Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

久々の眼視観望 (2023/11/1) / BUMP OF CHICKEN の「天体観測」と彗星の眼視発見について

11月1日の深夜、木星の撮影を終えた後、撤収前に短時間ですが久々に眼視で木星と月面を眺めました。


撤収完了。木星の撮影、シーイングは概ね安定してたし、雲も出なかった。画像処理の結果が楽しみ。

撮影終了後、眼視で木星と月を観察。木星はGSO2.5倍バロー+ラベンデュラ40mmで結構クッキリ見えた。大赤斑隠れたあとだったのが残念。2倍バローとの二段重ねはさすがにコントラスト落ちてダメだった。月もクッキリよく見えた。でも月面は元々コントラスト高いので、セレストロンのズームアイピースの16mmくらいでバローなしでもよく見えるし視野も広い…

写真は正立プリズム+ GSO2.5倍バロー+ラベンデュラ40mmのスマホコリメート(iPhone 15 Pro)で撮った月面。スマホコリメート下手すぎでアレだけど、実際にはこの7倍くらいクッキリ見えてます。

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なんばりょうすけ: "撤収完了。木星の撮影、シーイングは概ね安定してたし、雲も出な…" - mstdn.jp

GSO 2.5倍バローって書いてますが笠井2.5倍バローの間違いです。まあ GSO の OEM かもしれませんが…

木星は今まで眼視で見た中では一番くっきり見えた気がします。だいたい北赤道縞と南赤道縞の二本以外の模様はほとんど見えた試しがないのですが、この日は南温帯縞もはっきり見えました。でも倍率も低いし(135倍)それ以上は… みんなよく縞のウジャウジャが見えたとかフェストーンが見えたとか言ってますがどうしたら見えるんだろう?ラベンデュラでダメなら眼視は諦めるとか以前言ってた気がしますが諦めきれません…

木星はそんなですが、月面はやっぱり眼視の生々しさは格別ですね。せっかくなので撮影しようかとも思いましたが時間がもったいないのでスマホコリメートで我慢しました。スマホコリメート、こういうときに便利なんですがもう少し上手くなりたい…



ちなみにカテゴリタグには「眼視観測」とありますが、実際には何も測定はしておらず「観測」とは言えないので「眼視観望」くらいが適当でしょうか。既に何度も使っているタグで全部書き換えるのも大変なのでタグはこのままにしておきます…

ところで天体観測と言えば一般的には BUMP OF CHICKEN の「天体観測」が有名ですが、こちらは歌詞の言葉は曖昧ながらも新彗星の探索とも解釈でき、その場合は当然発見時に位置を報告するわけですから「観測」で間違いないと思います。*1

しかし「望遠鏡を覗き込んだ」って、今どき眼視で彗星探すんですか?そんなやり方で Pan-STARRS に勝てますか?とか思いましたが、2015年の第1回新天体捜索者会議の村上茂樹さんの講演によると1990年代まではまだ彗星の眼視発見が結構あって、2000年代にも少ないながら眼視発見があったんですね。

1997年までは年間3.5個くらいの眼視発見があったそうです。1998年以降は自動サーベイが活発化しましたが、それでも2015年まで年間1個程度の眼視発見がありました。とはいえ2010年以降2015年までの間は眼視発見ゼロでなかなか厳しい時代に。しかし2010年のマックホルツ彗星(C/2010 F4)も眼視発見なんですね。びっくり。

このマックホルツさんは1994年の中村・西村・マックホルツ彗星(C/1994 N1)の発見者でもあります。2010年でも眼視ですから当時も眼視で発見していたのだと思うのですが、発見者の一人の中村正光さんも口径15cmの大型双眼鏡で発見していたとの記述が『天文月報』にありました。

もう一人の発見者の西村栄男さんは今年8月に発見された西村彗星(C/2023 P1 (Nishimura))の発見者です。こちらはさすがに写真観測による発見だったようですが*2 2021年の西村彗星(C/2021 O1 (Nishimura))を発見した際の取材記事によると、なんと中村・西村・マックホルツ彗星については西村さんも15cm双眼鏡で眼視発見していたのですね。

結局三人とも眼視発見…ってコト!?

1996年の百武彗星(C/1996 B2)も眼視発見で、使用機材はフジノンの15cm対空双眼鏡とのこと。

発見者の百武裕司さんは2002年に亡くなっておられますが、天体撮影にも力をいれていた方だったそうです。*3 それでも彗星は眼視で捜索していたということは大型双眼鏡での眼視観測にはまた違った良さがあったということなんでしょうね。当時は天体撮影もまだ銀塩写真の時代でしたから速報性の点でも有利だったのでしょうか。

ということで「天体観測」が2001年のリリースであることを考えると、当時はまだ彗星の眼視発見に十分現実味があったという結論に。

なんか眼視観望の記録だけ残すつもりだったのがいつのまにか彗星の話を延々調べてしまったので、これも記録のために残しておきます…

*1:まあ、発見したけど誰にも報告しなかったなどとうそぶいていた鳳暁生って人もいましたが… (参照:『少女革命ウテナ』第34話)

*2:参照: 西村さん、3個目の新彗星を発見 - アストロアーツ

*3:参照:せんだい宇宙館-ギャラリー- 百武裕司さんの作品