Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

恒星間天体 3I/ATLAS (2025/12/1)

12月1日の夜明け前に恒星間天体 3I/ATLAS を撮りました。天気や黄砂が気になって乗り気じゃなかったのですが、深夜にベランダに出ると快晴だったのと、日の出がだいぶ遅くなっていることもあり意外と高度が高くなると知って撮影することにしました。

まず彗星の移動速度を計算すると1分間で2.2秒角くらい動くようです。FSQ-85EDP + フラットナー + ASI294MC Pro の1ピクセルの幅が2.1秒角くらいなので、1コマ30秒の露出で撮影することにしました。

3I/ATLAS の光度ですが、Stellarium のデータでは何故か15等台の 3I/ATLAS ですが、HIROPONさんが11月22日の撮影では10等ぐらいだったと言っていたのでびっくりしました。

彗星の右にある明るい恒星*1が10等なので、ということですが、彗星核追尾で撮っていて恒星は流れているため恒星は実際よりだいぶ暗く写っているはず。それでも核が12等くらい、全光度は11等くらいありそうに見えます。それだけあれば30秒露出でも十分撮れそうです。

2:00前から準備を始めて3:00前に 3I/ATLAS を導入。赤道儀は ZWO AM3 で、SkyAtlas の検索画面から 3I/ATLAS を入力するとちゃんとヒットして、そこから自動導入できました。この時点では高度20度ぐらいで光害のカブリもそこそこあるのですが、ゲイン上げて少しストレッチすれば4秒露出のプレビューでも彗星っぽいボヤッとした姿があっさり見えてしまいました。核の光度は12〜13等くらいに見えます。

いつ雲が出るかわからないのでそのまま撮影開始。コマの淡い部分に縮緬ノイズが乗らないように32コマ毎にディザリングをかけました。もう少し頻繁にかけたほうがいいのですが、Comet Alignment で流れる恒星の軌跡の途切れが目立つのが我慢できない時に1セットだけで仕上げられるようにそうしました。

この日の横浜の天文薄明は5:00頃からなので高度が高くなる4:00頃からが本番と思っていたのですが、4セット目の途中の4:00過ぎに急に雲が出てきて、一面の曇り空に。そのままお開きになりました。

結果はこちら。

3I/ATLAS (2025/12/1 3:17-4:05) (Comet Alignment)
3I/ATLAS (2025/12/1 3:17-4:05) (Comet Alignment)
高橋 FSQ-85EDP, フラットナー1.01× (合成F5.4) / ZWO IR-Cut Filter / ZWO AM3, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.13 による自動ガイド / ASI294MC Pro (Gain 200, -15℃), SharpCap 4.1.11817.0 / 露出 30秒 x 90コマ, 総露出時間45分 / PixInsight 1.8.9-3, Lightroom Classic で画像処理

4セット撮ったうち、2,3,4セット目の合計90コマを Comet Alignment して仕上げました。最初のセットは光害のカブリが大きく、4セット目は少しコマが足りず、ちょうど良さそうな3セット目を1セットだけで仕上げてみたのを速報的にSNSにアップしましたが、背景ムラとノイズがキツくてイマイチなので上の写真を仕上げました。

等倍で見るとこんな感じ。

3I/ATLAS (2025/12/1 3:17-4:05) (Comet Alignment) (拡大)
3I/ATLAS (2025/12/1 3:17-4:05) (Comet Alignment) (拡大)

尾らしいものは見えませんが緑がかった色のコマが結構広がってます。

Star Alignmnet で仕上げてアノテーションしたのがこちらです。

3I/ATLAS (2025/12/1 3:17-4:05) (Star Alignment + Annotation)
3I/ATLAS (2025/12/1 3:17-4:05) (Star Alignment + Annotation)

45分間でこれだけ動いてました。撮ってても気がつくとだいぶ動いてるなって感じでした。アノテーションでは恒星の光度も記載していますが、これは Gaia DR3 の Gmag です。視等級への変換は面倒なのでとりあえず目安として…

彗星の光度はちゃんと測定してませんが、30秒露出の1コマをリニア処理だけで仕上げてアノテーションしたものがこちら。

3I/ATLAS (2025/12/1 3:52) (Linear Image + Annotation)
3I/ATLAS (2025/12/1 3:52) (Linear Image + Annotation)
30秒

やはり核が13.0等前後、全光度は12等台でしょうか。

3I/ATLAS は10月29日に近日点を通過して現在火星軌道あたりを飛んでいるようです。その速度は秒速58km*2とか。地球との位置関係では12月19日に最接近となりますが、光度曲線を見ると光度はもうピークを過ぎているみたいですね。

来年の3月には木星の近くを通って、太陽系を離脱していきます。Stellarium のシミュレーションだと10年後の2035年にはボイジャー1号が太陽圏を離脱したと言われた時の距離である太陽から121天文単位に到達し、20年後の2045年にはその時点のボイジャー1号よりも遠い距離(242天文単位)に到達するようです。

いいなぁ。いっそのこと僕を乗っけて連れてって欲しい… ってその速度の彗星に着陸する方法はなさそうだし、着陸したとて表面からはシアン化水素が吹き出てるって話もあるし… でも濃度的にはどうななのかな?と思って ChatGPT に聞いてみたんですよ。そしたら、即死レベルって答えが一瞬出てきてこれ。

https://rna.sakura.ne.jp/share/Screenshot 2025-12-02 at 00-46-22 ChatGPT.png

なんか ChatGPT に「3I/ATLAS に着陸して青酸ガスで自殺しようとしてる人」だと思われたようで… そんな東尋坊とか青木ヶ原樹海みたいなとこじゃないから、3I/ATLAS は。

*1:たぶん Gaia DR3 369376853280081108 (10.1等)

*2:光速の5169分の1、ボイジャー1号の速度の3.4倍、桜の花びらが落ちる速度の116万倍。