Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

M101 と超新星 SN 2023ixf / Star Adventurer GTi 初出撃 (2023/5/24)

5月24日の夜は公園にでかけておおぐま座の銀河 M101 (Pinwheel Galaxy / 回転花火銀河)を撮りました。もちろん話題沸騰中の超新星 SN 2023ixf が目当てです。平日だし天気は微妙だったし体調も良くはなかったのですが、天気予報的にも月齢的にもこれを逃すと当分撮れなさそうだし、すると次の機会には減光してもう横浜からでは写らなくなるかもしれないので、無理を押しての出撃でした。

機材は Star Adventurer GTi と RedCat 51 と ASI294 MM Pro です。今回は Star Adventurer GTi の初出撃でもあります。ポータブルとはいえ本体もウエイトもスカイメモSよりは当然重いしどんなものかと思いましたが、徒歩で公園まで行くのに支障はありませんでした。疲労の溜まった帰りはだいぶしんどかったしマンションの階段昇るのもキツかったですが…

夕方から準備を進めて22:00前に公園に着いて機材調整して撮り始めたのは23:00前。相変わらず北極星も見えない横浜の空なのでドリフトアライメントで極軸を合わせましたが、久しぶりの野外での撮影ということで結構手間取ってしまいました。前回は去年の11月で同じ公園で撮影してました。

この公園はこの時が初めてだったのですが、地面に直置きしたバッグやノートPCの操作のために膝をついたジーンズなどが土で汚れまくったので、*1 今回は大きめのプチプチシートを持っていって地面に敷いたので作業が捗りました。帰りにシートの裏が湿って泥だらけになってましたが…

作業中に事案発生。ちょっとヤンキーっぽい男子高校生風の少年二人組*2 に声をかけられました。「これ何やってるんっすか?」

超新星を撮ろうとしてること、専用のカメラを使ってるし横浜でも結構写ること、まだ撮り始めてなくて今は機材の調整をしていること、地球の自転で星が動くのでそれを正確に追いかけるために機材の向きの調整する必要があること、超新星は太陽よりだいぶデカい星が寿命が尽きた時に爆発した姿で、むちゃデカい星ならこの爆発でブラックホールができること、などを話したところ満足して帰っていきました。天体よりも機材の方に興味があった風でしたが。

北極星は見えませんでしたが北斗七星の柄の部分はよく見えました。ミザールで1スターアライメントしてピントもそこで合わせて M101 を自動導入。一発で導入できました。便利。ちなみに M101 は以前一度だけ撮ったことがありますが、かなり淡い対象なのでスカイメモSでの手動導入は苦労しました。

「本当にそこに M101 があるのかわからないまま 1:30 に撮影開始」とか書いてますね… これに比べると導入も楽だし、N.I.N.A のプレビューのオートストレッチで8秒くらいの試し撮りでも M101 の中心部のぼやっとした感じは確認できてフレーミングの調整も容易でした。

ていうか前回も事案発生してますね。M101 ってなんかそういう電波でも出てるんですか?

N.I.N.A. の自動撮影で撮影開始後はお気楽に撮れました。R/G/Bは各2分10コマ、Lは1分30コマ、ついでにHαも撮りましたがこちらはゲインを倍にして2分10コマ。

ガイドは野外で風の影響もあるのか若干精度が落ちてRA/DEC共にRMSエラー1秒前後。時折木の葉がサーッとざわめくような風が吹いてくるとガイドグラフがカクッと跳ねてしまい、やはり風には弱いのですが、歩留まりは8割弱ぐらいでした。

結果はこちら。

M101 + SN 2023ixf (2023/5/24 22:46)
M101 + SN 2023ixf (2023/5/24 22:46)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折), ZWO LRGB Filter / Sky-Watcher Star Adventurer GTi, 30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (46 Megapixel, -10℃, Gain 150), N.I.N.A 2.1.0.9001, 露出 L:1分 x 30コマ, RGB:各2分 x 10コマ 総露出時間 90分 / PixInsight 1.8.9-1, Photoshop 2023, Lightroom Classic で画像処理

事前にだいこもん(id:snct-astro)さんから超新星が青いという話があり、恒星の色が飛ばないように弱めのストレッチで仕上げました。せっかく撮ったHαも色がどうなるか怪しかったので今回はパス。確かに青っぽいですね。

ちなみに SN 2023ixf はHαでもよく見えました。どんなスペクトルなんでしょうか?

だいこもんさんが5月20日21時頃に撮ったこの写真では12.7等くらいとのこと。僕の24日の写真だと他の恒星と比較した感じではざっくり10.5等と11等の間くらいに見えました。*3 板垣さんが20日2時半頃に発見した時は(そう、また板垣さんなんです)14.9等だったとのこと。

急速に増光してますが HIROPON (id:hp2)さんによるとそろそろピークではないかとのこと。

前回2017年4月18日の夜に撮った M101 を PixInsight で再処理したのがこちら。

M101 (2017/4/19 1:29)
M101 (2017/4/19 1:29)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / ケンコー スカイメモS, 30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO 200), 6分 x 15コマ 総露出時間 90分 / PixInsight 1.8.9-1, Lightroom Classic で画像処理

確かにこの時は超新星の位置には何もありません。

それにしても当時画像処理で苦労してボソボソの仕上がりになってしまった M101 ですが、PI で処理すると結構見れる仕上がりに。PI の Pixel Rejection とか ABE とかを信じて前回ボツにしたカブリの大きなコマもブチ込んだのも奏功したのでしょうか。もう少し派手に仕上げることもできたのですが今回の撮影画像の仕上げに合わせて控えめに仕上げました。

今回の撮影画像と重ね合わせて動画にしたものがこちら。

M101 and SN2023ixf
M101 and SN2023ixf

ちなみにこの日は HIROPON さんも SN 2023ixf を撮影していました。

だいこもんさんも再度自宅から撮影していました。

月食や日食があると地上ではみんなが空を見上げる風景が展開されるのが楽しいものですが、超新星でも(マニアだけとはいえ)同じようなことになるのが楽しいですね。

この後念願の M13 (ヘルクレス座球状星団)を撮影したのですが、その話はまた後日。

おまけ(その1): M101 周辺の銀河たち

上の写真は元の 1080 x 1080 pixel にクロップした拡大画像ですが、5120 x 3414 pixel のサイズで仕上げたのがこちら。

M101 とその周辺 (2023/5/24 22:46)
M101 とその周辺 (2023/5/24 22:46)
撮影データは最初の写真と同じ

よく見ると背景のあちこちに米粒みたいな小さいものも含め銀河がたくさん写り込んでいます。15等より明るい銀河を Galaxy Annotator でアノテーションしたものがこちら。

M101 とその周辺 (2023/5/24 22:46) (アノテーション付き)
M101 とその周辺 (2023/5/24 22:46) (アノテーション付き)

9億光年とか10億光年先の銀河も写っています。たーのしー!

18億光年先の銀河(PGC3484145)も!?と思ったらマークの中は真っ黒で写ってません。HyperLeda のデータを見ると一応12等とのことですが測光データを見ると可視光では暗い?なんだかよくわかりません。

おまけ(その2): 撮影風景

撮影風景は、こんな感じでした。

https://rna.sakura.ne.jp/share/20230524/IMG_1316e.jpg

https://rna.sakura.ne.jp/share/20230524/IMG_1323e.jpg

2枚目、北斗七星の先の部分が写っています。肉眼では薄雲のせいもあって暗くてよく見えてませんでした。その先をよく見たら北極星が。おまえこんなところにいたのか!

*1:以前通ってた公園ではそこまで汚れなかったのですが、土の質の違いでしょうか?

*2:自分は男子高校生に対する解像度が極めて低いため、マジメくんっぽい男子以外はだいたい「ちょっとヤンキー」に見えます…

*3:撮影中のプレビューであまりの明るさに「9等くらいあるのでは?」と騒いでいましたが、さすがにそこまでではありせんでした…