Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

M13 / Star Adventurer GTi 初出撃(その2) (2023/5/24)

5月24日の深夜、前回書いた M101 と SN 2023ixf の撮影が終わった後、せっかく外に出てきたのだし、と思い、ヘルクレス座球状星団 M13 を撮りました。

M13 は、超メジャーな天体ではありますが、ずっと撮りたくて撮れなかった天体でした。

まずその位置が赤緯36度と南向きベランダからはもちろん北向きの廊下からも撮れない位置で野外に出ていかないと撮れないこと、そして野外では今まで自動導入も目盛り環も使えないスカイメモSを使っていて手動導入するしかないのに横浜の空ではヘルクレス座の星々は全く視認できなくて導入できる自信がなかったこと、というあたりがネックで今まで敬遠してきたのです。

しかし今回は自動導入機能のある Star Adventurer GTi です。導入精度も上々なのでもう楽勝だね!と思っていたら何故か SynScan Pro では導入ボタンが有効にならず自動導入を開始できません…

若干パニックに陥ったのですが、SynScan Pro には赤道儀の現在位置が表示されるのでそれを頼りに導入することにしました。まずアルフェッカ(かんむり座のα星)を自動導入してそこから SynScan Pro の方向ボタンで手動導入。さすがに明るい星団なので比較的スムースに導入できました。

それにしてもせっかくの自動導入なのに… と思って後で調べてみると、SynScan Pro の設定に「高度制限」というのがあって、デフォルト値が75度くらいになっていました*1 この設定のせいで導入範囲外となって導入ボタンが有効にならなかったのです。

なんで高度制限!?と思ったのですが、SynScan Pro は自動導入経緯台 AZ-GTi 等と共通なので長めの屈折式鏡筒の接眼部が三脚に当たらないようにという配慮なんでしょうか?でもアプリは赤道儀モードなのを把握してるし GPS で緯度も把握してるし、Star Adventurer GTi は機械的に子午線越えで反転しない状態(いわゆるイナバウアー状態)にならないようになっているのでそんな設定値無視すればいいのに… と思ってしまいます。

それはさておき撮影結果はこちら。

M13 (2023/5/25 1:02)
M13 (2023/5/25 1:02)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折), ZWO LRGB Filter / Sky-Watcher Star Adventurer GTi, 30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (46 Megapixel, -10℃, Gain 150), N.I.N.A 2.1.0.9001, 露出 L:1分 x 15コマ, R:2分 x 4コマ, G:2分 x 3コマ, B:2分 x 4コマ, 総露出時間 37分 / PixInsight 1.8.9-1, Photoshop 2023, Lightroom Classic で画像処理

総露出時間40分足らずですが、そこそこ見れる仕上がりになったと思います。「美しさは全天一」とも言われる M13 ですが、*2 星の密度といい、丸さといい、それだけのことはありますね。

本当はLを20コマ撮っていたのですが、定期的に赤緯ガイドが一瞬乱れることがあり、そのまま全部スタックすると星像に微妙なブレが重なったような絵になってしまうので選別してスタックし直しました。

M13 は約2万5千光年先の球状星団ですが、こちらも背景をよく見ると遠方の銀河が結構写り込んでいます。例によって Galaxy Annotator で15.5等より明るい銀河をアノテーションしてみました。

M13 (2023/5/25 1:02) (銀河にアノテーション付き)
M13 (2023/5/25 1:02) (銀河にアノテーション付き)
撮影データは上に同じ。

PC で上の写真をクリックして flickr のページでさらに写真をクリックして拡大して見て下さい(拡大してさらにクリックするともう一段拡大します)。4億光年ぐらいの銀河が多いですが13億光年なんてのもありますね。

銀河と言えば宇宙人ですが(?)実は銀河ではなく M13 に宇宙人がいることを想定して電波でメッセージが送られたことがありました。1974年にプエルトリコアレシボ天文台にある当時世界最大だった口径305mの電波望遠鏡から M13 に向けて送られた「アレシボ・メッセージ」です。

しかしなぜ球状星団に?と思うのですが… M13 には数十万から100万以上の恒星があると言われていますがこんなに恒星が密に集まってるところに惑星ってできるんでしょうか?と思ったら、やはり球状星団には惑星はないのではないかと言われていたようなのですが、しかし、むしろ惑星は存在しうるし知的生命体だっているかもしれないという研究もあるそうです。

ということには M13 にも宇宙人が…?

アレシボ天文台電波望遠鏡は2020年に突然崩壊して*3 惜しまれながらその役目を終えた*4 のですが、2万5千光年先の M13 にメッセージが届いてさらに返信が届くのは早くても5万年後のことです。その間に超巨大な電波望遠鏡を作って気長に待ちたいところですね。

まあ、待っていてもいいことが起こるとは限らないのですが…