りました。22日に東方最大離角を迎えた水星は、南寄りのベランダからも撮りやすい位置に出ているので狙ってみたのですが、ついでにビクセンのワイヤレスユニットを使おうなどと余計なことをしたせいで撮影開始が遅れてしまってシーイング的にかなり厳しい状況での撮影になりました。ちなみにワイヤレスユニットは切断しまくりでどうにもならなかったので結局 SB10 に切り替えて撮影しました…

水星 (2022/12/24 17:27)
水星 (2022/12/24 17:27)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 315), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 1/60s x 3000/5000コマ / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 11.0.2, Lightroom Classic で画像処理

後で木星を撮って WinJUPOS の Image Measurement で位置合わせしてその回転角を水星の写真の位置合わせでも適用することで北が上の画像にしてあります。色は赤く染まってよくわからなくなってるので調整せずにそのままにしてあります。

東側がちょうど半分欠けた半月状になっています。何?そうは見えない?これは半月だ。私がそう判断した。*1

すみません… 本来半月状になっているはずなのですが、像が左上の方に滲んでしまっているようです。

撮影時には激しいシンチレーションでメラメラと像が大きく揺れて、欠けた形もほとんど視認できない状況でした。赤っぽい輝度の高い部分が本来の水星の姿だと思います。ADC も一応調整はしたのですが、像が揺れるたびに色分散も激しく変化して、合ってるのか合ってないのかよくわからない状態でした。スタック時の RGB alignment でそれっぽくなってますが、元々は色滲みも相当あります。

機動戦士ガンダム 水星の魔女』が話題になってることもあり、せっかくなので綺麗に撮りたかったのですが… やはり日が沈む前に撮るべきでしょうか。

ちなみに位置合わせ用に撮った木星はこれです。

木星 (2022/12/24 17:46)
木星 (2022/12/24 17:46)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 315), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 1/60s x 1500/3000コマ / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 11.0.2, Lightroom Classic で画像処理

左側の衛星はイオ、木星のすぐ右側の衛星はエウロパです。水星があんな状態だったので、ピント合わせも木星でやりました。が、この通りの悪シーイングでした。

こんなシーイングなのでもう撮るだけ無駄かなと思いつつ一応火星も撮りました。

火星 (2022/12/24 19:18)
火星 (2022/12/24 19:18)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 315), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 1/125s x 2000/5000コマ / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 11.0.2, Lightroom Classic で画像処理

南半球にキンメリア人の海が見えています。北半球の左端が白っぽいのはタルシス三山(アスクレウス山、パヴォニス山、アルシア山)の周りの雲でしょうか?北極冠も結構広がっているようです。

火星の地図は2020年に作ったこちらをどうぞ。

シーイングが全然良くならないのでこの後撤収しました。やはり冬場の惑星観測は厳しいです。部屋のPCで撮影しているのですが、ピント合わせのためにベランダに出ると部屋の暖気が漏れたり自分の体温で鏡筒の周りに暖気ができてしまったりしてシーイングが乱れ、ピント合わせが難しくなるし、部屋に戻ってからもしばらく乱れが続き、なかなか落ち着いて撮影できません。

ピント合わせはEAFが欲しくなるところですが、ミューロン180Cに使えるEAFの取付金具は市販されていないのでやるなら自作するしかないですね… アリガタを長いものに換装して接眼部方向に張り出させて、そこにモーターを固定してベルトで合焦ノブを回す?クレイフォード接眼部等を取り付けるのはフラットナーレデューサーの光路長が合わなくなるのでナシです。惑星用の拡大光学系の倍率もどうなるか、合焦するのか、というのもわかりませんし。

まあ、そもそも日本の冬はシーイングが悪すぎてピント合わせ以前なんですけれど。2018年から惑星撮影を始めたのですが、木星は3年後にはシーズンが冬場になってしまうのですね。木星観測冬の時代の到来です。これから天文復帰を考えている木星好きの方、何事も遅すぎるということはないのですが、星の巡りはどうにもならないので復帰するならお早めに!

ちなみにこの後、ワイヤレスユニットをなんとか使えるように設定しようと格闘していたのですが、結果は失敗。そのへんはまた別途書きたいと思います…

*1:©デリング・レンブラン(『機動戦士ガンダム 水星の魔女』)