Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

土星 (2024/6/9)

昨夜というか今日の夜明け前に土星を撮りました。今期初撮影です。

土星 (2024/6/9 03:26)
土星 (2024/6/9 03:26)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 393), SharpCap 4.1.11817.0 / 露出 1/30s x 1500/3000 をスタック処理 x 5 を de-rotation / AutoStakkert!4 4.0.11, WinJUPOS 12.3.7, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic

随分と環が細くなっています。先っぽの方はかなり暗くなっていて一見すると環が小さくなったように見えます。これだけ細いとカッシーニの間隙も視認できません。

土星の環はこの先細くなっていって、来年の春には真横から見る(または真横から太陽の光が当たる)形になって見えなくなります。これについては一昨年のエントリで書きました。

環の傾きは地球の公転による土星と地球の位置関係の変化により一年間の間にも変動があり、『天文年鑑2024年版』によると今年は今月末あたりが一番細くなるようです。*1 輪の傾きは現在2.0度。6月29日には1.9度まで浅くなります。

輪の傾きが2度以下になるのは6月初旬から7月中旬までですが、これから梅雨に入って次にいつ撮れるかわからないので昨夜は頑張りました。

撮影は結構ドタバタしました。夕方見た時はかなり雲が出ていて今夜は無理かなと思っていたのですが、深夜1時前にベランダに出ると低空の遠くの雲を除いて快晴に近い空です。

SCW を見ると実際にはうっすら雲がかかっているっぽいんですが、惑星撮影なら行けるのでは?と思って1時過ぎからベランダに機材を出しました。ミューロン180Cの出動は昨年11月以来です。

順調に準備が進んで土星が昇ってくるの待ち、2時過ぎから土星を導入して撮影準備に入りました。導入時に眼視で土星を見ましたが環の細さにびっくり。望遠鏡で惑星を見るようになったのが2013年からで環の傾きが大きい時期の土星しか見てこなかったので、ここまで細いのは初めてです。

まだ高度20度台ということもあってシーイングはかなり悪く、モノクロカメラでのピント合わせもなかなか難しくて、これは厳しいかなぁと思いつつも、ここまで来たらとにかく撮ろうとカラーカメラに切り替えて ADC の調整を… と思ったら、カラーカメラが PC から認識されていません。どうも例のリピーターケーブルの不調のようです。春に PC を新調した際に顕在化したやつです。

ドリフト法での極軸合わせのためにガイドカメラを繋いだ時は使えていたのですが… まともに使える方の UGREEN のリピーターケーブルはもう一本買ってあるので交換しても良いのですが、雲もちらほら出てきている状況で PC をデスク下から引っ張り出してケーブルを交換してベランダまで引っ張って、ってやる時間が惜しいし、このシーイングで LRGB 撮影しても意味なさそうというのもあってカラーカメラだけで撮ることにしました。

接眼部でパーツをとっかえひっかえしてるうちに土星が写野の外に出てしまっていたので再導入しようとしたのが2時45分頃。しかし、いつのまにかどんどん湧いてきた雲が南東の空を覆い尽くしてファインダーでも土星が全く見えなくなりました。

これは「何の成果も得られませんでしたー!」かなぁ… と諦めムードでしたが、ここまできたら夜明けまで粘ろうと覚悟を決めて待っていたところ、3時過ぎくらいから雲が切れてきて薄雲越しですが土星が見えるようになりました。

ピントは一見して十分合っているように見えたので再調整はナシ。ADC の調整だけざっくり済ませて撮影を開始しました。次にいつ雲が出てくるかわからないので細かいことは気にせずにとにかく撮る!結局雲に邪魔されずに撮れたのは12分間だけ。その後土星は雲に隠れたまま空が白み、東の空が朝焼けに染まっていました。

撮影時の土星の高度は35度くらいで、シーイングは2時過ぎに見た時よりはだいぶ良くなっていましたが、好シーイングとは言い難い上に薄雲が流れる中での撮影で、撮影条件は良くなかったのですが、その割にはよく写ったと思います。

ちなみに衛星は写野内にテティス、ディオネ、レアが見えていました。ミマスとエンケラドゥスも写野内でしたが、撮影条件が悪いせいか WinJUPOS での位置合わせ用に露出を上げて撮った衛星の写真*2 にも写っていませんでした。

なにはともあれ諦めずに粘ってよかったです。

*1:天文年鑑2024年版』p161の表のB欄が輪の傾きに相当します。

*2:WinJUPOS の Image Measurement で写野の傾きと拡大率の調整するのに衛星の位置を利用すると精度良く調整できます。