Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

土星、木星 (2023/11/1)

ごぶさたしています。仕事が落ち着いたと思ったら風邪をこじらせて散々なめにあいました。さてはコロナかと思ったら検査は陰性、細菌性の扁桃炎ではということで処方された抗生物質が覿面に効いてだいぶ落ち着いたのですが、薬を飲みきってからまたぶりかえし。発症から1か月くらい経った今でもまだ治りきってません。再度行った発熱外来で処方された追い抗生物質のおかげで今は小康状態です。風邪は大抵ウィルスのせいだから抗生物質は効かないと思ってたんですが、こういう風邪もあるんですね…

というわけで、11月1日はまだ体調が悪かったのですが、この日はまさに小春日和というか、春みたいな天気で空には春霞みたいなものまで出ていて、この天気ならひょっとしてシーイング良かったりするのでは?と気になりだして、でも先月は寒気が入ってきて10月始めから冬みたいなシーイングだったし、どうなんだろう… と思いつつ、ダメ元で夕方からベランダに機材を設置。

ドリフトアライメントもスムースに決まり、まずは土星から。プレビューでカッシーニの間隙が見えなかったら即撤収ぐらいのつもりでいたのですが、シーイング、かなりいい?

ゆらぎはあるもののメラメラ感はなく、カッシーニの間隙も安定して見えています。このくらい見えていれば十分写るはず、ということでこうなりました。

土星と衛星 (2023/11/1 19:12)
土星と衛星 (2023/11/1 19:12)
土星と衛星 (2023/11/1 19:12)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 350), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 385), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 L: 22.237ms x 1000/2000コマ, RGB: 25.764ms x 1000/2000 をスタック処理 x 9 (L:5, RGB:4) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.2.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2024, Lightroom Classic で画像処理(衛星は同じデータから別画像処理したものを合成)

ベストに近い写りだと思います。衛星は別処理したもの(土星本体は白飛びします)を合成しています。左からテティス、ディオネ、レア、エンケラドゥスですが、実はミマスが土星面を通過中ですが(土星の左下あたり)土星面の明るさにまぎれて見えていません。

さて、この日の本命は木星です。ベランダから見える位置まで昇って来た20時前くらいから撮影開始。マンションの壁面と夜の空気の温度差で東の空のギリギリのあたりはシーイングが乱れるのですが、20時過ぎにはいい感じになってきて、そのまま撮影終了まで比較的安定したシーイングで雲に邪魔されることなく撮り続けることができました。

PCのSSDがいっぱいになって、最後の方はファイルをHDDにコピーしては消しを繰り返していたのですが、これやってるとSSDフラッシュメモリの劣化が加速しそうなので24時前に撮影を終了しました。もう少し粘ればイオの木星面通過が見れたのですが、シーイングも怪しくなってきたので…

撮影データは木星だけで1.5TB。処理が大変でまだ全部は処理できていないのですが、仮処理したものを見ると、ベストに近い写りの時間帯がある一方、大赤斑が正面を向いている時間帯にややシーイングの乱れがあり、前後の写りがいいだけに残念。

とりあえずこんな感じでした。

木星 (2023/11/1 20:29)
木星 (2023/11/1 20:29)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 265), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 325), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 1/60s x 1500/3000 コマをスタック処理 x 9 (L:5, RGB:4) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.2.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2024, Lightroom Classic で画像処理

南赤道縞の大赤斑の前方(東側)*1のウネウネがヤバいですね(語彙力)。大赤斑のすぐ下に、その下の小さな白斑との間に、よく見るとほんのりオレンジ色がかった白斑らしきものがあるのですが、ALPO-Japan の Jupiter Image 2023/11/01(UT) の Christopher Go 氏の説明を見ると、どうやらこれが Oval BA のようですね。なんだかずいぶん淡くなってるし、大赤斑にすいこまれそうな勢いですが大丈夫でしょうか!?

木星とイオ (2023/11/1 21:45)
木星とイオ (2023/11/1 21:45)
撮影データは上に同じ。

こちらは懸案のシーイングがイマイチだった大赤斑が正面に来た時の木星です。左側からイオが近付いています。AS!3 ではイオにも AP を置いて処理したのですがちょっとブレてます。

撮影時のイオと木星の位置関係を WinJUPOS でシミュレーションすると、こんな感じです。

WinJUPOS によるシミュレーション: イオと木星 2023-11-01 12:45.1 UT
WinJUPOS によるシミュレーション: イオと木星 2023-11-01 12:45.1 UT

撮影では1回のキャプチャーで約1分かかるので(1/60秒 x 3000フレーム)、シミュレーションで1分後の位置関係を表示したものを比較明合成するとこんな感じ。

WinJUPOS によるシミュレーション: イオと木星 2023-11-01 12:45.1 UT  + 12:46.1 UT の比較明合成
WinJUPOS によるシミュレーション: イオと木星 2023-11-01 12:45.1 UT + 12:46.1 UT の比較明合成

イオの直径の1/4くらいブレる感じです。上の写真の方がブレ具合が少な目ですが、AS!3 の補正がある程度効いているのでしょうか。とはいえ、正直もっと効くものかと思ったのですが…

ていうか、上の画像と比べると木星面のブレも結構ありますね。口径18cmの分解能ならこれで十分だと思っていましたが、解像はしなくとも模様のコントラストには影響ありそう。キャプチャ時間を減らしたらもっと解像感が増すのでしょうか?今度キャプチャファイルのフレーム数切り詰めて試してみたいと思います。

さて、大赤斑が正面を通り過ぎていった後、シーイングが回復してきた時に撮ったのがこちら。

木星とイオ (2023/11/1 22:35)
木星とイオ (2023/11/1 22:35)
撮影データは上に同じ。

大赤斑の後方(西側)のグシャグシャがヤバいです(語彙力)。Oval BA の前方で途切れていた南温帯縞にもなにやら泡立つような模様が見えています。実際のところどうなっているんでしょうね?ALPO-Japan の Christopher Go 氏の写真だと大赤斑後方はうねりまくったガスの流れのようですが、南温帯縞はなんだかよくわかりませんね。

イオはさらに木星に近付いています。木星からは夜明け前に見える細い月として見えているはずですがどんな眺めなんでしょうね。

写真ではイオの縁が色収差みたいになっていますが、ADC の調整が雑とはいえ AS!3 の RGB Align も ON にしていますし、単純に大気色分散でこうなっているとも思えないのですが… AS!3 の Quality Estimator がイマイチで時々あからさまにブレたようなフレームを拾ってくることがあって、今回も Quality でソートしたフレームの先頭に明らかにイオが歪んでいるものが来ていたりしたのを見たので、そのせいかもしれません。

というわけで11月とは思えない好シーイングに恵まれて久々にいい木星が撮れました。画像処理はもうちょっと頑張れそうな気もしますが、あんまり悩んでるとキリがないし、リハビリ的な意味でとりあえず。色々気になったり試したいこともあるのですがそれはまた後日。

*1:大赤斑から見て自転方向を前方、その逆方向を後方と呼んでいます。木星面の東西で言うと、自転方向が東側、逆方向が西側です。天球の東西とは逆になるのがややこしいですが、木星面の上に日本地図を思い描いて、関西はこっち、関東はこっち、などとやるとわかりやすいです。