Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

ポン・ブルックス彗星(12P)と M31 (2024/3/16) / フラット合わない地獄 / Star Adventurer GTi 復活

3月16日、自宅のマンションの廊下からポン・ブルックス彗星(12P)と M31 のツーショットを撮りました(撮れたとは言わない)。

撮影

当日は雲ひとつないと言っていいほどの快晴でしたが、大気の透明度は最悪で、低空に雲もないのに富士山が霞んでほとんど見えず、昼間は冠雪して輝く稜線がなんとか見える程度の状態。夕方は霞が夕日に照らされて何も見えない状態でした。

近くには月齢6.0の月も出ているし、正直写るとは思ってなくて、でも撮らずに後悔するより撮って後悔しようという気持ちで撮りました。

機材は Micro NIKKOR 55mm F2.8 と ASI294MC Pro です。カブリが厳しすぎて画像処理耐性の低いデジカメでは無理だろうと思って冷却CMOSです。画像処理耐性という点では ASI294MM Pro が上ですが、撮れる時間が限られていてフィルター切替えで撮るのは厳しいだろうということでカラーカメラにしました。

18:00前からスタンバイしていたのですがまだ薄明が強く、18:40くらいにやっとポーラードリフトアライメントができるようになりました。導入はミラクを自動導入して、事前に Stellarium で決めた構図に合うよう調整しました。

光害のカブリがひどく、露出はゲイン128で1コマ15秒。プレビューで軽くストレッチをかけるとギリギリ M31 の中心部が楕円形に見えて、等倍表示にすると 12P がギリギリ恒星とは違う姿で確認できました。彗星であることはわかるものの尾は全然見えず。

近くの電柱が写野に入るまで撮影して19:00過ぎに撮影終了。総露出時間は11分。そのあとついでで木星を中心に入れた星野の写真も撮りました。

結果

結果は… 後述しますが画像処理は大変でしたが、無理やり仕上げたのがこちら。

ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56)
ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56)
Micro NIKKOR 55mm F2.8 (開放) + ZWO 2" IR-Cut Filter / Sky-Watcher Star Adventurer GTi / ZWO ASI294MC Pro (Gain 128, -10℃), SharpCap 4.1.11824.0, 露出: 15秒 x 44コマ / PixInsight 1.8.9-2, Lightroom Classic で画像処理

ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56) (アノテーション付き)
ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56) (アノテーション付き)

ギリギリ尾が写った、ような… 彗星らしい緑色もギリギリ出ています。M31 も、本当に中心部だけですが銀河であることがわかる程度には写っています。一応狙った構図ではありますが、M33 がギリギリ存在がわかる程度には写っていたのは意外でした。

とはいえ「撮れた」と言うのは憚られるレベルの写りですよね…

フラットが合わない

上の写真、背景ムラやカブリがひどいですが、これは本来の背景のムラというよりはフラットのムラの影響が大きいです。というのは、ついでで撮った木星周辺の星野の写真を同じように処理(PI で ABE, PCC してストレッチ)しても、画像下部の大きなカブリは別にするとほとんど同じ形のムラが残るからです。そしてフラットを変えるとムラの形が両方の写真とも同じように変わります。

上の写真は7種類くらい作って一番マシだったフラットを使って、ムラが目立たないようにトーンカーブや彩度を調整して、画面下部のカブリはグラデーションマスクで輝度と彩度を落として仕上げたものです。

撮って出しをホワイトバランス調整のみで仕上げたのがこちら。

ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56) (ホワイトバランス調整のみ)
ポン・ブルックス彗星(12P)とM31, M33 (2023/3/16 18:56) (ホワイトバランス調整のみ)

(´・ω・`) …

最初に試したフラットは、前回同様ライトボックスアプリを開いた iPad の画面にコピー用紙を被せて撮ったものを使ったのですが、これは盛大にムラが出て、最初は低空だし霞にもこんなにムラがあったんだなーと思ってたら木星の写真を同じフラットで処理したら同じ形のムラが出て、フラット腐っとるやん!ってことで平坦なフラットを探す旅に出ました。

色々試したのですが、最終的には Kindle (電子ペーパー端末)のフロントライトの輝度を最大にしたやつをレンズ前面に密着させて撮ったフラットが一番マシでした。

その他に試したのは…

https://rna.sakura.ne.jp/share/12P-and-M31-PI-Workspace01.jpg

左上はスカイフラットを使ったもの。朝方にカメラを南西の空(快晴)に向けて撮ったものです。輝度の平坦さでは一番マシだったのですが青空を撮ったせいか色ムラがかなり目立つのでボツに。

左下と右上は有機ELパネルのタブレット(Galaxy Tab)の画面を撮ったフラットを使ったもので、左下は直接、右上はコピー用紙を被せて撮ったものです。左下の方はそこそこ平坦でしたが色ムラが無茶苦茶出てボツに。右上は雲かっていうくらいムラが出てボツに。

右下は iPad + コピー用紙、Galaxy Tab + コピー用紙のフラットフレームを全部混ぜたフラットを使ったもので、ムラの出方はだいぶ柔らかくなりましたが、ムラの輝度の幅自体はあまり変わらずボツに。

コピー用紙を透過させるのは紙の厚みのムラがフラットにも浮いてきてしまってダメですね。かといって直接撮ると液晶のピクセルに由来すると思われるモアレパターン?が浮いたり色ムラが出たり。乳白色のアクリル板とかならもっとマシなんでしょうか。

みなさんがよく使っているLEDトレース台を買おうかなと思ったのですがどれがいいのかよくわからないし、普段は iPad で十分だし、ということで保留に。そもそもここまでフラットのムラに神経質にならなきゃいけないくらいキツいストレッチをかける必要がある時点で敗北なんですよね…

Star Adventurer GTi その後

前々回のエントリで故障したと書いていた Star Adventurer GTi ですが、

なんと復活しました!有償修理の見積もりのためにシュミットに発送する前に念の為もう一度動作確認したところ、あっさり動きました。リュックに保管していただけなのですが… わけがわかりませんが、今発送しても「壊れてない」で返送されて終わりになりそうなので発送はとりやめて症状が再発したらあらためて相談することになりました。

しかしなんだったんでしょう。Star Adventurer GTi の分解レビューはほとんどみつからないのですが、この動画とかを見ても、モーターとウォームの間にクラッチ機構らしきものは見当たらないし、ウォームが外れたとかならこんな簡単に直るとは思えないのですが…