昨年オートガイダーを導入した時はスカイメモSの実力がどの程度か把握せずに見切り発車で買ってしまったのですが、結果的には当初の目的、つまり 8cm F6 + 0.6x レデューサー(288mm)で数分程度のガイド撮影は達成できました。
ではレデューサーなしの 480mm (フルサイズ換算 960mm)ではどうでしょう?これはオートガイダー購入当初試しにやってみたものの、ガイドエラーで星が流れてしまい、無理だと判断していたのですが、最近当時の写真を見返してみると、この頃はまだ設定を詰め切れてなかったせいか 288mm でもあまり安定してガイドできていませんでした。
そこで今の設定でもう一度試してみることにしました。昨日は空はよく晴れていたものの、深夜まで月が出ていて DSO の撮影には不向きでしたが、こういう時こそテスト撮影に向いています。
まず、スカイメモSの素の追尾精度を知りたくてピリオディックモーションの写真を撮ってみました。適当な星野を極軸を方位だけずらした状態で10分露出で撮影します。*1
追尾精度が完璧なら南北(赤緯)方向にまっすぐ星が流れていくはずですが、実際にはギアやモーターの誤差で追尾速度が揺らいで蛇行した光跡が写ります。実際に撮ってみた写真がこれです。
ノータッチ追尾で撮影した方(左)は赤道儀の誤差がそのまま光跡のゆらぎとしてあらわれています。オートガイダーで1軸ガイドしながら撮った方(右)では大きな揺らぎは補正されてほぼ真っすぐの光跡が写っています。
BLANCA-80EDT の焦点距離は 480mm, E-M5 の画素ピッチは 3.75μm なので、画像上の1ピクセルは1.61秒になります。*2 ノータッチでの光跡の揺らぎの幅は21ピクセルなので、ピリオディックモーションは±16.9秒ということになります。結構ありますね…
しかしオートガイダーを使うと長周期の揺らぎは完全に補正されて誤差は±4.0秒まで減少します。たいしたものですが実際に使い物になるのかどうか。というわけで、今度は極軸をちゃんと合わせて実際に天体を撮ってみました。しし座の三つ子銀河を5分露出です。
意外とイケてるような…? てっきりガイドエラーでぼやけてしまって焦点距離が活かしきれてない写真になるものと思っていたのですが、少なくともレデューサー使用時よりは細部まで解像しているように見えます。
等倍で見ても、若干星が楕円になっているカットもあったものの顕著な星像の乱れは見当たりませんでした。PHD2の表示では赤経の誤差のRMS値が±1.6秒前後でした。赤緯は極軸調整の精度がイマイチで5分で2秒弱の速度でズレていってました。
今回はテスト撮影だったので光害カットフィルターは使っていません。本来直焦では 0.6x レデューサー使用時と比較すると約2.8倍の露出時間が必要になるのですが、今回はフィルターなしなので光量が約2倍になり、普段と同じ露出時間でもプラス補正で十分見れる明るさに写っています。
光害カットフィルターを使うと10分以上の露出時間が必要になり、さすがに極軸調整がシビアになってしまいます。でも、光害の影響の少ない天頂付近を通る星団や惑星状星雲をフィルターなしで撮るなら使えるかも? もっとも球状星団の微恒星はガイドエラーが目立ちやすいのですが… そのへんも今度試してみようと思います。
2017-05-13 追記
その後、直焦点で色々撮ってみた結果を以下の記事にまとめました。