Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

NGC4216 と超新星 SN 2024gy (2024/1/22)

1月22日の横浜は午前中悪天候でしたが午後から晴れてきて夜は快晴でした。この機会に月齢的にもうチャンスはないかもと思っていた NGC4216 で発見された超新星 SN 2024gy を撮影しました。

ここ数年毎年超新星を撮っていて、しかも何故か全部板垣公一さんが発見した超新星なのですが、まだ μ-180C では撮ったことがなかったので思い切って μ-180C + フラットナーレデューサーで撮ってみました。2022年5月以来ごぶさただったオフアキシスガイダー(オフアキ)でのオートガイド撮影です。

そういえばこのテスト撮影の前に SN 2022hrs を後で μ-180C で撮りたいと言ってて結局撮れませんでした。今回はある意味そのリベンジです。

前回はモノクロカメラ(ASI294MM Pro)での撮影でしたが、超新星の色にも興味があるので今回は ASI294MC Pro で撮影しました。鏡筒への接続は前回同様です。本フィルターホイールは余計なんですが、オフアキを入れると 48mm の UV/IR Cut Filter を取り付ける場所がなくて… 手持ちのパーツではうまい組み合わせがなく、結局は前回と同じ構成でカメラだけ差し替える形にして、フィルターホイールのLフィルターを使うことにしました。

…と思っていたのですが、後からよく見るとフラットナーレデューサーの2インチ差し込み部分の先端が 48mm フィルターネジになっていました。今試してみたら、ZWO の 48mm Duo-Band Filter を取り付けた状態でも μ-180C の2インチスリーブの奥まで差し込むことができ、普通のフィルターならまず大丈夫そうです。ただし、ここにフィルターを付けるとオフアキに入る光にもフィルターがかかるので、ナローバンドフィルターを使う場合は十分明るいガイド星がみつからなくおそれがあります。

閑話休題

さて、まずは結果から。

NGC4216 + SN 2024gy (2024/1/22 04:05)
NGC4216 + SN 2024gy (2024/1/22 04:05)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), 高橋 Mフラットナーレデューサー (合成F9.8), ZWO L Filter / Vixen SX2, ZWO OAG + ZWO ASI290MM + PHD2 2.6.13 による自動ガイド / ZWO ASI294MC Pro (Gain 300, -10℃), SharpCap 4.0.9538.0, 露出 30秒 x 64コマ + 1分 x 41コマ (総露出時間73分) / PixInsight 1.8.9-1, Photoshop 2024, Lightroom Classic で画像処理

NGC4216 + SN 2024gy (2024/1/22 04:05) (アノテーション付き)
NGC4216 + SN 2024gy (2024/1/22 04:05) (アノテーション付き)
GalaxyAnnotatorアノテーション*1

なかなか迫力のある写りになりました。超新星 SN 2024gy もバッチリ写っています。少し青みがかった色で、光度は他の恒星と比べた感じでは13等台後半ぐらいでしょうか?

HIROPON さんの記事を参考に「すばる画像解析ソフト Makali`i(マカリ)」で測光してみました。

30秒露出のスタック済みリニア画像から ChannelExtraction で G チャンネルだけ取り出し、32bit unsigned int の FITS で保存したものをマカリに読み込ませて [測光 - 開口測光] で測光します。*2

比較対象の星は適当に選びましたが、光度がわからないものや対数曲線の近似から大きく外れるものは外しました。[テキストに出力...] で CSV に保存して、wikisky.org で調べた光度との関係を LibreOffice Calc でグラフにして対数曲線で近似するとこんな感じになりました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/SN2024gy-mag-graph.png

なんか近似曲線があまりフィットしませんが… とりあえず計算したところ13.59等となりました。まあだいたい目分量と同じですね。HIROPON さんの1月13日の測定が13.13等なのでもうピークは過ぎたのでしょうか?

ちなみに恒星は18等台まで写っていました。横浜の空では17等くらいが限界だと思っていたのでびっくり。

結果はまあ成功と言っていいと思いますが、せっかく18cmで撮ったのでもう少し解像して欲しいというのが正直なところ…

オフアキシスガイドの精度がもう一つというのが問題でしょうか。RMSエラーが0.6〜1.2秒角ぐらい精度自体はf130mmのガイド鏡と大きく変わりません。やはり SX2 ではガイドの応答性に問題があり、特に赤緯ガイドはハンチングが発生しやすいです。

また、PHD2 のキャリブレーションがなかなかうまくいきませんでした。これだけ焦点距離が長いとキャリブレーション中の追尾誤差が邪魔するのか Backlash Clearing Step が終わらずキャリブレーションがいつまでたっても完了しませんでした。

ガイドカメラの露出時間を上げて2,3回やりなおしたら完了しましたが、キャリブレーション精度が悪いとかなんとか警告が出ていました。

ピントが追い込めていないのでは?というのもあります。最初 SharpCap のFWHM測定でピント合わせしたのですが、その後輝星の光条*3を見ると3本の光条が重なっておらず、どうしたものか悩みましたが、光条を重ねるように調整しました。

調整自体は正解だったようですが目分量での調整になったので、どこまで追い込めたかわかりません。処理した画像を見ると左上の輝星の光条が少しズレているのですが… 星像も伸びているので収差のせいかもしれませんが。やはりデカいバーティノフマスク用意しなきゃダメ?

ともあれ、μ-180C で10等級の銀河がこれだけ写り、13.86等の NGC4222 (画像左上)、12.15等の NGC4206 もそこそこ写るとなると、夢が広がります。春になったら色々撮ってみたいと思います。

*1:GalaxyAnnotator v0.9.1 を使用しましたが、スタイル指定の扱いにバグがみつかって、修正したものを使用しました。修正版は明日リリースします。

*2:PI から FITS 保存の際に Embedded Data の「Properties」のチェックを外さないとマカリが読み込んでくれません。また、デフォルトの 32bit float だと何故か測光がうまくいきません(カウントが0になる)。

*3:3本の副鏡スパイダーによる3本(6方向)の回折像。