6月10日、なんでかわからないんですがついカッとなって双眼鏡をポチってしまいました。日の出光学の「ヒノデ 8x42-D1」です。
前々から撮影中などに気軽に眼視で星を見たいというのがあって、色々調べてはいたのです。父の形見の双眼鏡が2台あるものの、1台は星を見るにはやや力不足(PENTAX 7x21HD)、もう一台は古すぎてガタが来ているのか光軸の精度がイマイチで気持ちよく見れず使わなくなりました(NIKON の40mmくらいのポロプリズム式双眼鏡)。
選定の理由は、EDレンズ、日本製、軽くて丈夫、手持ちで使いやすい倍率、というあたり。お値段は税込み50,800円で、中国製のものと比べるといいお値段なので自分としては奮発したつもりでしたが、後で調べてみると同等のスペックだとアッパーミドルぐらいのモデルで10万超えるそうで…
12日に届いたのですが、外箱の角が結構深く凹んでいて冷や汗をかいたのですが、開けてみると凹んでいた場所は折りたたんだネックストラップが入っている部分で、ストラップ自体もクッション材が入っているものなので双眼鏡本体にはダメージは一切なさそう、ということで一安心。
同梱の説明書には目幅合わせ、ピント合わせ、視度調整等、双眼鏡の基本的な使い方が書いてありましたが、ストラップの取り付け方が書いておらず戸惑いましたが、要はカメラのストラップと同じでOKでした。でも今時双眼鏡のユーザーが一眼レフクラスのカメラの経験があるとは限らないので説明書に書いてあった方がよさそう。
というわけでこんな感じに。
その日は曇り空でしたが雲の隙間から月が見えていたので、月と明るい星と地上風景を観てみました。以下メガネ着用状態で使用した感想です。
まず使い勝手ですが、対物側も接眼側も紛失しない仕組みのキャップが付いていて、これが実際に使っていてもほとんど邪魔にならず便利。
目幅調整はかなり固くて微調整にやや苦労しますが一度ポジションが決まれば簡単にズレることはなく、調整した状態でソフトケースに収まるので、これはこれで便利。視度調整はもう目幅ほどではないけどやや固め。これも一度決めればそうそうズレることはないでしょう。
接眼部には回転して繰り出すタイプの目当てが付いています。メガネをかけているとこれを調整しないとブラックアウトしやすいのですが、目当てを少しだけ伸ばすとちょうど良さそうでした。左右の光軸はたぶん問題ないと思いますが、倍率の関係かしばらく目を慣らさないと左右の像がズレてしまうような…
星像は周辺までかなり良像を保っていると思います。建物のタイル張りの壁を見ても歪曲収差はほとんど感じません。色収差は月の縁を見ると少し出てるのがわかりますが、それ以外ではほとんどわかりません。クレーターはクッキリ見えるし、一等星の色もよく見えます。アンタレスは赤く、レグルスは青白く。
18日は深夜に快晴だったので少し真面目に星を観ました。口径42mmの極限等級は9.9等だそうですが*1横浜の空だと光害のせいか7等星ぐらいが限界でした。8等星は全く見えず。鈴木雅之さんの計算ツールで瞳径5mm、肉眼での極限等級3等、光学系の透過率100%で計算すると7.6等と出ましたので、そんなものかなと思います。
DSO は何か見えないかと、アルタイルからペガスス座のあたりまで流していくつかトライしてみました。
ペガスス座の球状星団 M15 (7.0等)は見えたかも?エニフからこうま座のδに引いた線を底辺とした平べったい二等辺三角形に近い三角形の頂点(北側)に6等星(HD 204862)があるのですが、その西隣にぼんやり丸いのが見えた気がしました。ちなみにエニフ、結構赤いんですね。肉眼では全然わからなかったのですが。
や座の球状星団 M71 (9.0等)は全く見えませんでした。こぎつね座の M27 亜鈴状星雲(7.6等)も見えませんでした。みずがめ座の球状星団 M2 (6.9等)は見えたかどうか自信なし。近くに目印になる星がないので場所が合ってるのかどうかよくわからなくて。
最後に土星を見てみましたがさすがに環が見えたりはしませんでした。
ここまでで痛感したのは、8倍って手持ちだとそこそこブレるな、と。筋トレするか?とも思ったのですが、三脚に取り付けて安定した状態で見ればもっと見えるのでは?と思い…
はい。以前皆既月食と天王星食を同時に撮るため、スカイメモSをフォーク型赤道儀にして FSQ-85EDP を載せるという無茶をやった時に使った Neewer GM100 カーボンジンバル雲台を使いました。
双眼鏡をカメラ三脚に取り付けるための金具(いわゆるビノホルダー)は各社から出ていますが、金属製で安くてワッシャーが付いているものということで SVBONY SV111 を購入しました。
雲台のアルカクランプ部分は精一杯アームの上の方まで上げて双眼鏡が高度軸より上に来るようにしました。バランスを取るためカウンターウェイトとして大きめの自由雲台をアームに噛ましてあります。アームがアルカプレート形状なので自由雲台のアルカクランプで固定できます。
昼のテストで地上風景を見た時はなかなかいい感じだったので、6月29日の地球近傍小惑星 2024 MK の撮影中や撮影後に星を見ようかと撮影機材の横にこれを組んでおいたのですが、結局撮影中は撮影で手一杯で、空一面曇って撮影終了だったので撮影後は星が全然見えずそのまま撤収しました。
実際にこれで星を見たのは7月3日の夜でした。この日はデュアルナローバンドフィルターでベランダから天の川を撮っていて、その横で夏の星座を観ていました。
透明度があまり良くなかったこともあり低空は光害の影響が強くて M8 干潟星雲は逸し目でなんとか見えたものの他は厳しいですね。球状星団 M22 は逸し目でギリギリ見えたと思うのですが背景光が明るすぎて星雲状には見えませんでした。
しょうがないので星座を適当に観ていましたが、いるか座が視野いっぱいに収まってなかなか良い眺めでした。小さな星座ですが形もかわいいし意外と明るい星でできていてキラキラしてて綺麗です。
さて、肝心の架台の使い心地ですが、視野がピタッと止まるのは楽なんですが、上を見上げようとすると双眼鏡を覗き込むのに結構不自然な姿勢を取らなくてはならず、思ったよりは快適とは言い難い…
見上げる高さに合わせて三脚のセンターポールを上げ下げしないといけないですし、見る方向によっては三脚の脚を避けて立たないといけなくて、そういう時は顔を斜めにして双眼鏡を覗き込むことになり、両眼視がやりづらくなります。
ゴムワッシャー付きのビノホルダーでホルダーの取り付けネジ周りにある程度自由度があるので双眼鏡に手を添えて調整すればちゃんと見えるものの、姿勢が辛いせいか両目は接眼部にちゃんと当たっているのに両眼視が不安定になる(対象が二重に見えてしまう)ことが度々ありました。
もっと架台を工夫するか、あるいは観念して筋トレするしかないのか…
ともあれ、ちゃんと見えてる時には双眼視の威力を思い知らされます。本当に大きくはっきり見えるんですよね、星でも月でも。不思議。
おかげで最近は気がつくと双眼装置のことを調べていたり… μ-180C で双眼で月面見たらすごそうじゃないかとか、惑星がもっと大きくはっきり見えたら楽しいんじゃないかとか。まあ双眼沼はマジで沼だと思うので今のところ思いとどまっていますが、でも老眼が進む一方なのを考えるとやるなら早ければ早いほどいい気も…



